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ホーム > 建設情報クリップ > 土木施工単価 > 「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」の改正について

 

1. はじめに

公共測量は,国や地方公共団体が公費を用いて行う測量であり,その結果はさまざまな測量や事業の位置の基準として用いられることから,一定の精度を確保して行うことが必要となります。測量作業を正しく行うために,測量法では,標準的な作業方法を「作業規程の準則(以下「準則」という)」として示しています。一方,この準則に記載されていない作業方法であっても正しく測量できる場合はありますし,準則には日々生まれてくる新しい測量技術が直ちに反映されるとは限りません。このため,準則第17条では「精度の確保が確認できるのであれば他の方法を採用することができる」と定めています。また,普及しつつある新しい測量技術については,国土地理院が作業マニュアルを用意し,それが準則に反映されるまでの間は,そのマニュアルを使って公共測量を実施できるようにしているところです。
 
国土地理院では,公共測量におけるUAV※1の需要の増加を受けて,UAVで撮影した空中写真を用いて測量を行う場合の精度確保のための基準や作業手順等を定めた「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」を作成し,平成28年3月30日に公表しました。公表後はいろいろな方に利用いただき,さまざまな指摘や意見等が寄せられました。皆様からいただいた多くの指摘,意見等を踏まえ,より使いやすいマニュアルを目指して用語や表現等の細かな部分から見直しを実施し,改正版を平成29年3月31日に公表しました。
 
このマニュアル(案)は,国土交通省が推進するi-ConstructionのICT土工における測量作業に適用可能とすることを前提にしており,建設現場における生産性の向上に寄与するものです。
 


※ UAVとは無人航空機(Unmanned Aerial Vehicleの略)。
 
 

2. UAVを用いた公共測量マニュアル(案)

UAVを用いた測量マニュアル(案)は,UAVに搭載された民生用デジタルカメラで撮影した空中写真を用いて測量を行う場合について,標準的な作業方法を規定することで,測量作業におけるUAVの活用に資することを目的としています。
 
マニュアル(案)本体は,最終成果物として大縮尺地図を想定している「UAVによる空中写真を用いた数値地形図作成」と,最終成果物として三次元の点群データを想定している「UAVを用いた空中写真による三次元点群作成」から構成されています。
 
 

2-1.「UAVによる空中写真を用いた数値地形図作成」

従来から行われている有人航空機を用いた空中写真測量と比べて,UAVに搭載可能な高精度なGNSS/IMUを必須としていないので,同時調整の工程が空中三角測量に変わっていることを除いてほぼ同じ考え方で規定しています。
 
「UAVによる空中写真を用いた数値地形図作成」は,狭い範囲における数値地形図の整備や更新を,効率的,経済的に実施することが可能です。           
 
(1)作業工程

【図-1 UAVによる空中写真を用いた数値地図作成における工程別作業区分及び順序】




 
(2)数値地形図データの地図情報レベル
数値地形図データの地図情報レベルは250及び500(縮尺1/250及び1/500相当)を標準としています。位置精度は表-1のとおりです。
 

【表-1 数値地形図データの精度】




 
(3)撮影
空中写真の重複度は,同一コース内の隣接空中写真間で60%,隣接コースの空中写真間で30%を標準としています。標定点は作業範囲の形状,撮影コース,土地被覆を考慮して配置しますが,コースの両端のステレオモデルに上下各1点及び両端のステレオモデル以外のコース内に均等に配置することが標準です。


 
(4)空中三角測量
撮影した空中写真,標定点,パスポイント及びタイポイント,カメラキャリブレーションデータ等を用いて空中写真の外部標定要素やパスポイント,タイポイントの水平位置,標高を決定します。パスポイントは主点付近及び主点基線に直角な両方向の3箇所以上に選定することが標準です。タイポイントは1モデル毎に等間隔かつジグザグに配置することが標準です。調整計算はバンドル法で行い,標定点の水平位置及び標高の残差は表-2の値以内,パスポイント及びタイポイントの交会残差は,標準偏差が1.5画素,最大値が3.0画素以内となっています。
 

【表-2 標定点の精度】




 
数値図化以降の工程は作業規程の準則第3編第4章空中写真測量を準用します。
 
 

2-2.「UAVによる空中写真を用いた三次元点群作成」

UAVから撮影した空中写真を用いて,三次元点群データを作成する測量です。この測量は土工現場の裸地等,標高を空中写真から自動抽出しやすい地区に適用することを原則としています。
 
