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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建築施工単価 > 東日本大震災からの復興支援に係るさまざまな取り組み

独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)では,発災直後から復旧・復興活動のため被災地へ職員を派遣し,平成24年からは復興市街地整備や災害公営住宅建設など復興まちづくり支援に取り組んでいます。
 
発災から6年が経過し,駅や商業施設の開業,高台住宅地の完成,災害公営住宅への入居が始まり,新しいまちが完成しつつあります。
 
平成28年度からの「復興・創生期間」においては,ハードだけでなくソフトも含めたきめ細やかな対応が求められており,UR都市機構においても,コミュニティ形成に配慮しながら災害公営住宅の整備に取り組んでいます。
 
被災された皆様が一日も早く安心した生活を送れるよう,安全管理,品質管理,工程管理に努めつつ,全力をあげて復興市街地整備や災害公営住宅の建設などの事業を着実に進めています。
 
ここでは,UR都市機構が実施する復興支援の事例と取り組みについて紹介します。
 
 

1. はじめに

東日本大震災発生から6年が経過し,各地で復興事業が本格化しています。UR都市機構においても,24の被災自治体と復興まちづくりを協力して推進するための覚書・協定等を締結し,平成29 年1 月4 日現在,現地456名の体制で復興市街地整備や災害公営住宅整備等の復興まちづくりを支援しています(図− 1)。
 

【図− 1】UR都市機構の復興まちづくり地区一覧(平成29 年1 月4日時点)




 
本稿では,前半でUR都市機構における復興支援事業の取り組み全般を紹介し,後半では復興支援に係るさまざまな取り組みについて紹介します。
 
 

2. 震災復興支援メニュー

UR都市機構が行う震災復興の支援メニューは以下のとおりです。
 

(1)復興市街地整備事業

(12市町村22地区1,300ha の面整備を受託)
「東日本大震災復興特別区域法」または「福島復興再生特別措置法」に基づき被災自治体からの委託により,UR都市機構が土地区画整理事業,防災集団移転促進事業などを実施しています。
 
また,中心市街地では,フルパッケージ(計画・換地・補償・工事・調整)で面整備事業を受託しています。
 

(2)災害公営住宅の建設および譲渡

(津波・地震・原発避難者向け5,834戸を建設)
被災自治体からUR都市機構への建設要請(機構法に基づく法定要請)を受け,災害公営住宅を建設し,被災自治体に譲渡しています(表− 1)。
 

【表− 1】災害公営住宅支援地区の一覧表(平成29 年1 月4日時点)




 
 
被災自治体は,完成後の一括譲渡になるため事務負担が軽減されます。
 

(3)コーディネート業務

被災自治体からの委託に基づき,被災自治体の発注事務の軽減に資する工事発注支援や戸建災害公営住宅買取事業への技術支援,被災自治体自らが実施する土地区画整理事業の総合支援,復興まちづくり事業計画の策定支援など,さまざまな支援を行っています。
 
 

3. 災害公営住宅整備の事業事例

UR都市機構は被災三県の各市町村,および福島県から85地区5,834戸の建設要請を受けており,平成29年3月末には約8割の住宅が完成予定であり,残りの約2割についても,平成29年度中におおむね完成予定です。
 
建設要請が早かった地区から順次完成していますが,完成地区における特徴的な取り組み事例を紹介します。
 
(1)岩手県大槌町 末広町町営住宅
大槌町は,震災により町の人口の約8%の方が亡くなり,この中には当時の町長をはじめとした町役場職員も多く含まれていました。
 
当該住宅は,自然豊かな周辺街並みとの調和,コミュニティの形成に配慮するとともに,緊急時への備えとして地域の防災拠点の整備を行いました(写真− 1)。
 

【写真− 1】末広町町営住宅(左上は1 階・沿道部分,右上はエントランス部分)




 
 
①周辺街並みとの調和に配慮
自然豊かな地域の景観に配慮したアースカラー等の色彩を用いるとともに,地域の伝統的な住まいの雰囲気を残すために,1階部分に地元産材の雁木(がんぎ)や瓦屋根を配したデザインを取り入れています。
 
また,沿道空間には,伝統行事のお盆の送り火「松明かし」が置けるスペースを設けています。
 
②コミュニティ形成に配慮
入居者が気軽に立ち話をしたり,集まったりできるように,1階部分にお茶っこや健康体操ができる「集会所」,神楽の練習など多目的に使える通り抜け空間「みんなの広場」,エントランスにはちょっとした待ち合わせにも使える「小上がりの畳の間」を設けるなどして,コミュニティ形成に配慮しています。
 
③地域の防災拠点を整備
周辺市街地から視認可能な建物であるため,6階部分に避難デッキを設置するとともに,避難デッキに上がることのできる屋外階段を設け,有事の際には津波避難ビルとして利用できるように整備しました。
 
