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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 創立70周年を迎えて 積算資料70年の歩み

 

経済調査会の設立と「物価版」の発刊

終戦直後の日本においては,極度の物不足の中で公定価格は有名無実化し,物価の高騰は必然でした。随所で半ば公然と闇商談が繰り広げられていましたが,そうした闇商談においても,世の中には相場的な「取引価格」というものが存在していました。
 
経済安定本部の創設に遅れること1カ月後の昭和21(1946)年9月,この闇商談や自由市場における取引価格の実態を調査しようと,わが国初めての価格調査機関「東京経済調査会」が東京赤坂一ツ木町で設立されました。そして,この闇商談や自由市場における取引価格の調査結果を手書き・B5判6頁の謄写版刷りレポートとしてまとめたものが,同年9月9日に発刊された経済調査報告書・週刊『物価版』です。
 
『物価版』創刊号には,東京地域の市況解説と主要商品の価格情報が掲載され,市況解説には経済概況のほか米相場を中心とした解説記事が250字ほどでまとめられました。
 

昭和21年9月9日発行の「物価版」創刊号




 
 
価格情報としては,米,大豆,卵に代表される「食糧および嗜好品」をはじめ,洋服地,綿布等の「衣料」,自転車,ラジオ,計算器等の「文化物資」,木材,釘,カスガイ等の「建築材料」,モンサント,サッカリン等の「医薬品」,薪,石鹸,ローソク等の「燃料および雑品」など,合わせて50品目98規格の市場価格が掲載されました。
 
 

「積算資料」の誕生

一方,『物価版』の創刊から2年が経過しようとしていた昭和23年,東京経済調査会は『積算資料』の前身である『労働賃金版』を新たに発刊しました。
 
『労働賃金版』は,いわば『物価版』の姉妹誌であり,生活の安定を求める労働運動や大衆運動が高まる中で労働経済の動向に着目し,その調査結果を出版物にまとめたものでした。内容は,海外や国内の労働問題,賃金争議,業種別労働協約等に関する調査結果をまとめた「労働問題」と生計費や業種別実質賃金,新興商社の給与状況,一般職種別労務者賃金等に関する調査結果をまとめた「賃金問題」で構成され,昭和23年5月20日に第1号が発刊されました。
 
この『労働賃金版』の内容が,後に労務関係の情報誌としてより多彩な内容の『労働経済版』(昭和26年11月創刊)へと引き継がれ,さらに昭和29年2月の『積算資料』創刊へと引き継がれていきます。
 

「積算資料」昭和29年2月号




 
 
当時,こうした東京経済調査会の活動および発刊された調査成果は,官公庁や民間企業で広く参考とされたばかりでなく,やがてGHQ経済科学局に認められることとなりました。昭和24年9月,『物価版』と『労働賃金版』は正式にGHQに採用されました。
 

「経済調査報告書・労働賃金版」創刊号




 
 
また,GHQ経済科学局からは,別途,各種の調査が東京経済調査会に依頼されるようになりました。こうして東京経済調査会は,急転する社会情勢の中で,さらに大きな発展を求められるようになり,昭和26年6月,経済安定本部を主務官庁とする公益法人へと改組され,ここに「財団法人経済調査会」が誕生します。
 
財団法人経済調査会設立時の「寄附行為」をみると,目的の項には,①円滑なる経済活動の推進と復興を通じ,我が国の自立態勢確立に寄与する,②主要都市における重要物資の自由市場価格の調査研究─と記されており,当時の日本の状況(=占領と再建の時代)が端的に映し出されています。当時,当会の組織は,東京本部のほか札幌,仙台,名古屋,大阪,広島,福岡に支部が置かれ,また,横浜,金沢,熊本には事務所が配置され,主要都市を結んだ全国組織がすでに完成されていました。調査事業面では,経済安定本部から週刊卸売物価指数作成のための基礎調査を受託し,この調査結果を基に編集された週刊『物価動向』の頒布も開始されました。
 
