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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > LVLを使う「都市木造」の提唱

 

1. はじめに

LVL(Laminated Veneer Lumber:単板積層材)は,丸太をかつら向きのように薄く切削した単板を積層した木質材料である。「べニア」というと合板のことと思うかも知れないが,ベニアは一層一層の薄い2〜3mmの単板のことを示し,これを繊維の向きを交互に直交するように積層したものが合板であり,繊維の向きが平行になるように積層したものがLVLである(写真− 1)。
 

写真−1 製造過程の大判のLVL




 
同じ材料から構成される木質材料ではあるが,構成が少し異なっている。
 
 

2. 線材と面材

木材は,樹木から丸太,製材して角材になって建築に用いられるため,通常は棒状の線材として用いられることになる。このため,木造住宅も柱,梁といった線材を組み合わせた軸組構造(写真−2)が日本では古くから用いられてきた。
 

写真−2 軸組構法住宅




 
こうして線材を垂直,水平に組み合わせた架構が木造建築の架構美として評価されてきており,大規模な集成材建築でも線材による架構形式が用いられてきた。
 
一方,木造建築における面材は,厚さ9mm程度の合板が主流で,柱梁や枠組に釘打ちされて使用されることが通常であった。こうしたパネルを用いた工法がツーバイフォー工法(枠組壁工法)や木質パネル工法(写真− 3)であり,壁,床が面材(パネル)で構成され空間を生み出している。構造形式は,壁式構造となる。
 

写真−3 木質パネル工法住宅




 
構造用材料としてのLVLは,これまで大断面集成材のライバルとして大規模木造建築への適用が考えられてきた。しかし,現実的には幅120,せい360,450mmといった住宅用製材と同様の断面が主流になっていた。しかし,こうした断面のLVL部材の実際の製造方法は,一旦厚さ120mm,幅1200mmの大きなLVL の板を製造し,1200mmの幅を600×2や450× 2+ 300などに切り分けて製造していた。つまり,1200mm幅の厚いLVLの板が製造段階の途中で製作されていたのである。現在,厚い木質面材として直交集成板(CLT)が注目を浴びているが,LVLでは,すでに厚板の面材が製造可能だったのである。
 
一方,都市部に建設される都市木造では,土地の有効活用が求められるため,大規模といっても平面的な広がりではなく必然的に多層化されることになる。1000年以上の長い日本の木造建築の歴史の中でも,床がたくさんある多層の建築は,あまり見ることができない。東大寺大仏殿のような大規模な寺院建築も内部は,平家の大屋根の建築である。五重塔も空間は初層のみで上層は小屋組空間となっている。金閣や銀閣などの楼閣建築が多層といえるが,せいぜい3層である。歴史的な多層木造建築としては,城郭の天守が多く建設されてきた。江戸城は5階,姫路城で6階建であった。明治以降,産業の近代化に伴い大規模な工場,倉庫が整備されるにあたって木造5階建て程度の建物が建設されるが,それも市街地建築物法が制定される1919年,建築基準法が制定される1950年に,大規模木造建築には建築の規制がかけられ,多層木造は実現できなくなっていた。2000年に建築基準法の性能規定化により,ようやく都市部での多層木造建築の実現が復活したが,参考にする木造建築はもはや見当たらず,まずは,都市部に建つ鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物を参考にして整備をすすめることになる。
 
このように考えると,LVLによる都市木造の実現は,木質の厚板面材と多層の建築というこれまで木造ではあまり考えられてこなかった材料,工法から生み出していかなければならないということを認識する必要がある。
 
そもそも,建築は,その時代の生活スタイルや社会システムに応じて変化していかなければならないはずである。
 
都市木造でも,当然,線材と面材を用いた建築が考えられる(写真− 4,5)。
 

写真−4 線材による大規模木造(ジョイスト梁)

 

写真−5 面材による大規模木造




 
前述したように,構造材としてのLVLは,線材として柱梁として使用でき,さらに厚板面材として壁や床としても使用できる。
 
 

