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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 道路橋示方書改定の概要

 

1.はじめに

国土交通省は,橋,高架の道路等の技術基準(道路橋示方書)を平成29年7月に改定し,都市局長,道路局長より関係機関に通知した。改定された基準は,1月以降に着手する設計から適用される。今回の改定は,生産性を向上させつつ,良質で長寿命な道路橋を実現するための枠組みが作られたものであり,性能の検証体系と方法が刷新されたことで,橋の性能を達成するためのさまざまな方法に対して多角的に性能を検証することが可能とされた。新しい基準は,道路局ホームページから入手可能である。
 
 

2.性能規定化の進化と国際化

今回の改定では,平成13年以来の性能規定化がさらに進化した。平成13年の改定は,性能規定化の第一弾として,それ以前の従来基準においては仕様的な規定のみから構成されていたものを,これらの仕様的な規定を標準的な性能の達成手段と見なし,さらに,上位条文として,規定の意図を要求性能として示すことで,規定の意図を満足し,従来の標準構造と同等の安全性を有するものであれば新しい技術等も採用できる枠組みが整えられたものである。
 

しかし,性能に係る条文の適用に当たって,具体的にどのような観点から性能を検証すべきかなど,性能の達成度を定量的に評価するための評価の着眼点や評価手段の充実が課題として残された。また,個々の条文の単位での性能規定化はなされたものの,新しい形式の橋梁など,橋全体としての性能の評価項目は必ずしも明確でないという課題も残ったままであった。
 

そこで,今回の改定では,図−1に模式図を示すように,平成13年から導入している条文単位での性能規定化はそのまま引き継いだうえで(図−1の①),さらに,橋全体系,上部構造・下部構造・上下部接続部,部材,材料の単位で,求められる性能を階層化して規定されている(図−1の②)。併せて,各階層において,外力と抵抗の関係における安全性や荷重支持機能の信頼性を設計時点で明確化することが求められた(図−1の③)。
 

図−1の②は,多様な構造形式に対して,橋としての性能を検証することを多角的に,かつ,設計のあらゆる階層で行えるようにしたことを表したものである。この改定では,性能の評価は,材質の性能や部材としての強度が保証されればよいことに留まらない。道路橋のように,部材どうしが相互に影響し合うだけでなく,耐荷,耐久,その他多岐にわたる性能が同時かつ相互に影響し合う構造物では,材料や部材の力学的応答に対する直接的な照査だけでは道路橋として期待される要求性能を保証することは困難である。
 

このため,橋全体として求められる性能とそれを満足するための前提条件となる部材や構造の性能を階層的に規定し,基準に規定される標準的な検証方法によることなくさまざまなレベルで橋の性能の検証を可能とする新しい手段を導入した。換言すれば,さまざまな技術の提案に対しても,橋の性能を構成するあらゆる階層で,最低限の要求性能が一定の信頼性水準において満足されることの照査の枠組みを整えたとも理解できる。
 

また,図−1の③にイメージを示しているが,橋の耐荷性能として,外力の組合せをどのように想定しているのか,抵抗が発揮される過程をどのように,また,どの程度の信頼性で制御しようとしているのか明らかにするなど,設計時点で,外力と抵抗の関係性の信頼性を明確にするようにされた。供用中に遭遇する可能性のあるさまざまな外力に対する安全性と確保される機能のレベルを国民に保証するのが技術基準の役目であることから,橋の耐荷性能においては,「橋が置かれることを想定する状況(外力)」において「橋がどのような状態(抵抗)」に「どの程度の確からしさ」でなることを意図しているのかという構図をそのまま性能マトリックスとして規定し,これに沿う形で荷重や抵抗の要因と特性に応じて安全余裕を与えることが大原則とされた。
 



 
このような規定の方法がとられた結果,将来の基準の改定を考えたときにも,設計で想定する状況の細分化や変更,また,同じ状況に対して求める状態の細分化やその達成度の信頼性の変更などにより,道路整備の水準の変化や特殊な条件に対して,工学的に説明性のある形で柔軟かつ適切にその目的に応じた性能の設定を可能にし,的確かつ合理的な対応が行えると期待される。
 

