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1. はじめに

国土交通省水管理・国土保全局では,地域の人々がさまざまな観点から川と良好なつながりを築くことで,その地域ならではのまちの価値を高め,川を軸として地域のにぎわいをつくる「かわまちづくり」を支援しています。
 
「かわまちづくり」の推進のためには,川が本来有する多様な魅力をそれぞれの地域で見いだすこと,そして,川の中だけではなく,まちとのつながりの中でその魅力を活かすことが必要です。
 
本稿では,「かわまちづくり」を推進する際の基本的な考え方,活用できるプロジェクトや制度の概要等をご紹介します。
 
 

2. ミズベリング・プロジェクト

川には自然があり,歴史があり,そこに集う人々の心を安らげ,豊かにする魅力があります。わが国では,かつては川と人々の生活が密接に関わり,川そのものが周辺の街並みに融け合い,地域の顔としての空間を形成していました。例えば,江戸時代の浮世絵に描かれるように,川の中には舟が行き交い,周辺には人々が集い,川を軸に産業や芸術が生まれていました。川は地域にエネルギーを生み出す空間だったのです。
 
しかし,高度経済成長にともなう急激な都市化による河川の水質悪化の影響等から水辺は人々の生活から遠ざかり,街並みも水辺に背を向けるようになりました。これに対し,国土交通省では,「水辺の楽がっ校こう」や「かわまちづくり」支援制度等により人々が集う空間の整備および河川空間の利活用を推進してきたころですが,これらの主体者は,各地域の行政や川に関心の高い方々でした。
 
平成26 年3 月,「ミズベリング・プロジェクト」は,これまでまちの空間で日常的な生活や経済活動を営みながら,身近にある川をほとんど意識していなかった人々や民間企業に対し,川の外から改めて川の価値を見いだす機会を提供し,身近なニューフロンティアとして川を活かす取り組みとして,活動が始まりました(図− 1)。
 

【図−1 ミズベリング概念図】




 
 
活動開始から約2年間で,全国40箇所を超える地域でミズベリング地方会議が開催され,さまざまな業種の方々が集まりました。ミズベリング地方会議の参加者からは,「水辺が自由に使える場所だと知らなかった」という声を度々耳にします。そのため,多くのミズベリング地方会議は,まず,参加者に対し,「水辺は自由に使える場所である」こと,「水辺の活用に主体的に関わることができる」ということを伝えることからスタートします。その後,水辺活用のアイデアを出すワークショップにつながることが多いのですが,そこで提出されたいくつかのアイデアがすでに各地域で実現しています。
 
例えば,地域の若者が集まり開催された北海道でのミズベリング江別会議では,水辺にベンチと本棚を置く「水辺に本屋さん」や江別レンガで水辺にピザ窯を設置する「水辺でピザパーティー」などが実現しました。小さな取り組みではありますが,水辺の整備を行わなくても,アイデア次第で,そこにある水辺を居心地のよい空間に変えてしまうことができるのです。
 
また,岐阜県飛騨高山では,Uターンで地元に戻った若者が,ふるさとを流れる宮川の魅力に気づき,それを地域活性化につなげたいとミズベリング飛騨高山会議を開催しました。その際に発案された川床のアイデアは,ミズベリングにより河川管理者を巻き込むことにもつながり,約3カ月後の地域のイベントで実現しています。
 
このように,「ミズベリング」を通じて,多様な主体が相互に連携し,新たなソーシャルデザインが生み出されています。
 
さらに,今年3 月3日に開催したイベント「ミズベリングジャパン」(写真− 1)では,600人を超える方々にお集まりいただきました。
 

【写真−1 ミズベリングジャパンには600人を超える水辺関心層が集結】




 
 
その際の来場者の反応やその後のアクションを見ると,民間事業者をはじめ,これまで水辺とは関わりのない活動を行っていた方の中でも,水辺への関心と期待が高まり,徐々にではありますが,「他人事」ではなく,「自分事」として水辺を活用しようという機運が高まってきているのを感じます。
 
 

3. かわまちづくり支援制度

「かわまちづくり支援制度」は,川を活かした水辺空間整備事業として実施していた「ふるさとの川整備事業」や「桜づつみモデル事業」等を統合して平成21年に創設されました。その後も,毎年10件程度の新規登録を重ねて現在に至り,平成27年度末の登録数は157件となりました。
 
国土交通省では,本制度によりハード対策およびソフト対策の両面から水辺整備や利活用の支援を行っています。
 
かわまちづくり支援制度では,まず,市町村が中心となり,地元住民の皆さんや河川管理者と協力して協議会を立ち上げ,そこで議論した結果を踏まえ「かわまちづくり計画」を作成します。そしてその計画を,市町村が水管理・国土保全局長に申請し,登録がなされれば,計画書に基づいたハード・ソフト対策を河川管理者,市町村,地域住民等がそれぞれの役割分担のもと,連携して実施することとなります。
 
