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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 公園・緑化・体育施設 > 池袋駅周辺4つの公園整備

 

はじめに

豊島区は,平成26年5月,日本創成会議から23区で唯一,消滅可能性都市の指摘を受けました。本区は,この指摘の背景にある人口減少問題を日本全体の問題と捉え,「女性にやさしいまちづくり」,「高齢化への対応」,「地方との共生」,「日本の推進力」の4本の柱を立て,迅速にその方策を講じてきました。その検討の中から,「日本の推進力」の一翼を担うまち「国際アート・カルチャー都市構想」が誕生しました。「国際アート・カルチャー都市構想」とは,安全・安心の都市空間の中で,誰もが多様な文化を享受し合い,世界中の人々を魅了するにぎわいあふれるまちの姿のことです。
 
本区では,多様な文化資源を有する本区の強みを最大限に活かしながら,本構想のコンセプトでもある「まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市」の実現を目指しています。
 
本稿では, 本構想において「アートカルチャー・ハブ(活動拠点)」に位置付けられ,周辺の文化施設や公共空間と連携しながら回遊性の強化が求められている,池袋駅周辺の「4つの公園整備事業」について紹介します。
 

図-1 4つの公園整備概要




 

1. 南池袋公園

1-1 概要

池袋駅から徒歩約5分にある南池袋公園は,もともと戦災復興の区画整理事業で生まれた公園で,古くからの樹木が多く緑豊かな公園でしたが,老朽化が進み,根本的な改修が望まれていました。そのため,公園の地下に東京電力の変電所を建設する工事を契機に,平成28年に美しい緑の芝生が広がる空間として公園全体をリニューアルしました。
 

写真-1 南池袋公園




 

1-2 特徴・コンセプト

本公園では,本区で初めて,公園内に民間事業者によるカフェ・レストランを導入し,民間のノウハウやアイデアを活かしながら,常時にぎわいが生まれる空間を創り出しています。公園内では,毎月実施しているマルシェだけでなく,伝統芸能や世界的なクラシックイベントである「ラ・フォル・ジュルネ」等,多様なイベントが開催され,多くの利用者が訪れる魅力的な公園へと生まれ変わっています。
 
また,地元住民参加による公園の運営組織「南池袋公園をよくする会」を設立し,公園利用等について話し合いをしながら公園の維持管理を行っています。自主的・継続的な運営を目指して,カフェ・レストランによる売り上げの一部を会運営費に充当し,芝種の購入やイベント実施など,公園運営に還元する仕組みを構築しています。
 
 

2. 池袋西口公園

2-1 概要

池袋西口公園は,昭和45年豊島師範学校跡地に造られ,平成2年に隣接する東京芸術劇場と一体で再整備されました。現在では,「ふくろ祭り」や「池袋ジャズフェスティバル」など,本区を代表するイベントが年間を通じて数多く開催され,文化芸術の発信拠点の一つとなってきました。しかし,整備されて25年以上が経過し,老朽化と共に,イベント等のニーズに追いつかなくなってきました。
 

図-2 池袋西口公園イメージパース




 

2-2 特徴・整備コンセプト

前述した「国際アート・カルチャー都市」実現のため,これまでの公園活用の概念を大きく見直し,大胆な発想で「池袋西口公園の劇場化」に取り組んでいくことにしました。
 
これまで行ってきたお祭り等の地元イベントに加えて,ダンス,バレエやフルオーケストラ等の演奏にも対応可能なステージを設置することで,世界中から人を惹きつける劇場公園を整備していきます。
 
また,かつてこの地にあった丸池をデザインモチーフにしたリング状の屋根は,公園全体を包み込み,劇場空間を創り出していくこととなり,本区の新たなシンボルとなることを期待しています。他には,オリンピック・パラリンピックのパブリックビューイングや災害時の情報発信等に活用する大型ビジョンの設置,多言語に対応したインフォメーション・カフェの設置等,池袋西口エリアの顔となる,比類ない劇場空間を創出します。
 
 

3. 中池袋公園

3-1 概要

池袋駅東口から約5分,商業施設や事務所ビルが林立する池袋の中心街にある中池袋公園は,約1,800㎡の小さな空間ですが,平日の昼時になるとサラリーマンやOLが休憩を取るなど,商業地域の憩いの場となっています。また,休日は近くに「アニメイト池袋本店」もあり,アニメファンをはじめとした多くの若者でにぎわう公園です。
 
