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法律制定の背景・必要性

わが国はエネルギー源の中心となっている化石燃料に乏しく,その大宗を海外からの輸入に頼る根本的脆弱性を抱えており,国民生活と産業活動の血脈となるエネルギーの安定的確保は常に大きな課題であり続けている(日本の一次エネルギー自給率は2012年で6.0%でありOECD加盟国34カ国中33位)。
 
特に東日本大震災以降,電力の供給力が低下する中で,エネルギーの需給構造の早期安定化が不可欠となっており,エネルギーの安定的供給構造の確立とともに徹底した省エネルギー社会の実現,再生可能エネルギーの導入加速化,燃料電池・蓄電池技術などによる分散型エネルギーシステムの普及拡大などを推進することが強く求められている。
 
一般に民生部門(業務・家庭部門)として分類される建築物で消費されるエネルギー量は,わが国の最終エネルギー消費の約3分の1を占め,他分野に比べ過去からの増加が顕著であることから,当該分野における省エネルギー化を図ることが,省エネルギー社会の確立,ひいては安定的なエネルギー需給構造を構築していく上での喫緊の課題となっている(図− 1)。
 

【図−1 建築物部門(住宅・非住宅)におけるエネルギー消費】




 
 
住宅・建築物における省エネルギー対策の底上げを図るためには,住宅・建築物の整備に際して省エネ性能の確保を求めることが特に有効であることから,2014年4月に閣議決定された新たなエネルギー基本計画においては「規制の必要性や程度,バランス等を十分に勘案しながら,2020年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネルギー基準の適合を義務化する」こととされた。
 
なお,IEA(国際エネルギー機関)によれば,イギリス,イタリア,韓国などOECD加盟国34カ国中28カ国ですでに建築許可などの際に省エネ基準適合義務を措置しており,措置していないのは日本,エストニア,スロベニア,アイスランド,チリ,イスラエルの6カ国となっている。
 
こうした状況から,2014年10月に社会資本整備審議会に対して「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について」の諮問がなされ,同審議会建築分科会および同分科会建築環境部会における審議とパブリックコメントを経て,昨年1月に社会資本整備審議会第一次答申がとりまとめられた※ 1)。
 
当該答申等を踏まえて政府として検討した結果,昨年3 月24日に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律案」(建築物省エネ法)が閣議決定され,衆・参議院の国会審議を経て,昨年7月8日に公布された※ 2)。
 


 
※ 1) 社会資本整備審議会「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について(第一次答申)」
国土交通省HP(http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000571.html)参照。
※ 2) 「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律について」
国土交通省HP(http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_house_tk4_000103.html)参照。
 
 

法律の概要

本法律においては,建築物の規模等に応じた規制的措置に加え,建築主等の自発的な省エネ性能の向上を促す誘導措置を一体的に講じることで,わが国における建築物全体のエネルギー消費性能を向上させていくこととしている(図− 2)。
 

【図−2 建築物省エネ法の概要】




 
 
本法律において,エネルギー消費性能(省エネ性能)が対象とするのは,建築物に設ける空気調和設備等である(政令:現行省エネ法同様に,空気調和設備,換気設備,照明設備,給湯設備,昇降機)。なお,規制的措置のうち,届出制度・住宅トップランナー制度については,省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律(昭和54年法律第49号))から本法律に移行するものである(同法の措置と本法律における措置との比較は図− 3を参照)。
 

【図−3 省エネ法と建築物省エネ法の比較概要(新築に係る措置)】




 
 
本法律に基づく各措置の概要は以下のとおりであるが,「規制的措置」は法律の公布の日から2年以内に施行することとしており,「誘導措置」は2016 年4 月1日より施行しているところである。
 

◇規制的措置

○基準適合義務・適合性判定制度
特定建築物(一定規模(政令:2,000m2を予定)以上の非住宅建築物)は,単体でのエネルギー消費量が大きいことなどから,新築時等の建築物エネルギー消費性能基準(省エネ基準)への適合義務を課すこととし,基準への適合を担保するため,所管行政庁または登録建築物エネルギー消費性能判定機関による適合性判定制度を創設し,基準に適合しなければ建築確認がおりないこと(着工禁止)とする。なお,住宅と非住宅の複合建築物については,非住宅部分のみ適合義務が課され,適合性判定が必要となる。
 
