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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 首都高速10号晴海線(晴海~豊洲)今年度開通 〜高速湾岸線へのスムーズなアクセスへ〜

 

1 はじめに

首都高速10号晴海線は2003年7月に都市計画決定され,これまでに高速湾岸線から高速10号晴海線豊洲出入口までの間を開通し,現在,その延伸部である晴海線(晴海~豊洲)の工事が,今年度の開通に向けて大詰めを迎えている。
 
晴海線(晴海~豊洲)は供用中の豊洲出入口から晴海出入口までの1.2kmの路線であり,整備しているほぼ全線が高架構造である。出入口は晴海出入口の1カ所設置され,晴海出入口では一般道路である「都道有明通り」と接続する路線である。
 
本稿では,まず計画の概要を紹介し,つづいて整備効果,設計・施工概要について紹介する。
 
 

2 計画概要

晴海線(晴海~豊洲)は,都道有明通りの上下線に挟まれた空間に建設されており,区間中の最小曲線半径は2,700mで,平面線形はほぼ直線である(図- 1)。
 

【図- 1 晴海線(晴海~豊洲)位置図】




 
縦断線形は,ゆりかもめを越える地点がコントロールポイントになっており,0.3~6.0%の勾配を組み合わせて形成されている(図- 2)。
 

【図- 2 晴海線(晴海~豊洲)の路線概要】




 
新設される晴海出入口は,既設の豊洲出入口と同じく都心方向へのサービスを提供する。晴海入口に対応する料金所の晴海料金所は,都道有明通りから晴海入口に入ってしばらく走行した後,豊洲入口との合流部手前の本線上に設置されている。晴海出口と都道有明通りの合流部には信号機を新たに設置し,信号処理により合流する。
 
新設区間は,供用中の区間と同様に,暫定2車線区間となっている。左側路肩は緊急時等に大型車のすれ違いができるように,全路肩2.5mを採用している。
 
 

3 整備効果

晴海地区,豊洲地区等においては,ウォーターフロントの特性を活かした複合市街地が形成されており,特に晴海,勝どき,月島地区等においてマンション等の建設が急ピッチで進められている。晴海線(晴海~豊洲)は,開発が著しい東京臨海部,晴海・豊洲地区から発生する交通需要を高速湾岸線にスムーズに誘導する役割を担う。
 
また,都心部と高速湾岸線を結ぶ高速9号深川線・11号台場線のバイパス的機能などが期待される。
 

【図- 3 臨海部開発事業と晴海線(晴海~豊洲)の状況】




 
 

4 晴海線(晴海~豊洲)における構造物について

4.1 土木系構造物の設計・施工概要

(1)HM11 工区
HM11工区は,晴海運河を渡河する橋梁で,橋長約595mの5径間連続鋼床版箱桁橋である。晴海運河内の中間支点部は,都道有明通りの晴海大橋と一体のコンクリート橋脚で,晴海大橋は2006年度に供用している。
 
設計では,地震時水平力が既設橋脚の耐力を超過しないように,橋の固有周期を長周期化し下部工に作用する水平力を緩和・分散させるため免震支承による免震設計とした。
 
架設では,架橋地点直下にベントを設置できないため,それを考慮した架設工法を採用した。P1〜P4間は運河上より大ブロック架設を行い,A1〜P1,P4〜P5は陸上部より送出し架設を行った。架設順序は図-4のとおりである。
 

【図- 4 HM11工区架設概要図】




 
ここでは,特にP2〜P3の台船一括リフトアップ架設について述べる。
 
架設桁は架橋位置から離れた場所で地組を行った。地組後の桁長は143m,架設時重量は約1,800tであった。地組立て完了後にリフトアップ設備を艤装した台船(14,500t積)へ3,000t吊の起重機船で搭載した(写真- 1)。
 

【写真- 1 3,000t起重機船による台船搭載状況】




 
搭載後,晴海ふ頭バースへ台船をえい航し,環状2号線の豊洲大橋および都道有明通りの晴海大橋の下を通過するため,干潮時期を考慮した台船のえい航時間を設定し,豊洲大橋桁下と運搬した桁との離隔が約70cmと狭隘(きょうあい)ななかで運搬した。
 
リフトアップ設備は1基当たり320tの吊り上げ能力があるマルチストランドジャッキを計8基用い,桁が搭載されている大梁を約6m吊り上げて架設した。
 
なお,今回のリフトアップ設備を用いた台船による一括架設は現在のところ同架設工法による日本最長の桁長である。これまでの実績から,運河上における長大ブロックの一括架設は起重機船による方法が一般的であるが,当該現場は周辺地域開発の進展からすでに豊洲大橋があり,架設桁を吊ることができる大型起重機船(3,000t吊級)が高さの関係から同橋を通過できなかったため,本工事では,日本最長の桁長となるリフトアップ架設を実施した。
 
 
(2)HM12 工区
HM12工区は,陸上部に位置する橋梁で,橋長約527mの6径間連続鋼床版箱桁橋(中間支点剛結構造)である。
 
本工区は基礎・下部工含め新設区間で,基礎工は,都道有明通りおよび豊洲出入口に挟まれた狭い中央分離帯内での施工であることなどから,土留め構造を兼用でき,経済性,工程ともに有利な鋼管矢板井筒基礎を採用した。
 
