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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > CLTをめぐる情勢と普及促進の取組

 

1. はじめに

1-1 戦後造成された我が国の森林

国土の3分の2を占める森林(図−1)は,国土の保全,水源の涵養,生物多様性の保全,地球温暖化防止,木材の生産など様々な機能を発揮しています。
 



 
我が国の森林は,今でこそ緑豊かになっていますが,その多くは戦後復興や高度経済成長を支える木材を供給するために,苗木を1本1本植栽し,育成してきた先人の努力の結果によるものです。
 

1-2 本格的な利用期を迎えた人工林

その結果,これまでに1千万haを超える人工林が造成され,その蓄積は半世紀前の5倍以上となる50 億m3に達するなど,森林資源は非常に充実しました(図− 2)。
 



 
また,すでに人工林の過半が,一般的な主伐期である10齢級(46〜50年生)となり,このまま推移した場合,おおむね5年後の平成32年末には,その割合は約7割に達すると見込まれています(図− 3)。
 



 
我が国は,現在,この豊富な森林資源を積極的に利用すべき時期を迎えています。
 
 

2. 木材利用の意義

木材は,軽くて強い資材であることに加え,住宅資材として利用した場合,室内の温度や湿度変化を緩やかにする効果,香り成分によるリラクゼーション効果などがあり,我が国では昔から多く用いられてきました。
 
また,木材は再生可能な資源であり,住宅や家具等に利用することにより,その間は炭素を貯蔵する「第2の森林」としての役割を果たすほか,エネルギーを多く消費して製造される鋼材等の資材(図− 4)や化石燃料の代わりに利用すれば,二酸化炭素の排出が抑制されるので,地球温暖化防止に貢献します。
 



 
さらに,国産材を利用することは,その収益が林業生産活動に還元され,「植える→育てる→使う→植える」という森林資源の循環利用の確立を通じ,緑豊かな森林を将来にわたり維持することにつながるとともに,林業・木材産業の活性化を通じて,地方創生に貢献します。
 
 

3. 森林・林業をとりまく情勢変化と林業の成長産業化

我が国の森林・林業を取り巻く情勢は,大きく変化しつつあります。少子高齢化が急速に進展しており,総人口は平成22年をピークに減少局面に転じるなど,経済社会は大きな転換期を迎えています(図− 5)。
 



 
このため,地域の特性を活かした産業育成を通じた就業機会の創出など,「地方創生」が政府を挙げて取り組むべき喫緊の課題となっています。
 
このような中,豊富な森林を有する多くの地方にあっては,地域資源である森林資源を最大限活用することにより,林業・木材産業を安定的に成長発展させ,山村地域における就業機会の創出と所得水準の上昇をもたらす「林業の成長産業化」を実現することが極めて重要となっています。
 
 

4. 木材利用の現状と需要拡大の方向性

一方,我が国の木材需要量は,近年70百万m3台で推移する中,自給率は上昇傾向にあるものの30%台に留まっています(図− 6)。
 



 
また,これまで木材の主な需要先であった住宅の新規着工戸数は近年停滞しており,直近5年間の平均は90万戸となっています(図− 7)。
 



 
大手シンクタンクによれば,人口減少に伴い,住宅需要の伸びを見込むことは困難であるとして,
将来の住宅着工戸数を平成32(2020)年には70万戸台,平成37(2025)年には60万戸台になると予測しています。
 
このような状況の中,国産材の需要を拡大するには,①既存のパイの「取り分」を増やすか,②木材需要全体のパイを大きくするしかありません。①については,品質・性能の確かな国産材製品の安定供給体制の構築,②については,新たな木材需要の創出に向けた製品・技術の開発・普及の推進が不可欠です。
 
 

5. CLTの特徴と利点

5-1 CLT とは

CLT はCross Laminated Timber(クロス・ラミネイティッド・ティンバー)の略称で,ひき板を繊維方向が直交するように積層接着したパネルです。平成25(2013)年12月に制定されたJAS(日本農林規格)における正式名称は,「直交集成板」です(図− 8)。
 



