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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 上塗り塗装施工したままで可能な溶接部の亀裂、劣化調査技術〜中国地方整備局の取り組み〜

 

国土交通省 中国地方整備局 企画部 施工企画課 施工係長
松岡 弘道

 

1.はじめに

新技術活用システムは,公共工事等における新技術の活用検討事務の効率化や活用リスクの軽減等を図り,有用な新技術の積極的な活用を推進するための仕組みであり,2006年度(平成18年度)より本格的に運用を開始している。
 
新技術の開発者,工事の発注者,工事の受注者全てにおいて利点があるシステムである。
 
新技術の活用促進のため,新技術に係る情報の共有及び提供を目的とする新技術提供システムがNETIS である(図− 1)。
 

図− 1 新技術活用システムの流れ


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2015年5月末現在で,NETISへの登録技術は約3,400技術あり,特定の工種・工法で調べる場合,新技術の特徴(長所,短所)が分かりにくい等の原因により,現場での活用が進みにくいという課題がある。
 
従来の新技術活用方式は,『発注者指定型』,『施工者希望型』『フィールド提供型』『試行申請型』の4つの方式で活用していたが,上記課題の解決策として『テーマ設定型(技術公募)』を2014年度から新しく設定している。
 
本稿は,2014年度から中国地方整備局で取り組んでいる『テーマ設定型(技術公募)』(以下『テーマ設定型』という。)について,現時点までの取り組み状況を報告するものである。
 
 

2.中国地方整備局の取り組みテーマについて

 
(1)背 景
我が国の社会資本ストックは,高度経済成長期などに集中的に整備され,今後急速に老朽化することが懸念される。
 
このため,社会資本を安全により長く利用できるよう,劣化や損傷の状況を確実に把握することで戦略的な維持管理・更新を行うことが課題とされている。
 
中国地方整備局が管理する橋梁は,2013年4月1日時点で3,138橋(L=2m以上)であり,このうち全体の約4割に当たる約1,350橋が高度経済成長期(1955〜1973年)に建設されている(図− 2)。
 

図− 2 架設年次別の橋梁箇所数分布1)(中国地方整備局管内)


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
また,中国地方整備局における建設後50年以上経過した橋梁箇所数の占める割合は,現在の約25%から20年後には約60%まで急激に増加する見込みである(図− 3)。
 

図− 3 橋梁の現状1)(中国地方整備局管内)


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
以上より,中国地方整備局においても社会資本ストックの老朽化対策は重要である。
 
 
(2)テーマの設定について
NETIS検索システムを使って老朽化対策のキーワードである『構造物調査』で検索した結果,登録された新技術で評価された技術は26%と少なく,また半数以上はコンクリート構造物を対象とした技術であり,鋼構造物を対象とした技術の登録は15%と少ない状況が確認された(全登録数143件,鋼構造物を対象とした技術22件)(図−4,5)。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
鋼構造物の劣化状況の点検においては,通常目視により塗膜割れや膨れ等の状況を確認している。
しかし,鋼材の表面には通常は塗装が施されているため,鋼材に亀裂や劣化の発生を表面上から確認することはできない。
そのため,現在は,亀裂や劣化の可能性がある部位については,塗膜を除去し,詳細調査で確認する方法しかない。
一般的に鋼構造物で亀裂や劣化の可能性がある部位としては,構造的に弱い溶接部が考えられる。
 
このような背景から,NETISに登録されている新技術を調べた結果,上塗り塗装の上から鋼材の亀裂,劣化状況の確認ができる新技術の登録は見当たらなかった。
以上より,『上塗り塗装施工したままで可能な溶接部の亀裂,劣化調査技術』をテーマとして公募を行うことにしたものである(写真− 1)。
 

写真− 1 損傷事例


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
なお,他地方整備局でもNETISを活用した老朽化対策の取り組みを行っており,既に技術公募済みのテーマとして,『コンクリートのひび割れを遠方より検出できる技術』と『目視困難な水中部にある鋼構造物の腐食や損傷等を非破壊・微破壊で検出が可能な技術』の2テーマに取り組んでいる。その試行結果については,NETIS維持管理支援サイトで公表している。
 
 

3.公募技術について

今回公募する新技術については,従来技術が『目視点検』であるため,亀裂・劣化の測定精度を記載することなく幅広く募集することにした。
 
ただし,目視点検のみの比較では精度や技術の成立性等の評価ができないため,別途実施する詳細点検等の実施結果も評価に用いることとした。
 
(1)要求性能等
要求性能については,近接目視点検と新技術の組み合わせ,あるいは新技術のみによって,上塗り塗装を除去することなく,溶接部の亀裂・劣化の有無が確認できること。
 
(2)応募条件
応募技術に関しては,以下の条件を附して公募を行った。
 
①NETIS登録技術であること。ただし,本公募の応募とNETISへの登録申請が同時に行われる技術を含む。
②審査・選考・試行の過程において,審査・選考に関わる者(評価会議,事務局等)及び試行に関わる者(地方整備局,事務所等)に対して,応募技術の内容を開示しても問題がないこと。
③応募技術を公共事業等に活用する上で,関係する法令に適合していること。
④選考された応募技術について技術内容等を公表するので,これに対して問題が生じないこと。
⑤応募技術に関わる特許権等の権利について問題が生じないこと。
⑥応募資格等を満足すること(一般競争の参加資格と同等程度)。
 
(3)選考の視点
選考にあたっては,技術の詳細(応募技術の特徴等),特許・技術審査証明等,評価項目(現場適用性,経済性,検査・分析に要する時間と分析結果の出力形式,精度,確実性,亀裂・劣化の測定,検査・分析に係る汎用性等)などの観点から総合的に評価した。
 
