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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > BIMソフトの実践テクニック講座 ARCHICAD編

 

株式会社 シェルパ 平川 史明、藤井 健男、丸山 順一

 
シェルパでは、2010年より社員全員での当番制による「毎日1記事投稿」を合言葉にブログを更新しており、2015年11月末現在で記事総数が約900件となった。
 
BIMに関する記事は全体の6割を占める約550件で、その内、ARCHICADに関する記事は約400件と割合が高い。
 
シェルパでのモデル作成フローは、モデルから得られる成果の「目的・目標」設定から始まり、
① 「手法」を確認し、
② 「設定・テンプレート」を準備し、
③ 「作図ノウハウ」を活用し、
④ 「モデルチェック」を行い、
⑤ 「成果物」の利活用の幅を広げる、
という流れである。
 
ARCHICADに関するブログ記事の閲覧数を、このカテゴリ分けで分析してみると、グラフのような結果となった。
 
記事の中で全体の51%を占めるのが、読者が高い興味を示す、「③作図ノウハウ」である。一番時間のかかるモデル作成段階で、ARCHICADの機能をうまく使って効率よくモデル作成したい、という思いの表れだろう。
 
続いて2 6%を占めるのが、「① 手法」であった。ARCHICADでどのようなモデル活用手法があるのか、という記事も高い興味を示している。
 



 
記事の内容は、シェルパ社内での改善提案活動資料の内容も多く掲載している。この改善提案活動は、社員全員が毎月最低1件、日常業務で知り得た業務改善項目を提案資料として作成し、毎月の社内会議で社員全員によって評価する、という取り組みである。これは約10年前から続けている建築技術ナレッジを蓄積する仕組みの一つである。改善提案シートは2000枚以上を蓄積しており、新たなプロジェクトが開始する際に事前検討資料として活用している。
 



 
シェルパでは、建築技術ナレッジをBIMと結びつけて、蓄積・管理・分析・評価していくという取り組みも行っている。具体的には始めの「目的・目標」設定段階において分析・評価された建築技術ナレッジをモデル作成段階で反映し、また成果物のモデルにナレッジを蓄積していき、PDCAサイクルを回し続ける取り組みである。
 
次ページからは、各カテゴリの中で人気が高い記事と、新たにシェルパで取り組んでいるこの活用方法について紹介していく。また、シェルパは建築技術ナレッジのマネジメントに力を入れていき、BIMによるフロントローディング力向上に邁進していく所存である
【シェルパブログ:http://sherpa-net.blogspot.jp/
 



 

特定天井を検討する

特定天井は、建築の天井補強材が密集して設備部材との干渉が多数発生する。この事例は、モデルのやり取りだけで建築部材と設備部材との干渉確認を行った、というものである。
 



 
ポイントとしては、まず建築部材の吊ボルト、野縁受材、斜め補強材を実際の施工の決まり通りにモデル入力する。すると建築構造材との干渉がないかがモデルを見て確認できる。さらにSolibri Model Checkerで自動検出すると干渉箇所が検出できる。
 



 
建築部材同士の干渉を回避したら、設備業者へこのモデルのIFC データを渡して配管モデルと統合してもらうことで、瞬時に干渉箇所の確認が可能だ。建築と設備での干渉確認をモデルで検討・やり取りをするだけで、2D 平面図や断面図で伝えることに比べると、建築と設備の調整をとても早く確実に行うことができる。
 



 
近年の大地震以来、天井の耐震化が厳しくなり、建築と設備の調整箇所はさらに増える傾向にある。建築と設備それぞれが、各専門部分のモデルを正確に作成し、そのモデルを統合することで効率の良い調整が可能となる。Solibri Model Checkerを用いた干渉チェックを行うことで、より確実に建築と設備の整合を図ることが可能となった。
 
 

材料倉庫、スタートモデル

シェルパでは、モデリング効率化のために「材料倉庫」と社内で呼ばれているテンプレートを用意している。
 



 



 
この「材料倉庫」とは、モデリングの際に必要であると思われる部品が、種類ごと、情報ごとにあらかじめ設定されて倉庫のように揃えられているテンプレートファイルである。例えば扉であれば、「防火扉」や「遮音扉」の開き勝手の種類ごとに揃えておく、性能ごとに色分けする、といった具合にモデルの目的に応じて用意している。
 
材料倉庫の種類はこの内外装モデル以外に、仮設工事部品、外構工事部品などのテンプレートファイルを用意しており、モデル活用の評価を元に中身を随時追加・更新している。
 
またBIM マネージャーがプロジェクトで必要な部品をこの「材料倉庫」からピックアップし、基本部分を組み立てた「スタートモデル」を作成する。この「スタートモデル」から作図者がモデリングすることで、統一したルールで早く間違いが少ないモデルが出来上がる。この方法でモデル作成すると、同じ品質のBIM モデルが完成するため、BIM モデルの扱いがしやすくなり、条件設定を変えることなく情報を引き出してのモデルチェックや、建物の不整合箇所の発見、概算数量出し、などの活用が可能となる。
 



