• 建設資材を探す
  • 電子カタログを探す
ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 防災減災・国土強靭化 > 自治体・企業のBCP (事業継続計画) に役立つ停電対策機器

 
災害発生時に行政や企業の活動が機能停止に陥るのを未然に防ぐBCP(事業継続計画)において,停電対策は極めて重
要である。以下,災害発生時のBCPに役立つ停電対策機器の一部について,概要と動向を簡単にまとめてみた。
 
 

◆非常用発電装置

いわゆる非常用電源は,一般に①消火栓やスプリンクラーなどの消防設備に電力を供給する電源(消防法で規定),②排煙機や非常照明などの建築設備に電力を供給する電源で,予備電源と呼ばれるもの(建築基準法で規定),③停電時の業務継続を目的に設置される保安用/非常用の電源(電気設備技術基準で規定)の3つに分類される。このうち,BCPで想定されるのは③が中心となる。
 
ディーゼルエンジン,ガスエンジン,ガスタービンなどがある。コンパクトで搬入しやすいこと,停電時に自動的に始動すること,震災に強いパッケージ構造であること,などがポイントとなる。総務省などの調査によれば,大規模な停電リスクが露呈した東日本大震災以後,非常用発電装置の設置が進んでおり,2016年の熊本地震でも停電時に始動しなかったり始動後に異常が生じたりすることもほとんどなく,BCPを支える基幹設備として定着が進んでいると言える。
 
今後の課題としては,災害が長期化した場合の燃料切れなどへの対処,燃料や冷却水を供給する配管類の耐震性の向上,などがあげられよう。負荷容量や運転時間の設定はBCP計画の根幹に関わることで,設置に際しては詳細を検討する必要がある。また,浸水対策として高い位置に設置場所を変更することも必要となる。
 
東日本大震災の被災地の避難所では,工事用発電機や可搬型ポータブル発電機が利用されたが,工事用は操作方法が複雑で使いにくく,ポータブル型は電力量が十分でなかったことなどから,避難所専用の発電機も製品化されている(写真- 1)。
 

写真-1 避難所専用の非常用発電機(日本車輌製造)




 

◆移動電源車

発電装置や電力供給ケーブルなど電力供給に必要な機器一式を車載した,文字どおり「動く発電所」であり,被災地にいちはやく到達して電源を供給する。工事現場での仮設電源,工場などでの非常用バックアップ電源,受変電設備のメンテナンス時の仮設電源,イベント利用など,災害時以外でも広く活用されている。従来は通信会社などを中心に配備が進んできたが,東日本大震災で移動電源車が活躍したことから,災害時の電源対策として普及が進んでいる。
 
ディーゼルエンジンやガスタービン(大型トレーラー)が中心。普通免許(準中型・中型免許)で運転可能なバン型(写真- 2)が一般的で,低圧から高圧までバリエーションは広い。
 

写真-2 バン型移動電源車(明電舎)




 
発電装置の小型・軽量化による車両のコンパクト化,防音材や消音装置などによる騒音・振動の低減,到着してから送電開始までの時間短縮,ケーブル接続の容易さなどがポイント。バックアップ電源の場合,商用電源との無停電による切替も重要な要素となる。
 
東日本大震災など大規模災害発生時にはガソリンや軽油が入手困難となり,移動電源車が稼動できないリスクもあることから,LPガス(液化石油ガス)による移動電源車も製品化されている。各家庭のボンベなど調達が容易な分散型エネルギーであるLPガスの強みを活かしたものである。
 
写真- 3は,悪路でも走破可能なクローラ型移動電源車である。土砂崩れや浸水などにより道路の通行が困難になった場合,孤立した被災地の生活再建と迅速な復旧に貢献する。普通タイヤとキャタピラ式車輪を脱着交換でき,クローラ装着時の車重を7トン以下に車体を軽量化したことで,普通免許でも運転を可能にしている。
 

写真-3 クローラ型移動電源車(神鋼造機)




 

◆非常用電池

①リチウムイオン電池
酸化・還元反応を利用し,正極と負極の間でリチウムイオンが行き来して充電と放電を繰り返すことで,直流の電力を生み出す二次電池。鉛電池,ニッカド電池,ニッケル水素電池などと比べ,エネルギー密度が高いため小型・軽量化できる,大きな出力が得られ充電も速い,寿命が長いなどの特長があることから,BCPに最も適した電池と言われている。
 
