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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 火薬・非火薬系解体工法の 動向とその課題について

 

はじめに

火薬類を用いた発破工法は,岩石およびコンクリートなどの構造材料を最も効率的に破壊できる工法のひとつである。実際に砕石場や石灰石などの大規模な露天掘り鉱山の採掘では,発破採掘が主たる採掘方法となっている。これは,安価なANFO爆薬とベンチ発破採掘の導入により経済的にも安定した操業が可能なためである。
 
発破工法は,鉱山以外の土木作業でも重要な工法であり,現在も山岳トンネルの掘進工法として広く利用されている。また,近年発展している機械掘進工法では,大型重機を用いて重油などの燃料を動力に変換して破砕する。
 
これに対して,発破破砕は,化学物質から発生したエネルギーを直接破砕に使用するため,効果的な破砕法である。高速度カメラで撮影したエマルション爆薬の爆ごう状況を図− 1に示す。
 

図−1 エマルション爆薬の爆ごう現象




 
この写真では,100gの爆薬が20μ sec程度で反応が終了し,エネルギーは放出されている。
 
火薬類に該当しない破砕薬を用いる非火薬系の解体工法も開発されている。これは,化学反応による膨張ガスを利用する方法や放電により発生するエネルギーで破砕する方法で,広く使用されている。火薬メーカーも新しい解体方法として,新規の破砕薬を開発,販売している。
 
発破解体工法は,老朽化した構造物の解体工法として有効な工法であり,コンクリート構造物等の解体工法指針にも定められ,既に確立した工法である。しかし,国内では大規模なビル構造物の爆破解体工法が実施された実例は少ないのが実情である。特に,都市中心部において従来型の爆破解体の実施例は極めて少なく,工場敷地内の煙突や山岳部の橋梁等の構造物に限られている。
 
ここでは,最近の火薬類による解体工法の現状とその問題点について述べるとともに,今後の発破解体工法の普及に向けた展開等へも言及する。
 
 

1. 日本での構造物解体工法の現状と課題

発破解体工法は,欧米等では広く普及しているが,国内ではほとんど普及していないのが現状である。表− 1に近年の発破解体の実施件数を構造物分類ごとに示すが,年間2〜3件程度の実施例が報告されている程度である。
 

表−1 発破解体の分類による実施件数




 
国内で実施された発破解体工法も,ビル等の構造物より煙筒や鉄塔等の特殊構造物への適用事例が多いことがわかる。
 
図− 2に,国内で実施された煙突発破解体工事の写真を示す。
 

図−2 国内で実施された煙突解体の状況




 
なお,この集計結果には,「ミニブラスティング工法」は含まれていないが,火薬類を用いた解体工法には,多くのメリットがあることは広く知られている。
 

1-1 ミニブラスティング工法の実用化

日本の都市部で,ビル等の構造物を一気に解体する発破工法を適用することは困難であり,日本の社会環境条件に適応した工法の開発が求められている。産業技術総合研究所では,古くから制御発破技術に関する研究を実施しており,従来の発破工法と比較して少ない装薬量で破砕でき都市部での解体現場で適用できる「ミニブラスティング工法」を,鹿島建設株式会社,カヤク・ジャパン株式会社と共同で開発している。本工法は「極少量の爆薬を用いた鉄筋コンクリート部材の解体工法」であり,使用する爆薬は火工品である導爆線と電気雷管でだけである。このため,導爆線の長さから使用する爆薬量を自由に設定することが可能。現在,基礎部材を中心として都市部での部分解体技術として適用されている。また,昨年度の日本建築学会でもその業績が認められている。
 
発破解体工法のデメリットとしては,火薬類の制御の問題,発生する騒音・振動・飛散物の防御,火薬類の使用に関係自治体の許認可が必要,爆発物を使用することに対する不安が大きく十分な理解が得られない,などが考えられる。特に大きな問題は,火薬類を使用する発破工法に対する施主等の十分な理解が得られないことで,火薬類を用いた解体工法自体が,発注時から除外されている例も少なくない。これは,発破解体工法がまだ一般的な解体工法として受け入れられていないものと推測でき,今後広く社会で受け入れられる技術として確立する必要がある。
 
新しく開発された技術が社会で普及するには,その技術が社会で受容されなければならない。また,各種解体工法のリスクを比較して,リスクを最小限にする必要もある。発破解体工法の普及を進める上では,社会受容性とリスクトレードオフを検討することが重要である。
 