(4)公募結果
2014年11月11日から12月15日の約1 ヶ月間公募を行い,3技術の応募があった。
その内訳は,NETIS登録技術が1技術,未登録技術が2技術であった。
公募を行うことでNETIS に登録されていない,新たな技術の活用(発掘)に繋がる結果となった。
応募のあった3技術の概要は,以下のとおり。
 
①「携帯式過流探傷装置」(NETIS 未登録技術)
本技術は電磁誘導現象で導体に発生する過電流の変化にて,鋼橋などの鋼構造物溶接部の表面亀裂を検出する技術である。装置は電源内蔵型,小型軽量携帯式,超小型探触子仕様で現場適用性が高い(写真− 2)。
 

写真− 2 携帯式過流探傷装置概要

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
②「過流探傷装置【PECT- Ⅱ】」(NETIS 未登録技術)
本技術は検査対象の近くで過電流を発生させてその変化から材料の欠陥を検出する技術で,プローブの形状やノイズの処理方法,小型化(携帯型)等を行い橋梁調査用(メンテナンス用)に開発した技術である。
 
非接触式なので塗膜を除去せずに,塗膜上から検査可能である(写真− 3)。
 

写真− 3 過流探傷装置【PECT- Ⅱ】概要


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
③「鋼床版SAUT」(NETIS登録済み技術)
本技術は超音波探傷法による鋼床版デッキプレートとUリブ溶接部に発生したデッキプレート方向進展における疲労亀裂をデッキプレート下面から塗装を除去することなく,半自動で効率的に検出できる非破壊検査技術である(写真−4)。
 

写真− 4 鋼床版SAUT 概要


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
④その他
未登録技術については,公募と同時にNETIS登録申請がなされ,NETIS への登録を行った。
 
 

4.試行について

実橋での試行を行う前に,応募技術の成立性を調査する目的で,試験体を用いた試行調査を2015年3月に国土交通省中国技術事務所の屋内で実施した。
 
試行調査ではあらかじめ傷を付け塗装を施した試験体を作成し,測定の正確性や測定時間などのデータ収集を行った(写真− 5)。
 

写真− 5 亀裂及び塗装仕様を変更した試験体


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
鋼橋の塗膜上部から溶接部の亀裂や劣化状況を把握する技術については,試験体A により調査・試験を実施した。実橋を想定し,2種類の塗装を施した試験体各10体(合計20体)について調査・試験を行った(図− 6)。
 

図− 6 試験体A


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
鋼床版のリブ部の溶接部における亀裂や劣化状況を把握する技術については,鋼床版リブ部を想定した試験体B(3体)による調査・試験を行った(図− 7)。
 

図− 7 試験体B


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
今回の試行において,開発された新技術を検証することで,実用における新技術の効果と課題が明確となった。
今後は,屋内での試行結果を踏まえた実橋(鋼橋)を対象とした試行を実施し,実用に向け経済性や工程,施工性等の確認を行う予定である。
あわせて今後,選考された技術は,国土交通省の工事現場において試行を行い,試行された結果は事後評価としてNETIS上で公表を予定している。
 
 

5.実橋による試行について

実橋による試行の概要は以下のとおり。
 
①実橋名称:観音OFFランプ橋(一般国道2号)
 
②試行時期:2015年10月
 
③試行場所: 広島市中区舟入中町〜中区観音本町一丁目
 
④上部構造形式:連続鋼鋼床版箱桁橋
 橋長:180.740m
 完成年度:2003年3月(架設竣工年度:1996年)
 塗装材料:下塗=エポキシ樹脂塗料
      中上塗=フッ素樹脂塗料
 塗装年度:2002年11月
 点検年度: 2010年10月定期点検(初回定期点検2006年1月)※補修履歴なし
 
⑤試行調査: 予め指定した箇所を各応募技術にて試行を実施し,事前に準備した試行調査表に基づき,
       コスト,工程,サイクルタイム等を確認する。
 
⑥実橋による試行後について
・ 活用効果調査:新技術活用システム実施要領にて定められた活用効果調査表を使用し,
  通常の事後評価と同じ6項目(『経済性』『工程』『品質・出来形』『安全性』『施工性』『環境』)の調査を実施する。
・ 事後確認:施行後に既存の点検結果(近々に点検結果がある場合)または,
  従来点検を実施(近々に点検結果がない場合)し試行結果と比較を実施する(写真− 6〜8)。
 

写真−6 実橋写真

 

写真−7 鋼床版SAUT測定箇所


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

写真−8 携帯式過流探傷装置,携帯式過流探傷器測定箇所

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

6.おわりに

今回,選定した新技術を活用できれば,近接目視との組み合わせ,または新技術だけによって上塗り塗装上から溶接部の亀裂,劣化状況が確認でき,早期の状況把握,確実な対策を施すことが可能になり,コスト縮減や社会資本ストックの長寿命化に繋がるものと考えられる。
 
また,新技術の活用促進について,2014年度に設定された「テーマ設定型(技術公募)」の取り組みを行い,NETISに登録されていない新たな技術の発掘ができた。
 
今後も本方式を活用し,現場ニーズに対応した技術をNETISに登録するとともに,技術の有効性の検証を行う予定である。
 
本研究は,内閣府総合科学技術・イノベーション会議のSIPインフラ維持管理・更新・マネジメント技術によって実施されました。
 
 
【参考文献】
1)中国地方整備局HP:道路構造物の老朽化対策
 
 
 
【出典】


積算資料2016年02月号

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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