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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 河川管理施設周辺の空洞化を測定する技術 〜九州地方整備局の取り組み〜

 

1. はじめに

河川堤防は住民の生命と資産を洪水から防御する根幹的防災構造物であり,安全性の確保が極めて重要な施設である。
 
現在の長大な堤防の多くは,古くから逐次強化を重ねてきた長い治水の歴史の産物であり,これまでの堤防延長,堤防断面の確保,水門・樋管等河川構造物の整備がなされてきたことにより,氾濫原における人口や資産の集積は著しいものとなっている。
 

写真− 1 樋管(河川構造物)




 
この河川堤防を横断して設けられる水門・樋門等構造物周辺堤防は,連続した堤防に比べ,材料が異なる構造境界面を有することから長期にわたり安定的に密着させることが難しく,空洞などが形成され,洪水に対して弱点となる場合がある。
 
特に基礎地盤が軟弱な箇所では,支持杭基礎を用いて設置された事例が多く,長年の圧密による沈下のため構造物とその周辺堤防においては不等沈下が生じ,構造物周辺でゆるみや空洞が生じやすい状況にある。
 
また,構造物周辺に生じるゆるみや空洞は進行性を有しており,グラウト注入等の対策を実施しても,その後の沈下継続により空洞の再発が確認された事例もあり,継続的に日常的な維持管理,点検,補修などの対策を実施していくことが重要である。
 
現状では,この河川構造物周辺に生じる空洞に対して,通常点検では,目視による点検を基本としているため,スクリーニング(ふるいわけ)を一定の精度で行うことが困難な状況にある。
 
この空洞の有無とその範囲を比較的容易に測定確認できれば,早期の状況把握および確実な対策を施すことが可能となることから,新技術活用システム(NETIS)の「テーマ設定型(技術公募)」を活用し,九州地方整備局において「河川構造物周辺の空洞化を測定する技術」の技術公募,技術の検証,評価を実施したことからここに報告するものである。
 
 

2. 技術公募の概要

「河川構造物周辺の空洞化を測定する技術」の技術公募に当たり,求めた要求性能等は次のとおりである。
 
(1)要求性能
 ①目視点検と同等以上の精度で非破壊にて空洞化の検出を行えるもの。
 ②サウンディング試験を用いた空洞化の点検と同等以上の精度が期待できるもの。
 
(2)新技術に求める要求性能の具体例
 構造物下部,側部もしくは上部の空洞を検出できる技術。
 
(3)技術の検証方法
 ● 河川堤防における樋管周辺の現場または供試体により技術検証を予定。
 上記条件を基に平成27 年2 月4 日〜 3 月4 日,平成27年9月10日〜 11月9日の2回にわたり公募を実施した結果,
 2技術の応募があった。
 
 

3. 応募技術の概要

応募のあった2技術の概要は次のとおりである。
 
(1) 技術①
名称: 鉄筋コンクリート対応型空洞調査用GPR システム(QS-150036-A)

 
《技術概要》
本技術は,防水型および軽量陸上型を備えた鉄筋対応型GPR(地上レーダ)システムを適用することにより,従来装置では困難とされていた鉄筋コンクリート背面空洞を把握することを可能とした技術。
 
《要求性能》
①通常点検と同等以上のスクリーニングを目的とした空洞化の有無が非破壊で確認できる技術。
 



 

図− 1  鉄筋コンクリート対応型空洞調査用GPRシステムの概要




 
 
(2) 技術②
名称: ピエゾドライブコーン(PDC)
(TH-100032-A)

 
《技術概要》
液状化調査に利用されているPDCは,貫入抵抗と同時に打撃貫入時の過剰間隙水圧も計測する調査手法である。樋管等空洞調査において,空洞内では打撃時の過剰間隙水圧がほとんど生じないこと,また,間隙水圧が瞬時に消散することに着目し,PDCを適用することにより空洞化範囲を把握する技術。
 
《要求性能》
②サウンディング試験を用いた空洞化の点検と同等以上の精度が期待できる技術。
 

図− 2 PDCの概要




 

4. 技術の検証

技術検証に当たっては,技術の成立性についてはそれぞれの技術で要求性能が異なることから,その技術に即した供試体を九州技術事務所構内に製作し,平成28年8月下旬〜9月上旬で実施した。
 
