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ホーム > 建設情報クリップ > 建築施工単価 > 公共建築工事標準仕様書等の改定について

 

国土交通省 大臣官房 官庁営繕部 整備課/設備・環境課

 

1. はじめに

公共建築工事標準仕様書(以下「標準仕様書」という),公共建築改修工事標準仕様書(以下「改修標準仕様書」という),公共建築木造工事標準仕様書(以下「木造標準仕様書」という)及び公共建築設備工事標準図(以下「設備標準図」という)は,各府省庁が官庁営繕事業を実施するための「統一基準」として位置付けられており,標準仕様書,改修標準仕様書及び設備標準図の改定周期は3年となっています。
 
今般,標準仕様書,改修標準仕様書,木造標準仕様書(以下「標準仕様書等」という)及び設備標準図について,統一基準としての定期の改定等が行われ,平成28年版が決定しました。
 
官庁営繕部では,統一基準の決定を受けて,平成28年3月に標準仕様書等及び設備標準図を官庁営繕部の技術基準として制定し,ホームページで公表しましたので※,改定概要についてご説明します。
 
 

2. 標準仕様書等及び設備標準図について

2- 1. 目  的

標準仕様書等は,公共工事標準請負契約約款に準拠した契約書により発注される公共建築工事において使用する材料,機材,工法等について標準的な仕様を取りまとめたものであり,当該工事請負契約における契約図書の一つとして使用されるものです。
 
一方,設備標準図は,標準仕様書(電気設備工事編及び機械設備工事編)で規定されている機材の形式,形状等及び施工要領例を示したものであり,標準仕様書と一体として適用することを前提に作成されています。
 
標準仕様書等及び設備標準図の適用により,建築物の品質及び性能の確保,設計図書作成の効率化並びに施工の合理化を図ることを目的としています。
 

2-2 .適用範囲等

標準仕様書等は,主に一般的な事務庁舎を対象とした公共建築工事への適用を想定して作成されています。また,全国で実施される公共建築工事において建築物に必要な品質及び性能を確保するため,標準仕様書等に規定する材料,機材,工法等については,主に次の内容を考慮しています。
 



なお,契約図書の一つである設計図書の優先順位は,①質問回答書 ②現場説明書 ③特記仕様書 ④図面 ⑤標準仕様書となっていることから,標準仕様書に規定する材料,機材,工法等以外のものを適用する場合には,当該材料,機材,工法等を特記することとなります。
 
 

3. 決定された統一基準

平成28年版として決定された統一基準は次のとおりです。
 ・ 公共建築工事標準仕様書
  (建築工事編,電気設備工事編,機械設備工事編)
 ・ 公共建築改修工事標準仕様書
  (建築工事編,電気設備工事編,機械設備工事編)
 ・ 公共建築木造工事標準仕様書
 ・ 公共建築設備工事標準図
  (電気設備工事編,機械設備工事編)
 
 

4. 標準仕様書等の改定方針

標準仕様書等は,次の方針に沿って改定しています。
 
(1)国としての施策への対応
 ・地球環境への配慮
   環境負荷の低減及びエネルギー使用量の縮減に資する材料・機材・工法等について積極的に規定し,
   地球環境に配慮しています。
 ・コスト縮減に資する仕様の標準化
   工事に係る技術的内容を整合させ,コスト縮減を目指しています。
 ・安全・安心の確保への対応
   官庁施設においては,構造体のみならず建築非構造部材・建築設備・建築材料について施工中の安全性の確保
   及び健康への影響に配慮する等,安全・安心の確保を目指しています。
 ・品質の確保への対応
 
(2)関係法令,各種基準及び規格類との整合
 ・法令改正等に対応した見直し
 ・JIS,JASの公的規格,JASS規格等で改正が行われたものについて,その改正内容に整合させた見直し
 