1-2 非火薬による解体工法への適用

非火薬による解体工法は,火薬類による解体工法と異なり,自治体等による許認可は不要だが,コンクリートや岩石等の構造材料を現場で破砕することが可能であり,施工者による安全管理が不可欠である。非火薬系の破砕薬では,発生したガス圧を十分に破砕に作用させることがポイントで,放電破砕では,大きな蓄電装置が必要となるが,小型化等の改善も進んでいる。非火薬系の解体工法にも,メリットとデメリットがあることを理解する必要がある。
 
 
 

2. 発破解体工法の今後の展望について

発破工法は,反応性化学物質を反応させて発生するエネルギーで岩盤・コンクリートを破砕する工法である。反応性化学物質は,火薬類を示し,化学反応が連続的に発生してエネルギーを外部へ放出する。発生するエネルギーは,衝撃波あるいは膨張ガスとして破砕対象に作用する。すなわち,発生するエネルギーで直接破砕するのに対し,機械工法では燃料等のエネルギーがピストン等を介して運動エネルギーに変換して岩盤・コンクリートを破砕する工法である。当然,石油・ガス等の一次エネルギーを比較すると効率は悪くなる。
 
ここでは,発破工法を構造物の解体に適用する場合の利点と可能性について述べる。
 

2-1 解体現場における周辺環境問題について

解体現場では,振動・騒音・粉じんが大きな環境問題となっている。これは,発破解体工法に限られた問題ではなく,機械解体工法でも同じ問題がある。発破工法は機械解体工法と比較して,瞬時であるがピーク時の振動・騒音が大きくなることが推定される。これに対して,機械解体では連続的な騒音・振動・粉じんが続くことになる。
 
発破解体では,基本的には,発破振動・騒音は,使用する爆薬量に比例するので,装薬量を少なくすることで発生する振動・騒音を抑えることができる。また,発破振動・騒音は,卓越した周波数に特徴があり,これを利用して波動を干渉させることも可能である。トンネル掘進現場では,発破工法に電子制御雷管(EDD)を用いて振動・騒音の制御が実施されている実例もある。このように,発破工法では振動・騒音を制御できる可能性がある。もちろん,通常はこれらの振動・騒音は,構造物の亀裂等や人体へ影響を与えるレベルのものではないが,苦情の対象となりえるので,周辺住民にも受け入れられる範囲でなければならない。
 

2-2 地球環境問題について

日本政府は,2015年11月にフランスパリで開催されたCOP21(国連気象変動枠組条約第21回締約国会議)で2030年には,CO2排出量を13年度比で26%削減することを約束した。これは,非常に高い目標値であるが,確実に実施する必要がある。CO2排出量削減問題は,エネルギー業界だけの問題ではなく,民生分野を含み土木建築分野でも取り組む必要があり,解体分野でも効率的な解体工法を選択すべきである。CO2排出量を算出する方法として,ライフサイクルアセスメント(LCA)で使用されているデータベースを利用できる。ここでは,トンネル掘削時のCO2排出量算出に適用した事例を紹介する。
 
トンネル掘削時のCO2排出量を比較するために,全長1,500m,掘削断面積約80m2の一般国道の道路トンネルを想定した。LCA解析で使用した資材の種類および消費量は,国土交通省積算基準を基に算出した。また,岩盤の種類により積算基準が異なるためBⅠ,CⅠ,CⅡ,DⅠ,DⅡで実施した。発破掘削ではBⅠ,CⅠ,CⅡ,DⅠ,機械掘削ではCⅠ,CⅡ,DⅠ,DⅡで検討した。発破掘削法は,従来型の全断面掘削法を適用している。
 
解析結果からCO2排出量は,岩盤強度が弱いほど大きくなる傾向がある。これは,トンネルの保全のために消耗性資材類として大量のコンクリートを使用するためである。CO2 排出量を機械掘削と発破掘削で比較すると,CⅠ,CⅡ,DⅠ岩盤ではほぼ同程度になる。しかし,機械掘削では,岩盤強度が大きくなるとCO2 排出量が大きくなる傾向にあり,BⅠでは算出していないが,岩盤掘削に大量のエネルギーが必要であることからCO2排出量の差は大きくなることが予測できる。解析結果を図−3に示す。
 

