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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 林業の成長産業化の実現〜非住宅・中大規模木造建築物の木造化に向けて〜

 

はじめに

我が国の国土の約2/3を占める森林は,国土の保全,水源の涵(かん)養,木材の生産等の多面的機能の発揮によって,国民生活および国民経済に大きく貢献しています。我が国において戦後に積極的に造成された人工林は年々蓄積が増加しており,約1,000万haの人工林の半数以上が主伐期を迎えるなど資源は充実しており,主伐期にある人工林の直近5年間の平均成長量を推計すると,年間で約4,800万㎥程度に達します(図−1)。
 

図−1 国土面積と森林面積の内訳




 
一方で主伐による丸太の供給量は1,679万㎥(平成27年度)で,これは主伐期にある人工林の成長量の4割以下の水準となっており,供給量が近年増加傾向にありますが,資源の循環利用をさらに進めていくことが可能です(図−2)。また,森林全体の総成長量(約7,000万㎥)と木材の供給量(2,714万㎥)には更なる乖離があり,一層の森林資源の活用が求められています。
 

図−2 主伐期の人工林資源の成長量と主伐による丸太の供給量




 

1. 林業の成長産業化

このように,日本の森林が大きく育ったことで,国内で生産される木材も増加し,林業の成長産業化への兆しも見られるようになりました。林業の労働生産性の向上など,まだまだ解決すべき課題はたくさんありますが,林業従事者の若返りや,輸出額の急増,国産材自給率の回復に,成果が現れ,国内の森林は,「伐って,使って,植える」という,森林資源を循環的に利用していく新たな時代に入ったと言えます。その中で,「使って」のピース(川下から川上への還元)がうまく機能しなければ,このサイクルは成立しません。この「使って」の原動力ともいうべき木材需要の拡大が今後の林業の成長産業化のカギとなるため,木材が有する力がさらに発揮できるようその用途を拡大していく必要があります。
 

図−3 森林資源の循環利用(イメージ)




 

2. 木材利用の意義

2-1 木材の特徴

木材は軽い割には強度が高く,調湿作用や断熱性,心理面での効果などから,我が国ではこれまで建築資材などとして多く用いられてきました。特に心理面での効果については,木材の香りが血圧を低下させ,体をリラックスさせる,ストレスを軽減し免疫細胞の働きを向上させるといった効果があると考えられています。また,木材への接触は生理的ストレスを生じさせにくいという報告や,事務所の内装に木材を使用することにより,視覚的に「あたたかい」,「明るい」,「快適」などの良好な印象を与えるという報告もあります。このような木材による嗅覚,触覚,視覚刺激が人間の生理・心理面に与える影響については,近年,評価手法の確立や科学的な根拠の蓄積が進んできており,転倒時の衝撃緩和,疲労軽減などの効果を期待して,教育施設や福祉施設に木材を利用する例も見られるようになっています(写真−1)。
 

写真−1 教育施設や福祉施設での利用例




 

2-2 地球温暖化防止と国産材利用

木材は炭素の固定や,鉄やコンクリートなどの他資材に比べて製造や加工に要するエネルギーが少ないという特徴があることからエネルギー集約的資材の代替,化石燃料の代替の3つの面で地球温暖化に貢献しています。例えば,住宅の建設に用いられる材料について,その製造時における二酸化炭素排出量を比較すると,木造は,鉄筋コンクリート造や鉄骨プレハブ造よりも,二酸化炭素排出量が大幅に少ないことが知られています。従って,従来,鉄骨造や鉄筋コンクリート造により建設されてきた建築物を木造や木造との混構造で建設することができれば,炭素の貯蔵効果およびエネルギー集約的資材の代替効果を通じて,二酸化炭素排出量の削減につながります。
 
 

3. 木材需要拡大の現在地

これまで我が国における木材需要の太宗を占めてきたのは住宅分野ですが,既に我が国の人口は減少局面に入っており,住宅の着工戸数の伸びは期待できません。今後新たな需要先として考えられるのが非住宅分野および中高層建築物であり,これらへの木材利用の拡大がより重要となってきます(図−4)。
 

資料:国土交通省「建築着工統計」(平成28年)
注:住宅とは居住専用建築物,居住専用準住宅,居住産業併用建築物の合計であり,非住宅とはこれら以外をまとめたものとした。 
図−4 階層別・構造別の着工建築物の床面積(平成28年)




