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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 2018年 建設産業の動向 働き方改革関連法成立,就労環境改善へ 相次ぐ大規模災害教訓に国土強靱化急務

 
建設産業の最優先課題となる技術者や技能労働者の確保・育成。2018年通常国会で政府が最重点政策に掲げる「働き方改革関連法」が成立し,建設業で働く人たちの長時間労働是正や健康・福祉確保措置の充実を図る,就労環境の改善に向けた取り組みが着々と進んでいる。
 
建設産業政策の最新動向を見ると,「公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)」「建設業法」「公共工事入札契約適正化法(入契法)」いわゆる「担い手3法」が三位一体で改正されてから,今年5月で4年がたった。この間,働き方改革や生産性革命の動きなど,建設業を取り巻く状況は大きく変わった。政府・与党は建設業の働き方改革や生産性向上の具体化をより強力に後押しするため,2019年通常国会への法案提出を目指し,3法の改定作業に取り組んでいる。
 
一方,建設市場は2020年東京オリンピック・パラリンピック関連施設工事がピークを迎えている首都圏で旺盛な工事量があったものの,全国建設業協会(全建)の調査から地域と企業の格差は広がっている実態が明らかになった。今年は短期間に6月の大阪府北部地震や西日本地方の広い範囲を襲った18年7月豪雨と9月の台風21号,北海道胆振東部地震といった大規模災害が例年を上回るペースと広範囲にわたって集中発生し,全国各地で住宅・建築物やインフラなどに甚大な被害をもたらした。政府は今後3年で国土強靱(きょうじん)化に向けた緊急対策を発表。防災・減災対策や公共施設の老朽化対策,戦略的なメンテナンスなど,公共事業で対応すべきハード事業は多いはずだが,その予算が十分に確保されているとは言い難い。今年1年を振り返り,来年の建設業界を展望してみたい。
 

【図−1 働き方改革リーフレット】




 

時間外労働に上限規制,建設業は5年間猶予

政府が2018年通常国会の最重要法案と位置付けた「働き方改革関連法」が6月29日の参院本会議で可決,成立した。
 
働き方改革関連法は,①労働基準法②雇用対策法③労働安全衛生法④労働者派遣法⑤労働時間等設定改善特別措置法⑤パートタイム労働法⑦労働契約法⑧じん肺法─の計8本の改正法で構成。
 
最大の柱は,改正労基法で新たに規定した全業種に対する時間外労働の罰則付き上限規制導入。19年4月1日(中小企業は20年4月1日)から施行する。一般則として時間外労働の限度時間について月45時間・年360時間を設定。繁忙期は例外的に月100時間未満(休日労働含む),複数月平均80時間(同),年720時間までの時間外労働を認める。違反した雇用主には半年以下の懲役か30万円以下の罰金を科す。
 
ただし,建設業に対する時間外労働の罰則付き上限規制適用は,2020年東京オリンピック・パラリンピック関連施設工事など一時的な需要増加で懸念される人手不足などを考慮。企業の規模に関係なく施行日から24年3月31日まで5年間猶予する。災害復旧・復興事業は月100時間未満・複数月平均80時間以内という例外規定を猶予期間終了後も適用しない。
 
9月7日付の官報では,働き方改革関連法の主要規定に関する細則や運用を定めた政令や厚生労働省令,指針(告示・公示)などが公布・報告された。いずれも働き方改革関連法と同じ19年4月1日に施行する。
 
省令の改正労基法施行規則では,時間外労働の罰則付き上限規制が猶予される建設業の対象範囲を明確化。労基法別表に掲げる建設事業「土木,建築,その他工作物の建設,改造,保持,修理,変更,破壊,解体またはその準備の事業」を行っている企業が規模に関係なく,全社単位で猶予対象となる。さらに建設現場で交通誘導警備を行う事業者も猶予対象として規定。交通誘導警備事業者への猶予は企業単位でなく,現場で交通誘導警備に従事する労働者に限定する。与党から建設現場で交通誘導警備業務の存在が不可分になるとの意見があったのを踏まえ,法律成立後に政令や省令などを本格的に議論し始めた過程で決まった。
 