また,当会の調査資料は,昭和27年1月からは会計検査院の検査参考資料としても採用されるようになり,一層その重要性を増していきます。会計検査院からは調査も別に受託するようになり,当会の存在は,次第に中央・地方の諸官庁から民間企業,業界団体へと広く認知されるようになっていきました。
 
そして,戦後の復興が順調に進展し,産業基盤の整備や国土開発の必要性がますます高まっていくと,官公庁や建設業界は,公共事業費等の算定のために,さらに広範でかつ詳細な資料を求めるようになりました。こうしたニーズに応えるために,月刊化されていた『労働経済版』に土木・建築工事の積算に関連する情報が加えられ,新たな価格情報誌として誕生したのが月刊『積算資料』です。『積算資料』の創刊は昭和29年2月のことで,①労働経済資料②労務費算定資料③用度・営繕費算定資料④土木建築積算資料─からなる“積算のための総合情報誌”と銘打って刊行されました。創刊号の体裁はB5判・128頁で掲載内容は次のようなものでした。
 



 
 

「積算資料」の改善と刷新

しかし,『積算資料』がそのタイトルにふさわしく,建設工事の予定価格算定のための必携資料として現在のように世の中に定着していくまでには,その後,不断の刷新を経た永い年月を必要としました。
 
例えば,昭和39年1月には,それまでB5判であった判型がA4判へと変更され,大型化とともに掲載品目の増加や配列の改善,調査地域の拡大等が図られました。この判型は,その後,昭和59年6月号まで20年間続き,同年7月号から再びB5判に戻って現在に至ります。
 
このほか,号外や臨時増刊号の発刊,専門家を交えた掲載内容の見直し,速報版の発行や姉妹誌の統廃合など,繰り返された『積算資料』の改善や刷新は数え切れません。昭和60年8月に当会が経済企画庁および建設省(平成13年に国土交通省に再編)の共管法人として認可されるまでに行った改善や刷新のうち,主なものを拾ってみてもおおむね次のようになります。
 



 
 

情報化社会への対応と提供情報の充実

当会が経済企画庁および建設省の共管法人として新たなスタートを切った昭和60年頃までに,『積算資料』をはじめとする各種の価格情報誌は,公共工事の予定価格に関わる積算実務の必携資料として世の中に定着していきました。昭和60年頃からわが国で情報化投資が急成長する中,昭和60年4月にわが国初の磁気媒体による材料単価資料『積算資料フロッピー版』(電気設備,機械設備編)の提供を開始しました。
 
昭和62年4月に建設省が直轄事業の工事積算を統一の土木工事積算システムに統合する頃になると,建設工事費の積算分野にも情報化の波が急速に押し寄せます。『積算資料』等に掲載されている価格データ等も従来の紙媒体から磁気媒体に入力して毎月提供する方式に転換されていきました。
 
また,平成になると情報化はさらに広がりをみせましたが,バブルが崩壊すると,公共工事の設計・積算分野においては,これに加えて標準化や合理化さらにはコスト縮減等が重要な課題となりました。
 
平成3年4月には,建設省が新土木工事積算大系の構築に着手し,また市場単価方式の導入が検討され始めます。『積算資料』においても,建設省の本施行に合わせて,平成5年4月号から施行4工種(鉄筋工,区画線工,ガードレール設置工,インターロッキングブロック工)と試行7工種(法面工,擁壁工,道路植栽工,橋梁塗装工,道路標識設置工,コンクリート工,橋梁用伸縮継手設置工)の土木工事市場単価の掲載を始めました。この市場単価に関する情報提供は,後に対象工事等の拡大に伴い平成9年4月に発刊した季刊『土木施工単価』へと引き継がれていきます。
 
当会では,平成8年12月に本部内のネットワーク(LAN)を構築し,翌年7月には本・支部間のネットワーク(WAN)を完成させ,高度情報化対応の情報基盤の整備を進めました。こうした内部情報基盤の整備により,平成11年3月から『積算資料』等に掲載されている価格情報と関連する品目・ブランド別メーカー等の検索が可能な「建設資材データベース」のインターネットによる情報提供を開始しました。さらに平成12年4月には,「建設資材データベース」の検索機能等の利便性を高めた建設業界向けポータルサイト「けんせつPlaza」の運用を開始し,『積算資料』等の購読会員を中心にその活用と普及を図りました。 
 
