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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 舗装点検要領の策定について

 

はじめに

わが国の舗装ストックは道路延長ベースで約100 万km 1)であり,膨大なストック量となっている。高度経済成長期に集中的に整備されてきた道路施設の老朽化が進行する中,橋梁やトンネルと同様に,道路の表面を形成する舗装においても,メンテナンスサイクルを確立し,予防保全型の管理を行うことにより,より効率的に維持管理していくことが求められている。
 
こうした状況の中,社会資本整備審議会道路分科会道路技術小委員会(以下,「道路技術小委員会」という。)において,「舗装点検要領」に関する議論が行われ,この議論を踏まえて,国土交通省道路局,国土技術政策総合研究所,国立研究開発法人土木研究所では,点検要領に関する検討を重ね,平成28年10 月19 日に,国土交通省道路局において「舗装点検要領」を策定した。
 
本稿では「舗装点検要領」のベースとなった舗装マネジメントの考え方とこれを踏まえて策定した点検要領のポイントについて述べる。
 
 

1. 舗装管理の現状と今後の方向性

図− 1は舗装の点検の実態について,国土交通省道路局が地方公共団体にアンケート調査を実施した結果を整理したものである。
 

図−1 舗装点検の実態




 
舗装において,点検を実施している割合は,都道府県の約8割,市町村の約2割となっている。一方,舗装の点検に関しては,統一的なデータの取得が行われていない状況にあり,適切な予防保全・修繕の取り組みも十分に行われていない状況にある。
 
図− 2に舗装ストックと舗装維持修繕費の推移を示す。1990年代半ば頃までは,舗装ストックの増加とともに舗装の維持修繕に関わる予算も増加してきたが,それ以降は,財政制約の中で大幅に減少している。
 

図−2 舗装ストックと舗装維持修繕費の推移




 
このような状況を踏まえると,舗装分野においても,橋梁等と同様に,メンテナンスサイクルを確立し,舗装の長寿命化・ライフサイクルコスト(LCC)縮減を目指すことが必要であり,舗装の適切な点検と予防保全型管理を推進することが求められる。
 
 

2. 舗装マネジメントの視点

2-1 舗装の損傷要因

一般的に舗装へのダメージは走行車両の軸重の4乗で影響する 3)。軸重制限上限の大型車が交通量の1割を占める道路において,それらの車両が舗装へ与える影響度合いを計算すると,図− 3に示すとおり,大型車が舗装に与えるダメージの割合はほぼ100% となる。
 

図−3 車種別交通量と舗装への影響の例




 
 
図− 4は,直轄国道における路面性状調査結果を基に,大型車交通量毎に舗装の経過年数とひび割れ率の関係を整理したものである。
 

図−4 大型車交通量区分ごとのひび割れ率の経年推移




 
この図から1 日・1方向あたりの大型車交通量が1,000 台以上の区間は,それ未満の区間に比べ損傷が早く進行している4)。このような状況から舗装の管理においては大型車の状況にも着目する必要がある。
 
 

2-2 路盤の健全性確保の必要性

舗装は路床の上に構築され,アスファルト舗装を例にとると,その一般的な構成は,図− 5に示すとおり路面から順に表層,基層,路盤となっている。
 

図−5 アスファルト舗装の構成




 
 
路面に生じたひび割れ等の損傷を放置すると,損傷箇所から路盤に雨水等が浸入することにより路盤の支持力が低下し,路盤の変形に起因する沈下など舗装構造全体の損傷につながる。図− 6にアスファルト舗装損傷の代表的なメカニズムを示す。
 

図−6 アスファルト舗装損傷メカニズム




 
 
舗装構造全体の損傷に至ると表層等のみを修繕する切削オーバーレイ工法などを行っても早期に路面が損傷してしまうため,最終的には路盤も含めた修繕が必要となる。関東地方整備局管内における夜間での工事を想定して試算すると,路盤を修繕した場合,表層等のみを修繕した場合の比較では,費用は概ね3倍以上,工事期間は概ね4倍となる。
 
また,コンクリート舗装の損傷にはさまざまな要因があるが,代表的なメカニズムを図− 7に示す。
 

図−7 コンクリート舗装の損傷




 
 
