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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 落石対策の特殊工法〜特長と留意点〜

 

はじめに

私共が運営している「いさぼうネット」は,斜面防災対策に関する情報を取り扱っています。斜面防災対策に関する情報の1つとして,落石対策に関する情報も掲載しています。落石に関しましては,特殊工法の紹介以外にも「吉田博の落石研究室」,「右城猛の落石対策設計演習」といった技術内容も掲載しております。現在,落石対策工法を取り扱う団体・企業が約20社登録されており,落石対策工法に関する様々な情報を得ることが増えてきました。今回は経験が少ない技術者を対象に特殊工法を知ってもらうことを目的として,「いさぼうネット」で掲載されている工法の特長や留意点を紹介します。また,新情報として,NETIS(新技術情報提供システム)で掲載されている特殊工法についても触れてみたいと思います。
 
設計技術者の皆さんが参考とする文献の1つとして,「道路土工 切土工・斜面安定工指針」,「落石対策便覧」が挙げられます。この中では,対策工を予防工と防護工に分類し,その特徴などを述べています。なお,予防工は落石の発生を予防する工法,防護工は落下してくる落石を受け止める工法としています。
 
「切土工・斜面安定工指針」では,図−1のようにフローチャートによる対策工の選定を行っています。対策工は,並列的に比較するものとしており,必ず両者とも検討することになっています。この中には,斜面の侵食・風化防止対策や斜面抑止効果なども含まれています。今回は,特殊工法の比較的多い対策工(図−1の赤枠で囲まれた部分)について紹介します。
 

図−1 対策工の選定フロー




 
 

1. 予防工−ワイヤロープ掛工

ワイヤロープ掛工は,巨石に直接ワイヤロープを張り,動かさないように固定する工法です(図− 2)。
 



 
「落石対策便覧」での安定計算では,横ロープとその両端のアンカーで安定度を照査します。横ロープの配置間隔については,0.5m程度が最小間隔とされており,そのため縦の短い岩塊を止めようとする場合は,横ロープやアンカーの設置本数に限りがあるため,対応できない場合があります(図− 3)。
 
ワイヤロープ掛工タイプの新技術として,巨大岩塊固定工法があります(写真− 1)。岩塊にロックアンカーを設置し,その上部斜面にアンカーを配置します。これに特殊なロープで接続し,吊り上げるように抑える工法です。横ワイヤロープを用いれば拘束効果が向上します。これによって,ワイヤロープ掛工に比べ,大きな岩塊や扁平な岩塊にも対応できるようになりました。
 
 

2. 予防工−覆式落石防護網工

覆式落石防護網工は,「落石対策便覧」などの参考図書では,防護工に該当します。いろいろと議論があると思いますが,この覆式防護網の改良型が,ロープ伏工や密着型安定ネット工という類の製品に改良されてきたと考え,今回は予防工として説明します。
 
覆式落石防護網は,縦・横ワイヤロープの端部にアンカーが配置されたものです。表− 1にその一覧を掲載します。
 

表−1 覆式落石防護網の主要な特殊製品(緩衝装置型・伏型・密着型)




 
金網と併せて斜面全体を覆うため広域に落石の発生を抑えます。計算方法としては,転石をネットと地山の摩擦で落石を抑止する方法となります。アンカーで固定されているのは,ワイヤロープ端部のみであるため,地形の凹凸を考えると金網が斜面上の転石にしっかりと固定することが比較的難しく,拘束効果が失われやすくなるため注意が必要です。
 
覆式落石防護網の欠点である落下時の強度不足や拘束力低下を補うため,緩衝装置型の防護網をはじめ,伏型(伏工)や密着型が開発されています。この違いは,①ワイヤロープの配置間隔が異なること,②ワイヤロープの交点にアンカーを打設すること,③特殊な金網を利用することなどが大きな違いです(写真− 2)。
 

写真−2 左:ロープネット工の十字アンカークリップ 右:密着型(パワーネット)の特殊金網(SPIDER)




