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Information-BIMへの取り組み

BIMには「3D」と「情報=Information」の二つの側面がある。二つの側面を設計フローに即して捉えると、「3D」の側面は、設計が進むにつれて進化していく「形状」のフローであり、「Information」の側面は、設計の初期段階で行われる「性能」に関わるフローといえる(図-1)。日本ではBIMの「3D」の側面が主である。BIMの「Information」の側面について言及されたとしても、主に形態の寸法や仕上げ情報に留まっている。
 

図-1 日本設計のIntegrated-BIMワークフロー




 
BIMの本質は、建物の「データベース」化にある。「BIM」の持つ「データベース」すなわち「情報」の側面が、Information-BIMである。日本では、BIM「情報」活用がなかなか進んでいなかったが、その理由の一つには、意匠・構造・設備がそれぞれ別のソフトを使うところにあると思われた。異ソフト間での連携については、年々改善されており、「形状」に関してはかなり連携が改善されてきているものの、「情報」に関しての連携はまだ十分ではない。日本設計では、意匠・構造・設備が全て同一のBIMソフト「Autodesk Revit(以下、Revit)」を使う。そのため、セクション間での連携の問題が最初からない。後述するように、例えば、建築の面積や窓面積やその仕様、荷重条件、空調条件といった情報が、セクション間でスムーズに共有できる。このことが、日本設計において、Information-BIMの活用が大きく進むことにつながっている。
 
 

Integrated-BIMの推進

意匠・構造・設備の共通プラットフォーム「Revit」を中心にして、さまざまなツールがダイレクトに連携する。これが、日本設計の考える「Integrated-BIM」の骨格となる。特筆すべきは2点、「アルゴリズム設計」と「ダイレクト連携」である。具体事例は後ほど紹介するが、セクション間を横断するアルゴリズム設計は、共通プラットフォームである「Revit」とアドインソフトであるビジュアルプログラミング「Autodesk Dynamo(以下、Dynamo)」があってはじめて可能になる。また、環境シミュレーションの「ダイレクト連携」は、環境設計を重視し、取り組んできた日本設計の設計思想に非常にマッチしている。「Rhinoceros+Grasshopper+ 環境シミレーション」の可能性も、日本設計が開発した「Rhinoceros-Revit」のダイレクト連携ツール「ant sat」があることでさらに拡がる。日本設計の構造解析ソフトとBIMをつなぐ、「NASCA-Revit」の連携、Dynamoを使った情報連携も効果を発揮している。今後も日本設計は「Integrated-BIM」を進化させていく(図-1)。
 
 

Connection-BIMに向けて

BIMは、設計から、施工、さらには維持管理段階における建物「データベース」となる。だからこそ日本設計では、BIMを単なるツールではなく「ワークフロー」そのものとして捉えている。そして上述のとおり、「Revit」は設計の共通プラットフォームである。
 
一方、施工段階で加わる「形状」や「情報」には、非常に細かいディテールの形状であったり、その後の維持管理段階では使わない「情報」もある。例えば、カーテンウォールの詳細形状を「データベース」となる統合BIMモデルに全て反映する必要はない。統合BIMモデルから切り離すかたちで、ディテール検証するためのモデルを作成すればよい。鉄骨ディテール、配管ディテールなどもBIMソフトで作成する必要はなく、3D¬CAD作成すれば十分である。つまり、施工段階のかなり多くのモデルは、BIMモデルから一方通行の連携でよい。維持管理段階でも同様の話がある。例えば日々の修繕情報は、FMにおいては非常に重要な情報であるが、それを統合BIMソフトの属性で管理するのは全く現実的ではない。維持管理段階の関係者が、おのおの、高性能のパソコンを所有し、BIMソフトを装備し、BIMをフルに使いこなすという、現実離れした想定が必要となる。 つまり、施工や維持管理段階から考えると、設計のプラットフォームとは別に、より上位のプラットフォームがあると、さらに便利であるという発想が生まれる。
 
設計のプラットフォームには、全てのセクションが使えるツールであることが望まれる。同じBIMモデルにアクセスして、皆で一つの統合BIMモデルをつくり上げるからである。一方、施工や維持管理段階においても使える共通プラットフォームには、より多くのツールで、多方面から簡単にアクセスできるという、アクセシビリティの良さが求められる。そのためにクラウドテクノロジーは欠かせない。
 
こうしたクラウド・プラットフォーム活用としては、例えば、BIM-FM連携がある。「Integrated-BIM」モデルデータが、日々の修繕記録と並置し、アクセシビリティに優れた形でクラウド上に管理されている状態をイメージしてみれば、その使い勝手の良さが分かる。
 
いま日本設計では、クラウド・プラットフォームとして「Autodesk Forge(以下Forge)」を据え、「Integrated-BIM」のさらなる活用を考えている。施工段階、維持管理段階へも可能性は拡がっていく。
 