以上のような性能規定化は,ISO2394 General principles on reliability for structures(構造物の信頼性に関する一般原則)にて求められる構造物の性能の透明性や説明性の向上にも合致するものである。米国AASHTO基準では,限界状態という用語を,照査に用いる外力と照査項目の組合せのカテゴリーの定義として用いているが,ISO2394においては,状況は外力等の発生頻度や組合せ,状態は,構造物の機能や安全性の観点から規定されるものとされ,最終的に,どの状況に対してどの限界状態を超えないようにするのかを定義している。
 
さらに,この示方書では,橋の耐久性能については,橋の耐荷性能を満足させるための前提条件として位置付けられた。道路橋のように長期の供用が求められるインフラでは,目標とする供用期間における耐荷性能の信頼性は,疲労や材料劣化といった経時的影響を前提として達成が保証されなければならない。そこで,耐荷性能と耐久性能の関係性を,耐荷性能の前提としての耐久性能であるとし,耐久性能は,任意の時刻に耐荷性能が満足されることの時間的信頼性の水準であると定義された。具体的には,作用の累積的影響に対して,橋が耐荷性能を発揮するために必要とした状態が維持される時間の信頼性を設計時点で明確にすることが求められる。
 
また,信頼性の確保に当たっては,材料や施工の品質,更新や点検といった維持管理戦略までを含めて総合的に設計することが必要となっている。すなわち,要素技術にとどまらず,施工品質や検査方法,診断方法や不具合の措置方法までも含めた総合技術として耐久性能の開発が行われることを期待し,かつ,これを評価できる基準が指向されている。
 
このような性能規定化により,今後ますます困難を伴う既設道路橋の維持管理に対して,これまでの教訓も踏まえて,耐荷力を発揮させ続けることの確実性と容易さを兼ね備えて耐久性を確保する技術の開発・導入が期待できる。
 
 

3.設計供用期間

設計において常に念頭に置くものとして,設計上の目標期間である設計供用期間を今回初めて明確に規定した。設計供用期間は,適切な維持管理が行われることを前提に,橋が所要の性能を発揮するように設計にて目標とする期間であり,100年を標準としている。橋の性能を満足させる検討を行うに当たって,その前提とする期間が明確にされたのは今回の改定が初めてである。
 
災害の発生や経年劣化も生じることを前提に,また,設計計算では必ずしも考慮していない不測の事態が生じることも前提に,100年の間,どのようにして橋の性能を維持し続けるのかを設計時点で明確にすることが求められることになった。例えば,疲労や腐食などへの対策について,用いる技術に期待される性能や設計供用期間に対する信頼性を考慮して,維持管理計画と併せて具体的に設計することで,設計供用期間における耐久性の信頼性の向上が実現されるものと期待される。
 
 

4.部分係数と限界状態〜橋の耐荷性能〜

改定された道路橋示方書は,橋の耐荷性能を,橋が遭遇する状況に対して,常に,その状況で求める橋の使用目的および安全性のそれぞれについて必要な信頼性が確保されることと捉えている。
 
時々で変化する荷重同時載荷状況を具体的に想定すること,その状況で求められる荷重支持能力を発揮するために橋があるべき状態の限界,落橋等の致命的な状態が避けられる限界の状態を具体的に想定することで,どのような形式,材料や部材を用いた橋でも,その性能の照査を直接行うことが可能になっている。
 
今回の改定では性能の照査法として,将来も見据えて,許容応力度法に替えて限界状態設計法および部分係数書式(部分係数設計法)が導入された。なぜなら,抵抗側のみに対して,かつ材料の降伏点または最大強度点に対して設定されるただ一つの安全率で安全余裕を考慮する許容応力度設計法では,多様な条件そして多様な橋形式,部材構造,材料の組合せへの性能の評価法をきめ細かく規定することが困難になってくるためである。
 
具体的には,部材構造や材料の性能を評価する尺度として,外力の増加に応じて弾性挙動から非弾性挙動に変化し,さらに終局状態に至るまでの過程が明らかであり,過程における代表的な状態変化点を「限界状態」として定義できることが求められる。また,想定する状況に対して橋が限界状態を超えないことを照査するに当たって,根拠となるデータの質と量などが反映され,データの蓄積に応じて部分的な安全率の見直しも将来的に可能になるように,橋が置かれる外力の水準および構造や部材の限界状態の評価に関わるさまざまなばらつきをその要因毎に考慮できるとされる「部分係数」が導入された。
 
