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ホーム > 建設情報クリップ > 知る見るインフラストラクチャー > 知る見るインフラストラクチャー「老朽化した鋼矢板水路を補修・補強して長寿命化を図る”ストパネ工法”ってどんなもの?」

 



 
技術・製品・工法の内容を,サクッと掘り下げてみる「知る・見る インフラストラクチャー」。
 
今回は鋼矢板水路の補修工法に焦点を当て,藤村ヒューム管株式会社 技術開発本部技術営業部の長崎文博課長と,新潟大学農学部の鈴木哲也准教授,株式会社水倉組 営業本部営業部 小林秀一次長( 農学博士) に「ストパネ工法」についてお話を伺ってきました。
 
 

老朽化した鋼矢板の現状

高度経済成長期,低平排水不良地域では経済性と施工性の良さから鋼矢板を護岸とした農業水利施設が普及しました。現在,これらの鋼矢板水路では標準耐用年数を超え,長期供用に伴う矢板材の腐食が顕在化しています。
 
鋼矢板水路の劣化対策として,腐食が進行した鋼矢板を更新する方法がありますが,都市化による施工スペースの制約と軟弱地盤での施工条件の制約により多額のコストが発生するという課題があります。このため,効率的・効果的に鋼矢板水路の劣化対策を推進し,ライフサイクルコストの低減につながる保全対策を講じる必要があります。
 
 
腐食劣化した鋼矢板水路の事例(供用後26年経過)
 



 
 

老朽化した鋼矢板水路を補修・補強して長寿命化を図るストパネ工法

「維持管理(ストックマネジメント)に資するパネル工法」という意味から名づけられた「ストパネ工法」は,土木工事を手掛ける水倉組と新潟大学,藤村ヒューム管などとの共同研究を経て開発された技術です。
 
既設鋼矢板の腐食領域を軽量プレキャストパネル(ストパネル)と充填コンクリートからなる複合材で被覆させ,施設の長寿命化を図る工法です。
 
工法概要図



 
 
腐食が顕在化した鋼矢板表面をコンクリートで被覆することで,腐食因子である塩化物と酸素の供給を遮断し,酸性条件にある鋼矢板を防食効果のあるアルカリ条件にして既存施設の長期保全を実現させます。
 
 
腐食の進行抑制メカニズム



 
ストパネ工法は,性能を実証するために農林水産省「官民連携新技術研究開発事業」の採択を受け,各種性能試験が実施されています。これらの性能を定量的に評価することで同工法の信頼性を確認しており,「Made in 新潟 新技術認定」「平成27年度 農業農村工学会賞(優秀技術賞)」など複数の認定や表彰を受けています。(NETIS HR-160005-A)
 
 

ストパネ工法の特長




 
①コンクリートが持つアルカリの性質により鋼矢板の腐食を抑制する
 
②プレキャストパネルは耐候性・耐摩耗性に優れており,従来の塗装工法である有機被覆工法等と比べて耐用年数が長く,
ライフサイクルコストの低減が可能
 
③部材が薄く軽量なプレキャストパネルの使用により水田地帯の排水路,施工スペースの小さい狭隘な河川にも適用可能。
また専用の接続金具を使用するので施工性が向上する
 
 

ストパネ工法の施工手順

①下地処理



 
②基礎砕石・均しコンクリート打設



 
③ストパネル設置



 
④被覆コンクリートポンプ車打設



 
 

おわりに

藤村ヒューム管を事務局として,平成29年10月にストパネ工法の普及活動を促進する鋼矢板水路腐食対策工法協会が設立されました。
 
また,鈴木哲也准教授は,技術検討委員会委員として補修・補強に関する「鋼矢板腐食対策編」のマニュアル作成に尽力されており,メンテナンスマニュアルは現地実証実験の知見とデータ,民間開発技術の収集などを反映させ,平成30年度を目処に完成予定となっています。
 
そして水倉組の小林秀一次長は,ストパネ工法に関する長年の研究で博士号を取得されたそうです。日々の業務に携わりながら博士論文を書き上げた小林次長のヒューマンストーリーにも興味が湧きます。いつかお話を伺えればと思っています。
 
 

取材=(株) フィールドリサーチセンター

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2018年2月号



 

最終更新日:2018-06-07

 

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