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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > IPD体制で挑むBIMプロジェクト−FM利用を前提とした施工BIMの現状−

 

はじめに

日本国内でBIMが注目され始めたBIM元年(2009年)から10年を迎える。現在は、生産性向上というテーマが注目され、BIMによる建築生産プロセスを効率化すべく建設各社が取り組みを進めている。一方、発注者のBIM認知度はまだ低く、建設ライフサイクル全体でBIMを活用していくスタイルには至っておらず、ましてや建物オーナーが中心となり維持管理プロセスまでBIMを組み込んでいる事例はほとんどない。
 
今回は発注者主導のIPD(Integrated Project Delivery)体制で取り組んだ維持管理での利用を前提としたBIMプロジェクトの事例を紹介する。
 
 

プロジェクトの概要

本プロジェクトの建物用途はデータセンターである。本施設の完成後は国内最高レベルのデータセンター(図-1)として稼働する予定である。ここには各企業のサーバーマシンなどミッションクリティカルなICT機器が集まるため、安定した電源設備、空調設備、通信設備を備え、かつ高いセキュリティレベルが求められる建物仕様になっている(表-1)。
 

図-1 建物完成予想図




 

表-1 プロジェクト概要




 
本プロジェクトへのBIM導入目的は、発注者が竣工後の建物運営において、BIMを継続的に活用することにある。発注者はBIMの3次元的な要素のみならず、属性情報の活用に一番期待しており、それは施工業者選定時の発注条件として明記されている(表-2)。
 

表-2 BIM導入の目的




 
 

IPDによるBIMの組織運営

IPDとは建設プロジェクトに関わるステークホルダー(利害関係者)が課題を共有し、早期の解決を実現する協業形態である。本プロジェクトではIPD体制を組み、発注者がプロジェクトのスタート時から積極的に関与し、進捗状況を把握しながら課題を共有している。
 
BIMのプロジェクトを成功裏に導くために、本プロジェクトでは施工業者選定直後にIPDのBIM分科会がスタートしている。このBIM分科会は施工中の意思決定機関として機能を発揮するための位置付けとなっている(図-2)。
 

図-2 BIM分科会の位置付け




 
本プロジェクトでは関係者のBIM経験値にばらつきがあったため、BIMマネージャー主導のもと、着工まで2カ月間をかけてBIM実施計画書(以下、BEP)をまとめながら、メンバーの思いやゴールイメージについて共有を図っている。着工後は月に1回、BEPの見直しを含め、進捗の確認や技術的な課題について解決する場としてBIM評価会議を開催するなど工夫しながら組織運営に当たっている(図-3)。
 

図-3 BIMの組織運営スケジュール




 

仮想引き渡しの実施と目的

本プロジェクトの最大の特長は仮想引き渡し(Virtual Handover:以下、VHO)の実施にある。VHOとは、建築、設備、電気で調整された施工図レベルのBIMモデルを施工前に発注者に引き渡すことである。発注者はVHOモデルを自由に閲覧し、建物の使い勝手や竣工後の運営・維持管理プロセスについて利用者目線でチェックする。いわば竣工検査の前倒しとも言えるが、発注者のBIMを事業活用したい強い思いがあるからこそVHOは成立し、メリットを最大限に生かすことができるのである。
 
本プロジェクトのVHOは2つのフェーズで計画されている。第1フェーズの目的はVHOモデルで空間的な建築仕様を確認すること。第2フェーズの目的は発注者が運用している施設管理DBへBIMモデルの属性情報を受け渡すフォーマットの確認である。
 
 

VHOのプロセス

第1フェーズのVHOモデルは、建物全体でなくモノ決めの優先度を考慮しながら、フロアやエリアで分割して作成している。VHOの実施手順は以下のとおりである(図-4)。
 

図-4 VHOのプロセス




 
①施工者が総合図調整の終わったBIMモデルをNavisworks形式で、VHOモデルとしてクラウド上の共有フォルダにアップロードする。
②発注者はそのVHOモデルをダウンロードし、施設管理者目線でチェックする確認会を実施する。
③発注者は指摘事項をNavisworks内に直接コメントとして残し、VHOモデルを共有フォルダに戻す。
④施工者がコメントの入ったVHOモデルを確認する。
⑤施工者が設計者と対応方針を協議して決定し、BIMモデルに反映する。
 
この①〜⑤のプロセスをBIMモデルで合意するまで繰り返す。従来の図面チェックプロセスなら、紙に印刷したドキュメントでやり取りしがちであるが、発注者からNavisworksを活用したいという提案があり、スピーディーなVHOプロセスを実現できている。
 
 

VHOの効果

VHOを実施することは、発注者にとって施設運営・保守の方針および計画の前倒しにつながるだけでなく、これまで施設運営で苦労している点を改善できるチャンスでもある。今回発注者から指摘や質問として挙げられた項目数は100近くあったが(図-5)、全て施工前に解決ができている。それは施工者にとっては時間制約がある中で大変な労力であるが、竣工検査で指摘されて手直しをする手間とコストを考えれば、メリットも十分にある。
 

図-5 VHOでの発注者コメント例




 
VHOはIPD体制で取り組むBIMプロジェクトにおいて、関係者がWin-Winになる結果を導き出す必須手法であると感じている。
 
 

竣工に向けて

本原稿を執筆している現時点で、プロジェクトは進行中であり、終盤の追い込み体制に入ったところである。今回は残念ながら全ての成果を紹介できないことをご了承いただきたい。
 
次のステップは、第2フェーズのVHOを実施し、BIMの属性情報を発注者の施設管理DBへ渡すためのプロセスを構築することである。ここでBIMを正とした建物情報の一元管理ができれば、今後発生する追加工事、保守工事においてもBIMモデルが更新されていくことになり、建物のライフサイクル全体を通してBIMを活用していくワークフローが確立されることになる。発注者にとってのBIMプロジェクトの価値を示せる事例になると信じている。
 
 

株式会社 NTTデータ、株式会社 NTTファシリティーズ、 
株式会社 フジタ、新菱冷熱工業株式会社、株式会社 協和エクシオ

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 

 

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