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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > スポーツ施設のストック適正化の考え方〜「スポーツ施設のストック適正化ガイドライン(案)」の概要〜

 

はじめに

スポーツ庁では,地方公共団体が,安全なスポーツ施設を持続的に提供し,国民が身近にスポーツに親しむことのできる環境を整備できるよう考え方を整理した「スポーツ施設のストック適正化ガイドライン(案)」(以下ガイドライン)を策定した。我が国のスポーツ施設は,老朽化した施設の増加と財政状況の悪化の中で,今後,安全な施設の提供が困難となることや,少子高齢社会を迎え,地域ごとに求められるスポーツ施設の量や質が変化していくことが想定される。地方公共団体がこれらの課題に計画的に対応していけるようガイドラインを参考に検討を進めていただきたいと考えている。
 
本稿は,スポーツ施設のストック適正化に関する考え方とガイドラインの概要を紹介する。
 
 

1. ガイドラインの位置づけ

ガイドラインは,「インフラ長寿命化基本計画」(平成25年11月インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議),「文部科学省インフラ長寿命化計画(行動計画)」(平成27年3月文部科学省)に基づく個別施設計画策定のための指針・手引きとして策定した。
 
また,「『経済財政運営と改革の基本方針2016〜600兆円経済への道筋〜』(骨太方針)」(平成28年6月2日閣議決定)に基づき,文教施設の1つである社会体育施設について,集約化・複合化等を,実効性をもって進めるための具体的なガイドラインとして策定した。
 
 

2. スポーツ施設の現状

平成27年体育・スポーツ施設現況調査において,我が国の体育・スポーツ施設は約19万施設あり,このうち6割が学校体育・スポーツ施設,3割が公共スポーツ施設となっている(体育・スポーツ施設現況調査における施設数とは,施設種別ごとの数であり,例えば1つの建物に体育館とプールがある場合には,2施設となる)。
 
また,平成8年度以降の施設数の推移を見ると,継続して減少傾向にあるが,平成20年度調査から平成27年度調査までの期間に減少した施設のうち,小中高等学校等の学校体育・スポーツ施設における減少が約83%,公共スポーツ施設の減少が5%となっており,体育・スポーツ施設の減少は主に小中高等学校において発生しているものと考えられる(図− 1)。
 

図−1 体育・スポーツ施設の施設数の推移




 
図− 1において,公共スポーツ施設とは,教育委員会またはスポーツ部局が所管する施設である社会体育施設(条例上,体育やスポーツを設置目的として設置される文教施設)と,社会教育施設に付帯するスポーツ施設(公民館や青少年教育施設など,条例上,体育やスポーツを設置目的としていない文教施設に付帯して設置されている体育館やグラウンド等)の合計である。社会体育施設のみの施設数は平成11年以降ほぼ横ばいであり(図− 2),公共スポーツ施設の減少は,主に社会教育施設に付帯するスポーツ施設の減少である。
 

図−2 社会体育施設数の推移




 
地方公共団体が設置するスポーツ施設には,これらのほかに,都市公園内の運動施設や,港湾,農業,福利厚生等の施設として設置されている施設が想定される。
 
また,スポーツ施設の老朽化と地方財政の状況について,平成27年にスポーツ庁が全国30市町村を対象に行ったサンプリング調査では,築30年を経た施設が5割程度となっている。
 
施設の老朽化が進む一方,地方財政における体育施設費はピークであった平成7年の6割程度となっている。
 
 

3. スポーツ環境の整備とストック適正化の必要性

3-1 適切なスポーツ環境の整備とストック適正化の必要性

これまで,スポーツ施設の整備は大規模な大会や競技団体からの要望などを契機として,その都度対応を行ってきたことも多く,必ずしも計画的に行われてきたわけではない。その際には,スポーツ施設の整備目的が明確になっていなかったり,整備後の維持管理経費や運営経費,利用料金収入を事前に想定していなかったりする状態のまま,建設が行われ,十分に活用されないまま老朽化に伴って維持管理費が増加していくようなケースも多い。
 
