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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 土木施工単価 > 東京都の無電柱化推進計画について

 

東京都建設局道路管理部安全施設課

 

1. はじめに

東京都は,昭和61年度から平成25年度までの6期にわたる「電線類地中化計画」などに基づき,「都市防災機能の強化」「安全で快適な歩行空間の確保」「良好な都市景観の創出」を目的に,国や区市町村,電線管理者と連携し,無電柱化を積極的に推進してきた。
 

【写真-1 林立する電柱と輻ふく輳そうする電線(清洲橋通り〈江東区扇橋〉)】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その結果,センター・コア・エリア※内の都道では地中化率が85%に達するなど一定の進捗が図られてきた。しかしながら,都道全体における地中化の進捗状況をみると,ロンドンやパリといった欧米の主要都市と比べ,依然として低い水準にある。
 
また,過去の震災や昨今の大型台風などにおいては,電柱の倒壊による道路閉塞などにより,避難や救急活動に支障が生じるなど,より一層の防災機能の強化が必要であることが改めて認識された。
 

【写真-2  阪神・淡路大震災で倒壊した電柱(出典:国土交通省ホーム ページ )】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
さらに,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向け,首都東京にふさわしい風格ある都市景観を形成し,成熟した都市としていくためにも,無電柱化は必要不可欠である。
 
このような状況を踏まえ,都は都内全域で無電柱化事業をより一層展開していくため,平成26年12月に「東京都無電柱化推進計画(第7期)」を策定した。本計画は都道だけでなく,都内の区市町村道も含めた新たな計画として策定し,平成26年度から5カ年の整備目標や実施箇所を定めたもので,本稿では,本計画について紹介する。
 
 

2. 整備の方針

2.1 整備対象道路

都は,現在,電線共同溝方式による無電柱化事業を基本として整備を進めているが,この方式で事業を実施するためには,歩道などに地上機器を設置することが必要となる。このため,地上機器設置に必要な幅員を考慮し,歩道幅員が2.5m 以上確保されている都道を整備対象としている。
 
また,拡幅整備が予定されている計画幅員で完成していない道路については,将来道路拡幅時に電線共同溝の移設が想定されることから,本計画の対象道路からは原則除外し,すでに都市計画幅員で完成している都道を対象としている。
 

【写真-3 無電柱化の整備事例(浅草通り〈墨田区業平〉)】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

【写真-4 無電柱化の整備事例(明治通り〈江東区亀戸〉)】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2.2 対象地域

無電柱化事業を実施する地域は,区部および多摩地域とし,地域内において整備対象となる都道は,区部は全線,多摩地域は人口集中地区(DID)内の全線としている。ただし人口集中地区(DID)外の都道についても,観光地周辺などの特に無電柱化を行う必要のある箇所については対象としている。
 

2.3 対象道路における整備方針

本計画では,以下の4項目を整備方針として無電柱化を推進していく。
 
ⅰ)都市防災機能の強化に寄与する路線
緊急輸送道路など「都市防災機能の強化」に寄与する路線を選定し重点的に整備する。
 
ⅱ)センター・コア・エリアから周辺区部・多摩地域へ
平成31年度までにセンター・コア・エリア内の都市計画幅員で完成した都道の無電柱化を完了させるとともに,今後は防災の視点を強化し,周辺区部や多摩地域における第一次緊急輸送道路や主要駅周辺などでの整備にシフトする。
 
ⅲ)バリアフリーとのパッケージ化を実施
主要駅周辺などの道路は,電線共同溝の舗装復旧工事に合わせ,段差の解消や勾配の改善などバリアフリー化と一体的に整備を行う。
 
ⅳ)面的な無電柱化に向けた支援策の強化
区市町村に対し,さらなる財政支援や技術支援を行うとともに,歩道の狭い道路などにおける無電柱化の推進策について,制度面や技術面の検討を行う。
 

2.4 優先して整備する区間

すでに都市計画幅員で完成している都道については,下記の区間を優先整備区間としている。優先整備区間のうち,特に防災上重要な位置付けとなる路線については,重点的に整備を行う。
 
ⅰ)センター・コア・エリア内
ⅱ)緊急輸送道路
ⅲ)利用者の多い主要駅周辺
ⅳ)木造住宅密集地域内
ⅴ)避難道路
ⅵ)道路修景事業などの施行箇所
ⅶ)区市町村の無電柱化との連携箇所
 
また,都市計画道路の新設または拡幅事業のほか,既設の都道で行う歩道設置事業,都道の整備を行う土地区画整理事業,市街地再開発事業などの面的整備の際にも,原則として同時に無電柱化を実施する。
 
 

3. 都道の無電柱化の状況

3.1 無電柱化の経緯

東京では,昭和30年代から昭和60年代まで電力・通信の需要が高い都心部を中心に,電線管理者による単独地中化が行われてきた。都は,昭和61年度の電線類地中化計画をはじめとして,平成25年度までの6期にわたる計画に基づき,CAB方式,自治体管路方式,電線共同溝方式により整備を進め,現在は,平成7年に「電線共同溝の整備等に関する特別措置法」が制定されたことを受け,電線共同溝方式により整備を進めている。
 

3.2 都道の無電柱化の実績

都道における地中化率は,平成25年度末現在で区部は51%,多摩地域は15%で,都道全体では35%となっている。区部のうち,センター・コア・エリア内では85%となっている。
 

