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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 道路施設のメンテナンスについて

 

はじめに

我が国の道路インフラは,建設後50年を超える施設が急増し,老朽化による社会への影響が発生し始めている。平成24年の中央自動車道笹子トンネル内天井板落下事故を契機に,平成25年度に道路法の改正と施設ごとの点検要領を策定し,橋梁・トンネル等を5年に1度の頻度で近接目視により定期点検を開始することとなった。
 
平成26年4月に社会資本整備審議会道路分科会で取りまとめられた,「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」を踏まえて,メンテナンスサイクル(点検・診断・措置・記録)の推進を図るとともに,サイクルを回す仕組みを構築。現在は提言や点検結果を踏まえた予防保全型によるメンテナンスのセカンドステージが進んでいる。
 
平成28年10月には「舗装点検要領」を策定し,舗装についても順次点検を実施している。国土交通省では,点検の実施状況や結果等を「道路メンテナンス年報」として取りまとめ,橋梁,トンネル,道路附属物等の点検結果に加え,国土交通省管理の舗装や小規模附属物の点検実施状況等を公表している。
 
 

1. 道路インフラの現状

全国には道路ストックとして,橋梁が約73万橋,トンネルが約1万箇所,シェッド・大型カルバート・横断歩道橋・門型標識等(以下,道路附属物等)が約4万施設存在している。
 
建設年度別がわかっている橋梁(50万橋)のうち,高度経済成長期(昭和30~50年)に建設され,建設後50年を経過した橋梁の割合は,現在約25%だが,10年後には約50%に増加する見込みであり,橋梁の高齢化が進んでいる。
 
また,舗装については,各道路管理者が,道路の役割や性格,修繕実施の効率性,ストック量,管理体制の視点から管内の道路を分類し,その分類に基づき点検等を行っている。
 
国土交通省の管理する道路は約2.3万kmとなっており,直轄高速を除く一般国道の大部分は舗装点検要領で規定する道路分類Bに区分(図-2)されている。点検要領では,道路分類Bを,大型車交通量が多い道路で損傷の進行が早い道路等と定義している。管内の修繕実績や大型車交通量区分等に応じ,道路管理者が適切な使用目標年数と5年に1回程度以上の点検頻度を設定し,適切な手法により点検を実施するよう定めている。
 

図-1

図-2




 
 
 

2. 点検実施状況および結果

2-1 点検の実施状況

平成25年6月の道路法改正を受け,平成26年7月より,道路管理者は,全ての橋梁,トンネル等について点検を開始した。
 
国土交通省では,点検結果を「道路メンテナンス年報」として取りまとめ,公表している。現在では,第4弾として,「道路メンテナンス年報(平成29年度)」を公表しているが,今回から平成29年度に実施した国土交通省管理の舗装および道路標識・照明施設等(以下,小規模附属物等)について平成29年度の点検結果についても報告した。
 
平成26年度~29年度の累積点検実施率は,橋梁で約80%,トンネルで約71%,道路附属物等で約75%となっており,計画通り進捗している(図-3)。
 

図-3 橋梁・トンネル・道路附属物等の点検実施状況




 
 
 

2-2 橋梁トンネル道路附属物等の点検結果

点検結果については,健全性を4段階(「Ⅰ:健全」,「Ⅱ:予防保全段階」,「Ⅲ:早期措置段階」,「Ⅳ:緊急措置段階」)で診断する。早急または緊急に措置が必要となる診断区分Ⅲ・Ⅳの発生状況は,橋梁で10%,トンネルでは42%,道路附属物等では15%となっている(図-4)。
 

図-4 橋梁・トンネル・道路附属物等の点検結果




 
例えば,橋梁では平成28年度までに判定区分Ⅲ・Ⅳと診断された施設の平成29年度末時点での修繕着手状況は,国土交通省管理で62%,高速道路会社管理で36%,県・政令市管理で9%,市町村管理で13%であった。判定区分Ⅱと診断されたものに対する修繕着手状況は国土交通省管理で25%,高速道路会社管理で3%,県・政令市管理で1%,市町村管理で2%であり,判定区分Ⅲ,Ⅳと診断されたものに比べて修繕着手率は全体的に低い傾向にある(図-5)。
 

図-5 橋梁の修繕着手率




 

2-3 舗装の点検結果

舗装については「舗装点検要領」に加え,車道上の舗装の点検頻度等を定めた「舗装点検要領(直轄版)」が策定されている。平成29年度の点検実施率は19%と計画通り進捗している。
 
また,点検の結果,修繕段階と定義している判定区分Ⅲと診断された舗装は,アスファルト舗装で約15%(図-6),コンクリート舗装で約4%(図-7)に達しており,今後計画的に対策を実施していくことが必要といえる。
 

図-6 アスファルト舗装の点検結果(延べ車線延長ベース)




