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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > 国土交通省におけるCIMの取り組み−CIMの新たな検討体制−

 

はじめに

わが国は人口減少時代を迎えているが、これまで成長を支えてきた労働者が減少しても、労働者の減少を上回る生産性を向上させることで、経済成長の実現が可能と考えられる。そのため、国土交通省では平成28年を「生産性革命元年」とし、本年3月に国土交通省生産性革命本部を設置し、省を挙げて生産性革命プロジェクトを推進しているところである。このうち、「産業別」の生産性を高めるプロジェクトとして、本格的なi-Constructionへの転換を進めている(図-1)。
 

図-1 生産性革命の概要




 
 
わが国の建設産業は近年、就業者数の減少とともに高齢化の進行が著しく、今後10年間で高齢等のため、技能労働者約340万人のうち、約1/3の離職が予想され、労働力不足の懸念が大きい。このような厳しい環境の中において、社会資本の整備・管理体制を持続的に確保していくためには、建設産業全体の労働生産性を高め、より多くの付加価値を生み出すことが重要である。
 
i-Constructionは建設生産システムの調査から施工、維持管理までのシステム全体の生産性向上を図るものであり、「ICTの全面的な活用(ICT土工)」、「全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)」、「施工時期の平準化」をトップランナー施策として、建設現場の働き方革命の実現を目指すものである(図-2)。
 

図-2 ICTの全面的な活用




 
 
「ICTの全面的な活用」では、まずは改善の余地が大きい土工について、測量・施工・検査等の全プロセスでICTを活用することとしており、情報化施工やCIMの試行で得られた知見等を参考として、平成28 年度より国が行う大規模な土工については、原則としてICTを全面的に適用することとしている。これにより、土工の現場では調査、設計の段階から施工、監督、検査の段階まで3 次元データを活用する環境、言い換えればCIMを活用する環境がかなり整備されたといえる。
 
今後、ICT土工におけるCIMの活用検証を踏まえ、土工以外の橋梁やトンネルなどの工種、構造物に広げることで「ICTの全面的な活用」の実現を図っていくものである。
 
 

CIM試行で確認された効果と課題

平成24 年度からスタートした国土交通省直轄事業におけるCIMの試行は、平成27年度までで、業務、工事の合計で165件の試行を実施した(図- 3)。
 

図-3 平成24〜27年度CIM試行件数




 
 
試行で導入効果が認められた主な項目として、合意形成の迅速化、フロントローディングの実施、安全性の向上があり、この活用事例について紹介する(図- 4)。
 

図-4 CIMの試行で確認された導入効果




 
 
合意形成として事業計画の住民説明会において、3次元モデルを用いた映像による説明だけでなく、3Dプリンターで模型を作成し、説明会で用いることで、計画内容の理解が促進し、合意形成の迅速化に資することが確認された。
 
また、設計段階で3次元モデルを用いると、鉄筋が複雑に交差するような構造物における鉄筋の干渉箇所を容易に発見でき、施工に設計成果を受け渡す前に修正することができる。さらに、完成後における橋梁の検査員の導線を確認しながら効率的な点検が可能となるよう検査廊の設計ができるなど、工程の上流段階で後工程の作業等を考慮することで手戻りの防止や品質向上を図るフロントローディングの実施がCIMによって効果的に進められることが確認された。
 
施工段階では、3次元モデルを用いて、重機の配置計画や施工手順の確認、さらに新規入場者教育やKY活動に3次元モデルを活用し、現場作業員へ周知することにより、施工段階での重機の輻輳等の危険因子をあらかじめ取り除くことができ、安全性の向上に寄与できることが確認された。
 
一方で、課題も浮き彫りとなっており、3次元モデルを取り扱うことができる人材が不足していること、パソコンや3次元CADソフトの導入に際してコストがかかること、またモデル作成の際の詳細度についても明確化の必要性があることが確認されたことから、今後、導入、普及に当たっての対応策が必要である。
 
 