部分係数の種類を表−1に示す。橋の耐荷性能の照査に用いる作用の組合せ,荷重組合せ係数や荷重係数は共通編で規定され,鋼橋,コンクリート橋問わずに統一されている。これも,どのような形式の橋であっても,橋の耐荷性能の検証を統一的に過不足なく行えるようにすることを念頭に置いたものである。作用に乗じる部分係数の値は,今回の示方書では,100年を念頭に,作用の組合せとして最も厳しい状況を代表できるように,確率的な検討結果とこれまでの設計で考慮した作用の規模を参考に検討された。
 



 
例えば,作用に乗じる係数は二つあるが,その合算値で見てみれば,活荷重については,荷重組合せ毎に1.25〜1.19の範囲で係数が乗じられる一方で,死荷重については,1.05が乗じられる。
 
このように,各荷重のばらつきの違いを作用に乗じる係数として考慮することで,部材毎に発生する断面力に寄与する荷重の比率に応じて,断面諸元が結果的に調整されるようになるので,橋の部材を構成するうえで,より的確に断面寸法が決定できるようになり,多くの橋を平均的に見れば,活荷重に対しては従前と同等の安全余裕を確保しつつ,ばらつきの少ない死荷重に対して安全余裕が合理化されたことの効果が現れると考えられる。
 
しかし,活荷重やレベル2 地震動などのように,道路ネットワークの性能水準そのものとも言える荷重については,他の関連法令との関係のみならず既往の損傷や被災実績なども考慮して決定されているものもある。性能規定化,部分係数化とはいえど,これらの外力については特性値や載荷方法を見直したりするようなものではないという理解のもと,また,これらに乗じる部分係数が1.00を下回るようなことはないように基準化されている。また,架橋条件や交通条件等をこれらの係数として考慮するための基本原則やルールは,部分係数化の第一弾としての今回の改定では検討されていない。
 
極論すればデータの処理次第ではいかような係数値でも作れてしまうものでもあり,道路のネットワークの一部として必要な性能を統一的に確保するためにも,作用に乗じる係数値を個別の事業で変更しようとすることは軽々と行うべき性質のものではないだろう。
 
抵抗値に乗じる係数は,材料や施工のばらつきに関わる係数(抵抗係数)と,鋼部材のあと座屈挙動が部材パラメータにより異なることや,コンクリート部材の非弾性挙動が曲げまたはせん断の損傷形態の違いにより異なることを反映するための係数(部材・構造係数)からなる。このような部分係数化は,新しい材料であっても,品質が確かであれば,設計の前提となる施工管理方法を確かめたうえで,かつ,部材としての挙動が確かめられた範囲で利用できる余地を明らかにしたものである。このように,限界状態設計法や部分係数設計法を用いることで,許容応力度法に比べて,新しい構造や材料について少なくとも検証すべき事項が明確化された。
 
調査・解析係数は,今回の改定では,地盤調査等,橋の設計を行ううえでの調査の質の向上に対するインセンティブとして用いるに留まっている。調査・解析係数は,標準的には0.90であるが,今後,橋の状態や破壊過程の評価方法の高度化に応じて0.95程度まで見直せるように,今後の設計基準の合理化の余地がここに残された。
 
なお,道路橋示方書は,いわゆる信頼性指標ベータを指標にして部分係数を調整することは行っていない。外力側は,組み合わせた結果として作用効果の信頼性水準が一定になるようにすることも念頭に置きながら,作用に乗じる部分係数が決定されている。また,抵抗係数も,作用の確率水準とは関係なく,抵抗側の評価の信頼性のみに着目し,検討されている。
 
今回の改定ではその方法論を示すには至っていないが,今後,外力に乗じる部分係数や抵抗に生じる部分係数の調整ルールを明確にしていく必要があると考えている。また,このルールの検討を通じて,既設橋の性能評価を決め細かく行うために係数値に選択肢を設け,道路ネットワークとして合理的な補修補強が行えるようにすることや,海外プロジェクトのためにその国の状況に合わせて部分係数を作成することも含めて技術基準をパッケージングすることで,海外プロジェクトにおけるわが国の総合的な競争力の確保へとつなげていくことも期待できる。
 
