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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 首都高速道路が取り組むスマートインフラマネジメントシステムi-DREAMs

 

1. はじめに

首都高速道路は,図−1に示すように,総延長約319kmのうち40年以上を経過した路線が全体の約40%,30年以上を経過した路線が50%以上と構造物の高齢化が進んでいる。
 

図−1 経過年数別延長割合(2017.4現在)




 
このように高度経済成長期以降に集中的に整備された社会インフラの高齢化が急速に進む中,2013年6月には,道路を適正に管理するため,5年に一度の近接目視による点検が法制化された。
 
一方で,生産年齢人口の減少に伴い,インフラの整備,維持管理,更新などを担う技術者の数が減少することが懸念されている。
 
このため,技術開発等により生産性の向上を図ることで,高齢化した膨大なインフラの確実な維持管理とそれを担う技術者不足とのギャップを埋めることが急務であり,高度な点検技術により点検の効率化・合理化を図った上で的確に構造物の診断,劣化予測を行い,適時・適切な補修補強を可能とする維持管理システムの構築が必要である。
 
 

2. 新しいインフラマネジメントシステム

当社では,ICT(情報通信技術)を活用し,さまざまな情報をIoT(Internet of Things)により有機的に連携し,課題の見える化,AI(人工知能)の活用,複眼的な判断により,ライフサイクルコストを最適化し,持続可能なインフラを実現することが可能となる新しいスマートインフラマネジメントシステム(i-DREAMs:intelligence-Dynamic Revolution for  Asset Management system)を開発した。図−2に全体概要図を示す。
 

図−2 i-DREAMs®全体概要図




 
i-DREAMs は,調査・設計(DIM),建設(CIM),維持管理(MIM)のプロセスにおいてさまざまな判断に資するデータを速やかに確認できる等,維持管理業務をトータルに支援するシステムである。また,点検データ,センシングデータや交通量等の環境条件データを含めて蓄積されたビッグデータからAIによる機械学習を通して損傷の推定をより効率化することで,適時適切なインフラの維持管理が可能となる。
 
さらに一連のプロセスで得られる情報を再度蓄積することで,維持管理サイクルのスパイラルアップにつなげることができる。
 
ここでは,CIM(Construction Information Modeling)を設計段階(DIM),施工段階(CIM)に区分している。
 
続いて,i-DREAMsの中核技術で,インフラの維持管理業務の生産性を飛躍的に向上させるInfraDoctor(インフラドクター:図−2の赤点線部)について紹介する。
 
 

3. InfraDoctorによる維持管理

InfraDoctorは,図−3に示すようにGIS(地理情報システム)プラットフォームにて各種台帳を統合管理するとともに,3次元点群データの活用により維持管理計画作成を支援するシステムである。
 

図−3 InfraDoctorシステム概要図




 

(1)GIS プラットフォーム

従来,紙ベースのデータを電子化し,検索機能を追加したものに留まっていた維持管理システムを,図−4に示すように,GISプラットフォーム上で統合することで,構造物の図面や点検・補修履歴のデータを同時または瞬時に検索することが可能となった。
 

図−4 GISプラットフォーム動作画面




 

(2)3次元点群データの取得

GISプラットフォームには,図−5に示すMMS(Mobile Mapping System)等で,図−6に示すような3次元点群データを取得し,連携させている。
 
MMSは交通規制を行うことなく,一般車両と同じ速度で道路を走行しながら効率的にデータ収集することが可能である。
 

図−5 MMS(Mobile Mapping System)




 

図−6 MMSで取得した点群データ




 

(3)3D寸法計測

道路構造物の補修や補強の設計,点検や工事の施工計画の立案等の維持管理業務において,道路幅員や構造物の各種寸法を正確に把握することが求められる。点群データを構成する各点は,それぞれが測量と同じ精度を持っているため,これを利用することで正確に寸法を計測することができる。図−7,図−8に,道路幅員計測や高さ計測の事例を示す。これらの寸法計測機能を応用することで,図−9のような道路建築限界の確認もシステム上で行うことが可能となる。
 
従って,簡易な測量も含めた現場確認がシステム上で全て行うことが可能となり,維持管理の基本となる現場確認業務のリードタイムが,従来手法と比べて1/10程度まで縮減することができる。
 

図−7 3D寸法計測(道路幅員)

図−8 3D寸法計測(高さ)

図−9 道路建築限界の確認



 

(4)2D CAD図作成

補修や補強工事等が何度か行われた箇所は,個別工事の図面はあるものの,他の付属物含め,統合された図面がないことが多い。そこで,図−10に示す点群データを利用して構造物の輪郭線を抽出し,2次元のCAD図面を自動作成する機能を実装した。この機能を利用することで,図面そのものがない構造物の維持管理を行うための一般図や,管理者が異なる構造物を含む図面を容易に作成することができる。
 

図−10 2D CAD図作成概要




 
本機能を活用し,鉄道と首都高速が並走している箇所において近接状況等の確認を行った。通常,このような場合では,夜間き電停止後に鉄道敷へ立ち入り,現地調査や測量を行うため,数日の作業期間が必要となる。今回の確認では,点群データの取得を周辺ビルの屋上や道路敷地内から地上型3Dレーザースキャナーを用いて取得した。取得した点群データを図−11に,またInfraDoctorを用いて2D CAD図として作成した横断図を図−12に示す。
 
このことにより,首都高速道路の構造物と近接している電力線を含めた鉄道施設物の状況について,鉄道敷へ立ち入ることなく,確認することができ,作業時間の大幅な短縮を図ることができる。
 

図−11 取得した点群データ

図−12 InfraDoctorで作成した横断図



 