日本建設業連合会(日建連)など業界側は猶予期間を待つことなく,会員企業が施工する現場の統一土曜閉所運動など,長時間労働是正に向けた自主的な取り組みを先行している。
 
一方,地質調査や建設コンサルタント,建築設計などの企業については「建設技術サービス業」と位置付けられ,建設業でなく一般企業と同様に扱う。このため,資本金5,000万円以上で従業員数100人超の建設技術サービス業は19年4月1日から上限規制の一般則が適用され,これ以外の中小建設技術サービス業者は20年4月1日から適用対象となる。
 
 

健康・福祉確保措置も充実

働き方改革関連法では,働く人の心身の健康や福祉の確保,多様な働き方を後押しする新しい規定も相次ぎ整備された。いずれも19年4月1日に施行する。
 
改正労働時間等設定改善特措法では,事業主に対する努力義務を規定する。前日の終業時刻と翌日の始業時刻に一定の間隔(11時間程度)を取る「勤務間インターバル」の確保に努めてもらい,普及を目指す。改正労基法では,労働者の年次有給休暇(以下,「有休」)取得を促す。事業主に対し,有休が10日以上与えられている労働者には最低でも年5日の有休を取得させることを例外なく義務付ける。労働者が希望した日に必ず有休を与える。
 
改正安衛法では,労働者の健康管理をより適正に行う観点から産業医・産業保健機能を強化する。事業主(労働者数50人以上の事業場)を対象に,労働者の健康管理で必要となる労働時間などの情報を産業医に知らせる規定を導入する。労働者の健康情報を適正に管理する措置も講じるよう定めた。
 
改正労基法では多様な働き方の実現にも着目。高年収(1,075万円以上を想定)の高度専門職を対象に,時間外労働の罰則付き上限規制の対象から外す「高度プロフェッショナル制度」(高プロ制度)を創設する。事業主には高度専門職の健康確保措置として,年104日以上で4週4日以上の休日を確保するよう義務付ける。新制度を活用する場合,必ず本人の同意を得るようにする。
 
厚労省は,高プロ制度の適用対象業務としてコンサルタントや研究開発などを想定。最終的な高度専門職の対象職種や年収要件は省令で決める予定だ。そのため,建設関係から高度専門職の対象となる人が出る可能性も視野に入れつつ,省令を巡る労働政策審議会(労政審,厚労相の諮問機関)での議論の行方に注目する必要がありそうだ。
 
 

国交省が働き方改革加速化プログラム策定

国土交通省は3月,建設業の働き方改革をより加速するための新しい施策パッケージ「建設業働き方改革加速化プログラム」を発表した。長時間労働の是正,給与・社会保険,生産性向上の3分野で新たな施策をまとめた。
 
建設業に罰則付きの時間外労働規制が適用される改正労基法の施行後5年という時間を待たず,長時間労働の是正や週休2日の実現を目指す。週休2日制の実施を後押しするため,公共工事では週休2日工事の実施団体・件数を大幅に拡大。同時に民間工事でもモデル工事の試行を促す。公共の週休2日工事では労務費などに補正係数を導入し,間接費の補正係数を引き上げた。まずは4週8休を目指し,段階的に取り組めるよう配慮した。
 
技能と経験にふさわしい処遇と社会保険加入の徹底に向けた環境も整備する。技能者一人一人の就業履歴や保有資格など業界統一ルールで登録・蓄積する情報基盤として,来年4月から本格稼働予定の建設キャリアアップシステムについて,石井啓一国交相は「おおむね5年ですべての建設技能者(約330万人)の加入を推進する」と強調。同システムを活用した建設技能者の能力評価制度の策定や,雇用する専門工事業の施工能力の見える化を進めている。
 