CIMの新しい検討体制

これまで、CIMの導入、普及方策については、平成24年度よりCIM制度検討会やCIM技術検討会において産学官にわたる関係機関がそれぞれの役割の下で、制度的、技術的な観点から検討を重ね、CIMの導入効果や普及推進に向けた課題を整理してきた。平成29年度からCIMを本格的に導入するに当たり、関係者間の目標の共有や役割・責任の明確化を図り、CIMの推進・普及をより強力に進める体制とするため、これまでの検討体制を一本化し、CIM導入推進委員会を設置することとした(図- 5)。
 

図-5 CIM導入推進委員会の体制図




 
 
このCIM導入推進委員会は、国土交通省が進めるi-Constructionにおけるトップランナー施策であるICTの全面的な活用を、CIMを用いて推進するために、関係機関が一体となりCIMの導入推進および普及に関する目標や方針、具体的な方策について検討し、意思決定を行うことで、CIMの導入、普及に向けた施策を円滑かつ強力に進めていくものである。
 
当面の取り組みとしては、今年度から3次元データの活用を先行して進めているICT土工の取り組みを検証し、成果をこれまで検討を重ねてきた各工種(橋梁、トンネル、ダム、河川構造物)に展開するため、CIMの導入推進や普及に関する実施方針や方策の検討、ガイドラインや基準類の整備を行う。これらの方針や方策、基準類の整備等を進めるため、3つのWG(ワーキンググループ)を設置する。以下にその内容について記載する。
 
 
(1)CIM導入ガイドライン策定WG
 
受発注者双方がCIMを効果的に導入できるように、CIMの活用方法や3次元モデルの作成方法等を体系的に整理したCIM導入ガイドラインを平成28年度中に策定する予定であり、これまで試行事業の結果などを踏まえ、ガイドラインの検討を進めてきた。
 
昨年度までに、CIM導入ガイドラインの骨子を策定しており、その構成は、CIMの概要や各工種に共通する測量、地質調査について記載した共通編、また工種(橋梁、トンネル、河川、ダム、土工)ごとに、設計や施工、維持管理におけるCIMの活用方法を記載した各分野編から成り、調査から維持管理段階まで体系的に記載し、受発注者双方のCIM活用を支援するものである(図-6)。
 

図-6 CIM導入ガイドラインの構成




 
この骨子を基に素案を作成し、試行業務および工事で検証し、今年度中のガイドライン策定を目指すこととしている。
 
 
(2)要領・基準の改定WG
 
このWGでは、CIMの導入に必要な要領や基準について検討する。具体的には、設計や施工段階での3次元データを活用した発注方法の整備、3次元データを活用した監督・検査要領の改訂、試行においてCIMの導入効果が確認された鉄筋の干渉チェックの確認方法を明確化し、現場でのCIMの活用を促進する。
 
また、これまでのCIM技術検討会や土木学会での海外動向調査も踏まえ、多様な入札契約方式において、CIMの導入に当たり効果的な採用方式の検討および課題を整理する。
 
さらに、インフラ構造物を対象とした3 次元モデルの国際標準化に関して、日本国内の意見集約および現況に関する共有の場を提供し、日本としてのスタンスを提示しやすいように支援する。
 
 
(3)現地での検証WG
 
これまで、CIMの試行業務と試行工事にてCIMの導入効果や課題について抽出を行ってきたが、平成28 年度からは、CIM導入ガイドラインの素案を基に試行検証を行い、得られた導入効果および課題について集約・整理し、委員会や各WGに展開し、ガイドラインや要領基準の内容をより現場で活用しやすくするようにしていく。
 
 

おわりに

CIMを活用して、調査から維持管理まで全ての段階をシームレス化することにより、各段階での効率化だけでなく、成果物や情報の受け渡しの効率化が図られ、維持管理の高度化や、迅速な災害対応にも役立つと考えられる。
 
CIMの推進による建設生産システムの生産性向上の実現には未だ多くの課題が残されている。この解決には建設生産システムに携わる企業、団体や各学会の協力が不可欠であり、関係各位に対し、これまでのご尽力に感謝申し上げるとともに、引き続き、CIM導入推進、普及に当たってのご協力をお願いしたい。
 
 
 

国土交通省 大臣官房 技術調査課 工事監視官 山下 眞治

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2017
特集1「i-Construction時代の到来とCIM」



 
 

 

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