 
この動きは,平成22年に成立した公共建築物等木材利用促進法により,学校などに積極的に木材が利用されるようになったことが契機となっており,これを境に木材を加工して建築資材などとして利用する「エンジニアリングウッド」という概念が建築分野でも認識されるようになりました。そして,この頃から日本国内でも開発が始まったのが中高層建築物への活用が期待されるCLT(直交集成板)です。CLT建築物については,平成26年に公表された第一次ロードマップの成果として,平成28年3月に「CLTを用いた建築物の一般的な設計方法等の策定について」が告示され,それまでは個別に受けていた国土交通大臣の認定がなくともCLT建築物を建設すること(CLTパネル工法)が可能となりました。
 
また,規模の大きな建物や都市部における木材利用を考える上では耐火問題が避けて通れません。建築基準法では,平成10年の改正により,いわゆる「性能規定化」の概念が取り入れられたことで,「木材は燃えるからダメ」ではなく「木材も一定程度燃えない,もしくは燃える分,分厚くすれば使うことが可能」という整理がなされたことで木材を「現し(あらわし)」として利用することが可能となりました(写真−2)。
 

写真−2 木を「現し」に利用した例(高知県森連会館)




 
この「門戸開放」の先陣を切ったのが木質耐火部材です。先述の公共建築物等木材利用促進法による木造建築物の普及で先導的役割を担ったのがまさに木質耐火部材であり,平成29年末には3時間耐火を取得した製品が開発されるなど,これまで複数の種類が世に送り出されています(図−5)。
 

資料:一般社団法人木を活かす建築推進協議会(2013)「ここまでできる木造建築の計画」
図−5 木質耐火構造の方式




 
また,民間においても木造への関心の高まりから経済活動として木造建築物を建てる動きが出ており,都内において四階建て木造集合住宅が耐火構造で建てられているほか,仙台ではCLTを床などに使用した十階建てマンションが着工,他にもLVL(単板積層材)を利用した動物病院や2×4工法による高齢者施設など都市部での木材利用は現に拡大しています。これらはコンクリートなど他資材が高騰していること,また,木造建築物の軽さが地盤工事の低コスト化につながり施工費用全体の低コスト化といった経済合理性も一因となっています。また海外ではカナダの大学において18階建ての学生寮がRC造と木造の混構造で建てられるなどより先進的な中高層木造建築物が数多く誕生しています。土地の広さや地震の多さなど前提条件は違うものの我が国にとって参考とすべき事例は少なくありません。
 
 

おわりに

一方で非住宅分野や中高層建築物における木造の普及には解決すべき課題はまだまだ多いのが現状です。技術開発については,LVL等による新たな木質耐火部材の開発や,柱や梁桁と面材との接合に関するデータ収集など地道な取組みが必要不可欠です。木質耐火部材については中高層建築物などへの利用が可能ではあっても,部材の低コスト化が進まなければ普及にはつながりません。
 
また,CLTについてもCLTパネル工法だけでなく,前述のRC造との混構造や在来工法への壁や床への取り込みなど需要が拡大する余地がまだまだ多く残されています。特にCLTの場合はその強度性能を考えれば中大規模建築物の方がよりそのポテンシャルが活かされると言えるでしょう。その点,平成30年の建築基準法の改正においては,防火規制の合理化の一環として,大規模建築物で求められる防火区画について,防火壁に加え防火床によるものも認められることとなりました。この点は平成29年に新たに策定されたCLT第二次ロードマップにおいて二時間耐火構造床・壁の開発として課題に位置づけられており,この課題解決が新たな活路につながる可能性もあると考えられます。
 
また,このような技術開発は使われてこそのものです。その点では,これまで木材を利用してきた者の視野拡大だけでなく,木造建築物にあまり関心を示してこなかった設計者やデベロッパーへの普及がより重要になります。木材利用への関心が高まっている今,この機運を一部の関係者だけで終わらせてしまってはなりません(写真−3)。
 

写真−3 設計施工者向け講習会の様子




 
これらの課題解決策については平成30年5月の未来投資会議において農林水産大臣から省としての方向性(林業・木材産業の成長産業化に向けた取組みについて)が示されており,セミナーなどの開催により根気強く普及させていく必要性があると考えています。林野庁としても補助事業の実施などにより民間部門のやる気を促しつつ,関係省庁と連携しながら政府が一体となって取組を進めていくことがより重要と考えているところです。
 
 
 

林野庁 林政部 木材産業課 木材製品技術室 課長補佐 川原 聡

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2018年11月号



 

 

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