 

BIMの「情報」を設備設計に生かす

ここからは、「設備BIM」の具体例を紹介する。これまで、日本の設備BIMは、納まり検討や干渉チェックなどでの利用に偏り、建築計画が固まった後の実施設計後半や施工段階での活用に留まってきた。
 
日本設計では、Information-BIMに着目し、設備の「性能」決定に利用することで、設計の初期段階からのBIM導入を図っている。設備設計では、室諸元情報や機器情報、部材情報などさまざまな情報を、BIMの「Information」の側面に持たせて、「性能」決定に利用している(図-2)。その際、モデリング(形態)を、建物の階高や天高、梁背などを決定するためのクリティカルな部分に留めることがポイントである。最小限のモデリングを作成した後は、Revitにおいて「スペース」と呼ばれるエリアから室諸元情報を読み込み、情報が付随した機器をプロットする。ここまで入力されたモデルがあれば、詳細モデリングを行わなくても、セクション間の調整は可能であり、設備性能を決めることができる(図-3)。建築セクションの詳細モデリングが出来上がるのを待っていたのでは、設計初期段階での設備BIM活用は難しくなる。
 

図-2 BIMの「Information」




 

図-3 設備設計でのBIM活用方法




 
 

アルゴリズム設計によるルーティン自動化

ビジュアル・プログラミングでアルゴリズム設計を実現する「Dynamo」を活用した、設備設計の自動化にも取り組んでいる。例えば、スペース情報を集計し、機器の合計容量を自動的に計算して結果を戻すという一連の作業や、機器プロットまでモデル化した後は、「情報」活用により、負荷計算結果の数値を元に、機器を自動選定したり大きさを変えるといった自動化を可能にしている。今まで、時間と労力を費やしていたルーティンワークの自動化により、さらに深度化した検討が可能になる(図-4、5)。
 

図-4 アルゴリズムを利用した設備設計の自動化




 

図-5 アルゴリズム設計による自動化




 

スペースと部材情報を活用した設備の自動積算

BIMモデルから、BIMソフトのデフォルト機能を用いた数量算出は可能であるが、積算基準と異なる集計になるため、そのまま積算に活用できない。
 
そこで、日本設計では、積算基準に合致した長さ計上に則り算出できるようBIMソフトの集計方法をカスタマイズした。自動的に拾い書・集計書、さらには拾い図を作成することが可能になっている。この積算活用においても、積算を行う上で、可能な限りモデリング作業を最省力化することが実践的に大事であり、モデル上の部材やスペースへの「Information」の持たせ方にはいろいろと工夫を凝らしている(図-6)。
 

図-6 スペースと部材情報を活用した設備の自動積算




 
 

設備設計でのBIMワークフロー

BIMを設計フローに取り入れる際に重要なことは、BIM作業を追加業務にするのではなく、今までの業務を、BIMで置き替えていくことだと考えている(図-7)。
 

図-7 設備設計のBIMワークフロー




 
ただし全てをBIMに置き替えるのではなく、汎用ソフトやExcelシートなどの便利なものは残しつつ、それらをBIMと情報連携させ、BIMを情報の中心に据えることが最も有効である。
 
日本設計では、各セクションの情報をロスなく共有できるRevitを中心に据えて情報の体系化を行い、全ての情報をRevitにつなげることで、今までバラバラだった情報を一元的に管理可能にしている。これにより、設計の過程でしか利用されていなかった貴重な情報を、「3D」利用に限られていた施工段階や、さらには運用段階へ引き継ぐことを見据えている。
 
なお、Revit(MEP)は設備の「性能」を決定する段階で活用し、最終的なアウトプット(実施設計図)は「Autodesk AutoCAD(以下、AutoCAD)」や、Revitとのダイレクト連携を開発したRebroを併用している。建築同様、アウトプットの実践的工夫により、実用化を図っている。
 
 

NASCAと構造BIMモデル

次に「構造設計BIM」について概説しておきたい。日本設計では、構造解析プログラムは、自社開発の一貫構造計算プログラムNASCAを使用し、BIMソフトはRevitを使用している。それらを利用して、効果的にBIM活用を行うために、NASCAの構造データからRevitへのデータ変換を行うプログラムを開発し、現在運用中である(図-8)。
 

図-8 システムの全体図




 

BIMモデルの使用

現在、NASCAからのデータ変換によって作成された構造のBIMモデルは、①建築・設備などの他セクションのBIMデータとの干渉チェック(図-9)、②構造図(伏図、軸組図)の作成などで活用している。このBIMモデルから作成された構造図は、相互の図面間で整合性が確保されるため、図面の確認作業が軽減されている。
 

図-9 構造図作成の自動化




 