 
緩衝装置とは,防護網工のワイヤロープに伸びしろを設け,防護した際にワイヤロープも共に挙動できるようにした装置のことで,緩衝金具とも呼ばれています(図−4)。
 

図−4 緩衝装置型:ネットワンの緩衝装置




 
ワイヤロープが移動する際,緩衝金具との間に摩擦力が発生します。この摩擦力がブレーキの役割も担います。緩衝装置を設けることによって,今まで対応できなかった落石エネルギーに防護できるようになりました。
 
 

3. 予防工−接着工

接着工は浮石や転石を,接着材を用いて安定した岩盤や岩塊に固定する予防工です(写真−3:左)。
 

写真−3 接着工の施工例 (左:DKボンド工法,右:SNモルタルボンド)




 
景観を著しく阻害しないため,国定公園や景勝地では特に効果的です。亀裂部分に接着材を充填する場合,洗浄や注入作業が必要になってきます。接着工は充填材の数量算出がとても難しく,特定した浮石や転石に対して,亀裂の深さや長さを十分に調査する必要があります。
 
近年,注目を集めているのが,施工者の安全に配慮した接着工法です。浮石や転石が多数存在する斜面では,施工業者も安心して作業が行えません。そのため,準備工として斜面にある浮石や転石を一時的に止める工法が提案されています(写真− 3:右)。作業員の立ち入りが困難な場合は,ヘリコプターなどで散布を行うことも可能です。ラス張りと併用することで,さらに密着性が向上し,恒久対策として用いられることもあります。
 
 

4. 防護工−ポケット式落石防護網工

防護網工は,縦ロープと横ロープを一定の間隔で配置し金網と併せて防護します。アンカーは,縦,横ロープの端部に配置します。ポケット式は,落下してくる石をポケットで受け止めるため,落石エネルギーが外力となります(写真− 4)。
 

写真−4 ポケット式落石防護網工の施工例 (左:ロングスパン,右:カーテンネット)




 
表− 2に,その一覧を掲載します。
 

表−2 ポケット式落石防護網の主要な特殊製品




 
ポケット式落石防護網は,①金網の吸収エネルギー,②上端横ロープおよび2段目の横ロープの吸収エネルギー,③吊ロープの吸収エネルギー,④衝突の前後におけるエネルギー差の4つの吸収エネルギーの総和が防護網の可能吸収エネルギーとなり評価されます。
 
「道路土工 切土工・斜面安定工指針」では,④衝突の前後におけるエネルギー差について,記載がありませんでした。この件について,公益社団法人日本道路協会が,2013年に「ポケット式落石防護網の設計について」と題し,次の制限において衝突の前後におけるエネルギー差を考慮してよいこととなりました。これにより,従来型のポケット式落石防護網の可能吸収エネルギーの上限が150kJとなっています。
 



 
従来工法では,落石を捕捉できない高エネルギーが生じた場合,緩衝装置を用いた工法が有効になってきます。従来工法と異なる点は,①緩衝装置があること,②支柱間隔が従来工法に比べ広いこと,③高エネルギーに耐えるため各部材が強化されていることなどが挙げられます。
 
 

5. 防護工−落石防護柵工

落石防護柵は,路側に設置することが多いため,大掛かりな仮設が不要なのが特長です。これは,落石が発生した後の除石作業においても効果があります。可能吸収エネルギーは50kJ程度と言われており,ポケット式落石防護網と同じように,①ワイヤロープの吸収エネルギー,②支柱の吸収エネルギー,③金網の吸収エネルギーの総和と落石エネルギーを比較します。
 
落石防護柵は,衝突した落石を一時的に堆積できるようにポケットを設ける場合があります。ポケットはコンクリート擁壁などで構築し,その上部に防護柵を設置します。これにより,防護柵の柵高を抑える効果もあります。
 