山形県長井市は,かつて舟運のまちとして栄え,今でも当時を思わせる建造物が街並みに残り,情緒あふれる景観を有しています。長井市では,かわまちづくり支援制度の活用により,この景観と市街地を流れる最上川を「フットパス」としてつなぐこととしました。この中で,河川管理者は階段護岸,低水護岸,管理用通路の整備を実施しました。さらに,地域においては,観光ボランティアと連携した観光案内,休憩施設や案内板の整備,NPOによるフットパスガイドマップの発行,市民協力による商屋跡やトイレの開放等を行っています(写真− 2)。
 

【写真−2 歴史的な観光資源を活かした取り組み(山形県長井市・最上川水系平野川)】




 
 
水辺とまちを空間的につなぐとともに,ガイド等の仕掛けにより観光客を誘導し,地域の観光振興が促進されています。
 
また,宮崎県延岡市の五ヶ瀬川では,毎年,伝統漁法の「鮎やな」が設置されます。その施設規模は日本最大級であり,現在でも年間2万人以上の観光客が訪れ,香ばしいアユの塩焼きなど,秋の風物詩の鮎づくし料理を楽しんでいます(写真− 3)。
 

【写真−3 鮎やなの食事処「かわまち交流館」(宮崎県延岡市・五ヶ瀬川水系五ヶ瀬川)】




 
 
平成24年度に,五ヶ瀬川地区は「かわまちづくり支援制度」に登録され,食を堪能するだけでなく,神楽など郷土芸能の披露や,近隣を周遊できる散策路の整備など,より幅広い関係者の連携が図られるようになりました。
 
このように,「かわまちづくり支援制度」を活用した地域活性化の取り組みが進み,各地域で一定の成果が得られてきたところですが,ミズベリングの展開等により,民間事業者による水辺活用の機運が高まってきたことを踏まえ,平成28 年2 月,「かわまちづくり支援制度」の要綱を改定しました。これにより,水辺の活用を発意した民間事業者も,地元市町村の協力や地域住民の方々のご理解を得た上で,「かわまちづくり計画」を策定する主体者となることが可能となりました(図− 2)。
 

【図−2 かわまちづくり支援制度の流れ】




 
 
さらに,この動きとも連動し,河川敷地占用許可準則の規制緩和も進みました。これまでは,民間事業者が河川空間を占用して営業活動を行う場合の許可期間は3年でした。これに対し,営業活動を行う事業者等としては,3年以内という短い期間では中長期的な事業の見通しが立てられない等の課題がありました。これを受け,本年6月,この許可期間の上限を10年に延長したところです。
 
河川敷地占用許可準則は,平成23年,規制緩和により民間事業者による営業を可能とする河川空間のオープン化の特例を設けて以来,平成28年5月現在で累計29件がその制度を活用しています(河川空間のオープン化の特例の活用実績数は図− 3参照)。
 

【図−3 河川空間のオープン化の特例の活用実績数】




 
 
占用許可期間の上限が10年に延長されたことにより,今後,民間事業者の水辺活用が進むことで,川を軸に地域の経済がさらに潤うことが期待されます。
 
一方で,これまでのかわまちづくり登録箇所にアンケートを行ったところ,全体の約4割の箇所が,かわまちづくり実施前後で「地域のにぎわいに変化が感じられない」と回答しました。全国的にみられる課題としては,「(維持管理等における)費用の不足」「キーパーソンの不足」「情報発信の不足」等が挙げられますが,かわまちづくりを地域のにぎわいにつなげるためには,利活用のための仕組みの形成がひとつのポイントになるかと思います。背後地の土地利用等にも左右されるのですが,特に都市部では,計画段階から民間事業者を巻き込むことが重要です。
 
また,基盤の整備や利活用空間の整備を行う際には,行きたくなる水辺空間の設計を行うことも重要となります。例えば,階段の傾斜,高さ,水際への侵入角度など,設計一つで利用者の印象や使い勝手が異なります。また,効率的な事業展開を考え,設計の際には,初期の段階からこの使いやすさを意識することが必要です。
 
これまで,ソフトにせよ,ハードにせよ,住民のニーズを踏まえてはいるものの「つくる」側に軸足が置かれていたため,整備された空間には,利活用や使いやすさという視点が十分ではなかったことが想定されます。
 
今後は,「利用者の視点」を重視した計画を策定し,設計や施工段階においてもその視点に軸を置くことが,整備後も使われる空間形成につながると考えます。
 
 

4. おわりに

全国の河川は,地域の経済活動を活性化するだけでなく,地域の方々の日々の暮らしに潤いをもたらす可能性を秘めています。人口減少という新たなフェーズを迎えるわが国において,いかに地域の特徴を活かし,また新たに価値を生み出していくかは重要な課題です。その中で,地域の宝である河川が担う役割は大変大きなものがあると認識しています。
 
国土交通省水管理・国土保全局は,下流は河口から上流は源流のある水源地域まで,今後も,水辺から地域を元気にしたいというアイデアの実現に向けた支援を行って参ります。
 
 

国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課

 
 
 
【出典】


土木施工単価2016秋号

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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