 
 

4. 5カ年の整備計画

4.1 整備計画延長

都内の都道,区市町村道において,平成26年度から平成30年度までの5カ年で,着手または完了する無電柱化の整備計画延長は,都道717km,区市町村道199kmで合わせて916kmである。
 
本計画では「東京オリンピック・パラリンピックに向けた取組」と,「都市防災機能の強化に向けた取組」の2点を重要な取組として位置付けている。
 

4.2  東京オリンピック・パラリンピックに向けた取組

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向けて,わが国の政治,経済,文化の中心的な役割を担い,東京オリンピック・パラリンピック競技会場予定地や観光施設が数多く点在しているセンター・コア・エリア内の計画幅員で完成した都道については,平成31年度までに無電柱化を完了させる。
 
また,区市町村道と連携した面的な無電柱化の促進のため,平成20年度から区市町村へ事業費を補助する財政支援を行っているが,競技会場予定地周辺などの区市道においては,無電柱化を一層促進するため,地元区市と合意した区間においては都補助金の補助率の割合を現行よりも引き上げて,平成31年度までに無電柱化を完了させる。
 

【図-1 競技会場周辺等の区市道に対する補助制度】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

4.3 都市防災機能の強化に向けた取組

災害時には電柱の倒壊による道路閉塞や電線の切断などにより,避難や救急活動,物資輸送に支障が生じるとともに,電力・通信サービスの安定供給も妨げられることが予想される。そのため,無電柱化の三つの目的のうち,「都市防災機能の強化」に寄与する路線を選定し,優先的に整備することにより安全・安心な都市の実現を図っていく。
 
都道においては,第一次緊急輸送道路の整備率を平成36年度末までに50%に引き上げ,中でも震災時に特に重要な機能を果たす環状七号線については100%完了するという目標を設定している。本計画では,新規に着手する都道の整備計画延長172㎞のうち約7割を第一次緊急輸送道路とし,周辺区部および多摩地域を中心に整備し,より一層の「都市防災機能の強化」を図る。
 
また,区市町村道においても,これまでセンター・コア・エリア内や利用者の多い主要駅および観光地周辺などにおいて,区市町村と連携し面的な無電柱化を促進してきたが,本計画では,これらに加えて新たに緊急輸送道路や木造住宅密集地域内の道路など,「防災に寄与する路線」での整備を促進させることで,都市防災機能の強化を図っていく。このため,区市町村への補助制度を拡充(対象路線の追加,補助期間の延伸)し,併せて技術支援などを行っていく。
 

【図-2 都道の新規路線の内訳】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

【図-3 環状七号線の整備状況】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

4.4 バリアフリーとの一体的な整備

利用者の多い主要駅周辺では,安全で快適な歩行空間を確保するため,無電柱化と併わせて一体的にバリアフリー化を図る。そのため,主要駅周辺の無電柱化の対象となる都道については,無電柱化の舗装復旧工事に併わせて道路のバリアフリー化を行っていく。
 
その他の路線についても,沿道状況を勘案し,可能な限り舗装復旧工事に併わせて歩車道の段差の解消,勾配の改善および視覚障害者誘導用ブロックの設置などの整備を行っていく。
 
 

5. 事業推進に向けた方策

5.1 低コスト手法など新たな技術の検討

従来の電線共同溝方式は,コスト面に課題があるため,財政基盤の弱い自治体の無電柱化が進まない要因の一つとなっている。このため,国において,電線類を直接埋設するなど低コストとなる手法の技術検討が開始されたところである。
 
今後,国の動向を注視しつつ,区市町村道を含む都内の道路において,適用の可能性や維持管理などの課題解決に向けて取り組んでいく。
 
一方,従来の電線共同溝方式についても,移設工事を削減するため,構造のコンパクト化の可能性について,電線管理者とともに検討していく。
 

5.2 既存ストックの活用

現道内の電線共同溝整備においては,既存埋設物が輻輳しているため,移設工事にかかる費用と工期の増大が課題となっている。
 
このため,電線管理者が所有する管路やマンホールなどの既存施設を,電線共同溝の一部として積極的に活用し,他の埋設物の支障移設を回避することにより,コスト縮減と工期短縮を図っていく。
 

5.3 地上機器の設置場所に関する新たな方策

歩道幅員が2.5mに満たない道路では,歩道上に地上機器を設置した場合,歩道の有効幅員が確保できなくなる。歩道が狭い道路で電線共同溝を整備するためには,地上機器の設置場所として,公園などの公共施設や民地などの道路外の敷地を活用した整備も必要となる。しかし,地上機器の路外設置には,関係法令や財産区分,地域の合意形成などの課題があり,今後,区市町村や電線管理者など関係機関と協議検討を行っていく。 
 
 

6. おわりに

無電柱化は,災害時の電柱倒壊による道路閉塞の防止やライフラインの安定供給の確保など,防災,減災に欠くことのできない重要な役割を担っている。
 
さらに,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は,東京の魅力を世界に発信する最大の機会である。
 
今後とも,「都市防災機能の強化」や「安全で快適な歩行空間の確保」「良好な都市景観の創出」を目指し,無電柱化を積極的に推進していく。
 
 
 
【出典】


土木施工単価2015夏号

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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