図−3 発破工法と機械工法のCO2排出量の比較



2-3 安全対策について

発破解体工法が安全な技術であることを示す必要がある。一般的に,発破作業は,火薬類を使用するため,非常に危険な作業であり事故が多いとの印象があるかと思われる。確かに,火薬類は爆発物であり,大きな衝撃を加えると簡単に爆発する。しかし,現在普及しているエマルション爆薬は,通常は落つい感度試験,ビット繰当試験では爆発しないことが報告されている。余談ではあるが,現在,ダイナマイトは国内では生産中止となっている。
 
近年,報告されている発破災害の多くは,飛石事故であり,火薬類の不慮の爆発事故等はほとんど報告されていない。実際の発破作業でも,穿孔・装填・結線・起爆とそれぞれの安全マニュアルが整備され,十分な安全対策が実施されている。発破作業時は,従事者以外の退避が確認されてからの作業になる。また,発破作業者は,全て有資格者であり,発破および火薬類に関する十分な知識を備えている。発破作業の流れを図− 4に示す。
 

図−4 発破作業の流れ




 
この他,機械使用および作業人員が限定され,同時に条件によっては高所での作業を抑えることができ,解体工事の三大災害である墜落・転落・倒壊等の事故災害を防止できることが期待できる。
 

2-4 工期と経費の問題解体作業では,工期短

解体作業では,工期短縮と経費削減は重要な課題である。工期短縮と経費削減は,関連する問題でもある。発破解体工法のメリットは,一般的には大型解体重機が不要,工期短縮にある。また,構造物の破壊時間は,数秒程度であるため,機械および人員の使用量が極めて少ない点が挙げられる。特に,煙筒等の高所構造物は,解体用の櫓を組む必要がなくなり,一度倒壊させることで高所作業が不要になり,倒壊後は通常の解体方法で可能となり,大幅な工期の短縮と経費の軽減が期待できる。この場合は,周辺に十分はスペースがある場合が条件となる。しかし,実際は解体前後の事前作業に時間を要することも事実である。特に,発破解体工法では,コンクリート部材から発生する破片が飛散物となるので,これは完全に防御する必要がある。防御に必要な経費と機械・人員等,および工期を総合的に判断することで,最適な工法が選択されるべきと考えられる。
 
 

3. リスクトレードオフと社会受容性の問題

新しく開発された技術が社会で普及するには,その技術が社会で受容される必要がある。いわゆる,社会受容性が大きな問題となる。筆者が所属している産総研安全科学研究部門では,持続的成長可能な社会で,国民が安全・安心に暮らせる社会の実現を目指している。リスク評価研究では,産業と環境が共生できる社会でリスク選択社会の実現を目指している。これは土木建築分野でも重要な課題である。土木技術も社会と共生できる技術でなければならない。新しい技術を社会に適用する場合は,経済的および社会的受容性を考慮して評価するテクノロジーアセスメントを行うのが重要である。
 
一例であるが,各種化学物質は,日常製品として身の回りに存在するが,元々は工場で工業原料として生産されたものである。化学物質は様々な利便性や効用(ベネフィット)があるが,人健康問題等のリスクもある,場合によっては化学工場の火災爆発の原因ともなり,使用後に廃棄されると環境汚染等の要因となる可能性もある。様々な条件でリスクは存在するが,総合的にベネフィットが最大でリスクが最小になるかを評価することが重要である。発破解体工法にリスク評価の考えを適用し,利便性や効用を最大化するリスクトレードオフを検討することで,社会で受容される技術として認知されると思われる。発破工法の社会受容性とリスクトレードオフの模式図を図− 5に示す。
 

図−5 発破工法の社会受容性とリスクトレードオフの模式図




 
 

まとめ

最近,ある放送局の番組で解体工法がとりあげられた。これは,地震等の大規模災害を想定し強度の異なる2種類のコンクリート壁に,人命救助用の救出孔をどちらが早くできるか,発破工法とウォータージェット工法とで競うものであった。発破工法は,小型発電機とハンドドリル等による人力作業であったのに対して,ウォータージェット工法は大型ポンプなど大がかりな装置を使用していた。結果的には,ウォータージェット工法が発破工法に比べて早く想定した救出孔を作成でき,破砕断面も良好であった。しかし,大規模災害現場での電力供給停止,あるいは道路等のインフラが寸断され重機の搬入が困難な場合も想定できる場面で適用できるかについては,引き続き検討が必要と思われる。
 
解体工法はさまざまな技術が実用化されているが,解体工法の選択に際しては,柔軟な考え方により,最大の効用(ベネフィット)が得られる工法を適用することが重要であり,適材適所で解体工法を選択すべきである。
 
 

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 研究部門長 緒方 雄二

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2017年11月号



 

 

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