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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 生産性向上 > コンクリート工の生産性向上〜機械式鉄筋定着工法の配筋設計ガイドラインの策定〜

 

はじめに

少子高齢化社会を迎え,今後,明らかに労働力が不足することを考えれば,建設現場の生産性向上は避けることのできない課題となっている。
 
国土交通省では,「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入することによって,調査・測量から設計,施工,検査,維持管理・更新までのあらゆる建設生産プロセスにおいて抜本的な生産性向上を図るi-Constructionの取り組みに本格的に着手している。
 
なお,i-Constructionの推進にあたっては,「ICTの全面的な活用(ICT土工)」,「全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化)」,「施工期間の平準化」をトップランナー施策として位置づけている。
 
本稿では,トップランナー施策の一つである「全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化)」において,全体最適を後押しする各種要素技術の普及に向けて,現在取りまとめているガイドラインの1つである,「機械式鉄筋定着工法の配筋設計ガイドライン」について紹介する。
 
 

1. 現場打ちコンクリート工を取り巻く現状

国土交通省発注工事の実績(平成24年)では,「現場打ちコンクリート関連」が16%であり,現場打ちコンクリートの技能労働者数は直轄工事全体の約6分の1を占めている。しかし,その生産性はこれまでの30年間,ほとんど変わらない状況となっている。一方で,トンネル工事などは,約50年間で生産性を最大10倍に向上させている(図- 1)。
 
 

図-1 生産性向上が遅れている土工などの建設現場




 
こうした現状から,建設現場の生産性向上のためには,現場打ちコンクリート工の生産性向上を図ることが重要なポイントになっている。
 
 
 

2. 機械式鉄筋定着工法について

鉄筋コンクリート構造物は,耐震設計の進歩とともに高密度配筋となる事例も増えている。そのため,鉄筋加工組立てをいかに効率的に行うかが,生産性向上の鍵を握っており,鉄筋端部の曲げ加工は鉄筋の作業を大きく左右する。
 
鉄筋端部の曲げ加工部(以下端部フックという)による鉄筋定着作業では,部材内部で重ね継手(半円形フックでラップ)が生じたりするなど,施工が複雑となる。
 
機械式鉄筋定着工法は,従来の片側半円形フック,片側折り曲げフックあるいは両端半円形フックとされていたせん断補強鉄筋の片側(あるいは両側)の端部を定着体に変えることにより,従来の施工では複雑だった配筋作業の効率化を図ることが可能となる(図- 2)。
 

図-2 機械式鉄筋定着工法導入による施工効率の向上




 
 

3. ガイドラインの概要

3-1 ガイドラインの位置づけ

本ガイドラインは,機械式鉄筋定着工法を採用するにあたって,その標準的な使用方法と,設計・施工上の留意事項について示している。なお,同工法の適用を計画する際には,それぞれの構造物が準拠している設計基準に示されている要求性能や前提条件を満たしているかどうかの判断を適宜行うこととしている。
 

3-2 適用範囲の明確化

機械式鉄筋定着工法を適用する範囲については,使用頻度が高いと思われる,せん断補強鉄筋と横拘束筋を対象としている。なお,機械式鉄筋定着工法の建設技術証明書には,施工に関する留意事項や定着体の製造に関する品質管理手法等を記載した技術資料が附属書として添付されているのが一般的である。これらの技術資料を順守し,施工品質が確保されるようにしなければならないとしている。
 

3-3 用途に応じた適用性の判断方法を提示

先に述べたとおり,適用する範囲としては,せん断補強鉄筋と横拘束筋としている。ガイドラインにおいては,用途に応じた適用方法を提示している。せん断破壊防止のために用いるせん断補強鉄筋用途の場合は,機械式定着鉄筋の引張強度,引抜強度そしてせん断強度の確認(審査証明書の記載で確認可)としている。また,耐震性向上のために用いる横拘束筋用途の場合は,せん断補強鉄筋における確認項目に加え,じん性の確認を行うこととしている。
 
 
 

4. ガイドラインの活用について

ガイドラインについては,国土交通省の各地方整備局において,RC 構造物の設計・施工にあたって活用されているところである。また,既発注工事においても当ガイドラインに基づき,機械式鉄筋定着工法を積極的に採用することとしている。
 
 
 

おわりに

コンクリート工の生産性向上に向けた取り組みにおいては,本稿でご紹介した機械式鉄筋定着工法のほか,機械式鉄筋継手工法やコンクリート打設の改善(流動性を高めたコンクリート),プレキャストの大型構造物への適用拡大といった技術に関するガイドラインの策定作業を進めているところである。
 
本ガイドラインを始め,今後策定されるガイドラインの活用により,コンクリート工における生産性向上が期待されるとともに,ICTの全面適活用,施工時期の平準化といったi-Constructionの取り組みを通じて,「給与が良く」,「十分な休暇が取得でき」,「将来に希望が持てる」建設現場の実現を目指してまいる所存である。
 
 

国土交通省大臣官房技術調査課 課長補佐  堤 英彰

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2017年01月号 特集②



 

最終更新日:2023-07-10

 

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