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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 本四高速道路の維持管理 〜「信頼」と「挑戦」の推進〜

 

はじめに

本州四国連絡高速道路株式会社は,高速道路事業として本州と四国を連絡する高速道路(自動車専用道路等)の維持,修繕,料金収受などの管理を行うとともに,関連事業として,サービスエリア等の休憩施設の運営,長大橋や道路に関する調査・設計の受託事業などを行っています(図− 1)。
 

【図− 1 本州四国連絡高速道路全体図】




 
当社は,今年4月に,平成29年度からの中長期経営計画として,『行動計画2017─2018』を策定しました。お客様にさらなる「信頼」をいただけるよう,本州四国連絡高速道路(以下,本四高速道路)の安全・安心・快適なご利用の確保に努めるとともに,200年以上の長期にわたり利用される橋の実現などに積極果敢に「挑戦」していくことを基本とし,事業を推進して参ります。以降は,この計画に沿って当社の維持管理についてご紹介いたします。
 
 

「信頼」安全・安心・快適なご利用の確保

当社は,本四高速道路を常に良好に保つため,道路構造物の日常の点検・補修を徹底するとともに,南海トラフ地震等による大災害に備えた耐震補強を推進します。また,計画的な老朽化対策として,陸上部の長期にわたる安全性確保のため必要な大規模修繕事業を継続するとともに,道路の損傷への影響が大きい重量超過等の車両制限令違反車両についても,法令遵守の徹底を働きかけるとともに,さらなる取締りの強化を図っています。加えて,加速する高齢化社会を踏まえて逆走防止対策を推進するなど,安全で快適な交通の確保のための交通管理に万全を尽くすとともに,ETC設備等の充実,企画割引の活用,積極的な広報活動等を実施し,多くの方々に本四高速道路を安全,安心,快適にご利用いただけるよう努めています。
 
 

「 挑戦」200 年以上の長きにわたって使える橋の実現などへの挑戦

本州四国連絡橋の長大橋(以下,「海峡部長大橋」)は海上に架けられているため,腐食環境が厳しく劣化は急激に進み,また,点検や補修のための接近手段は限られています。さらに,代替路線のない重要な幹線道路であり,通行止を伴う補修工事は極力避けなければなりません。このため,長大橋を200年以上の長期にわたり利用可能とすべく「予防保全」を基本とし,さらに『アセットマネジメント』の考え方を導入して体系的かつ確実な維持管理に取り組み,ライフサイクルコストの最小化を図っています。
 
(1)塗替塗装
海峡部長大橋は,大部分が鋼製であり,長期にわたり機能を保全するには,さびを抑えるのが最も重要です。よって,本州四国連絡橋では,塗装が最も基礎的な維持管理となります。塗装は,紫外線や水分によって劣化が進むため,定期的な塗替えが必要で,その塗装面積は約400万m2 です。これは東京ドーム300個を超える膨大な面積にもなります。今後,経年劣化が進むにつれ塗装費用は大きくなっていき,維持管理費の約半分を占めることから,本州四国連絡橋のライフサイクルコストを最小化するには,塗装のコスト縮減が最も重要です。
 
このため,塗替塗装のサイクルを長くするよう,建設段階において,長期に耐久性が期待できる犠牲防食層の無機ジンクリッチペイントを下地とする,多層構造の塗装系を開発しました。なお,明石海峡大橋以降の上塗には,耐候性に優れたふっ素樹脂塗料を採用してきましたが,より耐候性に優れた高耐久性ふっ素樹脂塗料を研究・開発・採用することで,さらなるライフサイクルコストの削減に努めています(図−2)。
 

【写真− 1 世界最長の吊橋 明石海峡大橋】

【図− 2 本州四国連絡橋の塗装系】




 
 
(2)ケーブル送気乾燥システム
吊橋のケーブルは,吊橋を構成する部材の中でも最も重要な部材です。このケーブルは,取替えが困難なため確実な防食が必要です。従来は,主に塗装により水を遮断する方法で防食していましたが,この方法では防食が不十分なことが明らかになりました。これは,温度変化により塗装にひび割れが生じやすく,ひび割れから水が浸入し,その水が乾燥しにくいためと考えられます。
 
そのため,わが国の気候のもとでも有効な防食システムとして,ケーブル内部に乾燥した空気を送り込んでケーブルの腐食を抑制する「ケーブル送気乾燥システム」を世界に先駆けて開発しました。明石海峡大橋で送気乾燥システム稼働10年後にケーブルの調査を行いましたが,ケーブルの表面にも内部にも腐食はなく,システムが確実に機能していることが確認できました。この送気乾燥システムは腐食発生限界湿度(60%)に対して,安全側の管理目標値(40%)を設定して運用しており,本州四国連絡橋の吊橋全10橋に導入しています。このほか,当社の技術支援により長崎県の平戸大橋,広島県の安芸灘大橋,首都高速道路のレインボーブリッジなどに導入され,さらに,海外でも導入が進んでいます。
 
今後ケーブル送気乾燥システムの一層のコスト縮減を図り,ケーブル維持管理をより確実にするため,ケーブル送気設備の性能向上と運転効率化,新たなケーブル送気乾燥システムの開発等さらなる改良を図って参ります(図− 3,4)。
 

【図− 3 従来のケーブル防食方法】

【図− 4 新たに開発したケーブル送気乾燥システム図】




 
(3)コンクリート構造物の長寿命化
海峡部長大橋は,海上に架かることから,常に潮風に曝(さら)されたり海水の波しぶきを受けるなど,厳しい塩害環境に置かれています。
 