社会保険未加入業者の建設業許可・更新を認めない仕組みを構築するなど,社会保険加入を建設業を営む上での最低基準にする。給与や社会保険加入は,週休2日工事も含め継続的なモニタリング調査を実施。下請まで労務費や法定福利費が行きわたっているかを確認する。
 
建設現場の生産性向上策i─Constructionもより推し進める。建設生産システムの全段階にICT(情報通信技術)を活用するなどして生産性の向上を図る。中小の建設会社による積極的なICT活用を促すため,公共工事の積算基準などを改善する。
 
 

担い手3法改正作業が本格化

「公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)」「建設業法」「公共工事入札契約適正化法(入契法)」のいわゆる「担い手3法」の改正に向けた政府・与党の作業が本格化している。14年6月に施行された改正公共工事品確法の条文には,施行後5年で見直すことが明記されている。担い手3法が一体で改正されてから今年5月に4年がたち,建設業を取り巻く働き方改革や生産性向上など最新課題に対応させる必要が出てきたからだ。
 
国交省は建設産業が10年後も「生産性」を高めながら「現場力」を維持できるよう,建設業関連制度の基本的な枠組みを検討する有識者会議「建設産業政策会議」を2016年10月に始動させた。10年後を見据え,建設産業に関わる「制度インフラ」の再構築に向け方向性を示した政策提言「建設産業政策2017+10」が17年7月にまとまった。
 
提言された施策のうち,建設業許可制度の見直しなど法制度的な対応が必要な事項を具体化するため,中央建設業審議会(中建審,国交相の諮問機関)と社会資本整備審議会(社整審,同)合同の基本問題小委員会が18年2月にスタート。同6月に策定された中間とりまとめでは,①長時間労働の是正②処遇改善③生産性向上④地域建設業の持続性確保─という四つの観点から,建設業法や入契法の改正を視野に早急に講じるべき施策が明記された。
 
建設業法の見直しが必要な内容としては,適正な工期設定に関する考え方(基準)を作成し実施を勧告する制度や,社会保険未加入の建設会社に建設業の許可・更新を認めない仕組み,主任技術者配置要件の合理化を図る専門工事共同施工制度(仮称)の創設などがある。入契法では,公共発注者が取り組むべき事項に平準化を規定。実効性ある取り組みを促す制度を検討するとしている。
 
中間とりまとめを受け,国交省は2019年通常国会への法案提出を視野に入れ,施策の具体化や法制度の改正に向けた検討を進めている。与党側も自民党が7月3日に「公共工事品質確保に関する議員連盟」の総会を開き,議員立法の公共工事品確法改正に向けた議論をスタートさせた。具体的に災害発生時の緊急対応や建設産業の存続といった課題を列挙し,改正項目の見直しを進めている。
 

建設業働き方改革加速化プログラムの要旨
 
■長時間労働の是正
【週休2日制の導入を後押し】

○公共工事で週休2日工事の実施団体・件数を大幅に拡大するとともに、民間工事でもモデル工事を試行
○公共工事の週休2日工事で労務費等の補正を導入するとともに、共通仮設費と現場管理費の補正率を見直す
○週休2日を達成した企業や女性活躍を推進する企業など、働き方改革に積極的に取り組む企業を積極的に評価
○週休2日制を実施している現場等(モデルとなる優良な現場)を見える化
 
【各発注者の特性を踏まえた適正な工期設定を推進】
○「適正な工期設定ガイドライン」を各発注工事の実情を踏まえて改定するととも
に、受発注者双方の協力による取り組みを推進
○「工期設定支援システム」を地方自治体などへ周知
 
■給与・社会保険
【技能や経験にふさわしい処遇(給与)を実現】

○発注関係団体・建設業団体に対し、労務単価の活用や適切な賃金水準の確保を要請
○「建設キャリアアップシステム」の今秋の稼働(注記)と、おおむね5年ですべての建設技能者(約330万人)の加入を推進
○建設技能者の能力評価制度を策定
○高い技能・経験を有する建設技能者に対する公共工事での評価や、雇用する専門工事会社の施工能力等の見える化を検討
○民間工事に建設業の退職金共済制度が普及するよう関係団体に働き掛け
 
