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一般財団法人 国土技術研究センター 情報・企画部 次長
小宮 朋弓

 

1.はじめに

一般財団法人国土技術研究センター(以下,JICEという)では公益事業の一環として,建設分野に関する先進的な研究や技術開発の促進への寄与および新技術の普及を目的に,「研究開発助成」「建設技術審査証明事業」「国土技術開発賞」の三つの事業を実施しています。
 
これら三つの事業の大まかな位置付けは図1 - 1のとおりで,基礎研究から普及までの幅広い段階をカバーしています。

【図1-1 技術開発の段階と3事業の位置付け】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
本稿では,これら3つの事業の概要と平成27年7月に授賞式が行われた「第17回国土技術開発賞」の受賞技術の概要についてご紹介します。
 
 

2.研究開発助成制度の概要

(1)目的

「研究開発助成」は,より良い国土の利用・整備または保全に寄与することを目的として,住宅・社会資本整備に係わる先進的な研究・技術開発を支援することを目的に研究・開発費用の一部を助成するものです。当該助成制度により、平成11年度から平成26年度までの16年間で延べ209件の研究に対し助成を行っています。
 

(2)助成対象者

助成対象者は,原則として,大学,高等専門学校およびこれらに付属する機関などの研究者または民間企業の研究者です。なお,学生は対象外となります。
 

(3)助成対象研究課題

住宅・社会資本整備に係わる先進的な研究・技術開発のうち,平成27年度は,応用研究課題と重点研究課題として表2 - 1の研究課題を設定して公募を行っています。
 

【表2-1 平成27年度公募研究開発課題】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
応募いただいた研究内容に対して,研究開発助成審査委員会において,応用研究課題では,先見性,応用性・発展性,確実性の観点から,重点研究課題では,社会ニーズ,実現可能性,波及効果の観点から厳正に審査を行い,助成対象者を決定しております。
 
本年度は8 月3 日より10 月30日まで公募しております。公募内容や申請の手続きなどの詳細につきましては,ホームページをご参照ください。(http://www.jice.or.jp/review/assistances
 
 

3.建設技術審査証明事業の概要

(1)目的

「建設技術審査証明事業」は,新しい建設技術の活用・促進に寄与することを目的として,民間において自主的に研究・開発された新技術について,依頼者からの申請に基づき新技術の技術内容を技術審査し,その内容を客観的に証明し,普及活動に努める事業です。
 

(2)事業の実施主体

当該事業は,「建設技術審査証明協議会」の会員により実施されています。
 
「建設技術審査証明協議会」は,民間における研究開発の促進および新技術の建設事業への適正かつ迅速な導入に資するため,会員が実施する建設技術審査証明事業の透明性,公平性および客観性の確保ならびに審査の社会的信頼性の維持を図り,もって建設技術の向上に寄与することを目的として,平成13 年1 月10日に設立されました。JICEをはじめ14の法人が会員となっており,それぞれが審査する対象技術などを分担して技術審査などを実施しています。
 
JICEでは,「道路,河川,海岸などの土木施設の構築,撤去,管理に係わる施工技術(一般土木工法)」を対象として,当該事業を実施しています。
 

(3)対象事業

民間において自主的に研究・開発された新技術のうち,当該開発者が主体的に汎用を高めようとするものを対象としています。
 

(4)事業概要

本事業は,新技術に関する「技術審査」および「証明」を行い,併わせて「普及活動」に係わる業務を行っています。
 
技術審査: 申請された新技術について,権威ある学識経験者などによる委員会などを設置し,
     国土交通省ならびに関係公共機関のニーズおよび国などが定める技術指針などに照らし,
     公平かつ公正に審査。
証  明: 技術審査の結果について,これを証した審査証明書およびその技術内容を取りまとめた報告書などを作成。
普及活動: 開発者が実施機関から交付される審査証明書などに基づき普及活動を図るとともに,
     当該事業の実施機関においても審査証明された新技術の公共事業への活用促進に寄与することを目的として,
     概要書の関係発注機関への送付や建設技術審査証明新技術展示会の開催等,各種普及活動を実施。
 
