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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > 施工BIMの今-横森製作所のBIM-

 

はじめに

建物ごとに一品生産となる鉄骨階段の作図から製作の効率化を図るために開発した、鉄骨階段専門CADシステムの開発とその背景、専門工事会社におけるBIM活用の取り組みについて紹介する。
 
 

鉄骨階段専門CADシステムの変遷

当社は1993年より8年間、自社開発した鉄骨階段専門の2DCADシステムを使用した後、2001年よりAutoCADをプラットフォームとした自社開発のCADシステムを現在まで使用している。
 
このシステムはAutoCADの3D機能を利用して、鉄骨階段モデルを構築した後に、施工図、工作図(部材加工図)を2Dに投影して出力する、いわば現在のBIMに近い概念のシステムを使って、鉄骨階段、階段用受け鉄骨、手すりという各製品の作図を行ってきた。
 
2017年後半からは、ARCHICADをプラットフォームにした新システムの運用を開始した。
 
※以降Aut oCADのシステムを「旧システム」、ARCHICADのシステムを「新システム」と表現。
 

図-1 鉄骨階段専門CADの変遷




 

システム開発の背景

2DCADの時代から作図精度の向上および効率化と、製作工場の加工機械とCADから出力されるNCデータ連携を行い、作図と製造の生産性向上を図ってきた。しかし2DCADである以上、平面図、立面図、その他各種詳細図の編集は、線の1本1本を手動で行うため、施工図、工作図で図面間の不整合が多く発生した。また階段は必ず勾配が絡んでくるが、階段に絡む干渉物との回避や、ヘッドクリア確保などの確認も複雑になる。
 
旧システムではパラメータによる階段3Dモデルの自動組み上げ機能や、部品同士の干渉チェック機能を実装し、作図の段階で干渉を確認できるようにした。また工作図は、施工図との不整合や形状などの間違いが製品の誤作に直結するため、3Dモデルから工作図を自動で出力し、階段の骨格となるササラ桁からボルト1本まで正確に出力できるシステムを開発した。
 

図-2 鉄骨階段モデルの自動組み上げ




 

新システムの開発

旧システムは、鉄骨階段モデル編集に必要な機能を全てカスタマイズにより実装している。これまで最新のAutoCADへ載せ替えをしなくてもそれほど不都合がなかったことと、カスタマイズ機能の多さから、載せ替えには時間とコストがかかることもあり、プラットフォームはAutoCADのバージョン2006のまま運用してきた。しかし2015 年頃から最新のOSでは動作が不安定になる現象や、32ビットのパソコンでなければ動作しないといった問題が徐々に発生してきたため、最新環境で動作するシステムの開発に至った。プラットフォームの選定を行い、建築で利用されているBIMツールの中からARCHICADを選択し、新たな鉄骨階段BIM-CADシステムの開発を行った。
 
建築用BIMツールにはあらかじめフロア(階)の概念があること、建築用の作図機能や3D部品が実装されているので、その部分をそのまま利用できるというメリットがある。また設計事務所、ゼネコンとは、IFC形式でBIMデータの連携が行える部分も選定の理由である。
 

図-3 編集中のモデル




 
作図上重要となるルールは「モデルを使って作図をする」ということである。3Dなのでモデルを使うことがそもそも当たり前だが、客先とのやり取りで図面修正を行う際に、操作に長けていないスタッフが、2D出力された図面だけを修正してしまうということがある。この場合、承認の段階で2D図面は最新状態だが、モデルは古い状態のままとなる。しかし工作図作業ではモデルが必要になるため、社内ではモデル修正から工作図だけを行う専任者が生まれる。そこで承認後の2D施工図面を見てモデルを後から修正するという無駄な作業が発生する。また施工図担当者と工作図専任者間のやりとりで、伝達漏れや、工作図専任者の図面理解不足によるミスが発生する。
 
新システムはそれらを踏まえ、編集作業の軽減や自動化を多く実装し、作図者の負担を減らせるような機能を取り入れた。
 
また製作工場からの要求で、工作図に手動で加筆する項目が多く発生していたが、この部分についても自動化を図り加筆作業を軽減させた。
 
ただしシステムが高機能でも、正しい方法で利用しなければ効果は出ないため、現在は社内の操作教育と、運用方法の改善を並行して進めている。
 

図-4 鉄骨階段施工図と工作図




 

製造連携

製作工場ではCADから出力したNCデータによる加工を行っている。NCデータは厚板の切断と孔明けを行う厚板加工ライン、踏板と踊場板などを製作する薄板加工ライン、階段受け鉄骨などの型鋼材加工ラインといった部分で使用している。3Dモデルを直接取り込める機械も出ているが、その中で手すり製作工場では3Dモデルを取り込める3Dレーザー加工機を導入している。現在加工データは手入力しているが、今後は新システムからモデルデータを渡し、複雑な形状の部材加工を行えるようにする準備を進めている。
 

図-5 工場の踏板加工ライン




 

今後の課題と展望

社外とのBIM連携として、鉄骨製作業者(FAB)のモデルを取り込んで、鉄骨階段モデルの編集に利用したいと考えている。現在は鉄骨階段が取り合う部分は、2Dの構造図、鉄骨図面を参照して、受け鉄骨のモデルを当社のCADで配置し、ササラ桁と梁の接続部の取り合いを、階段モデルで編集を行っている。
 
将来FABなどのモデルデータが利用できれば、構造図、鉄骨図の読み違い防止と、階段を受ける鉄骨モデルの配置を省くことが可能になる。
 
その他では、設計事務所やゼネコンが使用している、汎用BIMツールで作成されたモデルから、階段オブジェクトの情報を取り込んで、当社の鉄骨階段モデル構築に必要なパラメータ情報(階段の各部寸法等)をインポートしてモデルの自動組み上げのようなことも思案している。
 
BIMを活用して作業の省力化と、製品の品質向上につなげていきたいと考えている。
 

図-6 屋外階段モデル




 
 
 

株式会社 横森製作所
技術部設計技術課 課長 島崎 建輔

 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 

最終更新日:2019-01-17

 

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