 

5.長寿命化の合理的な実現〜橋の耐久性能〜

実質的に100年以上にわたり供用することを目標に設計する道路橋の場合,維持管理をどのように行っていくのかも設計時点で具体的に考慮することが求められる。
 
そこで,今回の改定では,設計にあたって,まず,部材毎に耐久性の目標期間を明確にすることが規定された。そして,橋の耐荷性能の前提となる部材の状態を維持させ続けるための方法とその信頼性を確保する維持管理の方法を設計時点で明確にすることが求められることになった。橋の状態を維持するための耐久性の確保の方法にはさまざまなものが考えられるが,設計時点で,その原理,適用条件について,蓄積されたデータ,データから明らかでない点や作用の影響の累積を見積もるうえでの明らかでない点について,維持管理の条件も総合的に判断し,部材毎に目標期間を明らかにすることが,従来と異なる。
 
このような改定を行ったことで,橋として性能が維持されるのであれば,部材そのものを交換するなどさまざまな創意工夫を行いながら橋としての長寿命化を達成することも可能になっている。また,原理的には,実績がない材料等であっても,維持管理の方法と一体で信頼性を確保することで採用できるようになっている。
 
併せて,多種多様な耐久性を確保する方法の原理を方法1〜3に分類し,原理やその根拠・不確実性の程度や,維持管理の制約条件も反映させ,維持管理方法を予め具体化することも規定された(表−2)。すわなち,各方法について,どういう原理で,どの程度の信頼性を期待できる技術であるのかに関わるデータや既に検証された範囲等に基づいて,維持管理の確実性と容易さと併せて,橋の耐荷性能の前提となる橋の状態を維持し続けるかの戦略を設計供用期間を前提に設計時点で明確にすることで,耐久性の確保が確実になされることを期待している。
 



 
方法3については,橋の設計供用期間を考えたときに劣化が生じないと見なせる方法である。交差物件との関係や環境条件等の架橋条件や構造の特性を考えたときに,部材によっては耐久性の信頼性を特に高めたい場合には,この改定では,方法3 のような戦略も採り得る。方法3 の一つとしては,現在開発や検証が行われているさまざまな耐食性材料の活用が期待されるが,今回の改定では具体的な材料は規定されていない。部材の耐荷性能と併せて,個別に検討を行って採用するという位置付けにされている。なお,方法3に分類できると見なせる方法を採用したからといって定期点検が不要になるものではなく,定期点検を実施できることの確実性は要求される。
 
 

6.その他の改定事項

熊本地震における最新の被災の教訓を反映して,より被災しにくく,かつ,被災したとしても復旧しやすい橋を目指して,耐震設計においても見直しが行われた。たとえば,Ⅴ編では,大規模な斜面崩壊の影響を避けられるような架橋位置の選定や構造形式の選定について規定の充実が図られた。
 
また,国が管理する定期点検結果で得られたコンクリートの橋の損傷形態のデータを分析したところ,プレストレストコンクリート箱桁に,PC鋼材のプレストレスの分力(腹圧力)による影響が疑われる変状が生じている例のあることが確認されたことから,具体的な照査方法が規定された。このように,近接目視による詳細な状態把握,記録を設計基準の改定に活用したことも,今回の改定の特徴である。
 
 

7.おわりに

今回の道路橋示方書の改定は,道路法,道路構造令に基づく技術基準として,これらが求める橋の安全性や発揮される機能の水準を明確にするとともに,それを達成できることの説明性を向上させようとするものである。さまざまな技術について,現場で,その適否が新しい道路橋示方書に基づいて多角的かつ厳密に検討されるのはこれからになるが,既に規定のある技術と同等の信頼性が確保されていることの検証性,再現性の質の違いが各技術の競争力になるだろう。
 

一方で,このように多様な方法が採用できる枠組みを準備した技術基準を活かすためには,技術の評価を適正に行うことが重要になる。調達においても,さまざまな提案が基準への適合性の観点で評価されるプロセスや体制の充実が期待される。
 
 


国土交通省 道路局 国道・防災課              
国土交通省 国土技術政策総合研究所 道路構造物研究部 橋梁研究室

 
 
 
【出典】


積算資料2018年2月号


 

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