なお,審査証明された新技術は,国土交通省が運用している新技術情報提供システム(NETIS)において,審査証明技術であることも技術情報として登録できます。
 
「建設技術審査証明協議会」の会員法人,各法人の対象技術,事業の流れ,実施基準などの詳細および審査証明技術の概要などについては,建設技術審査証明協議会のホームページをご参照ください。
http://www.jacic.or.jp/sinsa/index.html
 
 

4.研究開発助成制度の概要

(1)目的

「国土技術開発賞」は,建設分野における技術開発者に対する研究開発意欲の高揚と建設技術水準の向上を図ることを目的として,建設分野における優れた新技術およびその開発に貢献した技術者を対象に表彰する事業です。
 

(2)実施主体

JICEと一般財団法人沿岸技術研究センターが共催で実施しています。
 
また,国土交通省にご後援をいただくとともに,一般財団法人日本建設情報総合センター,一般財団法人先端建設技術センター,一般財団法人港湾空港総合技術センターの3法人にご協賛をいただいております。
 

(3)応募技術の対象

住宅・社会資本整備もしくは国土管理に係わる,調査・計測手法,計画・設計手法,施工技術,施工システム,維持管理手法(点検・診断技術,モニタリング技術を含む),材料・製品,機械,電気・通信,伝統技術の応用などの広範にわたる技術で,おおむね過去5年以内に技術開発され,かつ過去3年間以内に実用に供された新技術が応募技術の対象です。ハード技術だけでなくソフトに係る新技術も応募技術の対象としています。
 

(4)賞の種類

「最優秀賞」「優秀賞」「地域貢献技術賞」を国土交通大臣表彰として,「入賞」を選考委員会委員長表彰として表彰しています。
 
「最優秀賞」と「優秀賞」に選ばれた技術は,2年に1回開催される「ものづくり日本大賞」の候補として,国土交通省に設置されるものづくり日本大賞選考有識者会議へ推薦されます。なお,「ものづくり日本大賞」は,最先端の技術から伝統的・文化的な「技」まで幅広い分野において,特に優秀と認められる人材(「ものづくり名人」)に対して,内閣総理大臣が表彰を行うものです。
 
また,「地域貢献技術賞」は,地域の安全・安心に資する技術,地域の生活環境改善に資する技術,地域産業の振興などに役立つ技術など,地域が抱えている課題に対し,地域の中小建設業者,専門工事業者などが独自に開発し,その活用・応用を通じて地域に貢献している技術に対して表彰を行うものです。
 

(5)選考方法

各賞は,国土技術開発賞選考委員会により,「技術開発の効果」「汎用性」「新規性」の三つの視点から総合的に評価して選考されます。平成27年度の選考委員会のメンバーは以下のとおりです。
 
委員長 中村英夫 東京都市大学 名誉総長
委 員 土岐憲三 立命館大学 教授
 〃  和田 章 東京工業大学 名誉教授
 〃  国土交通省 技監
 〃  国土交通省 大臣官房技術総括審議官
 〃  国土交通省 大臣官房技術審議官
 〃  国土交通省 国土技術政策総合研究所長
 〃  国土交通省 国土地理院長
 〃  国立研究開発法人 土木研究所 理事長
 〃  国立研究開発法人 建築研究所 理事長
 〃   国立研究開発法人 港湾空港技術研究所
理事長
 〃   一般財団法人 国土技術研究センター
理事長
 〃   一般財団法人 沿岸技術研究センター
理事長
 
 

5.第17 回 国土技術開発賞受賞技術の紹介

(1)第17 回 国土技術開発賞受賞技術の選考結果

平成27年度「第17 回 国土技術開発賞」では,民間企業などから25件の新技術の応募をいただき,第17回国土技術開発賞選考委員会において厳正な審査を行った結果,最優秀賞2件,優秀賞3件,入賞5件,地域貢献技術賞2件の新技術合計12件を選定しました(表5 - 1参照)。

【表5-1 第17回 国土技術開発賞 受賞技術一覧】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(2)第17 回 国土技術開発賞表彰式

第17回 国土技術開発賞の表彰式が,平成27年7月30日に東京国際フォーラムにおいて開催されました。太田昭宏国土交通大臣をはじめ,国土交通省の関係者の方々,ならびに関係団体から多数の方々にご来賓としてご臨席を賜りました。
 
