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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 土木用鉄筋コンクリート構造物の点検・診断・補修技術

 

はじめに

土木のインフラとしては,土砂災害から住民を守る砂防堰堤や治山ダム,河川や海岸の護岸,道路や鉄道などの線状構造物,快適な環境を維持する上下水道施設,エネルギー施設など幅広い。これらを国,県,市町村で適切に維持管理を行えば,継続的に安全,安心,快適な社会が築けるはずである。
 
コンクリートはこれらのインフラを持続的に確保する最も優れた建設材料であるが,不適切な材料や配合,さらには適切な施工が行われない場合は,比較的早期に損傷が表面化する。これまでにも,技術が進歩する過程で認識の違いや技術未達のため,早期劣化を余儀なくされた構造物も少なくない。健全に供用されている構造物も多いが,早期劣化が顕在化している構造物も存在する。
 
そこで,土木のインフラの老朽化の実態を紹介し,それらを点検する技術,診断する仕組み,延命化のための補修技術について概説する。
 
 

1. インフラ老朽化の実態

第2次大戦直後の構造物はとても先進国とは言えない状況であったようである。その後,戦後復興と合わせてインフラの整備が始まり,高度成長期につながる。好景気が継続するまでの継続的な成長で多くのインフラが構築されるが,それは経験のない速度で進められたため,技術者の経験も不足し,材料の吟味も不十分であった。ゆえに,鉄筋コンクリート構造物の劣化因子である塩化物イオンは規制されておらず,アルカリシリカ反応に対しても無防備であった。多くの技術者は,コンクリート構造物が劣化するという認識も希薄であった。
 
表− 1に戦後のコンクリート構造物の劣化や損傷の生じた事象,そのために発せられた規準や対応についてまとめた。トラブルが生じた段階では適切に対応はされているものの,対応前の構造物は劣化が顕在化しており,延命化対策が必要な状況である。
 

表−1 コンクリート構造物の老朽化に関連する事象




 
土木用鉄筋コンクリート構造物を劣化させる要因には,塩害,凍害,中性化,アルカリシリカ反応,化学的腐食,疲労,すり減りなど様々な外的因子が存在する。代表的な劣化事例を写真で示す。写真− 1は,塩害事例である。コンクリートは内部の鋼材を腐食から守る役割を担うが,内在する塩化物イオンの総量を規制しても外部から侵入する塩化物イオンは海岸付近や凍結防止剤を撒かれる道路橋などでは避けがたい。近年になって侵入防止策は講じられるようになったが,内部に浸透してしまった塩化物イオンによる劣化が生じている事例は多い。
 

写真−1 塩害を受けた構造物




 
写真− 2は,凍害の事例である。寒冷地では夜間にコンクリートが凍結し,昼間に融解する環境が存在する。
 

写真−2 凍害を受けた構造物




 
特に寒冷地の南面では凍結融解の繰り返しは激しくなる。コンクリート内部に水分を多く含む環境では氷圧が内部から作用し,これを繰り返すと組織が緩むため表面からの剥落が進みやすくなる。
 
写真− 3は,本来高いアルカリ性を呈するコンクリートが二酸化炭素により炭酸化し,中性化する。
 

写真−3 中性化により鉄筋が腐食した構造物




 
コンクリート内部の鋼材はコンクリートのアルカリにより腐食から守られているが,中性化により腐食環境に移行し,次第に腐食し始める。鉄筋は腐食すると膨張するため,かぶり部分のコンクリートを押し出し,浮きから剥落に至る場合が多い。
 
特にかぶりの小さくなりがちな壁高欄などでは中性化により剥落する事例が散見される。
 
写真− 4は,骨材のアルカリシリカ反応による被害例である。
 

写真−4 アルカリシリカ反応によるひび割れが生じた構造物




 
骨材がアルカリシリカ反応を生じると,骨材周辺のシリカゲルが吸水膨張し,コンクリート表面に亀甲状のひび割れや拘束体に沿ったひび割れを生じさせる。
外部から水分が供給される環境では大きなひび割れとなる場合が多い。アルカリシリカ反応に対する規制前に建設された構造物に多く見られるが,現在も供用されている場合が多い。
 
そのほかにも,温泉地や下水処理施設に多く見られる化学的腐食の事例,道路床版でみられる疲労劣化,ダムなどの越流部でみられるすり減り現象なども老朽化の仲間である。
 
 

2. 点検,診断のあり方

構造物の維持管理では,まず点検により損傷などの起こりそうな状態を見つけ,その状態が構造物のその後の劣化にどのように進展するかを診断し,目標とする供用年数に対して補修などの対策を計画する。補修により延命化するにしても,点検はその後も継続し,診断,対応を繰り返すのが維持管理である。図− 1に土木学会コンクリート標準示方書維持管理編に示される構造物診断のフローを示す 1)。
 

図−1 構造物の維持管理のフロー 1)




 
構造物の建設後は維持管理計画を立案し,建設後は定期的に点検が行われ,点検結果をもとに劣化を予測する診断で補修の要否を判断し,必要に応じて補修などの対策が採られる。
 
