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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > 中部地方整備局におけるCIMの取り組み

 

はじめに

中部地方整備局では、i-Construction中部ブロック推進本部を平成28年2月に設置し、建設生産システム全体の生産性向上を目的として、ICT施工やコンクリートの生産性向上等と合わせて、さまざまなシーンでCIMの試行を行い、その効果を検証している。CIMについては、働き方改革を推進するためにも重要なツールと考えており、さまざまな段階での取り組みを検討しているところである。今回、その取り組みの事例と効果について紹介する。
 
 

施工段階におけるCIMの事例紹介

1)工事概要
 
工事名:平成28年度名二環かの里1交差点南下部工事 
    平成28年度名二環かの里2高架橋中下部工事
受注者:矢作建設工業(株)
工事内容:張出式橋脚工(RC橋脚)2基、回転杭(Φ800)70本
概要:現在供用中の国道302号の中央分離帯付近に回転杭を基礎とするRC橋脚を構築する工事である。この工事は、既設の共同溝や横断歩道橋、遮音壁が近接しており、施工時において、下記のような課題があった。
 

図-1 橋梁下部工事の概要図




 
① 配筋の過密化が顕著であり、鉄筋組立にかかる作業の効率化
 
② 過密配筋部への確実なコンクリート充填性の向上
 
③ 既設横断歩道橋、共同溝、遮音壁に対し、近接施工を考慮した施工計画
 
 
2)CIMの取り組み内容
 
この工事では、上記の課題に対応するため次のようにCIMを活用している。
 
(1)CIMデータの作成手順
 
① 施工位置を3Dレーザースキャナーで測量
 

図-2 3Dレーザースキャナーで測量




 
② 地下構造物(共同溝等)を測量調査により取得
 
③ CIMモデルの作成
3Dレーザースキャナーで測量した地形モデルおよび地下構造物の位置情報と橋脚の構造物モデルを組み合わせて、CIMモデルを作成した。
 

図-3 CIMモデルの作成




 
④ CIMモデル(3D)に時間軸を付与した4Dモデルを作成
上記のCIMモデル(3D)に時間軸を付与し4Dモデルを作成した。
 

図-4 4Dモデルの作成




 
(2)CIMの活用効果
 
この工事において、上記の課題に対するCIMの活用による効果は以下のとおりである。
 
① 配筋の過密化が顕著であり、鉄筋組立にかかる作業の効率化
鉄筋の3D可視化により干渉箇所を事前把握し、配筋手順等を事前に計画することで作業の効率化および品質確保が図れた。
 

図-5 鉄筋の干渉状況の把握(杭・下筋・柱筋)




 
●作業員(鉄筋工)の声
 
・事前に不具合箇所が分かり、対策を立てられるため、組立途中に施工を中断することなく継続施工できることは、手戻り回避や作業効率向上につながりました。
 
・今までは、鉄筋を組んでみないと分からない部分があったが、3Dデータで可視化することで、組立イメージが鮮明となり作業の効率化につながりました。
 
② 過密配筋部への確実なコンクリート充填に関する効果
2D配筋データから3D配筋データに変更活用することで、過密配筋部へのコンクリートの確実な充填を確保するため、コンクリート打設時のホース差込計画に活用でき、品質確保が図れた。
 
③ 既設横断歩道橋、共同溝、遮音壁に対し、近接施工を考慮した施工計画
LS測量による正確な既設物(歩道橋・共同溝・遮音壁等)の位置を3D可視化することで、使用機械の選定および作業配置計画を立案し、既設構造物との近接施工時の接触回避などについて、作業員の安全教育で活用することで理解度の向上を図ることができた。
 

図-6 3Dによる重機の配置計画




 
また、特殊支保工の設置時、現地条件(歩道橋・現道・建築限界)との整合で一般車両への信号機に対する視認性を把握し、通行車両の安全確保ができた。
 

図-7 一般車両からの施工時の視認性確認




 
 
●4D軸の追加
 
・従来の2Dでは詳細かつ正確な照査が困難であったケースにおいて、時間軸を追加した4Dの活用により、特定日時および施工ステップが視覚的に把握できるため、工程管理が容易となった。さらに、狭い施工箇所において、安全かつ効率的な資材の仮置き等の計画も行うことができた。
 
また、新規入場者教育時においても、4D動画を用いた現場説明を実施することにより、作業工程や要点・危険箇所を視覚的に伝達(共有)することが可能となり危険予知活動に有効であった。
 
 

中部地方整備局におけるCIM支援活動

中部地方整備局では、12月22日に「CIMミーティングin中部」を名古屋市内で開催した。この会議では中部地方整備局における実施方針や、これまでのCIM活用事例などを紹介し、CIMに馴染みの少なかった、または食わず嫌いだった参加者の方たちと、CIMが身近なものであることや、今後の建設業に欠かせないツールであることを共有した。
 
 

おわりに

今回の事例紹介では、施工段階においてCIMを活用し、主に施工工程の見える化に着目した取り組みを紹介した。CIMは生産性を向上させ、働き方改革を進める上で欠かせないツールであり、未来の魔法ではなく、もう既に手元に届いている道具であることは、これまでの取り組みにおいて、十分実感したところである。一方で、CIMは、活用する場面や効果をよく把握した上で適用することが重要である。今後は、調査・設計段階から維持管理までを見据え、各段階での関係者間の情報共有により建設生産システムにおける受発注者双方の業務効率化、高度化を図るなど、CIM導入の効果がより発揮される方法を引き続き検討していきたいと考えている。
 
 

国土交通省 中部地方整備局 企画部 技術管理課 課長補佐 東野 竜哉

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 

最終更新日:2019-01-17

 

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