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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 仮設資材 > 建設業における労働災害の発生状況と墜落・転落災害防止対策の強化について

 

1.  建設業における労働災害の発生状況等

平成29年の建設業における労働災害による死亡者数は323人で,前年と比べ29人(9.9%)の増加となった。平成27年,平成28年と2年連続で減少し,平成28年にははじめて300人を下回ったが,平成29年は再び300人を上回った(図-1)。また,休業4日以上の死傷者数についても15,129人で,前年と比べ71人(0.5%)の増加であった。
 

図-1 建設業における労働災害(死亡災害)の推移




 
死亡災害(323人)について,事故の型別の内訳を見ると,「墜落・転落」が135人(41.8%)で全体の4割以上を占めており,「交通事故(道路)」が50人(15.5%),「崩壊・倒壊」,「はさまれ・巻き込まれ」が各28人(8.7%)と続いている。また,死傷災害(15,129人)については,「墜落・転落」が5,163人(34.1%)で全体の約3分の1を占めており,「はさまれ・巻き込まれ」,「転倒」,「飛来・落下」,「切れ・こすれ」がそれぞれ全体の10%前後で続いている(図-2,3)。
 

図-2 死亡災害の型別発生状況

図-3 死傷災害の型別発生状況




 
このような災害発生状況を踏まえ,今年度からの「第13次労働災害防止計画」では,建設業を重点業種の一つとし,「死亡者数を2022年までに15%以上減少させること」を目標とするとともに,重点対策として,墜落・転落災害防止対策の充実強化に係る検討や墜落時の落下距離に応じた適切な保護具(墜落制止用器具)の使用の徹底について掲げている。
 
 

2.  墜落制止用器具に関する労働安全衛生法令の改正等について

(今回の改正等のポイント)
●「安全帯」を「墜落制止用器具」に変更
● 墜落制止用器具は「フルハーネス型」を使用することが原則に
● 安全衛生特別教育が必要に

 
 

2-1 改正の背景等

建設業等の高所作業において使用される胴ベルト型安全帯は,墜落時に内臓の損傷や胸部等の圧迫による危険性が指摘されており,国内でも胴ベルト型の使用に関わる災害が確認されている。また,国際規格等では,着用者の身体を肩,腰部,腿などの複数箇所で保持するフルハーネス型安全帯が採用されている。
 
このため,厚生労働省では,現行の安全帯の規制のあり方について検討を行う専門家検討会を開催し,その結果を踏まえ,安全帯の名称を「墜落制止用器具」に改め,その名称・範囲と性能要件を見直すとともに,特別教育を新設し,墜落による労働災害防止のための措置を強化することを内容とする,労働安全衛生法施行令(安衛令)・労働安全衛生規則(安衛則)・安全衛生特別教育規程(特別教育規程)の改正を本年6月に行った。また,墜落制止用器具の安全な使用のためのガイドラインを策定した。なお,墜落制止用器具の構造規格については,2019(平成31)年1月頃に告示する予定である。
 
 

2-2 「墜落制止用器具」への名称変更について(安衛令第13条)

安衛令第13条第3項第28号を改正し,「安全帯(墜落による危険を防止するためのものに限る)」を「墜落制止用器具」に改める。また,本改正後「墜落制止用器具」として認められるのは,「胴ベルト型(一本つり)」と「ハーネス型(一本つり)」のみとなり,「胴ベルト型(U字つり)」の使用は認められなくなる。
 
 

2-3 墜落による危険の防止に関する規定について

安衛則,ボイラー則,クレーン則,ゴンドラ則及び酸欠則を改正し,次の規定について「安全帯」を「墜落による危険のおそれに応じた性能を有する墜落制止用器具(要求性能墜落制止用器具)」に改める。
 
① 「安全帯」を労働者に使用させることを事業者に義務付けることを内容としている規定及び当該規定と関係する規定
② 作業主任者等に「安全帯」の使用状況の監視や機能の点検等を義務付けることを内容とする規定
 
 

2-4 特別教育について

労働安全衛生法第59条第3項の特別教育の対象となる業務に,「高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて,墜落制止用器具のうちフルハーネス型のものを用いて行う作業に係る業務(ロープ高所作業に係る業務を除く)」が追加される。
 
特別教育の対象となる業務を行う者は,表-1のⅠ〜Ⅴの科目(学科4.5時間,実技1.5時間)を受講する必要がある(例外として,十分な知識・経験を有すると認められる者については,一部の科目を省略することができる)。
 

