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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > 施工BIMの今−大林組のBIM・米国グループ会社との比較の観点から−

 

はじめに

施工BIMと一口に言っても、日本の施工BIMと諸外国のそれとでは異なっている点が多々ある。ツールとしてのBIMは、やがては進んでいる方に追い付くように思えるが、文化の違いを反映しがちなマネジメントのプラットフォームとしてのBIMでは、そう簡単ではない。
 
ソフトベンダーやコンサルの方々が成功例として紹介する海外の施工BIMに違和感を覚える人は多いのではないか?「工期が**%短縮された」「費用が**%削減された」と言われてもにわかには信じがたい。比較の元は何?そこをあえて追求しないのは「ま、海外と日本では違うからね」ということであろう。デザインの分野はそこそこインターナショナルだが、施工は規模が大きくても、まだまだ地場産業だということでもある。
 
 

Webcor社

海外の建設会社の事例として、米国のWebcor社を取り上げる。Webcor社はサンフランシスコエリアを中心に事業を展開している建設会社で、2007年に大林グループの一員となった。現在はカリフォルニア州の大手建設会社の一つにまで成長している。興味のある方はホームページ(http://www.webcor.com/)を参照してください。
 
Webcor社は以前から3Dツールの活用に積極的であり、大林組がBIMを正式に導入する2010年以前からBIMを活用していた。導入前にはWebcor社を視察し、導入後には東京にBIM担当者を招きワークショップを開催するなどして交流を図っている。
 
 

自社設計・他社設計・プレコンストラクション

施工BIMの入り口は発注・契約方式によって異なる。
 
設計施工の場合は、社内でフロントローディングが可能である。生産側がコーディネーションミーティング(写真-1)に参加することにより、コンカレントにモデルづくりを協働できる。この場合、施工BIMの入り口は実施設計プロセスの中にある。当社では設計部門と施工部門の協働をよりスムーズに行うために、2017年11月からBIMマネジメント課を本支店に設置し、設計BIMマネージャーと、施工BIMマネージャーを配属した。BIMマネージャーは設計・施工合わせて65名が認定され、BIMの活用方針の策定と運用の監視に当たることにした。
 

写真-1 コーディネーションミーティング




 
設計施工分離の場合、設計が完了してから施工が始まるという従来型のプロセスとなり、施工BIMの入り口は着工時である。この時に設計側から使えるBIMモデルが提供されれば問題ないが現状それは難しい。使えるという条件の一つは、モデルファーストで設計図面がBIMモデルから切り出されているということである。
 
BIMソフトを使って設計する設計事務所は増えてはいるが、それは設計行為に留まっており、BIMモデルが存在していても多くはレファレンスの域を出ない。確認申請にBIMモデル提出を義務化しているシンガポールでも、設計モデルの整合性が保証されているわけではなく、現段階では施工側にとって設計モデルを作り直して使うより、一から施工モデルを作った方が効率的という報告1)もある。
 
海外では設計施工分離の場合、その協働を促すために、プレコンストラクションというプロセスがあることは珍しくない。これは実際の施工が始まる前に、設計事務所と協働して工期や予算を発注者の要望に合わせて実施設計を行うプロセスで、フロントローディングという行為が契約の形を取っている。日本では公共工事の発注で時折見られるECI方式がこれに近い。
 
Webcor社では戦略的に、プレコンストラクション付きのプロジェクトに力を入れている。米国では一般的なことであるが、Webcor社は施工専門会社であり、設計部門を持っていない。また、日本のゼネコンが行う生産設計は設計の範疇である。従ってWebcor社では3Dモデルの作成は行わず、プレコンストラクションにおいても、施工側の要望を盛り込んだBIMモデルを設計側が作成する。モデルは設計事務所やサブコンが作るもので、当社をはじめ日本のゼネコンが工夫して作成している生産設計モデルやその図面化は、基本的に彼らの課題ではない。
 
 