コンクリート構造物は,表面から内部に浸透した塩分によって内部の鉄筋に腐食が生じ,鉄筋が膨張することによりコンクリートにひび割れが生じ,その後,浮き,剥離へと進展します。これを防止するため,必要に応じコンクリート構造物表面の被覆を行います。系統的かつ定量的に劣化や損傷の程度を把握し,適切に維持管理を行うフローを構築しており,このフローにより経済的に長寿命化を図ることとしています(図− 5)。
 

【図− 5 コンクリート構造物の維持管理フロー】




 
 

その他の予防保全の取組

(1)海中鋼構造物の防食工法
1)電着工法
海中基礎では,鋼ケーソン(箱状の鋼殻構造物)を設置し,その内部にコンクリートを打設する設置ケーソン工法を多く採用しています。瀬戸大橋のいくつかの鋼ケーソンの表面(スキンプレート)では,孔食(局部的に進行する腐食)が発生しました。この対策として,海水中に微弱電流を流すことにより,海水中に存在するカルシウムやマグネシウム等の陽イオンを鋼ケーソン表面に誘導し,炭酸カルシウムや水酸化マグネシウム等を主成分とする物質を付着させて被膜を形成する電着防食工法を開発し採用しています(図− 6)。
 

【図− 6 電着工法の概念図】




 
2)電気防食工法
瀬戸大橋以降に建設した多々羅大橋,来島海峡大橋では,建設時にあらかじめ,鋼ケーソンの防食対策を行っています。工法としては,塗装に加え,ケーソン壁面に犠牲陽極となるアルミニウム塊を取付け,異種金属間で発生する電流を利用してさびを防ぐ「電気防食」を併用しています(図−7)。
 

【図− 7 あらかじめアルミニウム陽極を取付けた鋼ケーソン】




 
3)大鳴門橋多柱基礎の防食
うず潮で名高い鳴門海峡にある大鳴門橋の塔基礎は,潮流を阻害しないよう,多柱基礎を採用しています。多柱基礎は,鋼管と内部の鉄筋コンクリートで構成されており,鋼管を腐食から守るための防食工事を行っています。防食方法は,場所ごとに適切な方法を採用しており,飛沫帯部は水中施工型エポキシ樹脂+塗装,干満帯部はペトロラタム(石油ワックスの一種)およびそれを保護する耐食性に優れたチタンカバー,海中部は電気防食を採用しています(図− 8)。
 

【図− 8 大鳴門橋多柱基礎の防食工法】




 
(2)吊橋ハンガーロープの防食
因島大橋の鋼より線を用いたハンガーロープでは,塗膜が劣化するだけでなく,雨水が浸入して滞留したことが原因と考えられる内部の腐食も発生しています。このため,ハンガーロープの塗替塗装には,ハンガーロープを塗料に浸し内部まで塗料を充てんさせる「浸せき塗装工法」を採用しています(図− 9)。
 

【図− 9 浸せき塗装工法(左:概念図,右:施工状況)】




 
一方,特に腐食環境の厳しい大鳴門橋では,ハンガーロープ定着部に著しい腐食が確認され,調査した結果,一部のロープには大きな断面欠損が生じていました。このため,特に断面欠損の大きいロープについては新品に交換するとともに,その他のロープを含め,防せい効果のある材料(ペトロラタム)をロープ内部に圧入・充てんし,その後,ロープの外周に防食用テープを巻く「内部充てん工法」により腐食の進行を抑制することとしています(写真− 2)。
 

【写真− 2 内部充てん工法(防せい材料充てん状況)】




 
(3)鋼床版の疲労対策技術の開発
1)赤外線サーモグラフィによる点検技術の開発橋を構成する部材には,大型車が繰り返し走行することによって,疲労による亀裂が発生します。疲労による亀裂の中で,鋼床版のデッキプレートとUリブの溶接部に生じる亀裂(ビード貫通亀裂)を,赤外線サーモグラフィを用いて,遠隔から非接触で効率よく高精度に検出できる点検手法を開発し,実橋の点検に適用しています。なお,この点検技術は,神戸大学との連携協力協定に基づく共同研究で開発しました(図− 10)。
 

【図− 10 鋼床版の疲労点検】




 
2)鋼床版の下面からの亀裂補修
鋼床版のデッキプレートとUリブ溶接部に発生するビード貫通亀裂に対して,下面からのみの作業で施工可能かつ効果的な補修法を開発しました。この工法は,当て板とデッキプレートの接合にあらかじめ削孔したねじ孔へ直接ねじ込むことができるタッピングねじを用いて鋼床版の下面からのみで施工を行うものです。これにより,補修時に鋼床版上の舗装を剥ぐ作業がなくなるため,舗装の防水性能の低下や交通規制を最小限に抑えることができるなどの利点を有しています。なお,この補修法は関西大学と当社で開発し実物大の実験により性能を確認しました(図− 11)。
 

【図− 11 鋼床版の下面からの亀裂補修】




 
 

おわりに

2018年,瀬戸大橋は開通30周年,神戸淡路鳴門自動車道は全通20周年を迎えます。本四高速道路は,全国の高速道路ネットワークの一翼を担うとともに,他の路線と異なり代替路のない重要な交通路であり,瀬戸内地域における交通の大動脈としての役割もますます高まっています。当社は,引き続き,健全な経営に努め,道路構造物の日常の点検・補修の徹底,安全対策の強化,海峡部長大橋をはじめとする道路構造物の保全技術の開発・高度化等積極的に取り組んで参ります。
 

【写真− 3 児島ー坂出間と五つの島に架かる瀬戸大橋。来年開通30周年を迎える】




 
 

本州四国連絡高速道路株式会社

 
 
 
【出典】


積算資料2017年10月号



 

 

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