【社会保険への加入を建設業を営む上でのミニマム・スタンダードに】
○すべての発注者に対し、下請を含め社会保険加入業者に限定するよう要請
○未加入業者は建設業の許可・更新を認めない仕組みを構築
 
■生産性向上
【生産性の向上に取り組む建設企業を後押し】

○中小建設企業による積極的なICT(情報通信技術)活用を促すため、公共工事の積算基準等を改善
○生産性向上に積極的に取り組む企業等を表彰(i-Construction大賞の対象拡大)
○個々の建設業従事者の人材育成を通じて生産性向上につなげるため、建設リカレント(学び直し)教育を推進
 
【仕事を効率化】
○建設業許可等の手続き負担を軽減するため、申請手続きを電子化
○工事書類の作成負担を軽減するため、公共工事に関係する基準類を改定するとともに、IoT(モノのインターネット)や新技術の導入等による施工品質向上と省力化
○建設キャリアアップシステムを活用し、書類作成等の現場管理を効率化
 
【限られた人材・資機材の効率的な活用を促進】
○現場技術者の将来的な減少を見据え、技術者配置要件の合理化を検討
○補助金等を受けて発注される民間工事を含め、施工時期の平準をさらに推進

(注記)18年8月に19年4月より「本運用」を開始するスケジュールの見直しが発表された。
【図−2 建設業働き方改革加速化プログラムの要旨】
 
 

外国人労働者受け入れ拡大へ新在留資格創設

政府は6月に閣議決定した19 年度予算編成方針など示す「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太の方針)」と18年度版成長戦略「未来投資戦略2018」で,一定以上の技能を持つ外国人労働者の受け入れ拡大に向けた新在留資格の創設を打ち出した。
 
来年4月からの受け入れ開始を目標に設定。政府が11月に閣議決定し,今臨時国会での成立を目指す出入国管理法改正案では,新たな在留資格を2種類創設する。対象は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類。1号は企業などで即戦力となる「相当程度の知識または経験」とし,一定の日常会話ができる日本語レベルを条件とする。在留期間は上限5年で,家族の帯同は原則認めない。2号は,1号で入国した外国人労働者が難度の高い試験などで「熟練した技能」を証明できれば移行が可能。在留期間の上限が撤廃され,配偶者や子どもを呼び寄せられる。受け入れ企業などには,日本語習得の支援やガイダンスの提供,相談対応などを通じて生活を支援することを求める。
 
企業が適切に外国人を雇用しているかを監督するため,今臨時国会で入管法改正案と一体的に法務省設置法改正案の成立も目指す。政府が来年4月に新設を予定する法務省外局の出入国在留管理庁に強い権限を付与する。必要に応じて企業に帳簿書類の提出・提示などを求め,立ち入り検査を行うと定めた。
 
改正法案では不適切な企業に対し,入管庁が改善命令を出せる規定も明記。法律に違反した場合の罰則も設けた。一方,人手不足が解消されれば,業種によって一時的に外国人労働者を受け入れない措置も示した。
 
受け入れ対象業種は建設業など十数分野を想定。法律には「外国人により人材確保を図るべき産業上の分野」と規定し,法務省令で明確にする。今後,新在留資格の適正な運用を図るための分野横断的な基本方針を閣議決定。基本方針に基づき,法務省と所管省庁が協議した上で受け入れ分野別の運用方針も定める。運用方針の策定にあたっては,対象分野の人材不足見込み数と外国人労働者の受け入れ見込み数も整理し,明確に打ち出す。
 
国土交通省は8月,専門工事業団体に外国人労働者の受け入れ拡大に関する意識調査を依頼。新在留資格に対し建設分野で求める技能水準として,1号の場合に実技は技能検定3級程度,学科は技能検定3級(学問的知識除く)とし,同省が指定する試験で確認。試験の作成・実施主体は業界団体とする方針を提示した。
 