 
CLTは,1990年代の中頃からオーストリアを中心として需要が伸びてきた,新しい木質構造用部材です。現在では,オーストリアだけではなく,ヨーロッパ各国で利用されているほか,カナダやアメリカでも工場生産がスタートするなど,急速に普及しています。欧米では,一般住宅を始め,6〜10階建ての集合住宅や商業施設など,様々な建物が建てられています(写真− 1)。2015年には,世界中で,およそ65万m3のCLTが生産されたとみられています。
 

写真−1 ミラノ 9階建て集合住宅




 
 
最近,国内でも工場整備が進められ,現在,厚さ36〜300mm程度,大きいものでは長さ12m,幅3mのCLTの原板を製造できるようになっています。
 

5-2 CLT の特徴

CLT は,
①建物の重量が軽くなり,基礎工事等の簡素化が可能
②型枠職人等熟練工への依存が少なく,工期の縮減が可能
③CLTパネル工法では,壁(面)で建物を支える構造のため,施工が容易で頑丈
等の特徴があります。
 
この他,木造軸組工法で中高層建築物を建てようとすると,構造計算に手間がかかる等の課題がありましたが,CLTは,それ自体が柱や梁として機能することから,設計上,比較的容易に建物としての強度の確保が可能です。
 
このように,CLTは,これまで木材があまり使われてこなかった中高層建築物や非住宅分野における活用が期待できる新たな木質部材であると言えます。
 

5-3 CLT の活用

CLTは,建物全体の構造材として使われる「CLTパネル工法」(CLTを水平力および鉛直力を負担する壁として設ける工法)だけではなく,木造の軸組や鉄筋コンクリート,鉄骨など他の材料や工法と組み合わせて,床や壁などで部分的に利用するなど,幅広い使い方ができます。
 
また,CLTを建築現場へ搬入する前に,あらかじめ工場で窓やドアなどの開口部の加工や接合部の穴あけ加工などを行うことにより,建築現場でスピーディーな施工が可能です。
 
 

6. CLT 活用促進の取組

平成28(2016)年の3月と4月に,CLT を用いた建築物の一般的な設計法等に関する告示が公布・施行されました。
 
林野庁では,これを受け,これまで木材があまり使われてこなかった中高層建築物や商業施設や事務所といった非住宅の分野で,CLTが実際の建築物に一層活用されるようにするため,
①実証的な建築物の建設の推進
②設計者や施工業者等向けの講習会の開催
③ CLT の安定供給体制の整備
といった環境づくりを国土交通省等と連携しながら推進しているところです。
 
①については,日本初のCLTパネル工法の建物である3階建て共同住宅(写真− 2)が平成26(2014)年に高知県大豊町に建てられて以降,これまでに約40の建築物が建築されています。用途は共同住宅のほか,庁舎,学校,福祉施設,ホテル,事務所,店舗,診療所など多岐にわたっています。
 

写真−2 高知おおとよ製材社員寮




 
 
②については,CLT建築物を設計・施工できる技術者を育成するため,告示解説書や実践的な設計・施工マニュアルを作成し,講習会を開催しています。
 
③については,本年4月に年間3万m3の製造能力を持つ効率量産工場が岡山県真庭市に完成するなど,本年10月1日現在におけるJAS認定工場は6工場となっています(宮城県,石川県,鳥取県,岡山県,宮崎県,鹿児島県)。
 
 

7. おわりに

これまで述べてきたように,CLTは新たな木材産業を創出する木質部材として,今後の需要の伸びが期待される資材です。CLTを普及させることにより,川下の木材産業にだけではなく,川上の林業の成長産業化につながり,さらに地方創生にもつながります。
 
CLTを活用した先駆的な建築物の設計費,建築費については,国の支援措置もあります。本誌特集をご覧になった設計・施工技術者の皆様は,是非,CLT建築物にチャレンジしてはいかがでしょうか。
 
 
 

筆者

林野庁 林政部 木材産業課 木材製品技術室 藤澤 将志
 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2016年12月号



 

 

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