 
(2)宮城県多賀城市 市営桜木住宅ほか3 地区
多賀城市は,津波による浸水範囲が市域面積の約3分の1に及び,甚大な被害を受けたため,多賀城市内全4地区532戸の災害公営住宅の整備をUR 都市機構に要請しました。
 
平成26年10月に桜木住宅,平成27 年9 月に新田(にいだ)住宅,平成28年3月に鶴
ケ谷(つるがや)住宅,同年12月に宮内地区の整備を終え,完成を祝う記念式典が
開催されました。
 
①安全・安心,コミュニティ形成に配慮
各地区の住宅は,それぞれの立地に応じ周辺市街地の景観に配慮したデザインにするとともに,防災倉庫を設置し,津波避難ビルの機能を盛り込むなど,安全・安心に配慮し整備を行いました。
 
また,コミュニティが生まれやすい建物を目指して,集会所,住棟に設けられたリビング空間,屋外の広場など,入居者のみならず地域住民も交流できるスペースを整備しています。
 
②市営桜木住宅
桜木住宅は,浸水した地区に立地するため,安全性に配慮し2階以上に住宅を配置するとともに,外部階段から上がることのできる屋上に避難スペースと防災倉庫を整備することで,地域の一時避難場所に指定されています。
 
また,コミュニティが生まれやすい建物を目指して,2階レベルをデッキで連結し,デッキに面して「みんなのリビング」という入居者の交流スペースおよび,地域に開かれた集会所を整備するとともに,あわせて高齢者生活相談所,被災した保育所を併設するなど,高齢者や子育て世代などの多様な世代が共生する「ミクストコミュニティ」が実現しやすい住宅になっています。
 
なお,当該住宅は,建物の工夫が評価され,平成26年度に全建賞(主催:一般社団法人全日本建設技術協会)を受賞しました(写真− 2)。
 

【写真− 2】市営桜木住宅(左上・下),市営鶴ケ谷住宅(右上)




 
 

4. 災害公営住宅整備のコミュニティ形成支援事例

災害公営住宅への入居希望世帯は,高齢者の単身世帯や,夫婦のみの小規模世帯の割合が高いため,高齢者世帯の孤立化,引きこもりなどが懸念されています。
 
したがって,仮設住宅からの移転後においても継続した見守りなどの生活支援サービスやコミュニティ形成の支援などが求められています。
 
そこで,UR都市機構が住宅の建設(ハード)だけではなくコミュニティ形成の支援(ソフト)に取り組んだ事例を紹介します。
 
(1)岩手県大船渡市におけるコミュニティ形成支援
大船渡市は,建物被害が全世帯の4割弱に及び,甚大な被害を受けたため,大船渡市内14地区227戸の整備をUR都市機構に要請しました。
 
平成28年7月に全地区の建設を終え,完成を祝う記念式典が開催されました。
 
①コミュニティ形成支援への取り組み背景ときっかけ
応急仮設住宅から災害公営住宅へ移転した入居者からは,ようやくきれいな住宅に住むことができることへの喜びの声が聞こえてくる一方で,これまでボランティアや市からの手厚い支援を受けていた仮設住宅から,自立を求められる災害公営住宅への移転に対する不安の声も聞かれました。
 
それらの声の中で,特に気がかりであったのが「家からあまり出なくなった」「周りの人と話す機会がほとんどない」など,入居者間のコミュニティや地域との関わりが薄いことへの不安の声です。
 
そこで,UR都市機構は,大船渡市,岩手大学と連携し災害公営住宅の入居者間や周辺地域とのコミュニティ形成,自治組織の形成,さらに次世代の復興を担う人材育成への支援・貢献等を目的にさまざまな取り組みを実施しています。
 
②集会所等を活用したコミュニティ形成支援
大船渡市における平団地ほか3地区では,災害公営住宅竣工後に「入居者コミュニティが形成できていない」「集会室が利用されていない」という状況のまま入居者移転後数カ月が経過していました。
 
入居者に高齢者も多いため見守りの観点からも早期のコミュニティ形成が重要であると考え,UR都市機構は,岩手大学コミュニティ再建支援の専門家と連携し,今まで培ってきた賃貸住宅におけるノウハウをもとに,自治組織形成支援ならびに入居者間および地域コミュニティ形成支援を行いました(自治会ルールなどの説明,顔あわせ,代表者の決定,懇親会,集会所備品の整備など)。
 
この取り組みを通して「自助,共助を阻害せず,自立につながる取り組みが望ましい」と住民主体性の醸成を提言する専門家の言葉どおり,その後に書道や園芸クラブなど独自のサークル活動に発展するとともに,花壇作りなどの住民主体のイベントも開催され,住民の共助・自立の大切さを改めて認識しました(写真− 3)。
 

【写真− 3】 上山東アパートにおける書道教室の様子(左),平団地における花壇作りイベントの様子(右)




 
 