災害時のパソコンやネットワークの維持に不可欠で,ポータブルタイプも多数製品化されている。また,ソーラー発電システムと組み合わせることで昼間の余剰発電を蓄え,深夜の割安な電力を使用する自立型蓄電も可能となり,ピークカットやピークシフトを行うことで電力の平準化とデマンドコントロールが図れる。
 
一方で,セルの不具合に起因するとされる発熱や発火,発煙などの症状が指摘されており,災害時は過充電や過放電,急速充電などを避け,適切に使用する必要がある。最近では,発火などの発生を抑えることで消防法の認定を受けた製品も販売されている。
 
写真- 4は,独自のユニット分割構造により,中規模電力を専用リュックで持ち運び可能にした可搬型スマート電源。最大8ユニットまで接続でき,最大4.4kWhまで拡張可能。LTE/Wi-Fi を搭載しており, Wi-Fi アクセスポイントとしても活用できる。
 

写真-4 可搬型スマート電源(協和エクシオ)




 
②空気電池
正極に空気中の酸素,負極に亜鉛やマグネシウム,アルミニウムなどを用いた電池。密閉されている本体のシールを剥がすと,金属が空気と反応して放電が始まる。空気亜鉛電池,マグネシウム空気電池などが製品化されている。
 
現状では一次電池であるが,負極に用いる金属を補充する仕組みを持たせることなどで充電式電池や燃料電池としての研究も進められているという。
 
写真- 5は,水や海水を入れるだけで発電できるマグネシウム空気電池。長期間保存可能で,非常時に水を入れるだけで多くの携帯機器に電力を供給できる。負極に用いるマグネシウムは塩水に溶けやすく,原子が放出する電子の量も多いため発電効率が向上する。
 

写真-5 マグネシウム空気電池(古河電池)




 

◆無停電電源装置(UPS)

無停電電源装置は,商用電源における瞬時電圧低下,サージ(瞬時過電圧・過電流),電圧変動,周波数変動,ノイズなどのリスクからIT機器を守るために設置され,災害による停電時はもとより平常時から重要な機能を果たしている。
 
給電方式は,常時インバータ給電方式(常時:商用電源と同期しながらインバータで給電,停電時:無瞬断で蓄電池からインバータを通じて給電),常時商用給電方式(常時:商用電源から給電,停電時:蓄電池からインバータを通じて給電),ラインインタラクティブ方式(両者の中間的な方式)などがある。製品タイプとして,タワー型やラックマウント型などがある。
 
規模や用途などの利用シーンを想定して多様な製品群が用意されており,バックアップ時間,接続する機器の電源容量などを勘案して最適なシステムを構築する。
 
 

◆避雷関連機器

IT 社会を支える最新の電子機器は,微弱な電圧で動作しているため,雷サージ(雷による異常電流・異常電圧)のような大きい電圧に対して機器が破損しやすく,一度被害を受けると復旧に多くのコストと日数を要するなど,甚大な被害を受けることから,雷害リスクの低減はBCPに是非とも組み入れるべきである。雷保護システムは下記に整理される。
 
● 外部雷保護システム:建物や人を直撃雷から保護する。受雷部から引下げ導線を経て接地システムにより電流を大地に流す方法。
 
● 内部雷保護システム:建物内の電気・電子機器・設備類を雷サージから保護する方法。建物内の金属部分を導体またはSPD(サージ防護デバイス )で接続して,発生する電位差を低減する「等電位ボンディング」が一般的。
 
設備や機器を破損する雷サージは,電力線,通信線などさまざまな経路で侵入するため,侵入経路ごとにSPDなどによる対策等を実施する。SPDは侵入したサージを分流させて電圧を制限し,機器を過電圧破壊から保護するもので,大きく電源用と通信用,クラスⅠ(直撃雷用)とクラスⅡ(誘導雷用)がある(写真- 6は通信用クラスⅡ SPD)。
 

写真-6 通信用クラスⅡSPD(サンコーシヤ)




 
 
【出典】


積算資料公表価格版2017年03月号



 

最終更新日:2023-07-10

 

同じカテゴリの新着記事

ピックアップ電子カタログ

最新の記事5件

カテゴリ一覧

話題の新商品