図-7 コンクリート舗装の点検結果(延べ車線延長ベース)




 

2-4 小規模附属物等の点検結果

小規模附属物等の点検には,全道路管理者に対する技術的助言である「小規模附属物点検要領」に加え,国が管理する道路上の附属物の点検頻度等を定めた「附属物(標識,照明施設等)点検要領」を策定している。附属物(標識,照明施設等)点検要領では,全施設を対象に10年に1回の頻度で近接目視による詳細点検を実施し,その中間年に外観目視を基本とする中間点検を行うことを定めている。平成29年度より点検を開始した国土交通省管理の小規模附属物等については,1年間で計画通り10%の点検を実施した。
 
また,点検結果では,損傷が大きいと診断された損傷区分eは,約4%となっており,今後計画的に対策を実施していくことが必要といえる(図-8)。
 

図-8 小規模附属物等の点検結果




 
 
 

3. メンテナンスサイクルの着実な実施

道路施設の老朽化は,今後進行の一途を辿るが,これらの施設の多くを管理する地方公共団体では,老朽化対策に必要な予算の確保や,技術系職員が少ないこと等の課題を抱えている。
 
現在,国土交通省では,メンテナンスサイクルの着実な実施に向けて,地方公共団体に対して財政的・技術的支援を実施している。
 

3-1 財政的支援

財政面では長寿命化を目指し適正な修繕を実施する地方公共団体に対して防災・安全交付金や大規模修繕・更新補助制度等によるに支援を行っている。
 
また,平成30年度より,大規模修繕・更新補助制度の県・政令市における事業費要件を緩和し,支援を加速している。
 

3-2 技術的支援

技術面では「道路メンテナンス会議」等を活用し,維持管理に関するさまざまな情報共有等を図るとともに,市町村の点検・診断業務を都道府県等が一括で委託する「地域一括発注」の実施や,特に社会的な影響が大きく構造が複雑な施設等については国の技術者による「直轄診断・修繕代行」による支援を実施している。さらに,地方公共団体の職員等を対象に,平成26~29年度間で研修を約160回開催し,約850の自治体から約3,600名の職員が受講している。
 
 

4. 道路メンテナンスの今後の動向

4-1 予防保全型の修繕への移行

インフラの老朽化対策を検討する関係省庁連絡会議において平成25年11月「インフラ長寿命化基本計画」が策定され,これにより道路管理者は行動計画,個別施設計画を作成している。そして,「事後保全型」から「予防保全型」による計画的なメンテナンスに転換させることで,施設の長寿命化,ライフサイクルコストの縮減を進めている(図-9)。
 

図-9 予防保全と事後保全の違い




 
 

4-2 定期点検の見直し

平成30年11月2日に,社会資本整備審議会道路分科会のもと,道路技術小委員会が開催され,平成30年度で一巡することとなる定期点検の見直しの方向性が示された。
 
見直しのポイントとしては「一巡目の点検結果を踏まえた効率化・合理化」「点検を支援する新技術の積極的な活用」の2点が挙げられている。具体的には損傷や構造特性に応じた定期点検の着目箇所を特定化することで点検を合理化したり,顕著な損傷等の健全性を適切に診断できるように点検・調査方法を充実することとしている。前者については,歩掛の適切な設定等,後者については点検必携等の参考図書の充実等を進める。点検支援技術の積極的な活用については,近接目視を補完・代替・充実する技術の活用を進めるため,技術の活用環境の整備のさらなる促進が示されている。
 
総じて,定期点検の質を確保しつつ,合理化を進めていく方向で見直しが検討されている。
 
 

4-3 点検支援技術の開発の動向

今後,働き手の減少が見込まれるなか,新技術の開発・導入による,インフラメンテナンスの生産性向上と効率化が求められている。
 
国土交通省では,「新技術活用システムのテーマ設定型(技術公募)」のプロセスにより技術を公募し,橋梁分野では「非破壊検査」についての技術の仕様を,トンネル分野については「変状写真の撮影(写真からひび割れを示すチョークを判別)」について技術の仕様を確認し,結果を公表した。舗装分野については,平成29年8月から「路面性状を簡易に把握可能な技術の公募」を行い,各技術について,特徴や性能の評価・検証を実施しており,今後,検証結果を公表する。
 
 

おわりに

定期点検が一巡する本年度においては二巡目に向け,蓄積したデータをフル活用して,合理的な点検手段や判断基準等を見直す取組みを開始している。
 
定期点検の計画的な実施や予防保全を考慮した適切な修繕が実施できるよう,道路のメンテナンスに関する課題を解決し,道路施設の安全を確保できるよう取り組んでまいります。
 
 
 

国土交通省 道路局 国道・技術課 課長補佐 吉沢 仁

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2019年1月号 特集 土木インフラの維持管理



 

 

 

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