晴海線(晴海~豊洲)の中央にあるHM12工区は,陸上部であり他工区と異なり,トラッククレーンベント架設工法を主に用いて架設を行った。そのうち,一般道路の交差点とゆりかもめの上に位置した架設においては,以下に示す条件下での施工となった。
 
1) 交差点上での架設となるため,仮受ベントの設置可能な位置が限られる。
2) ゆりかもめに近接する作業は,き電(※)停止時間内2時間55分(午前1:05~4:00)に行う必要がある。
  ※き電:電車に電気を送ること。
3) 桁架設・付属物の取付けには,一般道路の規制が必須となるため,規制回数の削減に努める必要がある。
 
ベントは,設置可能な位置を検討し,作業ヤード内と横断歩道上に合計6基の仮受ベントを設置することとした。
 
仮受ベント位置は,交差点部での制限から主桁の格点直下から外れた位置となったため,仮受ベント上には工事桁設備を設け,工事桁上に主桁の受け架台を設置することで,確実に格点位置で主桁を支持できるようにした。加えて,工事桁上に全面足場を設けることで,付属物の取付用の作業床も兼ねることとし,付属物設置に要する規制回数の低減を図った。
 
主桁の架設に際しては,作業ヤード内で可能な限り付属物を取付けた状態とし,架設位置までは主桁を多軸台車で運搬することにした。夜間に規制帯を設置し,多軸台車で所定の荷取り位置まで運搬を行い,一般道路上に据えたクレーンを用いて架設を行った(写真- 2)。
 

【写真- 2 ゆりかもめ上架設状況】




 
(3)HM13 工区
最も南寄りにあるHM13工区では,P16〜P18間において東雲運河を横断する(図- 5)。
 

【図- 5 HM13工区平面図】




 
P16〜P17間の径間長が約115m,P17〜 P18間の径間長が約132mの2径間の桁を中間連結構により接続し,2径間分約250mを一気に送り出す大規模な架設を行った。また,今回架設した橋梁の外側に高速10号晴海線の豊洲出入口が供用中である。このため,今回送出しを実施するにあたり,G1,G2を本設の横桁よりも幅員の小さい仮の横桁により連結し送出しを行い,送出し完了後に仮の横桁を撤去し,G1,G2の横取りを実施した。
 
架設の施工手順を以下に順に示す。
 
1) 主桁地組立
 主桁の地組立は200t吊オールテレーンクレーンにて送出し構台上に上架し,構台上での地組立を行った。
 
2) 送出し工
先述のとおり,今回P16~P18の2径間を中間連結構(仮設材)にて一体化し,2径間連続で送出し架設を行った。また,都道有明通りおよび供用中の高速10号晴海線への影響を低減するため,桁間隔を完成形よりも狭めて行った。そのため,主桁の送出し中は仮の横桁で接続し横倒れを防止するとともに,桁間隔を保持し方向性を安定させた。
 
送出し時の設備配置図を図- 6に示す。送出し設備は8カ所に配置し,最大で5カ所で桁を支持し送出しを行った。
 

【図- 6 HM13工区設備配置図】




 
3) 横取り作業
送出し時に供用中の高速10号晴海線への影響を低減させるため桁間隔を狭めていた架設桁の送出し完了後,正規の位置へ設置するため横取り作業を行った。横取りは2主桁を各2.25m広げる方向へ(横取り完了後,2主桁間が作業前より4.5m離れる方向)行った。横取り作業は,PC棒鋼およびセンターホールジャッキを使用して行い,軌条梁上フランジにステンレス板を設置し,桁受架台下面にはテフロン板を設置して摩擦を低減させた。
 
4) 降下作業
今回の送出し架設では橋脚の上に送出し装置を設置して送出し作業を行い,かつP17,P18の中間支点は剛結構造であることから送出し作業,横取り作業後に所定の高さまで桁を降下させる必要があった。降下量はP16においては4.2m,P17においては6.6m,P18においては9.9mであった。横取り作業までは2径間を中間連結構でつないでいたが,降下作業にあたっては中間連結構と桁のボルト継手を解放し,1主桁ずつ降下作業を実施した。なお,降下する桁の諸元は以下のとおり。
 
● P16〜P17 桁長118.6m 桁重量約480t/主桁
● P17〜P18 桁長127.3m 桁重量約510t/主桁
 
P16の降下作業は橋脚上に門構を立て,ジャッキによる降下を行った後に,設備の盛り替えを行い,サンドル降下を行った。
 
P17は中間連結構上にリフティングビームを設置し,リフティングビーム上に吊り下げジャッキを配置して桁を吊り下げて降下させた。
 
P18は後方連結構上にリフティングビームを設置し吊り下げジャッキを配置して桁を吊り下げた。
 
桁の降下については,1夜間での作業では終了できず,日中において桁と並行する有明通りを走行する車両,また直下を横断する東雲運河を航行する船舶の安全を確保するため,フェールセーフを実施した。P16〜P17降下時においては,P16側で仮受ベントまたは橋脚上で支持し,P17側では仮受のブラケットを橋脚の仕口に設置して自重を支持できるようにした。P17〜P18降下時においては,降下開始まで中間連結構および後方連結構からの解放にあたって桁の自重を支持できるだけの高力ボルトを残し添接板により支持し,降下途中では橋脚の仕口に仮受のブラケットを設置して自重を支持できるようにした(写真- 3)。
 