施工におけるBIMの活用

専門業者との協業が進んでいる分野は設備工事で、これは洋の東西を問わぬところである。設備サブコンの参加しないBIMは価値が半減する。当社でも建築モデルと設備モデルの統合や、免震層のチェックなどは施工BIMの定番メニューである。また、属性を付与された設備モデルは維持管理段階の主役となるので、これを見据えた施工BIMのありようが研究開発のテーマとなっている。
 
Webcor社においても設備BIMに重点を置いており、一定規模以上のプロジェクトについては、建築モデルと設備モデルの統合・整合性の確保は必ず実施している。図-1は天井内の設備モデルである。モデルが確定しサブコンの承認を得た後、現場ではモデルから位置情報を取得し、天井インサートやスリーブ、箱抜きの位置出し(写真-2)に利用している。写真-3はノルウェーの例であるがBIMデータから座標情報を取り込み、後打ちインサートを施工するロボットも開発されている。
 

図-1 天井内設備モデル




 

写真-2 天井インサート等の位置出し




 

写真-3 天井インサート施工ロボ




 
躯体工事では、鉄骨ファブとのデータ連携が課題の一つである。固い部品の集まりである鉄骨はBIMとよくなじむので、鉄骨ファブが使用している鉄骨専用CADに対して、構造設計モデルとのデータ連携が可能である。現状、条件次第で鉄骨生産モデルを使い関係者の合意を得て、一般図や単品図が生成可能なところにきている(図-2)。
 

図-2 鉄骨生産モデル




 
一方、Webcor社ではRC躯体工事での3Dモデル活用が盛んである。Webcor社にはself-performing workの伝統があり、社内にRC躯体工事専門部署を持っていることも、これを後押ししている。RC造の多くはコア部分とフラットスラブ+独立柱部分で構成されており、構造要素が合理化、単純化されている(写真-4)。そのため、PC工法でなくとも1フロア最短3日の施工サイクルを可能にしている。1フロア2週間はかかる日本の在来工法と比べると驚きの速さである。躯体の形状が合理化、単純化されていることは、型枠支保工もシステム化が容易であり、すなわちモデル化が容易であるということでもある(図-3)。
 

写真-4 RC建築物の施工




 

図-3 型枠支保工モデル




 
仕上げ工事のデータ連携も製作までつながることが望まれる。当面のターゲットは複雑な形状をしたカーテンウォールや金属パネルなどである(図-4)。製作工場では以前から図面からデータを読み取り、人力でNC機械に入力し加工することは行われているが、BIMモデルからのデータ一貫利用の事例は限られている。加工機の機能の問題もあるが、前提として、信頼のおける建築モデルを提供する必要がある。
 

図-4 カーテンウォール製作用モデル




 
Webcor社の例としてサンフランシスコ近代美術館(SFMoMA)の外装パネルを挙げる(写真-5)。このパネルはFRP製で波打った表面が特徴である。BIMモデルで作成した形状データを使い、FRPパネル製作のための型枠をNC機械で製作した。
 

写真-5 SFMoMAの外装パネル




 

施工BIMとICT技術

近年、IoT、点群、画像認識、VR/MR/ARなどのICT技術の開発が進んでいる。これらとの連携はBIMの価値を大きく高めることになるため、当社でも社内外のリソースを活用し積極的に取り組んでいる。特に施工フェーズでは改修工事を中心に、点群利用の機会が増加している。2016年の熊本大地震で被災した熊本城飯田丸五階櫓の緊急倒壊防止工事では、石垣に接近することなく3Dレーザースキャナーを使って現況を測量し、一刻を争う工事計画の立案に大いに貢献した。
 
ICT技術の活用フィールドの多くはバーチャル空間の建築物である。ICT技術があっても、建物モデルがなければ使えず、そのためだけにモデルを作るのは無駄である。施工BIMをあまねく普及させることが肝要といえる。
 
 
参考文献
1)田村、金多、Deng、古阪:シンガポールでのBIM導入の現状に関する一考察、日本建築学会大会学術講演梗概集(九州)、2016年8月
 
 

株式会社 大林組 建築本部 PDセンター所長 宮川 宏

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 

 

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