 

モルフツールでモデリング

掘削法面のモデルを作成する場合、1カ所程度であれば、メッシュにポイントを作成し、ポイントのレベルを1 カ所ずつ変えていく作業をするであろう。しかし、ある程度の規模の建物になるとこの方法では気が遠くなるほど手間がかかる。
 
シェルパでは、基礎躯体モデルを利用し、モルフツールを使うことで効率を高めたモデル作成方法を取り入れている。
 



 
この作成方法のポイントは、躯体モデルからマジックワンドで根切り底をモルフで作成する、という方法である。
モルフツールとマジックワンドを組み合わせることで簡単に面を作成でき、根切り底モデルを効率よく作成することが可能である。



また、法面の作成は、あらかじめ角度を付けた壁をマジックワンドで配置することで効率を高めている。掘削法面モデルは、根切り底モルフと法面の壁を合わせて地盤モデルから減算をして完成する。
 



 
モルフツールは、いろいろな使い方ができる優れたツールである。シェルパブログでもモルフに関する記事が多数掲載されている。
 
シェルパブログ「2014/6/12【モルフの使い方のご提案】」では仕上げツールで作成されるオブジェクトの代わりにモルフを使用し、「2014/4/11【モルフの体積を一覧表に表示する】」ではモルフから数量を算出する手法を紹介している。
 
この他にもモデリングツールとして複雑な形状の作成や、展開図を張り付ける際の編集・加工手段として使用するなど使い方は多様である。
 
 

条件セットの活用

No.2 で紹介した「材料倉庫」や「スタートモデル」のテンプレートファイルに、「検索と条件」で条件セットを作成しておくとモデルチェックが楽にできる。
 



 
この記事の例では、「病院の各用途別の部屋に必要な扉の幅が確保されているか」のチェックをしている。テンプレートファイルには、各種属性を与えておいた部品を用意してあるのでモデル作成も容易になり、同時に検索セットも用意しておけばモデル作成者もチェックをしながら作業を進めることができる。
 
この条件セットは、複雑な条件を作成できない代わりに、「+」と「-」をうまく使うことでいろいろな検索選択をすることができる。例えば「防火区画壁に防火戸が配置されているか」のチェックを行うとする。防火区画壁を条件セットで選択した後、そのまま防火戸の条件セットで「+」をクリックすると、防火区画壁と防火戸のみが選択された状態となり、モデル入力ミスがないかのチェックが可能となる。
 



 

天井インサート割付図を書く

この事例は、ARCHICADから2D施工図の切り出しを行った事例である。ポイントは2D施工図を切出していることもさることながら、作図された図面を用いて設備配管等との調整を行ったのではなく、調整された建築と設備の統合モデルから、成果物として図面を切出しているところである。
 
設備業者によりT-fasで作成された設備配管モデルを、建築モデルを作成しているARCHICADへ統合し、SolibriModel Checkerを使用して干渉のチェックを行っており、調整が必要な箇所の提示や修正の指示もモデルのやり取りだけで済ませている。
 
図面化に関しては、モデルの平面に直接2D線、寸法等を追記し、図面化する手法を採っている。
 
BIMソフトウェアは2D平面図の詳細表現が苦手だとされているが、目的を明確にし、必要な箇所だけモデルからの切出しを行い、不足分を2D作図機能で補うことで、天井インサート割付図の作図を、ARCHICADだけで完結させている。
 



 
また、図面作成においてシェルパブログ「2012/4/23【お気に入りの部品を作っちゃおう】」や、「2012/8/20『2Dオブジェクトを作ってみよう』」の記事のように、部品を揃えておくことで、より図面作成の効率化となる。
 



 

リンクオブジェクト(情報オブジェクト)

シェルパでは、GDL オブジェクトで、ファイルやフォルダ、URL へリンクする部品(変更BOX)を作成した。いわゆる、ハイパーリンク機能である。他のソフトではこの機能が付いたものもあるが、ARCHICADでもGDL オブジェクトでこの機能をツールとすることが出来る。作成手順は以下の通りである。
 
1:「ファイル」>「ライブラリとオブジェクト」>「新規オブジェクト」
2:「インターフェーススクリプト」に以下を記述
 



 
3:「3Dスクリプト」に以下を記述
 



 
4:「2Dスクリプト」に以下を記述
 



 
以上、名前を付けて保存して完成。
設定画面を見てみると、下図のようにボタンがあり、クリックするとURL が開く。
 



 
フォルダやファイルのパスを指定すれば、フォルダやファイルが開く。
 
シェルパでは、この部品を利用して変更履歴の蓄積などを行っている。ただ蓄積するのではなく、この変更履歴を項目別(例:工種別)に分類し、どの項目でどのような理由でどのような変更が多く発生しているかを分析する。分析の結果から、次に携わる同じ用途や同じ構造の建物の変更予測を行い、早期に問題を解決していく、という活用をしている。
 
 


 



 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2016
特集2「海外のBIM動向&BIM実践」
建設ITガイド 2016
 
 

最終更新日:2016-11-07

 

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