【写真- 3 主桁の降下作業】




 

4.2 施設系構造物の設計・施工概要

(1)晴海料金所
1) 晴海料金所
晴海線(晴海~豊洲)の建設に伴い晴海出入口が新設される。そのため供用中の豊洲料金所に隣接して晴海入口から進入した車両へ料金徴収を行う晴海料金所を新設する。
 
晴海料金所は2レーン2ブース構造であり,ETC専用レーンと混在レーンを有している。さらに料金収受員が収受ブース間をレーン閉鎖せずに移動できるように連絡階段を設置する。
 
2) 料金所収受設備
ETC機器による車両との通信結果をもとに,現金車両・ETC車両・電子マネー車両の車両情報を料金収受員に通知し,支払い処理(現金決済,ETC カード決済,電子マネーカードによる電子マネー決済)を行う料金収受機を設置する。
 
3) 軸重測定設備
道路構造物に影響を及ぼす車両重量を把握,過積載車両に警告するため,首都高速道路の料金所の各レーンに設置し,走行車両の軸重および総重量等を自動的に計測する軸受測定設備を設置する。
 
軸重測定設備で大型車の軸重を測定し,軸重違反車両が通過した場合,警告標識板によって軸重違反車両に警告し,あわせて対象車両の画像を保存し取り締まりを行っている。
 
(2)照明設備
首都高で設置している一般的なポール照明では,灯具の点検を実施する際に高所作業車を用いて作業しているが,本路線は片側1車線での運用となることから,点検の際に通行止めとなってしまう。そのため通行止めをせずに照明設備のメンテナンスができるよう高欄照明を設置する。
 
(3)交通管制用テレビカメラ
交通管制用テレビカメラは,交通状況や異常状況の監視を目的として設置する。晴海線(晴海~豊洲)における交通管制用テレビカメラは,旋回ズームカメラを採用し,晴海出入口部と晴海料金所付近に設置を行う。
 
(4)LED 注意喚起板
晴海料金所手前はクレスト(※)により進行方向先の料金所が見えないため,料金所から渋滞が発生している際に走行車両へ渋滞末尾の注意喚起をする安全施設として,入口部のクレスト手前にLED注意喚起板を設置する。
 ※クレスト:crest。上り坂から下り坂にかかる時の頂点。
 
また,出口部においても一般道と合流する手前にLED 注意喚起板を設置する。
 
(5)非常電話
事故や故障の際に交通管制室に連絡する設備として,非常電話を設置する。
 
非常電話は500m間隔で設置しており,受話器を取るだけで交通管制室へつながる仕組みとなっている。また,音声通話が困難な方のために「故障」「事故」「救急」「火災」のボタンを設けており,ボタンを押すだけで内容が通報できる機能を有している。
 
(6)車両感知器
晴海線(晴海~豊洲)間の交通量および渋滞状況を把握するため,本線上にそれぞれ車両感知器を設置する。
 
(7)文字情報板
晴海入口から東雲JCT間およびその先の首都高速湾岸線の交通情報,また晴海入口閉鎖時等の情報提供を行うため,晴海入口部に文字情報板を設置する。
 
(8)立入逆走警告システム
晴海出口からの歩行者,二輪車の立ち入りおよび車両の逆走による進入を防止する目的で,立入逆走警告システムを導入する。このシステムは出口部にカメラを設置し,画像による対象者の検出,そしてその対象者および晴海出口に向かって走行している車両の運転者の両方へLED注意喚起板にて注意喚起を行う。
 
(9)フリーフローETC
首都高速を通行する車両に対し,入口から出口までの走行距離に応じて料金徴収を行う距離別料金徴収に対応するため,車両のETC車載器と通信して課金を行うフリーフローETC設備を晴海出口部に設置する。
 
 

5 おわりに

晴海線(晴海~豊洲)は,運河上架設,陸上架設,ゆりかもめ交差部での架設など,現場条件に応じて多岐にわたる施工方法にて架設を行った路線である。
 
事業を進める過程においては,地元の方々をはじめ,関係機関,公共交通事業者等の多大なる協力を得ながら事業を進めており,この場をお借りして改めて感謝を申し上げたい。
 
今後も引き続き,当プロジェクト本部では,晴海線のほか,東品川桟橋・鮫洲埋立部更新工事や板橋・熊野町JCT間改良など多くのプロジェクトを実施しており,それらの早期完成に向け,安全着実に工事を進めていく。
 
 

首都高速道路株式会社 東京西局プロジェクト本部

 
 
 
【出典】


積算資料2017年12月号



 

最終更新日:2018-05-14

 

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