(3)技術革新への対応と施工実態の反映
 改定にあたっては,関係省庁,関係団体等から幅広く情報・意見を頂き,施工実態の反映に努めています。
 また,新技術・新工法については,標準仕様書等に規定する材料,機材,工法等の考慮事項を勘案したうえで,
 適宜改定に反映しています。
 
 

5. 標準仕様書等及び設備標準図の改定概要

標準仕様書等及び設備標準図は,主に次のような改定を行っています。
 

5-1 .標準仕様書(建築工事編)

5章 鉄筋工事
 ・片持小梁及び片持スラブの下端筋の直線定着長さの改訂がJASS5において行われたため規定を修正。
 
6章 コンクリート工事
 ・コンクリート強度に関する基準(昭和56年建設省告示第1102号)の改正を受けて,
 「構造体コンクリート強度の推定試験」の規定に標準養生供試体を用いる場合を追加。
 ・型わく及び支柱の取り外しに関する基準(昭和46年建設省告示第110号)の改正を受けて,
 「型枠の存置期間」の規定にコンクリートの圧縮強度をコンクリートの温度測定により計算する方法を追加。
 ・構造体コンクリートのかぶり厚さの確認は,非破壊検査等で行うものと誤解を招く恐れがあるため,
  「かぶり厚さ不足の兆候の有無を目視で確認」として修正。
 
8 章  コンクリートブロック・ALCパネル・押出成形セメント板工事
 ・押出成形セメント板の欠き込み等について,原則行わない規定に修正。
 
9章 防水工事
 ・改質アスファルトシート防水について,常温粘着工法(AS-J1)を削除。
 ・屋内防水について,環境に配慮した工法として,合成高分子系ルーフィングシート防水に
  エチレン酢酸ビニル樹脂系ルーフィングシートを張り付ける
  屋内保護密着工法を採用。
 
11章 タイル工事
 ・密着張りにおける目地の工法について,目地詰めを行う規定に修正。
 
13章 屋根及びとい工事
 ・粘土瓦葺の棟の工法について,F型用冠瓦(三角棟冠瓦)を追加。
 
14章 金属工事
 ・軽量鉄骨天井下地の適用範囲について,特定天井を除くことを明記。
 
15章 左官工事
 ・モルタル塗りでのひずみ等の補修材として下地調整塗材を追加。
 ・防水型仕上塗材について,増塗材を必須とする規定に修正。
 
16章 建具工事
 ・サッシの取付け方法として溶接による工法以外のねじ等で固定する工法を新たに規定。
 
18章 塗装工事
 ・亜鉛めっき鋼面の錆止め塗料について,鉛酸カルシウムさび止めペイントを削除し,
  日本塗料工業会規格JPMS28(一液形変性エポキシ樹脂さび止めペイント)を新たに規定。
  これにより,標準仕様書(建築工事編)に規定している塗料について,無鉛化を達成。
 ・変性エポキシ樹脂プライマー,反応形合成樹脂シーラー等について,環境に配慮し,弱溶剤系を追加。
 ・木材保護塗料塗りについて,屋外に使用することを明記。
 
19章 内装工事
 ・複合フローリングの板厚について修正。
 ・フローリングブロックのモルタル埋込み工法を削除。
 
22章 舗装工事
 ・構内舗装・排水設計基準の改定に伴い,章全体の記載を見直し
 (遮断層の規定,アスファルト舗装及びカラー舗装の基層に係る規定
  並びに転圧コンクリート舗装及び排水性アスファルト舗装を削除)。
 

5-2 .改修標準仕様書(建築工事編)

4章 外壁改修工事
 ・コンクリート打放し仕上げ外壁の改修におけるエポキシ樹脂注入工法について,
  エポキシ樹脂の注入量の総量を測定する規定に修正。
 
5章 建具改修工事
 ・屋内用防火シャッター又は防煙シャッターの保護装置として可動座板式を追加。
 
8章 耐震改修工事
 ・「11節 無筋コンクリート」「20節 溶融亜鉛めっき工法」「24節 連続繊維補強工事」「28節 基礎工事」を新規に規定。
 ・基礎工事は,標準仕様書の土工事及び地業工事並びに改修に関連することを規定。
 