具体的に対象となる建築行為は,?特定建築物の新築?特定建築物の一定規模以上の非住宅部分の増改築(政令:300m2を予定)?増築後に特定建築物となる一定規模以上の非住宅部分の増築(政令:300m2を予定)である。なお,適合義務等の施行(公布後2年以内施行)の際現に存する建築物に対して行う非住宅部分の増改築のうち「当該増改築部分の床面積」の「増改築後の特定建築物の非住宅部分の延べ面積」に対する割合が政令で定める一定の範囲内であるものについては,当分の間,基準適合義務・適合性判定の適用対象外とし,届出制度の対象となる(図− 4)。
 

【図−4 適合義務対象,届出義務対象】




 
 
基準への適合性の審査にあたっては,省エネ計算の過程のチェックなどを行う必要がある。そのため,省エネ計算に関する専門的な知見を有する所管行政庁または登録建築物エネルギー消費性能判定機関が設計図書及び省エネ計算内容等のチェックを通じた省エネ基準に適合するかどうかの適合性判定を行い,その結果を受けて建築主事等が最終的な判断を行う制度を創設することにより,適確かつ迅速な審査の実施を図ろうとするものである。
 
専門的な知見を有する適合性判定員を一定数以上有すること,建築物関連事業者に支配されていないことなどの公正性要件等の登録基準に合致する機関は,申請により国土交通大臣の登録を受けることにより,登録建築物エネルギー消費性能判定機関となる。
 
なお,基準適合義務や届出は,法律の公布の日から2年以内に施行される予定であり,当該規制措置の適用は,確認申請が規制措置施行日以降に行われるものが対象として取り扱われることとなる。当初の確認申請が規制措置施行日より前に行われたものについては,施行日後に計画変更の確認申請が行われた場合であっても,当該建築物は規制措置の対象外となる。
 
また,現行省エネ法に基づく届出が規制措置施行日より前に行われたものについては,施行日後に確認申請が行われた場合又は施行日後に省エネ計画に係る変更を行った場合であっても,規制措置の対象外とする予定である。図− 5に施行日に係る適用関係を示す。
 

【図−5 施行日に係る適用関係】




 
 
○届出制度
特定建築物を除く一定規模(政令:300m2を予定)以上の建築物の新築,増改築については,現行省エネ法と同様に,省エネ性能を確保するための届出規制を講じることとする。
 
具体的には,省エネ性能を確保するため,建築主に対し,工事着手の21日前までに,所管行政庁に対する計画の届出を義務づけ,所管行政庁は,届出のあった計画が省エネ基準に適合せず,建築物の省エネ性能の確保のため必要があると認めるときは,計画変更その他の措置を行うべきことの指示ができることとし,正当な理由がなく当該指示に係る措置をとらなかったときは,その指示に係る措置命令ができることとする。
 
なお,現行省エネ法では「判断の基準となるべき事項に照らして著しく不十分であると認めるとき」に所管行政庁は指示を行うことができるとしていたが,本法律では「基準に適合せず必要があると認めるとき」に指示を行うことができることとしている。
 
また,中規模建築物(政令:300 〜 2,000m2を予定)については,省エネ法では所管行政庁による「勧告」であったものを,本法律では「指示・命令等」に引き上げることとしており,こうした措置により特定建築物以外の建築物の適合率の向上を図ることとしている。
 
一方で,現行省エネ法では必要となる「大規模建築物に係る修繕・模様替や設備の設置・改修に係る届出」や届出事項に関する維持保全状況に関する報告を3年に一度行う「定期報告制度」については,事務手続きの合理化等の観点から廃止することとしている(2017年3月末廃止予定)。
 
○特殊の構造または設備を用いる建築物の大臣認定制度
国土交通大臣は,建築主の申請により,特殊の構造または設備を用いて建築が行われる建築物が省エネ基準に適合する建築物と,同等以上のエネルギー消費性能を有するものである旨の認定をすることができる制度を創設する。適合性判定が必要な建築物等について,大臣認定を受けた場合には,適合判定通知書の交付を受けたものとみなすなどの特例が適用される。
 