一方,業界側は日本建設業連合会(日建連)が10月に開かれた自民党法務部会による聞き取り調査で,日本人労働者の処遇改善に水を差さないような入管法改正案の制度設計の必要性を強調。必要な安全教育や技能指導が可能な日本語能力も求めている。
 
 

全国各地で大規模災害相次ぐ

今年は大規模災害が例年以上のペースで全国各地で発生した。6月の大阪府北部地震では最大震度6弱の揺れを観測し,ブロック塀の倒壊が相次ぎ発生。大阪府高槻市では小学校に設置されたブロック塀が倒壊し,登校中の女児が死亡する事故が起きた。そこで国土交通省は全国で緊急安全点検に着手。学校に限らず,建築物全般に設置されたブロック塀や組積造塀の所有者に要請し,性能が建築基準法令に適合しているかをできるだけ早く確認してもらい,補修や撤去など必要な措置を促している。安全点検は日本建築士会連合会(士会連合会),日本建築士事務所協会連合会(日事連),日本建築家協会(JIA)の協力も得て進めている。
 

【写真−1 ブロック塀が倒れて女児が死亡した現場を視察する安倍晋三首相(中央)=6月21日午後,大阪府高槻市で】




 
18年7月豪雨では前例のない雨の降り方により被害が続出。西日本地方を中心にインフラや家屋などに甚大な被害をもたらした。気象庁によると,中国地方(山口県除く)では降り始めからの総降水量が450ミリを超え,1972年7月豪雨以来の記録的な豪雨となった。中でも岡山,広島,愛媛3県で被害が拡大。岡山県倉敷市の真備町地区では,河川の本支流合流部付近で水の流れがせき止められる「バックウオーター現象」が発生し,堤防の決壊につながった。広島市周辺一帯では,平野部市街地まで大量の土砂が流入する「土砂・洪水氾濫」と呼ぶ新たな現象が発生。愛媛県では上流のダムが洪水調節容量を上回り,下流河川が急激に増水して氾濫。流域の大洲市と西予市で浸水被害が発生した。
 

【写真−2 18年7月豪雨で発生した土砂の堆積高さが2mを超えた広島県呉市の天応西条地区】




 
国交省によると,18年7月豪雨で西日本地方を中心に発生した水害の推計被害総額は9月18日時点の速報値で約1兆940億円。1961年に水害統計調査を開始して以降,76年の台風17号などによる被害額(8,844億円)を上回り過去最大となる見込みだ。内訳は,家屋や事業所資産の被害額,事業所の応急対策費などに当たる「一般資産等被害額」が約6,290億円,国交省の直轄・補助事業で整備された河川や道路などの被害額に当たる「公共土木施設被害額」が約4,430億円,鉄道やライフラインなどの被害額に当たる「公益事業等被害額」が約220億円となっている。
 
国交省は9月,岡山県倉敷市真備町地区や愛媛県大洲,西予両市などで甚大な被害が発生した国・県管理河川を対象に緊急治水対策の実施を発表した。総事業費約790億円を投じ,2023年度までの今後5年半で集中的に河川堤防の新設やかさ上げ,河道の掘削,移設などの工事を展開。大部分が今後着手する新規事業分に当たる。
 
倉敷市真備町地区で行う事業を「真備緊急治水対策」,大洲,西予両市で行う事業を「肱川緊急治水対策」と銘打って展開する。真備緊急治水対策の事業費は約500億円。事業主体別の内訳は国交省約400億円,県約100億円となる。対策では,国交省が真備町地区を流れる高梁川と支流・小田川の合流部を下流部に移設する工事を集中実施する。当初予定していた年度ベースの工事量を大幅に増やし,28年度を予定していた完成時期を5年前倒しさせる。川の水位上昇抑制策として水の流れをスムーズにする。県は小田川支流の真谷,高馬,末政の3河川で堤防のかさ上げに取り組む。
 

