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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > プロジェクトマネジメントの薦め~ITプロジェクトを成功に導く~ 最終回:プロジェクトマネジメント・オフィス《前編》

 

株式会社 日立製作所 情報・通信システム社
プロジェクトマネジメント統括推進本部 本部主管:初田 賢司
公共システム事業部 公共プロジェクトマネジメント統括部 部長:花岡 明道

 


 
 
前月号では、プロジェクトマネジメントの基本的な概念や知識体系について解説した。
では、プロジェクトマネジメントを組織で活用し、効果を出すためにはどのように取り組めばよいだろうか。
これを推進するためにはPMO(プロジェクトマネジメント・オフィス)と呼ばれる組織を設置することが有効だ。
今回は、PMOの活動に焦点を当てて解説する。
 


 
ここまでプロジェクトマネジメントの大切さや知識体系について解説してきました。
効果を出すためには、こうした知識をプロジェクトを任された個人が身につけ実践していくことが大切ですが、
この連載の冒頭で記述したようにITプロジェクトは本質的にリスキーです。
ITプロジェクトが直面する納期遅延、コスト超過、品質低下といった問題については、組織的に取り組む必要があります。
こうした背景からPMOと呼ばれる組織を設置する企業や団体が増えてきています。
 
 

PMOとは?

「PMO」は、プロジェクトマネジメント・オフィスの略ですが、IT業界では、
数年前から通常の会話の中でも普通に使われることも多くなり、PMOという略語で既に定着した感があります。
ただ、PMOという言葉は、2つの意味で使われることがありますので注意が必要です。
1つは、大きなプロジェクトでプロジェクトマネジメントをサポートするために設置されたチームを指すことがあります。
プロジェクト運営上の標準やルールの作成、進捗やコストの消化状況の把握、懸案事項の解決などが主なタスクです。
プロジェクトマネージャを含めてPMOを構成している場合は、プロジェクトの遂行に直接責任を持ちます。
もう1つは、組織内で実行される複数のプロジェクトを横断的にサポートするために設置された組織です。
今回は、プロジェクトマネジメントを組織に導入することをテーマにしますので、PMOは後者の意味で使います。
 
また、発注側では、PMO を前者の意味で使い、後者の役割を持つ組織をプログラムマネジメント・オフィスと呼ぶことも多いようです。
この場合、PMOと区別するためにPgMOと表記されることもあります。
ここでいうプログラムは、コンピュータプログラムのことではなく、
プロジェクトの上位概念で「相互に依存する複数のプロジェクトや関連する業務の集まり」のことです[1]
演奏会や運動会のプログラムを思い浮かべていただくと理解しやすいかもしれません。
 
運動会のプログラムには、様々な競技が組み込まれます。
組体操、綱引き、○○リレーなどの団体競技や応援合戦は、競技ごとに練習計画を立てて運動会で披露します。
これらはそれぞれがプロジェクトです。
また、個人競技や保護者参加競技などプロジェクト的に進められないものもあります。
こうした競技が組み合わさって運動会のプログラムは構成されています。
一方、プログラム自体を企画し、全体をマネジメントする人達もいます。
記録係や用具係など、運営上必要な役割もあります。
この人達は、プログラムマネジメント・チームということもできます。
 
話を業務に戻します。
バラバラに運用されているメール・サーバーや各地域にあるデータセンタを東日本と西日本の2か所に集約するシステム統合を
考えてみましょう。
全体の計画の中でメール・サーバーの統合、西日本のデータセンタの統合、東日本のデータセンタの統合など、
複数のプロジェクトに分けて、まずメール・サーバーの統合に取り掛かり、完了してからデータセンタの統合に取り掛かるなど、
実行順序も考慮しながら進めるプログラムの形態をとります。
プログラムの構成は以下のようになります。
 
システム統合例
 
発注先のベンダーは、プロジェクトごとに異なるかもしれません。
このように発注側はプログラムを意識する、受注側はそこから切り出されたプロジェクトを意識することから、
発注側はPgMO、受注側のベンダーはPMOという形態になることが多いようです。
PgMOは、どのプログラムやプロジェクトに投資するか判断するタスクなど、PMOと異なる部分はありますが、
組織へのプロジェクトマネジメントの導入はPgMOが担います。
 
 

PMOの活動

図-1 PMOの活動

図-1 PMOの活動


ここからは、主に受注側の視点でPMOの活動を紹介します。
図-1に示すように、大きくは以下の3つになります。
 
(1)プロジェクトマネジメントに関する方針の確立
(2)プロジェクト対応のオペレーション
(3)プロジェクトマネジメントの共通基盤の構築

 
実際のPMOには様々なタイプがあります。
(2)を中心に行い、(3)の役割をほとんど待たないところもあれば、逆に(3)を中心に行い、(2)の役割をほとんど持たないところもあります。
また、(2)のプロジェクトとの係わりについても様々です。
強い権限でプロジェクトの意思決定に関わるところもあれば、プロジェクトのサポートを中心に行うところもあります。
どのタイプがよいというわけではありません。
いずれにせよPMOは、経営者とプロジェクトマネージャの間に入る組織ですから、両方の側面を持つことが要求されます。
経営者の期待とプロジェクトからのニーズに応じて役割を検討していくことになります。
 
また、PMOの活動も、プロジェクトの質の変化やプロジェクトマネジメントに関する組織の成熟が向上するとともに変わってきます。
設立時からPMOに多くの人員を投入するわけではなく、効果が見えてきてから体制の強化を考えます。
設立時にPMOメンバーに求められるのは、まずプロジェクトマネジメントの知識体系をしっかり身に付けることです。
この知識なしに(2)や(3)の活動を行うことはできません。
 
それでは3つの活動を詳細に見ていきます。
 

参考文献

[1] Project Management Institute: The Standard for Program Management Third Edition, PMI, 2012
 
 
 

プロジェクトマネジメントの薦め~ITプロジェクトを成功に導く~

第1回:なぜプロジェクトマネジメントが大事なのか?《前編》
第1回:なぜプロジェクトマネジメントが大事なのか?《後編》
第2回:プロジェクトマネジメントの知識体系《前編》
第2回:プロジェクトマネジメントの知識体系《後編》
最終回:プロジェクトマネジメント・オフィス《前編》
最終回:プロジェクトマネジメント・オフィス《後編》
 
 
 
【出典】


月刊積算資料2013年12月号
月刊積算資料2013年12月号
 
 

最終更新日:2014-07-10

 

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