○住宅トップランナー制度
省エネ法と同様に,小規模建築物については,建築主個人ではなく,戸建建売住宅を新築する住宅事業建築主を規制の対象とすることとする。
 
具体的には,最も優れた住宅事業建築主が採用している性能に相当する省エネ性能(住宅トップランナー基準)を設定し,一定数(政令:150戸を予定)以上供給する住宅事業建築主に対して
は,当該基準に照らして,必要に応じ,国土交通大臣が勧告,公表および命令を行うことができることとする。
 

◇誘導的措置

○容積率特例
建築主等の自発的な省エネ性能の向上を促進していくためには,省エネ基準を超える「誘導基準」に適合するものに一定の優遇を付与する等の誘導措置を講じることが効果的であると考えられる。しかしながら,より高い省エネ性能を達成するためには,通常より大型の設備(コージェネレーション設備など)の設置などが必要となるため,これらの設備のための床面積を確保することの困難性が障壁となるケースも多い。このため「誘導基準」に適合する等の認定を受けた建築物について,容積率の特例を適用するものである(図− 6)。
 

【図−6 エネルギー消費性能向上計画の認定等】




 
 
認定対象となる建築行為は,非住宅又は住宅の新築,増改築,修繕・模様替,空気調和設備等の設置・改修であり規模の制約はない。
 
具体的には,認定を受けた建築物の床面積のうち,省エネ性能の向上を図るために必要な設備等を設置することにより,通常の建築物の床面積を超えることとなる床面積については,容積率の算定の基礎となる床面積に算入しないこととする。
 
なお,誘導基準に適合する旨の認定を受けた建築物については,適合性判定が必要なものは適合判定通知書の交付を受けたものとみなし,届出が必要なものは届出をしたものとみなす特例を適用する。
 
○表示制度
省エネ性能の高い建築物の価値が市場で適切に評価され,選別が行われることになれば,建築物の所有者の性能向上のインセンティブが働き,省エネ化が促進されると考えられる。一方で,現状では,消費者がその性能について正確な情報を知ることが難しい状況にある。本法律では,建築物の省エネ性能を消費者が簡便かつ正確に把握できるよう,建築物の所有者は当該建築物が省エネ基準に適合することについて,行政庁の認定を受けた場合にその旨を広告などで表示することができる仕組みを創設した(紛らわしい表示は禁止される)(図− 7)。
 

【図−7 第36条の行政庁認定表示制度】




 
 
また,本法律において,販売・賃貸事業者に対し,エネルギー消費性能の表示に努めることを規定しており,当該規定に基づく建築物の省エネ性能表示のガイドラインとして「建築物のエネルギー消費性能の表示に関する指針」(平成28年国土交通省告示第489号)を定めている。当該ガイドラインにおいては, 具体的な表示事項や表示方法等について定めている(図− 8)。
 

【図−8 省エネ性能表示のガイドライン(第三者認証の例)】




 
 
なお,これらは非住宅及び住宅を対象にした措置であり,建築物の規模の制約はない。
 
建築物の省エネ性能表示のガイドラインに基づく第三者認証の例として,BELS(ベルス:Building-Housing Energy-efficiency LabelingSystem(建築物省エネルギー性能表示制度))が挙げられる。この制度は,(一社)住宅性能評価・表示協会が運用する新築・既存の建築物において,第三者評価機関が省エネルギー性能を評価し認証する制度であり,性能に応じて5段階で「★」表示がされる。平成28年4月より評価対象に住宅が追加されており,住宅・非住宅,新築・既存,規模を問わず全建物で評価を受けることが可能である。
 
国土交通省においては,BELS等の表示制度の普及を図る観点から,BELSの申請や表示などに関して,大きく二つの支援を実施している。
 
一つ目は,BELS申請手数料を減免するBELS実施機関に対して国が助成を行うもので,平成27年度より実施している(図− 9)。
 

【図−9 BELS制度概要】




 
 
二つ目は,住宅を含む300m2以上の既存建築物を対象とし,省エネ診断や表示に係る費用を支援するものであり,本年度より実施している。住宅を含む延べ面積300m2以上の既存建築物が対象となる。省エネ診断については,エネルギー使用量の実績値ではなく,設計図書を基にした一次エネルギー消費量等の計算費用が対象とし,表示については,建築物の省エネ性能表示のガイドラインに基づく第三者認証を受けることが条件となる。一次エネルギー消費量等の計算に要する費用と,表示プレートの設置費用等に係る費用の3分の1が補助対象となる。
 