(5)3D CAD図およびモデル作成

図−13に示すように点群データから平面および曲面を自動抽出し,構造物の3D CAD図を作成する機能を実装した。これにより,現況の形状のFEM(Finite Element Method)モデルも図−14のように容易に作成できる。また,この3Dモデルは,CIM(Construction Information Modeling)のデータとしても活用している。
 

図−13 3D CAD図作成概要




 

図−14 FEMモデル作製



 

(6)管理台帳の作成支援

標識柱,照明柱,街路灯といった細かい施設物についての管理台帳の作成支援も図−15に示すように可能である。施設物の形状や位置,設置されている状況が座標で確認できるため,有効である。
 

図−15 管理台帳の作成支援




 

(7)変状検出

点群データから構造物の基準面を作成し,その基準面から個々の点との差分を求めることで変状を検出する機能を実装した。これにより,コンクリートの浮き・剥離損傷等の早期発見やスクリーニング点検を実用化し,点検業務の高度化が図られる。図−16に,近接目視点検により発見されたコンクリート剥離箇所において,点群データをMMSにより取得し,どの程度までの変状が検出できるか検証を行った。その結果,コンクリートの剥離は,壁面から3〜7mm程度突出している状況であったが,点群データから変状として検出することができ,有効性を確認できた。今後は,画像解析技術等との組み合わせることで,より高度な変状検出につなげていきたいと考えている。
 

図−16 コンクリートの剥離の変状検出




 

(8)交通規制シミュレーションおよび協議図作成

工事等により交通規制を行う際,3次元点群データ上で,パイロン等の規制資材を定められているルールに基づき半自動で配置し,図-17に示すシミュレーションを容易にできる機能を実装した。これにより,運転者の視点から,事前に適切な規制かチェックが可能である。
 
また,このシミュレーションした3Dデジタルデータを,半自動で平面に投影した協議用規制図を図−18に示すように効率的に作成できる。
 

図−17 交通規制時のシミュレーション

図−18 協議用交通規制図



 

(9)点検車シミュレーション

これまで,橋梁点検車や高所作業車等の重機を使って構造物点検作業を行う際には,対象となる現場のしゅん功図や写真により事前検討を行った上で,現場にて現況に合わせながら作業を行ってきた。そこで,図−19に示すように,用いる重機の事前検討をシステム上で行えるよう橋梁点検車両等を予め3Dモデル化し,点群データ上で容易に動的シミュレーションを行う機能を実装した。これにより,最適な点検車の選定,配置場所の確認,周辺構造物との干渉チェックを事前に行うことができる。
 

図−19 橋梁点検車シミュレーション



 

(10)設計シミュレーション

既設構造物の補強設計を行う場合,対象構造物周辺の支障物の有無を含めた現場状況の確認を行い,測量した上で補強図面の作成を行っていた。図−20に示すように,点群データをベースとして使用することで,システム上で既設構造物と補強部材の配置検討や現場での部材設置時の取り回し検討などが可能となる。
 

図−20 補強設計時の部材配置検討




 

(11)点検新技術やモニタリング技術との連携

タブレット等による点検,ドローンやロボットを用いた点検,AIを用いた新打音検査,デジタル画像解析によるひび割れ自動抽出等,効率的に点検することができる新技術の開発も目覚ましく進んできている。これらの新技術や構造物に設置されたセンサーから得られるモニタリングデータをIoTを活用して統合していくことで,よりリアルタイムに近いデータとして,維持管理につなげることが可能となる。
 
 

4. 総合防災情報システム

首都直下地震などに備え,災害時の情報収集や共有,配信に加えて,復旧計画を含めた速やかな道路啓開を可能にする総合防災情報システムを2018年度の運用開始を目指してi-DREAMsのプラットフォームに搭載すべく開発を進めている。
 
総合防災情報システムは,図−21に示すように道路啓開優先路線やハザードマップ等の基本情報と点検進捗や現場状況を確認できるリアルタイム情報で構成される。
 
リアルタイム情報としては,図−22に示すように,路線ごとの交通パトロールや高架下点検の進捗状況が確認できるとともに,発見された損傷の内容(位置,状況,写真),また復旧に至るまでの情報を搭載していく予定である。
 


  • 図−21 総合防災情報システムの構成

  • 図−22 交通パトロール等の進捗確認機能



 

5. 今後の展望

今後建設する構造物には,維持管理段階で得られた知見を反映し,より高耐久で維持管理性の優れた構造物としていく必要がある。そのためにも,設計から施工,維持管理に至るまでの段階で密な連携が図れるように,点群データを共通ツールとする等の仕組みを整備していくことが望まれる。例えば,完成時には確認が難しくなるコンクリートの配筋状況を,点群データを用いて施工管理し,鉄筋の詳細位置が分かるデータを維持管理へ引き継ぐことができれば,構造物の補修・補強を行う際の非常に有効な情報とすることができる。
 
 

6. おわりに

今後,高齢化が進む膨大なインフラの維持管理における生産年齢人口の減少に伴う技術者不足に対して,技術開発による生産性の向上が求められている。首都高速道路ではこの課題に対応する新しいスマートインフラマネジメントシステム(i-DREAMs)を開発し,運用を開始した。このシステムにより,計画・設計段階から施工,維持管理段階までの全体のプロセスがシームレスにシステム上でつながることにより,インフラ維持管理業務の生産性を飛躍的に向上させることが可能である。その中核技術であるInfraDoctorの技術は,国内外を問わずインフラ構造物の維持管理者に共通のコミュニケーションツールのひとつになるものと考えている。
 
今後も,i-DREAMsの取り組み状況について,さまざまな機会を通じて報告していく予定である。
 
 
 

首都高速道路 株式会社

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2018年4月号



 

 

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