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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > 施工分野におけるi-Constructionの取り組み

 

はじめに

日本国土開発株式会社 土木事業本部 技術部 CIM/ICT推進チームリーダー 佐野 健彦氏


 
国土交通省CIMは、一連の建設生産システムの効率化を目的として2012 年に導入された。その後、建設現場における生産性向上およびプロセス全体の最適化を目的としたi-Constructionが、2015 年に国土交通大臣から示された。2016 年からは、ICTの全面的な活用(ICT土工)、全体最適の導入、施工時期の平準化が、トップランナー施策として推進されている。本稿は、ICT土工による施工実績および全体最適の導入を見据えた当社の取り組みに関する事例を紹介する。


 
 

ICTを活用した施工技術

 ICT土工の鍵となる技術は、3D計測技術と3Dデータを活用したICT建設機械技術に大別される。図-1は、3D計測技術と3Dデータを活用したICT建設機械技術を適用した当社の事例である。
 

図-1 3D計測技術と3Dデータを活用したICT建設技術による施工概要




 
 
3D計測技術は、UAVによるデジタル写真測量、3Dレーザースキャナーを用いた計測およびMMSによる計測などがある。ICT建設機械は、制御方式の違いによって、マシンガイダンスとマシンコントロールの2つに分類される。
 
これらのICT建設機械は、従来の土工では必要であった丁張りを設置することなく施工が可能である。施工に必要なデータは、3Dで作成された設計データおよび現況地形データであり、Land XML形式のデータをICT建設機械に直接インプットする。施工後の出来形確認は、前述の3D計測技術に加えて、ICT建設機械に搭載されたステレオカメラによってリアルタイムに計測できる仕組みが確立されつつある。
 
UAVもしくは3Dレーザースキャナー以外の方法として基準の整備が待ち望まれる。図-2は、1日当たりの撮影範囲および地上分解能の関係を撮影高度に対して図示したものである。
 

図-2 撮影範囲と地上分解能の撮影高度による違い




 
 
この図は、当社の実績に基づき作成した。左縦軸は、1日当たりに撮影が可能な範囲の累積面積、右縦軸は、地上分解能を示している。横軸は、UAVの撮影高度である。撮影高度が30mでは地上分解能7.3mm/pix、撮影高度が50mでは地上分解能が12.2mm/pixであることが読み取れる。地上分解能を高くすれば1日当たりの撮影範囲は狭くなる。精度が確保できる最適な撮影高度の把握は、生産性向上の観点から重要である。状況に応じた撮影高度の最適値は、撮影データの蓄積によって探求すべき課題である。
 
 

3Dモデル作成の効率化

国土交通省CIMは、2012年の導入当初から3Dモデルによる管理を前提としていた。そのため3D空間上で動作するICT建設機械や、3D計測技術との親和性は高い。現況地形の3Dモデル化は、UAVの場合、デジタル写真測量によって撮影された複数の画像データからSfMソフトを用いることで比較的短時間に3D点群データを取得可能である。
 
3Dレーザースキャナー計測の場合は、3D点群データを直接取得することが可能である。後工程のTINサーフェスモデル作成などの処理は、いずれの手法を用いた場合も短時間に精度良く作成することが可能である。背景には、特別な経験や技術を必要としないSfMソフトウェアの普及、コンピュータの演算処理速度の飛躍的な向上がある。一方、設計3Dモデルの作成は、依然として人が介在する作業を伴い、時間的損失が大きい。当社では、メガソーラーの案件などを手がけているが、詳細なモデルの作成には非常に手間がかかっていた。動もすれば効率化どころか業務の非効率化といった真逆の状況に陥りかねない。効率化を追求する上では、モデル作成の自動処理の実現は、生産性向上において重要な課題であるといえる。
 
図-3は、比較的緩い傾斜地を対象としたメガソーラーのモデル作成に使用した自動処理の例である。
 

図-3 自動配置プログラムを用いたモデル作成の概要




 
 
この工事は、造成工事を行わず地形なりにメガソーラーを配置する工事であった。配置するパネルの角度は、東西方向、南北方向でそれぞれ異なり、手作業で6,000ブロックを超えるモデルの配置は困難を極めた。そこで、MicrosoftVisual StudioやJavaなどの開発言語を用い、座標データからAutodeskCivil3Dのコマンドを生成するプログラムを開発した。モデルは、プログラムが生成したコマンドをコマンドラインにコピー&ペーストするだけで自動的に配置される。数カ月を要するモデルの配置は、2時間で完了した。 
 
また、冒頭に示したトップランナー施策の全体最適の導入は、主としてコンクリート工を対象とした取り組みであり、構造形式の標準化やプレキャスト化による生産性の向上を目指している。当社では、プレキャスト化に主眼を置き、ICTを活用した管理手法をEPS軽量盛土工に対して適用した(図-4)。
 

図-4 ICTを活用したEPS軽量盛土の管理




 
 
EPS軽量盛土は、2m×1m×0.5mの発泡スチロール製の直方体EPSブロックを積み重ねて道路の路体とする構造である。複数の工場を供給元としたすべてのEPSブロックには、工場出荷時に固有の番号を記録したQRコードを貼付した。現場では、位置座標の取得ができるQRコードリーダを用いて、材料の検収をし、EPSブロック設置位置等の情報についても同様にしてデータベースに記録した。データベースに記録された結果をもとにJavaで作成したプログラムを用いて、GNSSによる位置情報のズレを修正しながらCIMモデルを自動生成し、現場とCIMモデルのタイムラグを短縮した。この手法は、株式会社 科学情報システムズ(神奈川県横浜市)と共同開発した。
 
 

大規模造成工事における仮設防災計画の最適化手法の確立

 UAVで得られた3D地形データは、従来の等高線と比較すると圧倒的に精度が高く、撮影後すぐに利用できるため地形データの経年劣化がない。このデータを用いて仮設防災計画を行い、予測精度の精緻化を図っている。図-5は、Autodesk Infra Works 360で検討した事例である。
 

図-5 大規模造成工事における仮設防災計画の最適化




 
 

おわりに

 i-Constructionに示されたトップランナー施策について当社における具体的な取り組みを紹介した。ICTの積極的な活用は、意思決定や合意形成のスピードを向上させ、プロジェクトの全体最適化に大きく寄与することが分かった。今後は、これまで見逃されていた生産性を低下させている原因に対して部分最適化を行うとともに、全体最適化を推進してさらなる生産性向上をめざし、魅力ある建設業を創造していく責務があると考えている。図-6は、ICT土工の近未来予想図である。
 

図-6 建設重機の自動施工システム




 
 

参考文献

佐野健彦・大西隆夫
i-Constructionを全面活用した造成工事の実績および精度検証,平成28年度近畿地方整備局研究発表会論文集,国土交通省,新技術・新工法部門:No.12,2016
 
羽賀研太朗・佐野健彦・大上敏弘
ICTを活用したEPSブロック施工の出来形管理,土木学会第71回年次学術講演会講演概要集,土木学会,2016
 
 
 

日本国土開発株式会社 土木事業本部 技術部
CIM/ICT推進チームリーダー 佐野 健彦

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2017
特集1「i-Construction時代の到来とCIM」



 
 

最終更新日:2017-06-05

 

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