平成24年7月には,『積算資料』の最新価格情報を迅速に提供することを目的に,インターネットを利用した『積算資料電子版』の提供を開始しました。これは『積算資料』の掲載品目に約7,000規格の資材価格(実勢調査価格)を追加し,従来の誌面の大幅な拡大を行ったもので,同時にこの追加資材は別途『積算資料別冊(PDF版)』としても提供を開始しました。
 



 
 
国土交通省では,平成16年12月より試行してきた「ユニットプライス型積算方式」を廃止し,平成24年10月より「施工パッケージ型積算方式」の試行を開始することとなりましたが,当会では同積算方式の調査研究活動を積極的に行い,平成24年4月にオフィシャルホームページに同積算方式専用のページを開設し,積算に必要となる基準年月の東京単価を積算資料データベースから抽出し掲載するなど,新たな積算方式の導入支援にも取り組んでいます。
 
近年の成熟した情報化社会の到来により,『積算資料』等の価格情報を従来の紙媒体のみで提供するのではなく,『積算資料電子版』をはじめ,インターネットを活用した新たな情報サービスとして提供することが可能となり,提供情報は質・量ともに飛躍的に広がっていきました。
 
 

さらに信頼される「積算資料」へ

平成に入って相次いで生じた公共工事の発注をめぐる問題や事件により,公共事業の執行について透明性や客観性,妥当性の視点からの抜本的な見直しを迫られることになりました。当会の調査活動に対しても,今まで以上に調査の透明性確保や客観性,妥当性の向上が強く求められ,調査手法の改善や審査体制の強化が必要となりました。
 
このため,当会は,平成6年4月に調査結果を審査する部門として企画審査部を新設し,併せて,外部有識者で構成し,四半期ごとに定期刊行物の掲載価格について価格調査基準,調査実施状況,調査結果を総合的に審査する「審査委員会」を設置しました。また,平成13年3月には第三者による事前審査を毎月実施するため,「審査委員会データ審査部会」を追加設置しました。これらの委員会は,平成15年10月に新たに「価格調査評価監視委員会」と「価格審査委員会」に改められました。平成28年7月時点で「価格調査評価監視委員会」は通算52回開催,「価格審査委員会」は通算153回開催され,自主調査,受託調査の資機材価格や工事費全般について,妥当性,透明性を検証しながら調査結果の品質向上を図ってきました。なお,委員会における審議結果は,その都度,『積算資料』やオフィシャルホームページで公表しています。
 
また,当会は,平成11年9月に価格調査機関としてわが国初のISO9001の認証を取得しました。調査プロセスの統一化や標準化を図り,調査基準類と調査マニュアルの整備を充実させ,各調査段階で必要な内部チェックを強化することにより,『積算資料』等に掲載する価格情報は,客観性や妥当性の高い情報として提供してきました。
 
さらに,当会では,技術士,RCCM,土木技術者が多数在籍するなど技術者資格の取得をはじめ,継続的な教育訓練を行いながら調査職員の知識や技術力向上の強化に取り組んでいます。
 



 
 
昭和29年2月に創刊された『積算資料』は平成28年9月号で通巻1341号を数え,『労働賃金版』から始まるその変遷は,まさに経済調査会の歴史そのものであると言えます。昨今,改正公共工事品質確保促進法(改正品確法)の運用指針に基づく施策が具体的にすすめられており,当会は創立70周年という節目の時期を迎えて,公共工事の適正な執行に資する新たな使命を果たすことが求められています。
 
『積算資料』の変遷をたどり直し,経済調査会の歴史を振り返って,価格調査機関としてこれまで何を成し遂げてきたのか,今後何が求められているのかを問い直すことを通じて,当会は価格調査機関として社会的な評価を一層高めてまいりたいと強く念じているところです。
 
 
 
【出典】


積算資料2016年09月号



 

 

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