【写真−3 小田川八高橋付近の応急復旧工事=7月15日,岡山県倉敷市真備町で】




 
肱川緊急治水対策の事業費は約290億円。事業主体別の内訳は国交省約170億円,県約120億円を計画する。肱川や支流の矢落川,久米川を対象に,国や県が堤防の新設・かさ上げ工事などを集中実施。上流にある野村ダム周辺では県が河道掘削工事なども行う。
 
現在,国交省は18年7月豪雨を教訓に,全国で優先的・重点的に取り組む治水対策や土砂災害対策,下水道整備による都市浸水対策を検討中。いずれも年内に方針を固め,19年度予算案の編成などに反映させる。土砂災害対策については,広島県で建設年次が古い石積み工法で建設された砂防堰堤の一部で決壊などが発生したことを踏まえ,全国にある石積み砂防堰堤の補強・改築を検討する。
 
9月の台風21号では,海上にある関西国際空港が高潮などの影響で滑走路や旅客ターミナルビルの一部が浸水し,一時閉鎖に追い込まれた。さらに対岸との連絡橋にタンカーが衝突し,橋桁が大きく損傷。高速道路や鉄道が不通となり,空港利用者が一時孤立する事態となった。北海道胆振東部地震では道内全域が停電する,いわゆるブラックアウト現象が発生。札幌市清田区の住宅地では液状化被害も広範囲にわたって発生した。
 
現在,関空連絡橋を管理する西日本高速道路会社が損傷した橋桁を架け替える復旧工事を行っており,来春大型連休前までの完了を目指している。国交省は全国にある海上空港・沿岸空港の高潮対策を検討している。北海道胆振東部地震で発生したブラックアウトの原因究明と再発防止策の検討は経済産業者が進めている。
 

【写真−4 台風21号の影響で損傷した橋桁の撤去工事が進む関西国際空港連絡橋】




 

【写真−5 北海道胆振東部地震で液状化が発生した札幌市清田区。地盤沈下により建物が傾いている】




 

災害復旧で補正予算 今後3年で強靱化対策集中展開

政府は全国各地で相次いだ大規模災害を受け,10月に18年度補正予算案を閣議決定。今臨時国会で成立した。追加歳出は9,356億円で,財源として建設国債を6,950億円追加発行する。18年7月豪雨や北海道胆振東部地震などの復旧・復興事業に7,275億円を計上。国土交通省分は国費ベースで3,395億円となり,うち公共事業関係費が3,340億円。大規模災害からの復旧に充てる。
 
復旧・復興費の内訳は18年7月豪雨の対応に5,034億円,北海道胆振東部地震が1,188億円,台風21号や大阪北部地震などの対応に1,053億円。18年7月豪雨関連では,公共土木施設の復旧(1,921億円)や学校施設の復旧(101億円),被災中小企業の資金繰り支援(924億円)などを推進する。北海道胆振東部地震関連では,公共土木施設の復旧(766億円)や大規模な山腹崩壊への対応(128億円)などを実施する。
 
学校の緊急重点安全確保対策には1,081億円を計上。熱中症対策の冷房設置(公立小中学校の普通教室16.2万室分)に822億円,倒壊の危険性があるブロック塀対応(延べ1,011km相当)に259億円を充てる。18年度予算の予備費を追加・確保するため1,000億円を計上。今後の災害対応などに備える。
 
国交省関係の補正予算は,▽18年7月豪雨への対応(2,066億円)▽北海道胆振東部地震への対応(767億円)▽その他の災害への対応(561億円)─の3本柱。18年7月豪雨への対応では,災害応急復旧・救助に2,045億円,生活・生業の再建に21億円を分配する。
 
応急復旧関連では,被害を受けた河川や道路,港湾など公共土木施設の災害復旧に1,920億円を計上した。西日本高速道路会社などが管理する高知道や山陽道など高速道路の災害復旧事業に98億円を充てる。
 
生活・生業再建では,地方自治体による災害公営住宅整備の支援費に15億円,災害廃棄物等の受け皿整備に2億円を計上した。
 
北海道胆振東部地震への対応では,被災地の迅速な復旧に向けて,公共土木施設などの災害復旧に764億円を計上。被災状況把握のための緊急空中写真撮影や測地基準点の復旧測量にも予算を充てる。
 