現在も各地でスポーツ施設の整備が行われているが,例えば,既存施設の老朽化・耐震化対策が行われているか,小規模なスポーツ施設を地域に複数整備するのか大規模な施設を1つ整備するのかの比較検証がなされているか,近隣市区町村と施設の共有化を図れないか,当該施設を今後数十年にわたり維持管理できる見通しがあるのか等,十分な検証と計画に基づいた整備が行われていない場合も少なくない。
 
図− 2のとおり,我が国の社会体育施設は,平成11年頃まで増加した後,横ばいであり,また,小中学校には社会体育施設の倍以上の体育・スポーツ施設が潜在的に存在している。このように地域には一定数のスポーツ施設があるにもかかわらず,スポーツ施設が足りないとの声は大きい。新規整備に取り組む前に,既存施設が本当に最大限活用できているか,十分な質のサービスを提供できているかなどを検証し,既存施設の運用改善を図るとともに,利用者の仲間づくりの促進,学校開放等を継続的に図り,安全なスポーツ環境を持続的に提供するために,地方公共団体ごとに,どのような施設がどの程度必要になるのか,将来の人口動態やスポーツの実施状況,スポーツ施設の利用状況等を踏まえた計画を策定する必要がある。
 

3-2 スポーツ施設の安全確保

スポーツによるケガや故障には様々な原因が考えられるが,スポーツ施設の管理不足による事故(施設に起因する事故)については発生しないように施設の管理を行うべきである。
 
スポーツ施設の老朽化によって,一般に施設に起因する事故の発生リスクは高まると考えられる。スポーツ施設を安全な状態で利用者に提供するよう情報収集や適切な維持管理,長寿命化が必要である。スポーツ施設に起因する事故の中で,特に重大な事故につながりうるものとしてプールと体育館のフローリングがある。プールについては文部科学省・国土交通省が策定しているプールの安全標準指針,体育館のフローリングについては消費者安全調査委員会の事故等原因調査報告書を踏まえ,施設の管理を行う必要がある。
 
 
 

4. スポーツ施設のストック適正化に関する基本的な考え方

スポーツ施設は以下のような特徴がある。
 
①様々な施設種別があり,必要なスポーツ施設は地域に応じて異なる
スポーツは多種多様であり,スポーツ施設の種別も多様である。また,体育館のように複数種目が実施できる施設もあれば,実施できる種目が限られる施設もある。さらに,スポーツ施設を必要としないスポーツも多い。地域によって盛んなスポーツが異なることも踏まえると,必要なスポーツ施設は地域の実情に応じて決定していく必要がある。
 
②目的に応じて最適な施設の規模や仕様が異なる
一定規模以上の競技大会などを開催できる規模の施設は,同時に複数の競技者や試合が行えるような規模・仕様が求められるため,地域住民が日ごろの運動のために利用するには過剰な施設となっている可能性がある。このような施設は整備費,維持管理費ともに高くなる傾向にあり,それらに見合う利用が行われているかどうか検証し,近隣自治体との共有化を図るなど,整備・保有することについて慎重に検討を行い,地域住民全体にとって,最適な投資が行われるようストック適正化が進められることが望ましい。
 
③利用料金収入をストック適正化に活用できる
現在,スポーツ施設の多くは利用料金が設定されているが,スポーツ施設をより長期間,安全に利用できる状況を維持するためであれば,利用料金について柔軟な検討を行うべきである。ただし,施設の利用料金見直しにあたっては,そのコストについて十分な情報公開を行う必要がある。
 
④防災施設として位置づけられている
スポーツ庁の調査では,社会体育施設である体育館のうち,7割が地域防災計画等において防災時の避難施設に位置付けられ,避難所,避難場所,防災拠点等として,災害時に使用することとなっており,備蓄や貯水等の機能を有している場合がある。このような施設は,防災上の位置づけを踏まえた検討が必要である。
 

スポーツ庁のホームページでは,「スポーツ施設のストック適正化ガイドライン (案)」全文が掲載されている。




http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop02/list/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/05/30/1385575_02.pdf
 
⑤周辺自治体や民間との連携が想定しやすい
広域連携により周辺自治体や都道府県と保有するスポーツ施設の役割分担を行ったり,既存の民間施設の利用を促進したりすることにより,地方公共団体が自ら多様なスポーツ施設を保有する必要がない可能性がある。
 