また,実現場での検証においては,平成28年9月に筑後川河川事務所管内の上西樋管周辺において,施工性,安全性,周辺環境への影響等について確認を実施した。
 

図− 3  鉄筋コンクリート対応型空洞調査用GPRシステムの供試体




 
 
(1) 技術①: 鉄筋コンクリート対応型空洞調査用GPR システム
 
供試体の製作は,大きさの異なる発泡スチロール,水袋等の模擬空洞を配置した躯体構造物を製作し,検証は実際にこの躯体を調査技術で測定し,模擬空洞の抽出が可能であるかの技術的検証を実施した。
 
実現場での検証においては,本技術が防水性を有し,樋管底部に水がある場合にも測定可能な技術であることを検証するため,樋管内に水がある場合の施工性等についても検証を実施した。
 

写真− 2  鉄筋コンクリート対応型空洞調査用GPRシステムの供試体による検証状況

写真− 3  鉄筋コンクリート対応型空洞調査用GPRシステムの実現場による検証状況




 
(2) 技術②:ピエゾドライブコーン
 
本技術は打撃貫入試験であることから,土中に大きさの異なる空洞物を配置,埋め戻すことにより模擬空洞を作成し,実際に埋め戻した後の地盤から模擬空洞の抽出が可能であるかの技術的検証を実施した。
 
 



図− 4 PDC の供試体

写真− 4 PDC の供試体による検証状況




 
実現場での検証においては,本技術が打撃貫入装置を用いた技術であることから,運搬,傾斜面の設置,撤去等の施工性について検証を実施した。
 

写真− 5  PDC の実現場による検証状況




 

5. 検証結果

2技術の試行実証評価結果は次のとおりであった。
 
(1) 技術①: 鉄筋コンクリート対応型空洞調査用GPR システム
 
《要求性能に対する評価》
● 非破壊による空洞の有無が抽出可能である。
 しかし,空洞化初期の小空洞および水みちの抽出は困難である。
● 本技術の活用により,今まで困難であった樋管底部に水がある(水深30cm程度以下)状
態での空洞有無の調査が可能となる。
 
《施工性等の評価》
● 調査関連機器は,軽量,小型で安全に運搬,調査を行うことが可能。
● 周辺への騒音,水質への影響はない。
 
《技術への啓発》
● 樋管の配筋ピッチ,空洞間隔によっても結果にバラツキが生じる可能性があるため,
 今後さまざまな条件におけるデータを収集し,体系化することが望まれる。
 
 
(2) 技術②:ピエゾドライブコーン
 
《要求性能に対する評価》
● 空洞を含む比較的緩い地層での厚さおよび位置の抽出が可能である。
 ただし,”Nd値(換算N値)= 1”程度の緩い地層においては,300mm以下の小空洞等の抽出は困難である。
 
《施工性等の評価》
● 調査機器はタイヤを配しており,比較的容易に運搬可能である。
● 打撃時は4本のサポートを用いているため構造的に安定している。
● 打撃音が発生するが水質等,周辺環境への影響はない。
 
《技術への啓発》
● 解析手法を体系化するため,さまざまな条件におけるデータを収集することを望む。
 なお,上記結果は,九州地方整備局が開催する新技術活用評価会議において報告している。
 
 

6. おわりに

テーマ設定型(技術公募)は,現場ニーズ,行政ニーズ等求める性能に対して技術を公募し,ニーズに合致した技術であるかを検証,公表し,その技術の活用促進を図るものである。また,検証結果からさらなる技術開発を促し,技術のスパイラルアップを図るものとして有効な手段であると考えている。
 
今後もこのような取り組みによりニーズ・シーズのマッチングによる技術開発・活用の活性化を期待する。
 
なお,今回の試行実証評価結果の詳細については「NETIS維持管理支援サイト」において公開している。
 
http://www.m-netis.mlit.go.jp/
 
※本研究は,内閣府総合科学技術・イノベーション会議のSIPインフラ維持管理・更新・マネジメント技術によって実施されました。
 
 

九州地方整備局 企画部 施工企画課     課長補佐 坂元 豊久
九州地方整備局 佐賀国道事務所 品質確保課 課長   崎野 信二
九州地方整備局 企画部 施工企画課       施工係長 田原 秀樹

 
 
 
【出典】


積算資料2017年06月号



 

 

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