9章 環境配慮改修工事
 ・断熱材後張り工法を新たに規定。
 

5-3 .木造標準仕様書

4章 木造工事
 ・防腐・防蟻処理を省略できる材料について,心材の耐久性区分D1の樹種の心材のみをラミナに用いた集成材は
  流通していないため,集成材を削除。
 ・薬剤の加圧注入による防腐・防蟻処理について,インサイジングは,曲げ強さ等の低下が1割を超えない範囲を
  JAS規格で認めているため,適用は特記によることを追加。
 
9章 木工事
 ・合板のJASに新設された化粧ばり構造用合板は,建築基準法上の構造部材以外の材料として使用できるため,追加。
10章 防水工事
 ・防水工事の透湿防水シート,防水テープ及び改質アスファルトフェルト工事について,実際の施工順に合わせた記載に見直し。
 
13章 屋根及びとい工事
 ・自転車置場等の付属屋に使用できる屋根材として,折板葺を追加。
 
19 章 断熱・防露,ユニット及びその他の工事
 ・外張断熱工法について,特に蟻害の顕著な地域において,基礎断熱材による蟻害の発見遅れが散見されることから,
  断熱材の防蟻処理に関する規定を追加。
 

5-4 .標準仕様書(電気設備工事編)

第2編 電力設備工事
 ・盤類の鋼板の前処理に重金属を含まない処理方法の規定を追加。
 ・制御盤の電動機回路の規定をトップランナーモータに対応させた見直し。
 ・建築設備耐震設計・施工指針の改正に伴い,耐震施工の規定を見直し。
 
第3編 受変電設備工事
 ・配電盤の配線各部の絶縁距離について,変圧器の変位幅を見込むように規定の見直し。
 
第4編 電力貯蔵設備工事
 ・電力平準化用蓄電装置の規定を追加。
 ・分散電源エネルギーマネジメントシステムの規定を追加。
 
第5編 発電設備工事
 ・自家発電設備の燃料移送ポンプに油中ポンプ及び水没を防止するカバーの規定を追加。
 ・小形燃料電池発電装置の規定を追加。
 
第6編 通信設備工事
 ・端子板について,G1形,G2形及びI 形を追加。
 ・構内情報網装置のインタフェースについて,JIS X 5252が廃止されたことに伴い,ISO8802-3「イーサネット規格」を追加。
 ・映像・音響装置のプロジェクタ及びスクリーンについて,広角形を追加。
 ・駐車場管制装置の検知器について,超音波センサ方式の規定を追加。
 
第7編 中央監視制御設備工事
 ・補助記録装置について,記録媒体を限定しない規定に見直し。
 
第8編 医療関係設備工事
 ・医用の配線器具の規定を追加。
 

5-5 .設備標準図(電気設備工事編)

第2編 電力設備工事
 ・LED照明器具を主体とする構成とし機種を追加。
 ・照明器具について,固有エネルギー消費効率の規定を追加。
 ・建築設備耐震設計・施工指針の改正に伴い,耐震支持例を見直し。
 
第4編 発電設備工事
 ・発電設備の貯油槽について,TO-35~TO-70を追加。
 
第5編 通信設備工事
 ・端子板について,G1形,G2形及びI 形を追加。
 ・端子盤の標準寸法について,G1 形,G2形及びI 形を追加。
 ・プロジェクタの形式,解像度を見直し。
 ・スクリーンに反射細密ビーズ形,広角形を追加。
 ・テレビ共同受信の分岐器及び分配器の損失の説明を追加。
 

5-6 .改修標準仕様書(電気設備工事編)

第2編 電力設備工事
 ・照明改修の改修前後の回路電流値の計測の規定を追加。
 

5-7 .標準仕様書(機械設備工事編)