 

3-2 特徴・整備コンセプト

平成27年5月の庁舎移転に伴い,庁舎跡地の再開発が進められており,シンボルとなる8つの劇場を含む国際的な文化とにぎわいの拠点「Hareza(ハレザ)池袋」が誕生します。
 
当エリアに位置する本公園は,「開発地の前庭空間」,さらには「文化とにぎわいの新たなシンボル」として,「まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市」の創出に大きく寄与することが期待されています。
 
整備内容については,新しい交流と感動が生まれる「場」であることを踏まえ,これまでのダスト舗装から平坦でフラットな石張り舗装とし,さまざまなイベントに対応できるオープンスペースに変更します。また,舗装のデザインは,公会堂跡地に建設される新ホールのホワイエ床に敷かれる絨毯の模様と合わせることで,空間的一体感を演出していきます。
 
本公園を含む「Hareza(ハレザ)池袋」は,「国際アートカルチャー都市」を牽引し,「誰もが主役となれる劇場都市」の中核として,多様な文化に彩られたにぎわいのまちの実現に貢献します。
 

図-3 中池袋公園イメージパース




 

4. 造幣局地区防災公園(仮称)

4-1 概要

造幣局東京支局のあった本地区は,昭和40年代後半から当該敷地を公園に変更する検討が始まり,地元町会,商店街等や区議会を挙げて都や国に要請活動を繰り返すなど,災害に備えた防災公園確保に向けた運動が展開されてきました。
 
こうした中,造幣局のさいたま市への移転が決まり,「防災拠点の形成」,「文化と賑わいの創出」をテーマとした,「防災公園街区整備事業」が動き出しました。
 
 

4-2 特徴・コンセプト

造幣局地区防災公園(仮称)は,西側が副都心,東側が東池袋四・五丁目の木造密集地域に隣接しており,区内最大の面積を有する公園(約1.7ha)として整備される予定です。
 
開園後には,地域の防災拠点としてはもちろんのこと,地域の魅力などを発信するイベント空間としての役割を担っています。
 
平成29年9月に実施した事業者の公募では,統括管理企業,設計企業,建設企業,管理・運営企業を事業者コンソーシアムとして一体的に選定する方法で実施しました。
 
設計段階から工事,管理・運営企業の意見が取り込まれることで,将来工事,管理・運営を踏まえたきめ細かな設計が可能になります。
 
さらに,本事業では,平成29年6月の都市公園法の改正を受け,公募設置管理制度(Park-PFI)を導入しています。
 
本公園にてこの制度を導入した理由は,民間の投資を誘導し,区の財政負担を軽減することと合わせて,民間のノウハウを最大限に活かしながら,公園利用者の利便性を向上させるためです。
 
本手法を有効に利用し,民間のノウハウや投資を積極的に引き出しながら,より魅力的な防災公園づくりを行っていきます。
 

図-4 事業者コンソーシアムについて


(出展:国土交通省,都市公園の質の向上に向けたPark-PFI活用ガイドライン)
図-5 Park-PFIのイメージ




 

図-6 造幣局地区防災公園(仮称)イメージパース




 

おわりに

「まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市」の実現に向けて,2020年東京オリンピック・パラリンピックまでに,池袋駅周辺の4つの公園を整備・運営していきます。各公園の特色を活かし,土日祝日には誰もが参加できる多彩なイベントを随時開催し,エリア全体の回遊性を高め,歩いて楽しく,訪れるたびに新たな発見に出会える公園づくりを展開します。
 
また,公募設置管理制度等の新たな手法を積極的に取り入れながら,民間の資金やノウハウを最大限活用し,コストの削減と行政サービスの向上を図っていきます。
 
本区では,「公園が街を変える」をコンセプトに,人が主役の世界に開かれた「国際アート・カルチャー都市」の実現に向け,東京の中でも魅力ある個性と存在感を発揮するまちづくりを力強く進めていきます。
 
 
 

豊島区 都市整備部 公園緑地課 公園計画グループ  小松 慎平

 
【出典】


積算資料公表価格版2018年08月号



 

最終更新日:2023-07-10

 

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