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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 選手や子どもたちが輝ける舞台を提供する芝生のプロフェッショナル味の素スタジアム  ヘッドグラウンドキーパー 池田省治氏に聞く

過酷な環境で芝生を美しく保つ

日本のスタジアムの芝生は,青々として美しく,平坦に保たれているが,その舞台裏には,芝生の状態を常に最適に保ち選手が快適に競技できるよう整える,グラウンドキーパーの方々による地道な努力と工夫がある。
 
池田省治氏は,わが国のグラウンドキーパーの草分け的な存在である。味の素スタジアム(以下,味スタ)などの芝生の管理を手がけ,日本サッカー協会の施設委員としてグリーンプロジェクトの一翼も担う。子どもたちのために校庭芝生化にも尽力するなど,芝生とスポーツ,教育,地域との関係性に広く関わっている。日焼けした顔に満面の笑みを浮かべ,芝生への想いを情熱的に語る池田氏だが,その瞳には理想の芝生づくりを求めて妥協を許さない厳しさが宿る。
 
グラウンドキーパーの仕事は,絨毯のように美しい芝生を整備し,目的に応じて提供すること。味スタはJリーグのFC東京と東京ヴェルディの本拠地で,リーグ戦にカップ戦,コンサートも催される。スケジュールは超過密で,多い時には9日間で4試合が組まれることもある。そんな状況でも芝生のダメージを回復させ,選手や観客に美しい絨毯を提供しなければならない。
 
池田氏が味スタのグラウンドキーパーに就任したのは約8年前。当時元気のなかった芝生は,現在では格段に改善され,美しい芝生の絨毯が広がっている。
 
 

力と知恵を兼ね備えた存在に

「グラウンドキーパーは,力と知恵を兼ね備えた存在でなくてはならない」というのが,プロとしての池田氏の信念である。
 
たとえば,一年中青々とした芝生を維持するために必要とされる「オーバーシード」の手法。夏芝が休眠する前に冬芝の種子を蒔き,冬芝が枯れる前に夏芝を回復させる方法だが,夏芝から冬芝,冬芝から夏芝へのスムーズな切替は,天候にも左右され,高度な技術と判断が要求される。
 
「味スタのオーバーシードには,芝生に細い溝を入れて播種するスリットシーディングという手法を用いています。4種類の専用機械を揃え,スリットの幅や間隔を微妙に調整しながら試行錯誤をしています」
 
芝のダメージの軽減のため練習場サイズの改善も提言している。
 
「サッカーで最も芝が荒れるのは,ゴール前とセンターサークル付近です。そのため,練習用ピッチを6mずつ4回移動できるグラウンドサイズを考案し,池田ピッチサイズ(IPS)と勝手に命名しました(笑)」
 
 

小さいことの積み重ねと判断力

美しい芝生づくりに決して王道はなく,小さなことの積み重ねがすべてであること,また,日照や肥料,灌水,刈込み,どれをとっても偏らずに均一でなければいけないと,池田氏は強調する。
 
「味スタでは,冬期の日照不足による生育低下部分は二酸化炭素,グローライトや肥料で補います。従来型の肥料に加え,新しいタイプの肥料や生育促進剤などを積極的に試し,活用しています」
 
「味スタでは,除草剤や殺虫剤は極力使いません。芝生に穴をあけて水や空気と接触させるエアレーションを行い,バクテリアの力で芝生の健康を維持しています。雑草は繁茂する前に抜いています」
 
「灌水は,ピッチの四方から水を飛ばすレインガンでは,水を均一に撒くことが難しく,水が足りない部分は職員がびしょ濡れになって人力で散水していました。味スタではレインガンをやめ,ピッチ内にスプリンクラーヘッドを15〜17m間隔で設置した結果,ピッチ内に均一に散水できるようになりました」
 
さらには,刻一刻と変化する天候に的確に対応する判断力も求められる。「目的と予算はコントロールできますが,天候だけはどうにもなりません。また,芝生は生き物ですから,データや先例,仕様書にとらわれ過ぎず,自分の目で判断することが大事ですね」
 
 

校庭芝生化で少子化対策を

日本では,池田氏のような芝生づくりのプロはまだ少ない。地域全体で芝生づくりを盛り上げていくには,各地のJリーグチームのグラウンドキーパーの力を借りる,芝生づくりをサポートする法人を作るなども一案だが,大きな期待を寄せているのが校庭芝生化である。
 
「日本では芝生に対する理解がまだまだ不足しています。たとえば,英国の小学校では1人当たり40m2の大きさの芝グラウンドがないと認可されないと聞きます。ニュージーランドでは,市営公園の芝生は市の職員自らが刈っています。日本では,未だに土に砂を撒いただけのダスト舗装のような工法が多いです」
 
「私は,ローコストで校庭芝生化を実現する鳥取方式を提唱したニール・スミス氏とともに,校庭の芝生化を推進しています。自治体は,校庭芝生化のよさは理解しつつも,予算や人手の問題を口にされる方が多い。大事なのは,何としても校庭を芝生にするのだという熱意です。子どもたちが芝生の校庭で怪我を恐れずに思い切り遊べれば,その経験がやがて未来の子どもたちへと引き継がれ,少子化対策にもつながります。子どもたちに夢と希望を与えるためにも,私たちは知恵を絞り,地域の人々と協力して,校庭芝生化に全力で取り組んでいきたいと考えています」
 
 
味の素スタジアム ヘッドグラウンドキーパー 池田省治氏


 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2017年08月号



 

 

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