台風21号をはじめ,18年に発生した台風や豪雨など自然災害への対応では,公共土木施設などの災害復旧に433億円,関西空港連絡橋の復旧などに49億円を計上した。
 
さらに政府は全国で相次ぐ大規模災害を教訓に,全国にある国民生活や社会経済活動に不可欠な重要インフラの緊急点検に乗りだした。災害時の機能確保や継続性を確認。その結果を踏まえ,11月末に今後3年で集中的・重点的にハード・ソフト両面から取り組む重要インフラの強靱化対策を打ち出した。政府は年明けの2019年通常国会に19年度予算案と合わせて18年度第2次補正予算案の提出を予定しており,大部分を経済対策としての要素もある強靱化対策に充てる方針だ。
 
 

建設投資は回復傾向見通し

(一財)建設経済研究所と(一財)経済調査会は10月,最新の建設投資見通しを発表した。18年度は7月の前回見通しで示した前年度比0.8%増の56兆4,800億円を上方修正し,1.2%増の56兆6,700億円と予測。政府建設投資,民間建設投資(住宅と非住宅)とも微増となった。19年度の見通しも前回の前年度比2.5%減の55兆900億円を上方修正し,2.7%減の55兆1,500億円とした。
 
政府建設投資は,18年度が22兆8,300億円(0.9%減),19年度が21兆4,300億円(6.1%減)となる見込み。18年度は,災害復旧などを柱とする18年度予算の予備費の使用状況などを踏まえ事業費を推計して前回から700億円を上積み。19年度は前回見通しと同じ。
 
新設住宅着工戸数は,18年度が96.4万戸(1.8%増),19年度が92.9万戸(3.6%減)と推計した。投資額は,18年度が16兆2,300億円(1.5%増),19年度が16兆700億円(1.0%減)。前回予測と比べ18年度が300億円,19年度は200億円を上乗せした。
 
民間非住宅建設投資(建築・土木)は,18年度が17兆6,100円(3.6%増),19年度が17兆6,500億円(0.2%増)と,前回予測よりも900億円,400億円上乗せした。
 
2020年東京オリンピック・パラリンピックを見込んだ投資を含め,緩やかな回復傾向が続くと予測している。だが消費者マインドや海外景気などの動向への注視が引き続き必要だとしている。
 
 

地方まで行き届く 切れ目ない安定的な予算編成が不可欠

全建が国交省の建設総合統計に基づいて算出した東京と地方の事業量を見ると,東京都の1997年度の工事費は鳥取県の17.7倍だったが,2017年度には28.4倍へと増えた。財務省の法人企業統計から作成した指標では,経営規模の小さな建設企業ほど利益率が低い傾向が浮き彫りになった。資本金1億円未満の小規模建設企業は,17年度から過去10年の売上高営業利益率が0.1〜3.7%で推移している。対して同1億円以上10億円未満の中規模,同10億円以上の大規模は,それぞれ15年度,14年度から4%を超え,上昇傾向にある。激甚化する災害発生前後の対応やインフラ老朽化対策など地域の守り手として全国的に建設業の役割が増す中,地域建設業の経営安定化は喫緊課題。そのためにも,当初予算で安定的・継続的に十分な公共事業費の確保が不可欠。政府は19年度と20年度の当初予算編成で,19年10月に予定される消費税引き上げ対応の臨時・特別措置を講じる方針を決めており,強靱化対策を盛り込む18年度第2次補正予算案とともに安定した事業量を長期にわたって見通せる切れ目のない財政出動が求められる。
 

【図−3 東京と地方との事業量の格差】




 

【図−4 売上高営業利益率からみた建設業における企業間格差】



 
 
 

株式会社 日刊建設工業新聞社 片山 洋志(かたやまひろし)

 
 
 
【出典】


積算資料2018年12月号



 

 

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