コンクリート版の目地部の目地シール不良等を放置すると,目地部から路盤に雨水が侵入し,路盤材料である粒状材の噴出などにより路盤に不陸が生じ,コンクリート版の損傷につながる。コンクリート版が損傷すると目地部の補修のみならず,コンクリート版自体の修繕が必要となり,工事費が増大するとともにコンクリート養生のための期間が必要となるため,通行止めなどにより道路交通にも大きな影響を与えることになる。
 
このため,舗装の維持管理においては,路盤を健全に保つ視点が必要であり,そのためにも点検・診断により,アスファルト舗装においては表層等の適時修繕が,コンクリート舗装においては目地部の適切な管理が重要となる。
 
 

2-3 これからの舗装マネジメント

舗装は2-1に示したとおり大型車交通量の多寡により劣化の進展に大きな差があるとともに,走行速度に応じて求められるサービスレベル等が異なることから,それらに応じた管理が必要となる。このため,表− 1に示すとおり,道路を大型車交通量等で大きく2つに分類し,道路特性でさらに4つに分類し,それぞれについてマネジメントのあり方を整理した。
 

表−1 道路の区分とマネジメントの考え方




 
 
特に交通量の多い道路は,損傷の進行が早い一方で,路線の重要性が高いため,舗装工事による道路交通への影響は大きい。2-2に示したように路盤が損傷すると工事費のみならず工事期間も増大することから,その社会的影響はさらに大きくなる。このため,路盤の保護を目的とした点検体系を構築する必要がある。
 
 

3. 舗装点検要領のポイント

 
「舗装点検要領」は,図− 8に示す7章で構成されている。以下にその主なポイントを示す。
 

図−8 舗装点検要領の構成




 

3-1 点検要領の位置付け

点検要領は,修繕の効率的な実施により,道路特性に応じた走行性,快適性の確保に資することを目的として規定している。なお,安全性に関連する突発的な損傷(ポットホール等)については,巡視等により発見次第対応すべき事象であり,本要領の対象外とした。
 
なお,技術小委員会において,「独自に先進的な取り組みを実施している地方公共団体の活動の妨げにならないようにすべき」との意見を踏まえ,要領においては「本要領に記載された基本的な事項を踏まえ,独自に実施している道路管理者の既存の取り組みを妨げるものではない。」とした。
 

3-2 道路の分類

2-3で述べた舗装マネジメントの考え方を踏まえ,損傷に大きな影響を与える大型車交通量や求められるサービス水準など道路の特性に応じた点検方法を規定し,舗装の点検の実施にあたっては,管内の道路を表− 1に示す分類A〜Dに区分することとした。
 

3-3 舗装種別毎に点検の考え方を規定

点検は,舗装種別毎の構造特性を踏まえて取り組む必要がある。具体的には,高い路面性能が確保できるが使用材料の特性に起因して劣化の進行速度のバラつきが大きいアスファルト舗装と,目地部が構造的な弱点ではあるものの極めて長期間供用し続けることが期待できるコンクリート舗装に大別して,点検内容を規定した。2-2に示した代表的な損傷のメカニズムを踏まえて,アスファルト舗装については,「表層や基層の適時修繕による,路盤以下の層の保護等を通じた長寿命化を目的とした点検」を実施することとし,コンクリート舗装については,目地部や版のひび割れ等を重点的に点検し,「コンクリート舗装の高耐久性能をより長期間にわたり発現させることを目的とした点検」を実施することとした。
 

3-4 使用目標年数を規定

損傷の進行が早い道路等におけるアスファルト舗装については,舗装の長寿命化を意識した管理に誘導するため,「使用目標年数」を規定した。「使用目標年数」とは,劣化の進行速度にばらつきの大きいアスファルト舗装において,表層の早期劣化区間の排除や,表層の供用年数と損傷レベルに応じた適切な措置の実施といったきめ細やかな管理を通じた長寿命化に向け,表層を使い続ける目標期間として設定する年数である。
 
舗装管理の現場では,予算制約等から早期に破損している箇所においても十分な調査が行われないまま,表層等のみを修繕する切削オーバーレイ工法が適されるケースがある。しかし,早期に破損する箇所においては,路盤あるいは路床等に何らかの原因があることも想定され,十分な調査が行われないまま表層等を修繕すると,急速に破損が進行し,再び早期に修繕が必要な状態になることも多い。このようなケースでは,最初に十分な調査を行い,抜本的な対応をした場合より,長期的な視点ではかえって多くの予算が必要となる。
 