表彰式では,太田大臣にはご挨拶をいただくとともに,授賞式において,最優秀賞,優秀賞ならびに地域貢献技術賞の受賞技術を開発した法人代表者および技術開発に携わった代表者(代表技術開発者)に対して表彰状と副賞を授与していただきました。
 

【写真5-1 太田昭宏国土交通大臣ご挨拶】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
また,入賞については中村英夫選考委員会委員長より表彰状と副賞の授与が行われました。
 
また,各賞の授与式の後に,各賞の受賞技術概
要の説明が,技術開発者自身により行われました。
 

【写真5-2 最優秀賞表彰 太田昭宏国土交通大臣と受賞者】

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(3)第17 回 国土技術開発賞 最優秀賞のご紹介

以下に,第17回 国土技術開発賞最優秀賞を受賞した2件の新技術の概要についてご紹介します。
 
各受賞技術の概要や連絡先,国土技術開発賞の応募条件などの詳細につきましては,JICE のホームページをご参照ください。
http://www.jice.or.jp/review/awards
 
■最優秀賞:過給式流動燃焼システム
 
(副 題)ターボチャージャーを用いた省エネ・低環境負荷型下水汚泥焼却炉
(受賞者)国立研究開発法人土木研究所
(概 要)本システムは, 過給機( ターボチャージャー)を用いた新たな下水汚泥焼却システムで,
     流動床炉に過給機を組み合せて構成され(図5 - 1参照),
     脱水汚泥(下水汚泥を脱水したもの) を約120~140KPaG の圧力下で燃焼させることにより燃焼効率を高めています。
 
     本システムは,運転費を削減することができ,消費電力を40%以上削減することができます。
     また,加圧燃焼であるため焼却炉を同処理量の従来焼却炉に比べて小さくできることから,放熱量が少なくなり,
     補助燃料使用量を10%以上削減するとともに,設備の設置スペースを縮小し建設費を10%程度削減することができます。
     さらに,加圧燃焼により焼却炉の下部で高温領域が生成され,一酸化二窒素の分解が促進されるため,
     従来システムと比較しても一酸化二窒素の排出量を約50%削減することができる,
     従来システムと比べて経済性と環境に優れたシステムです。
 

【図5-1  従来システムと過給式流動燃焼システムの違い(流動床 炉が小さくなり,流動ブロワや誘引ファンの運転が不要 になる)】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
最優秀賞:高耐久海水練りコンクリート
 
(副 題)産業副産物,特殊混和剤を使用した海水練りコンクリート
(受賞者)株式会社 大林組
(概 要)本技術は,豊富な天然資源である海水を有効利用するとともに,
     産業副産物である高炉スラグ微粉末,フライアッシュ,シリカフュームなどを混和材として使用し,
     さらに,海水練りコンクリート用特殊混和剤を組み合わせて用いたコンクリートです。
 
     長期強度が増加することに加え,緻密性が向上することで水密性が向上するとともに,波浪や流水,
     輪荷重などによる摩耗や衝撃に対する耐久性が向上します。
 
     真水練りコンクリートと比べて施工性は同等で,初期強度の発現が早いため工期を短縮することができ,
     真水の入手が困難な場合にはコスト縮減が可能で,さらにCO2排出量の低減,廃棄物の削減も可能です。
 

【図5-2 高耐久海水練りコンクリートの特徴】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

6.おわりに

 
社会資本の整備およびその適切な維持管理は,国民の安全・安心・快適な生活の実現および国際競争力の確保・向上のためには必要不可欠です。
 
その実現に向けて建設業が担う役割は大きく,今後の人口減少と少子・高齢化の進行,建設業界における担い手の確保の問題,厳しい経済・財政状況と社会資本における老朽化施設増加などを踏まえると,社会資本の整備・維持管理のさらなる効率化が求められます。
 
これらの社会的な要請にこたえるためにも建設分野における技術開発は重要であり,本稿においてご紹介したJICEでの取り組みが,建設分野での技術開発の促進に少しでも寄与できれば幸いです。
 
 
 
【出典】


土木施工単価2015秋号

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

最終更新日:2016-09-27

 

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