防護柵の特殊製品は,とても多く存在します。従来工法に比べ,①緩衝装置がある,②支柱間隔が従来工法に比べ広い,③斜面上に設置できる,④積雪や崩壊土砂といった外力にも対応できる,などが挙げられます。表− 3に,その一覧を掲載しますが,近年ではタイプ別に開発されており,ますます多様になりました(写真− 5,6)。そのため,工法の選定には,他工法に比べ,時間を要するかもしれません。
 

表−3 落石防護柵の主要な特殊製品




 

写真−5 落石防護柵の路側に設置した施工例 (左からループフェンス,ハイパワーロックフェンス,リングネット)




 

写真−6 落石防護柵の斜面に設置した施工例 (左からARCフェンス,MJネット,三角フェンス)




 
 

6. 情報収集と評価−NETIS情報から絞り込む

国土交通省が運営しているNETIS(新技術情報提供システム)は,2017年4月で更新され,落石防護柵の表示件数が少なくなりました。この中の情報には,可能吸収エネルギー,従来工法との比較(何が改善されているのか?),適用範囲などを確認することができます。
 
 

6-1 落石可能吸収エネルギー

現在,NETISで掲載されている落石防護柵の可能吸収エネルギーは図− 5のようになっています。
 

図−5 NETISで掲載されている落石防護柵の可能吸収エネルギー




 
200kJ〜300kJ対応の製品が多いことが分かります。従来の落石防護柵は,可能吸収エネルギーが約50kJとすると特殊工法は,その10倍〜60倍の吸収性能があることが分かります。
 
 

6-2 落石防護土堤および溝

落石防護土堤および溝は,エネルギー評価はなく,土堤や溝の寸法を定義して対応しています。用地に余裕がある場合は経済的になる場合があります。落石防護溝の目安寸法が表− 4に示されています。
 

表−4 落石防護溝の目安寸法(Ritchieによる)




 
これは,Ritchie(アメリカ)が提案しているものです。この寸法以外にも岩を露出させておくと落石の反発が大きいため,土や岩ずり,砂礫などのクッションとなる材料で覆うことやポケット部に流入する雨水処理なども考慮することが記されています。
 
国内では,土堤を改良し落石エネルギーで評価した工法があります。それがジオロックウォールやロックジオバンク工法などの補強土壁工法です(写真− 7,図− 6)。補強土壁工法は,土堤内部に補強材(ジオテキスタイル)を配置し,土堤を強くします。落石が直撃する部分には,緩衝材を配置します。実験などによって,5,000kJを超える落石エネルギーが捕捉できます。
 

写真−7 補強土壁工法 (左:ジオロックウォール,右:ロックジオバンク工法)




 

図−6 ジオロックウォール工法の概念図




 
 

おわりに

一部の対策工を簡単に説明してきました。今回,ご紹介した工法は,いさぼうネットに掲載されている工法であり,ほんの一部に過ぎません。また,留意事項についてもまだまだ沢山あります。詳しい情報は,いさぼうネットやNETISなどで確認してください。
 
さて,いさぼうネットは,今年の7月で20周年を迎えます。斜面防災に特化して情報を広く公開してきましたが,これも皆様方のご支援があってのことと実感しております。この場をお借りし,厚く御礼申し上げます。7月からは新しいサービスをご提供する準備もしておりますので,是非,ご期待ください。このような場をご提供いただいた一般財団法人経済調査会の皆様を始め,画像等をご提供いただいた関係各位に厚く御礼申し上げます。
 
【参考文献・資料】
1) (公社)日本道路協会:道路土工 切土工・斜面安定工指針,2000.6
2) (公社)日本道路協会:落石対策便覧,2009.6
3) (公財)鉄道総合技術研究所:落石対策技術マニュアル,1999.3
4) (公社)地盤工学会:落石対策工の設計法と計算例,2014.12
5) (公社)地盤工学会四国支部:落石対策Q&A,2009.12
6) 吉田博:吉田博の落石研究室,土木情報サービスいさぼうネットHP
7) 土木情報サービスいさぼうネットHP
 
 

いさぼうネット事務局 高森 秀次

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2017年06月号



 

 

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