「使用目標年数」の導入は,舗装管理の効率化,舗装の長寿命化に非常に有効と考えている。
 

3-5 点検頻度を規定

3-2に示した道路の区分に従い点検頻度を示した。損傷の進行が早い道路等においては5年に1回程度以上の頻度を目安として実施することとし,損傷の進行が緩やかな道路等については,点検計画を策定し,計画に基づき点検を実施することとした。損傷の進行が早い道路等においては,すでに法定点検を実施している橋梁やトンネルにおける5年に1回という点検頻度を参考にしつつ,これらの構造物と比較して損傷の進行が早いことを考慮して定めたものである。
 

3-6 診断区分を規定

各管理者において統一した健全性の診断が行えるよう,3-2に示した道路の区分,3-3に示した舗装種別毎に診断区分を規定した。表− 2にアスファルト舗装の損傷の進行が早い道路等における診断区分を,表− 3にコンクリート舗装の診断区分を示す。
 

表−2 アスファルト舗装(損傷の進行が速い道路等)における診断区分


 
 

表−3 コンクリート舗装における診断区分




 
ポイントとしては,ポットホールなどの即時の対応が必要な損傷は本要領の対象外としたため,橋梁やトンネルの点検要領に示されている「Ⅳ 緊急措置段階」という区分がない。また,表− 2に示されるようにアスファルト舗装の損傷の進行が早い道路等においては,路盤以下の健全性を考慮して「Ⅲ 修繕段階」をさらに2段階に区分したことが挙げられる。
 

3-7 記録を規定

点検,診断,措置の結果を記録し,当該舗装が供用されている期間は,これを保存することとし,これらの情報をその後の舗装管理にいかしていくこととした。
 
分類A やB の道路ではすでに実施されている事項であるが,これを分類CやDの道路にも広げることで全体的な舗装管理の合理化を目指すものである。
 

3-8 新技術等の活用

点検関係の技術開発が多方面で進められており,新技術の採用による点検の合理化や合理化に資する点検技術のさらなる進展を促すため,本要領に基づく点検が合理化できる手法と判断される場合は積極的に採用するとよい旨を示した。
 
特にこれまで点検を実施していない地方自治体においては,点検に掛かる費用が大きな負担になることが考えられ,その負担を軽減するためにも簡便で安価な新技術の開発・導入が期待されるところである。
 
 

おわりに

今回策定した点検要領は,舗装における効率的な維持管理を実現するメンテナンスサイクルの確立に向けたスタートである。舗装の効率的な管理を進めていくためには,耐久性の高いコンクリート舗装やコンポジット舗装,またはセメント安定処理等による路盤の強化,環境舗装など,適材適所での舗装構造の採用を推進していく視点も重要である。また,点検要領の策定をきっかけとして,今後得られる情報・知見を活用して沿道状況による制約条件等も加味しながら,更に新材料や新工法等の開発を推進していくことも必要である。さらに,入札契約制度面や点検の技術開発分野等においても,舗装の長寿命化に資する制度の導入・改正,路面の状態や路盤等の状態をより簡易に,より安価に計測・分析・記録できる技術開発,研究開発等を推進し,より効率的な管理を目指すことが必要である。こうした取り組みにより舗装管理の効率化が図られれば,舗装分野における生産性向上にも貢献するものと考えられる。
 
最後になりましたが,「舗装点検要領」の策定にあたっては,道路技術小委員会委員には委員会等の議論を通じて貴重なご意見を頂き,特に日本大学生産工学部秋葉教授には,点検要領のとりまとめにあたって,多くのご助言,ご指導を頂いた。ここに謝意を表します。
 
 
 

【参考文献】

1) 国土交通省道路局:道路統計年報,
   http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-data/tokei-nen/
2) 国土交通省社会資本整備審議会道路分科会建議:道路の老朽化対策の本格実施に関する提言,2014.4
3) (社)日本道路協会:舗装の構造に関する技術基準・同解説,2001.7
4) 国土交通省社会資本整備審議会道路分科会道路技術小委員会:
  これからの舗装マネジメント,第6回道路技術小委員会,資料3-2,2016.9
5) (社)日本道路協会:舗装設計施工指針(平成18 年版),2006.2
 
 

国土交通省 道路局国道・防災課 課長補佐 武藤  聡
国土交通省 国土技術政策総合研究所 道路構造物研究部 道路基盤研究室長 久保 和幸

国立研究開発法人土木研究所 道路技術研究グループ舗装チーム 上席研究員 藪  雅行

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2017年01月号 特集①



 

 

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