構造図作成の自動化

Revitを用いて自社の製図基準に適合した構造図を作成するためには、多くの手間がかかる。そして、その作業の一部は単純作業の繰り返しであり、かつ、どの案件に対しても共通である。今後BIMによる設計を継続的に行っていく上で、このような作業を自動化することは非常に効果的であり、構造図の品質向上および作業効率の向上につながる。そこで、NASCAからRevitへの変換時に自社仕様の伏図・軸組図の自動生成も同時に行うようにさらなる開発も完了している(図-8、9)。
 
 

二次部材の設計

小梁などの二次部材の設計においては、ビジュアルプログラミングツールであるDynamoを用いてRevitとExcelを連携させる仕組みを構築した。それにより、計算に必要となるRevit内の情報の抽出、Excelへの自動入力、そして計算結果に基づき修正された結果の反映を一連の流れで行うことを可能とした。以前と比較してExcelへのデータ入力や計算結果に基づく図面修正の作業時間を大幅に短縮することが可能になった。
 
 

情報の整理と共有

部門間の調整においては、さまざまな構造情報の中から各部門(意匠・設備など)の設計者が必要とする情報を整理した検討図(伏図・軸組図・断面リストなどとは異なる資料)が必要となる。これまで、検討図の作成は主に構造設計者が手作業で行っていたため、部門間の調整事項に変更が生じた場合、検討図の再作成作業が大きな負担となっていた(図-10-a)。そこでDynamoを活用して必要となる情報をRevitデータから抽出・視覚化することで、検討図作成の支援を行うツールを開発した。それにより、検討図作成の負荷が大幅に削減された(図-10-b)。また、このツールにより部門間の情報連携がより強固となり、設計全体の高品質化にもつながっている。
 

図-10-a 従前のワークフロー




 

図-10-b BIMを用いたワークフロー
(時間短縮が可能となる)




 

Information-BIMとBIMFM連携の可能性

Connection-BIMについても、具体例に触れておきたい。海外では、BIMは設計や施工のための効率化ツールというよりは、FMでの活用にこそ価値があると認知されつつある。だが、日本での活用例は非常に少ない。
 
繰り返し述べているように、BIMは3Dの「Visual BIM」の側面と属性情報の「Information-BIM」の側面を併せ持つ。BIMを建物の仕様・性能情報を統合管理できるデータベースとして活用することで、よりその可能性を広げることが可能になる。特に運用段階で必要としているのは、「3D」というよりもほとんどが情報の「I」つまりデータベースであり、BIM¬FM連携で肝心なのはBIMの「Information」を活用することにある。運用段階に必要とされるデータベースには設計段階から引き継ぐべき「情報」がかなり多くを占め、施工段階では品番や製造番号などメーカー情報を付与するくらいで十分なはずである、施工段階のものづくりのための詳細な3Dデータは改修工事では再利用できるとしても、FMの日常管理には細か過ぎてとてもハンドリングできるものではない。
 
ただし、運用段階の3Dのニーズは限定的という事実は受け止めておく必要があるものの、3Dというリッチなデータによりもたらされるメリットは少なからずあるはずである。われわれは、このFMでの3Dのニーズを、①インデックスとしての活用、②部屋と機器・機器と機器の関連を視覚化(図-11)、③3DによるFMデータベースの見える化、の3点に集約できるのではないかと考えている。
 

図-11 機器の親子関係の視覚化




 
そして、その活用を汎用化するため、FM段階では、直接BIMを扱うのはハードルが高いため、クラウド・プラットフォームである「Forge」を活用することを提案している。既存のさまざまなFMシステムの利点を生かしたまま、「Forge」を介したBIM¬FM連携こそ、付加価値を高めていく現実的なアプローチである。FMサービス会社「プロパティデータバンク」との連携も進めているところである(図-12)。

 

図-12 BIMとFMシステムの連携




 
現在、「Forge」の活用開発も進み、運用段階へつなぐ環境が整い、ライフサイクルでのBIM活用が具体化している。実プロジェクトでの活用も、今後急速に増えていくものと予想される。
 
さらにこの先へは、AI、IoTの活用が間違いなく進み、AIの「判断」には、「定量化」が当然の前提となる。そして、AIの「経験」には、IoT による「情報」の一元的蓄積を必要とする。さらに、この「情報」に、単体のBIMデータベース情報だけではなく、クラウド・プラットフォームに並置されたさまざまな情報、それは複数のIntegrated-BIMの並置であったり、都市的環境情報であったり、事業採算予測情報であったりするわけだが、さまざまな情報が加わることにより、「判断」は都市レベルに、経済レベルにも適用されることとなる。それは部分最適化からより広い視点での全体最適化へつながる道である(図-13)。
 

図-13 部分最適化から全体最適化へ




 

株式会社 日本設計 プロジェクト管理部 BIM室 
岩村 雅人/吉原 和正/田畑 健

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 

最終更新日:2019-01-17

 

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