この際,点検や診断にはできるだけ費用をかけないで,補修には費用対効果を考えるのが一般的である。建設時の初期費用を抑えたために維持管理費が嵩むことは望ましいことではないので,費用をかけない点検と診断を目指す。つまり,維持管理に費用が掛かるとランニングコストが嵩むことになり,建設時に初期投資をして耐久性の高い構造物を構築する方がライフサイクルコストで有利になるためである。これまでに建設された多くの構造物は初期投資を抑えがちであるため,維持管理に費用がかさむ可能性もあるが,維持管理費が高額になるのであれば,更新を選択する可能性も出てくる。そのため,すでに建設された構造物には,経費をかけない点検,診断を行い,延命化が求められる場合は更新の費用と比較して対応を決めなければならない。判断までは費用をかけないのが得策である。
 
近年,ドローンと呼ばれる無人のマルチコプターにカメラやサーモカメラなどを搭載した点検が着目されている。写真− 5にその一例を示す。
 

写真−5 マルチコプターによる橋梁の点検事例(ルーチェサーチ(株)提供)




 
橋梁の点検などで通行止めにしないで上部工の下側からの点検ができることから,安価に点検ができる。損傷が容易に発見できるようになったが,予防保全としては向かない。損傷が表面化する前にはこの方法は効果を発揮しない。
 
予防保全の基本は,劣化の進行の初期の段階で発見されるほど補修費用が少なくて良いとの考えである。例えば,中性化や塩化物イオンの侵入により鋼材が腐食し,鋼材の腐食膨張によりかぶり部分のコンクリートが剥落した段階で発見されると,鋼材の補強効果が疑われるため,断面修復するにも,鋼材の位置まで斫りとり,場合によっては鋼材の付け替えが必要になる。予防保全は,鋼材の腐食する前に劣化因子である塩化物イオンの侵入を予見し,あるいは中性化の進行を予測し,かぶり部分が鋼材の腐食防止効果を有するように回復する対策が採れる利点がある。つまり,予防保全は安価な対策が採れるのである。
 
なお,損傷が表面化したのちに採れる適切な補修対策があれば,初期に損傷を発見できる近接目視の方法が点検として可能となる。損傷が表面化したのちの補修方法は後述する。点検は費用をかけない手法で行い,診断はコンクリート診断士 2)などのプロの判断により,補修は早めに対応するのが鉄則である。
 
 

3. 進化を続ける補修技術

道路の舗装面などは,頻繁な交通により維持管理が当たり前の施設である。しかし,摩耗をするわけでない各種の構造物は維持管理が不要と考えられていた。そのため,定期的に更新するのが当たり前の舗装面などと異なり,補修材料の分野では材料およびその施工技術とも大きな進化が見られない時代が長く続いた。プレストレストコンクリート構造物や鉄筋コンクリート構造物は,コンクリートの弱点を補うPC鋼材や鉄筋が腐食すると構造物としての安全性能を失うため,腐食は初期の性能を確保できないと判断され,差し替えることが基本と考えられていた。そのため,予防保全が重要とされ,鉄筋が腐食環境になる前にそれを把握し,中性化を遅らせる方法や,塩化物イオンの侵入を抑制する方法などが対策としては主流であった。
 
近年になって,腐食を始めた鋼材の進行を止めることができるとされる補修剤が着目されている2)。亜硝酸リチウムイオンによる補修剤は,亜硝酸が鉄筋の腐食を止めるとともに,リチウムイオンがアルカリシリカ反応を生じたコンクリートのひび割れの進行を止めることができるとされ,普及している 3)。しかし,計画的にかつ効率的にこれを用いるには,適用方法をさらに検討することが望まれている。
 
補修材料は品質および施工方法ともに進化の過程にあると考えてよい。しかし,完璧な補修材料の出現を待つと構造物の延命化は手遅れとなる。まずは現時点の最適な方法を模索し,さらなる進化を期待したい。
 
 

おわりに

コンクリート構造物の長寿命化には,新設構造物の高耐久化と既設構造物の延命化が必要である。これまでに建設されたコンクリート構造物は,コンクリート量にして100億m3と言われているが,そのすべてが耐久性に優れるとは言えない。早期に劣化する構造物も多いと考えるべきである。環境が厳しい場合もあるであろう。早急にインフラのカルテの作成が必要である。カルテはすでに作られているとの報告もあるが,必要な調査が行われている正しいカルテでなければならない。
 
診断のできるプロの育成も必要である。図− 2にコンクリート診断士の合格者数の推移を示す2)。
 

図−2 コンクリート診断士の登録者数の経緯 2)




 
今後増加することが想定される我が国のインフラを診断できる専門家の数は,全く不足している状況である。形式だけの対策では長寿命化は実現しない。コンクリート診断士を活かす発注者の仕組み作りも必要である。
 
インフラの維持管理技術は進化の過程にある。材料,施工方法,それらを駆使できる技術者の育成など,今後の進展に期待する次第である。
 
 
 

【参考文献】

1) 土木学会編:コンクリート標準示方書【維持管理編】2013年制定,2013
2) 十河茂幸,平田隆祥:コンクリート診断士試験合格指南,日経BP社,2016.1
3) コンクリートメンテナンス協会編:コンクリート構造物の維持管理,平成27年4月
 
 

広島工業大学工学部教授 十河 茂幸

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2017年01月号 特集①



 

 

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