第1編 一般共通事項
 ・フロン冷媒を使用する空調機器等の施工中の環境保全を考慮し,
  「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(平成13年法律第64号)」を規定に追加。
 
第2編 共通工事
 ・電動機のトップランナー化に伴い,誘導電動機の規格にJIS C 4213(低圧三相かご形誘導電動機-低圧トップランナーモータ)
  の規定を追加。
 ・建築設備耐震設計・施工指針の改正に伴い,形鋼振れ止め支持を必要とする鋼管,
  鋳鉄管及びステンレス鋼管を呼び径50A以上に規定を見直し。
 ・ポリスチレンフォーム保温材の内,ポリスチレンフォームフレキシブルシートの規定を削除。
 ・亜鉛めっき面のさび止め塗料のJIS K 5629(鉛酸カルシウムさび止めペイント)を削除し,
  日本塗料工業会規格JPMS28(一液形変性エポキシ樹脂さび止めペイント)を規定に追加。
 
第3編 空気調和設備工事
 ・温水発生器に,木質バイオマスボイラー(真空式温水発生機及び無圧式温水発生機)の規定を追加。
 ・ファンコイルユニットの形番別能力の規定を見直し。
 ・全熱交換ユニットの「自動換気切換機能」標準とし規定を見直し。
 
第4編 自動制御設備工事
 ・建築設備耐震設計・施工指針の改正に伴い,配線の規定を見直し。
 
第5編 給排水衛生設備工事
 ・JIS A 5207(衛生器具-便器・洗面器類)の改正に伴い,衛生陶器及び付属品の規定を全面的に見直し。
 ・衛生器具に温水洗浄便座の規定を追加。
 ・消防法施行令の改正に伴い,屋内消火栓に広範囲型2号消火栓の規定を追加。
 
第6編 ガス設備工事
 ・液化石油ガス設備にバルク貯槽を追加。
 
第9編 昇降機設備工事
 ・建築基準法施行令の改正及び昇降機技術基準の解説の改定に伴い,
  エレベーター及びエスカレーターの耐震施工の規定を見直し。
 ・電動機のトップランナー化に伴い,エスカレーターの電動機の規定を見直し。
 
第10編 機械式駐車設備工事
 ・(公社)立体駐車場工業会の機械式駐車場技術基準の改正に伴い,安全装置の規定を見直し。
 

5-8 .設備標準図(機械設備工事編)

 ・機材標準図の屋内消火栓及び屋内消火栓(放水口共)に広範囲型2号消火栓の図示記号を追加。
 ・機材標準図のファンコイルユニット等の形式記号に大温度差システム等に対応した仕様の図示記号を追加。
 ・機材標準図にバルク貯槽(横型・竪型)を追加。
 ・施工標準図の電気配管振れ止め支持要領を見直し。
 ・施工標準図の基礎の高さと配筋要領を見直し。
 ・施工標準図の鋼製強化プラスチック製二重殻タンクの外殻及び構造施工要領TOSF7~30の支柱断面を見直し。
 

5-9 .改修標準仕様書(機械設備工事編)

第3編 空気調和設備工事
 ・フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律の改正に伴い,
  撤去における冷媒の回収方法等の措置の規定を見直し。
 
 

6. おわりに

標準仕様書等は標準的な仕様を取りまとめたものであり,設計図書の一つです。他の設計図書と合わせてはじめて当該工事の仕様を示すことができることを理解したうえで,標準仕様書等を活用することが重要です。
 
前文1頁「2 .標準仕様書等及び設備標準図について」のとおり,目的,位置付け,適用範囲等については,平成28年度から新たに国土交通省のホームページにも掲載していますので※,標準仕様書等及び設備標準図の使用にあたってはご一読いただきたいと考えています。
 
http://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk2_000017.html#2-5
 
 
 
【出典】


建築施工単価2016夏号

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

最終更新日:2016-11-07

 

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