1 はじめに
首都圏中央連絡自動車道(以下,圏央道)は,都心から半径およそ40〜60kmの位置に計画された,延長約300kmの高規格幹線道路であり,横浜,厚木,八王子,川越,つくば,成田,木更津などの首都圏各都市を連絡し,東京湾アクアライン,東京外かく環状道路などと一体となって首都圏の広域的な幹線道路網を形成する首都圏3環状道路の最も外側に位置する環状道路である。この圏央道は,都心を通り抜ける車両を分散させることによる首都圏の道路交通の円滑化,環境改善,沿線都市間の連絡強化,地域づくり支援,災害時東京都神奈川県千葉県茨城県埼玉県中央環状凡例今回開通区間開通済区間事業中区間E51E4E17E20C4 C3E6E1 E14CAC4E83境古河ICつくば中央IC【図- 1 開通区間】の代替路としての機能など多くの役割を担っている。
平成29年2月26日に開通した境古河IC〜つくば中央IC間は,茨城県猿島郡境町から同県つくば市に至る延長約28.5kmの区間である。今回の圏央道の開通により,東名高速道路から東関東自動車道までの6つの放射道路が接続することとなる。これによって成田国際空港と各放射道路を結ぶ新たなネットワークが形成され,これまでのミッシングリンクの解消,ひいてはより広域的な利便性の向上が図られることとなる。また,本区間の開通を以って茨城県内の圏央道は全線開通し,圏央道全体の開通率は約9割となる(図- 1)。
2 開通により期待されるストック効果
境古河IC〜つくば中央IC間の開通により東名高速道路から東関東自動車道までの6つの放射道路が接続し,圏央道が環状道路としての機能をより一層発揮することで,これまで都心を経由していた交通流が圏央道を経由することとなる。これにより渋滞リスクの減少,移動時間の短縮につながり,利用する沿線輸送業者や観光施設への活用など地域経済に好循環をもたらす効果が期待される。
また,より多くのルートが選択できるようになることで,事故等による通行止め発生時の代替道路としての機能も果たすことができるようになる。
(1)成田空港から関東各地の観光地へアクセスが向上
境古河IC〜つくば中央IC間の開通により,成田国際空港から関東各地の観光地へのアクセスが向上し,観光周遊の促進が期待される(図- 2)。
特に北関東方面へのアクセスがよくなり,例えば,成田国際空港から秩父・長瀞までの所要時間は,開通により最大20分の短縮が可能である(新空港IC ⇒ 花園IC:135 分 ⇒ 115分)(図- 3)。
(2)沿線の大型物流施設約1,600 件,生産性向上が加速
圏央道沿線に立地している大型物流施設は約1,600件あるが,これらにおいて境古河IC〜つくば中央IC間開通による広域的なネットワーク形成により,生産性向上が加速する可能性がある。
また,平成25年から27年にかけて,茨城県は工場立地件数が3年連続全国第1位であり,現在も区画整理事業等に取り組んでいることから,本区間開通で更なる企業立地が期待される(図- 4)。
(3)開通後1 週間の交通状況
境古河IC〜坂東IC間の開通後1週間の交通量は,平均2万2,600台/日だった。
東名高速から東関東道までつながり,利便性が一段と向上し,これまで開通している圏央道の東関東道〜常磐道間,東北道〜関越道間の交通量についても約2割程度増加した(図- 5)。
(4)開通後広域的な観光交流が徐々に拡大
境古河IC〜つくば中央IC間開通により,水戸・偕楽園の梅まつりの来場者からは,圏央道を利用したところ,所要時間の短縮を実感したとの声があった(八王子JCT→つくばJCT 約15分短縮)。
また,偕楽園の梅まつりの来場者数が増加している要因に,圏央道の開通効果があり,今後の観光客増加に期待との声もあった(図- 6)。
3 高速道路ナンバリング
境古河IC〜つくば中央IC間には我が国で初めて高速道路ナンバリング標識が設置された。
ナンバリングの目的は整備が進む高速道路ネットワークで,路線名に併せて路線番号を用いて案内する「ナンバリング」を導入することで,訪日外国人をはじめ,すべての利用者に分かりやすい道案内を実現することである。また,平成29年2月26日の開通セレモニーでは,高速道路で初めて設置されるナンバリング標識の除幕式を行った(写真- 1)。
4 おわりに
最後に,これまでご協力いただきましたすべての方々への感謝と,圏央道が6つの放射道路と接続することにより,日本経済を支える道路となることを祈念する。
【出典】
積算資料2017年07月号
最終更新日:2017-11-20
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