⑥学校内に多くのストックが存在している
スポーツ施設のうち6割が小中学校内に賦存しており,ストック適正化の検討に当たっては,既存ストックである学校体育施設の活用を同時に検討すべきである。
 
⑦所管が複雑である
地方公共団体が所管する主なスポーツ施設には,社会体育施設,社会教育施設に付帯するスポーツ施設,都市公園内の運動施設があり,さらに,学校,港湾,農業,福利厚生等の関係部局の所管施設も想定される。また,スポーツ施設以外にも公民館や集会所等がスポーツの場として利用されている。身近にスポーツに親しむことのできる環境の整備を検討するにあたっては,これら所管や目的を超えて連携を図り,検討する必要がある。
 
⑧PPP/PFIにより民間ノウハウの活用が見込まれる
スポーツ施設については,すでに民間事業者によるビジネスが成立していることも踏まえ,民間ノウハウをさらに活用できるよう自由度を認めることにより,利用者に対するサービスの向上と財政負担の軽減を図ることが可能である。このため,ストック適正化の検討に当たっては,より自由度の高い指定管理やコンセッション(公共施設等運営権)方式の導入等により,利用者に対するサービスの向上やコスト削減の可能性を検討することが必要である。
 
 

5. ガイドラインの構成と計画策定手順

ガイドラインは,1次評価(施設の現況評価)と2次評価(スポーツ施設の環境評価)から構成されている。
 

図−3 ガイドラインの構成(1次評価と2次評価)




 

5-1 1 次評価(施設の現況評価)

1次評価においては,まず,地方公共団体が保有する個々のスポーツ施設について,安心・安全・快適な利用に必要となる施設の性能を把握するため,施設単位で安全性(経過年数や躯体の劣化状況等),機能性(バリアフリーやトイレの状況等),経済性(委託料や光熱水費等),耐震性に関する基礎情報を収集・整理する。その情報に基づき,各項目の良・劣の判断を行い,個別施設の方向性(維持/改善/改廃)及び整備手法(長寿命化/機能改修/耐震改修/再整備/廃止)を検討し,その評価結果をとりまとめる(図− 4)。
 

図−4 個別施設の方向性の検討(1次評価)のフローチャート




 
1次評価は,スポーツ施設の安心・安全な利用のために必要となる最小限の基礎情報に基づき,施設の方向性等を簡易的に判定するものである。
 

5-2 2 次評価(スポーツ施設の環境評価)

2次評価は,はじめに,関連計画,人口動態,各種競技の取組状況,地方財政の状況を踏まえて,地方公共団体が保有するスポーツ施設全体の総合的な考え方について政策方針を定める。
 
1次評価における施設の方向性に,政策方針を踏まえて政策優先度を加味して,個別施設の基本方針(機能保持/総量コントロール/機能保持(建替再整備))を定めるとともに,施設不足の解消を行う必要性についても検討する(図− 5)。
 

図−5 スポーツ施設の環境評価(2次評価)のフローチャート




 
政策優先度の判断に当たっては,利用状況(人数・稼働率),ニーズ,施設の整備目的,防災上の位置づけ,周辺の施設分布等の情報を収集し,優先度の高・低の判断を行う。
 

5-3 個別施設計画の検討

1次評価と2次評価を踏まえて個別施設に対する適用手法(長寿命化/耐震改修/集約化等)を定め行動計画を作成する。
 
 
 

おわりに

スポーツ庁では,平成29年3月24日に公表した第2期スポーツ基本計画において,ガイドラインに関する「地方公共団体の取組状況を毎年把握し,先進事例の情報提供等により地方公共団体が行う施設計画の策定を促進する」こととしている。
 
平成29年度は,地方公共団体に対する個別施設計画の策定支援事業を実施し,必要に応じてガイドラインの見直しを図るとともに,事例の収集・発信を積極的に行い,安全で多様なスポーツ環境の持続的な確保を地方公共団体とともに進めていく所存である。各地で行っている取組があれば,随時ご相談や情報提供いただければ幸いである。
 
 

スポーツ庁参事官(地域振興担当)

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2017年08月号



 

 

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