③地元中学生への社会科見学会をきっかけとしたコミュニティ形成支援
大船渡市の所通東(ところがよいひがし)アパートを整備したUR都市機構は,地区に隣接し,工事に協力いただいた「越お喜き来らい中学校」の生徒を対象に,復興教育,キャリア教育,入居者とのふれあい・交流のきっかけづくりを通した地域への貢献を目的として社会科見学会を住宅引渡し直前の平成27年11月に開催しました。
 
災害公営住宅についての講義・見学ツアーを行ったあとに,地元中学生と入居者の親交を深めてもらうきっかけづくりとして,入居者との交流を行うアイディアを出してもらい,中学生からは「餅つき,餅まき」などさまざまなアイディアを発表してもらいました(写真−4 ,上)。
 
また,見学会1年後の平成28年11月には,見学会のアイディアをもとに災害公営住宅の入居者と越喜来中学校の生徒との交流会が開催され,交流会では「ベンチ修理」や大船渡の伝統的なお菓子である「かまもち・なべやき作り」が行われました(写真−4 ,下)。
 

【写真− 4】所通東アパートにおける社会科見学会の様子(上),交流会の様子(下)




 
 
この交流会では,越喜来中学校の体育館で一部の仮設住宅撤去に伴い使われなくなった老朽化したベンチの修理が行われ,入居者と生徒がグループになり,共同作業で一緒に汗を流しベンチを再生させました。再生したベンチは,中学校と所通東アパートで利用されます。
 
また,所通東アパートの集会所では,かまもち・なべやき作りが行われ,ベンチ作りと同様に,お菓子作りに慣れた入居者と生徒がグループになり,共同作業で楽しみながら料理ができました。
 
それぞれの作業終了後は,かまもち・なべやきを食べながらの「お茶っこ」が行われ,所通東アパートの自治会長さんからは「楽しい思い出ができて嬉しかった。アパートの集会室は開放しているのでいつでも遊びに来てほしい」,生徒からは「いろいろ教えてもらって楽しかった」と発言があり,作業中やお茶っこ時の入居者や生徒の笑顔が印象的でした。
 
この取り組みを通して,入居者同士の交流,入居者と地元中学生等の地域との交流のきっかけづくりの大切さを改めて認識しました。
 
 

5. 東日本大震災復興フォト&スケッチ展

UR都市機構では,復興の歩みを広く発信することで,被災地の復興を支援する目的として平成26年から東日本大震災復興フォト&スケッチ展を毎年開催しています。
 
3回目の開催となった平成28年は「復興の歩み 〜つなぐ みんなの想い〜」のテーマのもと,平成28 年3 月10日から募集を開始し,全国から349作品(応募者131人)の応募をいただきました。
 
多くの応募を受け有識者等による審査を行い,平成28年12月1日に受賞作品をUR都市機構のホームページ上で発表しました(写真− 5)。
 

【写真− 5】復興の歩み大賞(フォト)『記憶と記録』(左),復興の歩み大賞(スケッチ)『復興に流れる白滝 〜大槌風景〜』(右)




 
 
また,受賞作品を中心とした応募作品の展示会を平成29 年2 〜 3月に横浜市,福島市,盛岡市,仙台市で開催しました。
 
 

6. おわりに

平成29 年3 月で,東日本大震災から6年が経過しましたが,UR都市機構が復興支援に取り組む震災復興事業はいまだ道半ばです。
 
被災地では,早期復旧と安定した居住環境の確保のため,一日も早い復興まちづくりが求められる一方で,被災地の工事が本格稼働しているため,資材等の調達難,労働者不足やそれに伴う工事遅延・工事費高騰等の施工確保の問題が懸念され,顕在化した地区もあります。
 
UR都市機構が現在復興支援に取り組んでいる災害公営住宅は,安全管理,品質管理,工程管理に努めており,平成29年3月末には約8割の住宅が,残りの約2割についても平成29年度中におおむね完成予定です。
 
また,今回の被災地の多くは,震災以前から高齢化が進み,被災を契機に人口減少が懸念される地域であるため,復興まちづくり(ハード)だけではなく,まちの入居者や被災者の移転後のコミュニティ形成等の支援(ソフト)が重要です。そのため,UR都市機構が支援する一部の地区において,入居者間や地域住民同士の交流を育むきっかけづくりとして,今回紹介したようなコミュニティ形成等に配慮した整備や支援にも取り組んでいます。
 
UR都市機構では,震災復興事業の事業進捗に合わせた現地体制を確保するとともに,安全管理,品質管理,工程管理に努めつつ,全力をあげて復興支援に取り組む所存ですので,引き続き関係者の皆様方には,ご理解とご支援・ご協力をお願い申し上げます。
 
 

独立行政法人都市再生機構 震災復興支援室
森岡 拓也

 
 
 
【出典】


建築施工単価2017春号



 

 

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