表-1 特別教育の内容




 

2-5 経過措置(猶予期間)について

これらに関する政省令・告示の改正は,図-4のようなスケジュールで公布・告示され,施行・適用される予定である。ここにあるとおり,現行の構造規格に基づく安全帯(胴ベルト型・フルハーネス型)を使用できるのは2022(平成34)年1月1日までとなる。
 

図-4 施行・適用等のタイミングと経過措置の期間について




 

2-6 「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」について

厚生労働省は,墜落制止用器具の適切な使用による一層の安全対策の推進を図るため,今回の一連の安全帯に関する規制の見直し等を一体的に示した「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」を策定した。
 
ガイドラインでは,墜落制止用器具の選定,墜落制止用器具の使用,点検・保守・保管,廃棄基準,特別教育について規定しているが,ここでは,安衛則にもある「墜落による危険のおそれに応じた性能を有する墜落制止用器具」(要求性能墜落制止用器具)の選定要件について説明する。
 
要求性能墜落制止用器具の選定要件は以下の3点がある。なお,これらの要件は2019(平成31)年1月に改正される予定の構造規格においても規定される予定である。
 
 
〈要件① 6.75mを超える場所ではフルハーネス型を選定〉
2m以上の作業床がない箇所又は作業床の端,開口部等で囲い・手すり等の設置が困難な箇所の作業での墜落制止用器具は,フルハーネス型を使用することが原則となる。ただし,フルハーネス型の着用者が地面に到達するおそれのある場合(高さが6.75m以下)は,胴ベルト型(一本つり)の使用が認められる。
 
また,フルハーネス型の着用者の地面に到達するおそれを勘案すると,一般的な建設作業の場合は5mを超える箇所,柱上作業等の場合は2m以上の箇所では,フルハーネス型の使用が推奨される。なお,柱上作業等で使用されるU 字つり胴ベルトは,墜落制止用器具としては使用できず,U字つり胴ベルトを使用する場合は,フルハーネス型と併用することが必要となる。
 
〈要件② 使用可能な最大重量に耐える器具を選定〉
墜落制止用器具は,着用者の体重及びその装備品の重量の合計に耐えるものでなければならない(85kg用又は100kg用。特注品を除く)。
 
〈要件③ ショックアブソーバは,フックの位置によって適切な種別を選択〉
ショックアブソーバを備えたランヤードについては,そのショックアブソーバの種別が取付設備の作業箇所からの高さ等に応じたものでなければならない(腰より高い位置にフックを掛ける場合は第一種,足元に掛ける場合は第二種を選定する)。
 



 

3.  「建設業における墜落・転落防止対策の充実強化に関する実務者会合」について

労働災害の発生状況で述べたとおり,建設工事の現場においては,今なお墜落・転落による死亡災害が最も多く,その防止について実効性のある対策を講ずることが急務となっている。昨年施行された「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律」(建設職人基本法)に基づき,昨年6月に閣議決定された「建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する基本的な計画」(基本計画)においても,災害の発生状況や関連する施策の実績等を踏まえつつ,墜落・転落災害防止対策の充実強化について調査・検討を行った上で速やかに実効性のある対策を講ずることとされている。
 
このようなことを踏まえ,厚生労働省においては,専門家や建設現場の安全に精通した者からなる標記実務者会合を開催し,近年における墜落・転落災害の発生状況や足場に係る墜落防止措置に関する実施状況等を分析・評価した上で,墜落・転落災害の防止対策を一層充実強化していくために,労働安全衛生法令の改正も視野に必要な方策について検討することとした。
 
初回会合は5月31日に開催され,近年の墜落・転落災害による死亡災害の発生状況(図-5),足場における墜落防止措置の取組状況等について事務局から説明し,足場等からの墜落・転落防止対策(厚生労働省安全衛生部長通達で示された「より安全な措置」等を含む)のあり方,屋根等の端からの墜落・転落防止対策のあり方といった観点を中心に参集者からさまざまな視点からご意見をいただいたところである。本会合は年度内に5回程度開催し取りまとめるとともに,その後,法令改正を含め必要な対応を行っていく予定である。
 

図-5 平成27年,28年の建設業における墜落・転落災害(死亡災害)の分析結果(第1回実務者会合資料から)




 
 
 

 厚生労働省 労働基準局 安全衛生部 安全課 建設安全対策室

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2018年12月号



 

最終更新日:2023-07-10

 

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