3. SSP(Stressed‐Skin Panel:ストレストスキンパネル)

LVLを線材として柱梁の軸組構造として用いることは想像しやすい。大きな建築になれば当然部材の必要断面も大きくなり,無垢の製材では入手困難であり,再構成材の集成材やLVLの出番となる。軸組構造でも,壁や床は面を構成する必要がある。床もこれまでの住宅のような小さな床だけでなく,スパン6mを超えるような大きな床組が必要となる。これに対しては,根太の代わりに大断面の小梁をせまい間隔で数多く並べるジョイスト梁が単純明快であるが,単なる長方形断面では断面効率があまりよくない。矩形断面からT型断面,あるいは,BOX型断面として利用するのがSSP(ストレストスキンパネル)である(図−1)。
 

図−1 ストレストスキンパネル




 
梁部材で枠組みした上下面に面材を留めつけて一体化された木造ボイドスラブである。上下の面材がフランジとなって断面性能を効率的に向上させることができる。建物用途,仕上げなど荷重条件が整理できれば,木造住宅の梁と同じようにスパン表から必要な断面を選択することも可能で,構造計算も省力化できる。
 
一方,LVLの厚い面材は,それ単独で床版とすることもできる。これまでの木造の床の構造は,厚さ30mm程度の合板などの面材が用いられることが普通で,住宅の居室でも900mm間隔程度で根太や小梁などの床組が必要とされたが,面材が厚くなれば,単体で架け渡すスパンを大きくすることができるようになる。また,厚い床版は,キャンチレバーの跳ね出しや,2方向版,フラットスラブなど変則的な支持の床版の実現を可能にするかもしれない(写真− 6)。
 

写真−6 厚板の床(直交2辺支持)




 

4. 木層ウォール

LVLを厚板面材として壁,床に用いることも可能である。厚さ150mmの厚い壁では,柱の代わりに壁柱として使用することも可能である。もちろん厚い壁は,接合部を工夫すれば高性能の耐震壁となり,短期許容耐力60kN/m以上の性能を発揮することも可能となる(写真− 7)。
 

写真−7 LVL厚板の耐震壁 ? 東部地域振興ふれあい拠点施設(2011年/埼玉県)




 
さらに,木材の燃焼時間を考慮して火災時の安全性を検討する「燃えしろ設計」では,厚い材は燃焼時間を稼ぐことができる。「木層ウォール」は,1時間準耐火耐力壁,30分準耐火非耐力壁,1時間準耐火非耐力壁の大臣認定を取得して都市部での3階建ての木造建築においてLVLの表面をあらわしで使用することができるようになっている(写真− 8)。
 

写真−8 LVLの厚板壁? みやむら動物病院(2015年/東京都)




 
なお,平成28年3月31日公布・施行の国土交通省告示によりLVL部材の燃えしろ設計も可能となっている。
 
 

5. LVL 表面

都市木造に向けて,構造性能,防耐火性能の検証が進むLVLであるが,仕上げ材としても考えていかなければならない。都市部に用いられる木造建築の表情である。LVLの意匠材としての特徴は,その製造方法から生じる木目面と積層面という全く異なる2つ表情をもっていることである(写真− 9)。
 

写真−9 LVLの表面




 
これまでは,製造の効率性から,表面は木目面の使用に限定されていたが,その木口に見られる積層面が特徴的であることから,その表情を生かした積層面を表面としたパネルも生産され始めた。構造性能,防耐火性能を維持したまま,その独特な表情をした木質面材が登場した。また,接着剤を含む木質材料での加工のしにくさに対しても整備を進めながら6軸加工ロボットを利用した表面加工などその先の可能性も検討されている(写真− 10)。
 

写真−10 6軸加工ロボットと加工されたLVL




 
構造材をそのまま仕上げ材として使用してきた日本の木造建築においては,この材料の特徴と加工技術をいかに活かしていくことができるかが,これからの木造建築の魅力を増すために非常に重要な要素になる。
 
 

6. 都市木造に向けて

これまでの日本の木造建築は,木をあらわしで使うこと,木が見えること,木に触れることが当たり前だった。しかし,都市に建つ木造建築「都市木造」では,昔から使用しているからといってそのまますぐにあらわしで使えるわけではない。当然,現代の建築に要求される性能を満足しなければならない(図− 2)。
 

図−2 都市木造 Timberize 30プロジェクト




 
一方で,都市に木造建築をつくるのであれば,木造らしさも目指していかなければならない。今後,LVLに限らず,木造建築の特徴を生かした都市木造の部材開発と製法が望まれる。
 
 
 

筆者

東京大学生産技術研究所 教授 腰原 幹雄
 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2016年12月号



 

 

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