さらに省エネ性能表示の波及効果が高い取り組みについては,全額を補助することとしている。「波及効果の高い取り組み」としては,広告チラシやフロアマップへの表示ラベルの掲載,「エコストアガイドマップ」の作成や「エコストア探検ツアー」といった表示ツールと企画がセットになったもの等を想定している。
 
本法律に基づく信頼性の高い表示制度の創設および建築物の販売・賃貸事業者による省エネ性能の表示努力義務規定により,市場での選別を通じた,建築物の省エネ性能の向上が図られることが期待される。
 

◇建築物省エネ法における基準

省エネ基準,誘導基準およびトップランナー基準における基準については以下のとおり(図−10)。
 

【図−10 建築物省エネ法における基準】




 
 
○適用する基準
社会資本整備審議会における答申を踏まえ,適合義務等の非住宅の規制に係る省エネ基準は,一次エネルギー消費量基準とし,容積率特例等の誘導措置に係る誘導基準は,一次エネルギー消費量基準および外皮基準とする。
 
住宅については,省エネ基準および誘導基準のいずれも,一次エネルギー消費量基準および外皮基準とし,共同住宅の一次エネルギー消費量基準による規制については,全住戸適合しなくとも,住棟全体で適合していればよいものとする。
 
トップランナー基準については,施行後から2020 年4 月1日まで一次エネルギー消費量基準を求め,以降は一次エネルギー消費量基準および外皮基準を求める。一次エネルギー消費量基準については,現在H25基準(低炭素基準)および住宅事業建築主基準に基づく評価方法のいずれでも可としているが,新法施行以降,省エネ基準による評価方法に一本化する。
 
○基準の水準
非住宅,住宅ともに基準の水準におけるベースとなる省エネ基準については,H25基準の水準と同じとする。誘導基準については,外皮基準についてはH25基準と同じ水準とし,一次エネルギー消費量基準については,非住宅は省エネ基準よりも20%,住宅は10%削減する水準とする。
 
トップランナー基準については,外皮基準についてはH25基準と同水準とし,一次エネルギー消費量基準については2020年3月までは10% ,2020年4月以降は15%削減する水準とする。
 
また,既存建築物の増改築時の基準は,既存部分の対策が困難であり,新築同様の水準を求めた場合に逆に省エネを阻害しかねないことから,新築の基準より緩和された水準を設定する。
 
ただし,建築物省エネ法施行(2016 年4 月1 日)後に新築される建築物については,新築基準に適合していることを前提に,その後の増改築についても新築同様の水準を求めることとする。本法律の規制措置によって既存部分においても適切な省エネ措置が取られることを考慮し,新築同様の水準を設定している。
 
 

おわりに

これまで説明してきた建築物省エネ法に基づく各種制度と対象建築行為,適用基準等については,図− 11 のとおり。
 

【図−11 建築物省エネ法に基づく各種制度と対象建築行為,適用基準等の比較】




 
 
本法律は,2020年までの段階的適合義務化の第一歩となる法律である。まずは,法律の円滑な施行に向けて,申請側と審査側に対して適合性判定の手続きや基準等の周知を図る必要がある。また,大規模非住宅以外の建築物については,届出制度の的確な運用,表示制度の普及など本法律で講じられる各種措置に加え,税制優遇,補助金,融資等の支援策や設計・施工技術講習会等を一体的に講じることにより,適合率の向上を図ってまいりたい。
 
既存建築物についても,より省エネ性能の高い建築物が市場で適切に評価される環境の整備や各種支援策を講じること等により,わが国全体の建築物の省エネ性能の向上を図り,環境性能に優れた建築物のストック形成を図ることが重要である。
 
さらには,性能向上とあわせて「見える化」や各種エネルギーマネジメントの普及・定着など,エネルギーの使い方の工夫をあわせて進めることにより,建築物全体のエネルギー消費量の削減に取り組んでいく必要がある。
 
本法律の詳細については,国土交通省HP「建築物省エネ法のページ」(http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_house_tk4_000103.html)を参照していただきたい。
 
 

国土交通省 住宅局 住宅生産課 建築環境企画室

 
 
 
【出典】


建築施工単価2016秋号

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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