「UAVを用いた空中写真による三次元点群作成」は,整備した三次元点群データを用いて,縦横断面図の作成や土工における土量計測等が可能です。
 
 
(1)作業工程
 

【図-2 UAVによる空中写真測量を用いた三次元点群作成における工程別作業区分及び順序】




 
(2)三次元点群の精度
三次元点群の位置精度は,0.05m 以内,0.10m以内,0.20m以内のいずれかを目的に応じて設定することとしており,例えば出来形管理の場合は0.05m以内,起工測量,岩線計測の場合は0.10m以内,部分払い出来高計測の場合は0.20m以内がそれぞれ利用できます。
 
 
(3)標定点及び検証点の設置
標定点は,計測対象範囲の形状,比高が大きく変化するような箇所,撮影コース,地表面の状態等を考慮して配置します。計測対象範囲を囲むように配置する外側標定点と計測対象範囲内に配置する内側標定点で構成します。配置間隔は表-3のとおりです。
 

【表-3 標定点の配置】




 
検証点は計測データを点検するため配置するものです。標定点からできるだけ離れた場所に,計測対象範囲内に均等に配置し,標定点の総数の半数以上配置することが標準です。
 
標定点と検証点の標準的な配置イメージは図-3になります。
 
「UAVによる空中写真を用いた数値地形図作成」と比べて標定点,検証点の配置数が多いのは,後続作業で実施される三次元形状復元の自動処理の精度を確保するうえで,観測数が多いことが効果的であるためです。
 

【図-3 標定点・検証点の配置】




 
(4)撮影
空中写真の重複度は,三次元点群データの要求精度にかかわらず同一コース内の隣接空中写真間で80%以上,隣接コースの空中写真間で60%以上を標準としています。「UAVによる空中写真を用いた数値地形図作成」の撮影と比較して重複度が大きいのは,重複度が大きい空中写真ほど地形・地物の写り込み方の違いが少なく,三次元形状復元計算において画素同士の不整合の発生度合いを抑えることができるためです。
 
 
(5)三次元形状復元
三次元形状復元計算ソフト(SfM/MVS)により空中写真から特徴点の抽出,標定点の観測,外部標定要素の算出,三次元点群の生成までの一連の工程を自動処理で行うものです。自動処理の結果が十分ではない場合は,不良写真を除去したり,SfM/MVSが使用する特徴点を手動で指定する等の措置により,精度を確保します。
 
 
(6)三次元点群データファイルの作成
三次元形状復元データから三次元点群データファイルを作成し,電磁的記録媒体に記録するものです。三次元点群データを作成する場合の点密度は表-4を標準としています。
 

【表-4 点密度の標準】




 

3. 主な改正点

平成28年3月に公表された初版と翌年の3月に公表された改正版にはさまざまな違いがあります。主な改正点は次になります。
 
① 三次元点群作成において,同一コース内の隣接空中写真の重複度は90%以上を標準としていましたが,空中写真の撮影枚数が多く作業負担が大きいとの意見が寄せられ,実証実験を行って精度の確保を検証した結果,80%以上に緩和しました。これにより,撮影する空中写真の枚数を1/2に減らすことができました。
 
② 三次元点群の精度を0.05m以内,0.10m以内,0.20m以内それぞれの場合の規定を明確化し,出来形管理で利用する場合に分かりやすくしました。
 
③ 三次元点群作成の標定点や検証点の配置方法,測量方法について見直しを行いました。さまざまな配置パターンや測量手法を用いて実証実験を行い,その結果を踏まえて外部検証点の廃止や,標定点測量での単点観測法の使用を一部認める等の条件を緩和しました。
 
④ デジタルカメラの要件について緩和し,基本的にほとんどの民生用デジタルカメラが使用可能になりました。三次元点群作成では独立したカメラキャリブレーションを必須としていましたが,セルフキャリブレーションを標準としました。
 
 

4. おわりに

UAVを用いた公共測量マニュアル(案)は,測量作業(i-Constructionに係る測量作業を含む)においてUAVを使用する際に適用できます。
 
さらに国土地理院ではUAVを用いたマニュアル(案)の第二弾として「UAV搭載型レーザスキャナを用いた公共測量マニュアル(案)」を作成し,平成30年3月30日に公表しています。
 
今後,実際の運用を踏まえてさらに改善すべき点や,最新の技術動向等も踏まえた改正,対象範囲の拡充等についても引き続き検討し,最終的には準則に反映させる予定です。
 
 
UAVを用いた公共測量マニュアル(案)は以下のURLから入手できます。
https://psgsv2.gsi.go.jp/koukyou/public/uavls/index.html
 
UAV搭載型レーザスキャナを用いた公共測量マニュアル(案)は以下のURLから入手できます。
https://psgsv2.gsi.go.jp/koukyou/public/uav/index.html
 
 
 

国土地理院 企画部

 
 
 
【出典】


土木施工単価2018秋号



 

最終更新日:2018-12-10

 

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