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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 土木施工単価 > 国土地盤情報センターの地盤災害への取り組み

 

1. はじめに

一般社団法人全国地質調査業協会連合会は,2018(平成30)年4月に地盤情報の一括管理運営を行う『一般財団法人国土地盤情報センター』を設立した。このセンターは,官民が持つ地盤情報の収集・利活用を目的とする「国土地盤情報データベース」の運営主体として国土交通省から認可され,同年8月から地盤情報の登録を開始し,9月から発注者等への公開を開始している。
 
本稿は,国土地盤情報データベースの構築の背景やその内容について紹介するとともに,最近頻発している地盤災害への取り組みの考え方や今後の課題について示したい。
 
 

2 国土地盤情報データベース構築の背景

2.1 全国統一の地盤情報の必要性

国内の地盤情報データベースは,これまで多くの機関で構築されてきた。表−1は,従来構築されてきた代表的な地盤情報データベースである。各地域で大変な苦労をして地盤情報を収集しデータベース化してきた努力には頭が下がる思いである。特にボーリング柱状図などの生データの公開の許諾が得られない場合やデータフォーマットが統一的でない等の問題のため,いろいろな工夫が行われてきた。そして最も苦労するのは継続的に運営することであり,順調に運営されている一部のシステムを除いて,財政面や人的パワーの制約もその継続運営に大きな足かせとなっているのが現状であろう。
 

【表−1 従来構築されてきた主な地盤情報データベース 1)】




 
一方,建設事業の整備や維持管理に直接活用するうえでは,統一的なフォーマットに基づく情報が有用であり,国土交通省が義務づけている調査成果の電子納品要領 2)で作成される地盤情報を活用することが自然の流れであると考えられる。表−1 の国土交通省によるKunijibanというデータベースは,この電子納品要領で作成された地盤情報が蓄えられている。ただし,Kunijibanに登録されるデータは国土交通省の発注業務によるデータのみである。これらのデータは,道路・河川等に関わるいわゆる線状に位置するデータが多いため,面的にデータをカバーできていないのが現状である。ところが,電子納品要領に基づいたデータ整理ソフトが広く流通していることから,地質調査業者が他の機関の成果も容易に同形式で納品することは可能と考えられる。
 
以上の背景を踏まえ,国土地盤情報データベースは国土交通省のデータに加え地方自治体や民間事業者などのデータ提供を受けて発注者と連携し統一的に情報管理を行うことで,国土の整備・維持管理に欠かせない貴重な情報を提供する国家的なデータベースを目指している。
 

2.2 地盤に起因した施工トラブルの多発

2016(平成28)年に発生した福岡市営地下鉄工事における道路陥没事故(写真−1)は記憶に新しいところであるが,事故の主因の一つは風化岩層の性状の変化がリスクとして発現したことである。このような事例に対して周辺の地盤情報が整備されていれば,事前にそのデータを基に専門家が地質・地盤リスクを検討しておくことが可能となり,施工時の地盤に基づくリスクの発現を回避,軽減することにつながる。
 
国土交通省においては,地質・地盤リスクを抽出・分析するため,「地質リスク調査検討業務」を発注している。この業務は,一般的に図−1 に示すような内容と流れからなるが,初期の段階で行われる文献資料収集に含まれる既存の地盤情報が極めて重要となる。なお,国土交通省においては設計・施工条件を確認するための三者会議に地質技術者を参加させ,それらのリスクの共有化を図ろうとする試みも進められている。
 



 



 

2.3 i─Constructionの進展

i─Constructionは,調査から維持管理までのすべての建設プロセスにおいてICTを取り入れ生産性向上を図る施策である。そのため,調査から設計・施工・維持管理までを一気通貫に3次元情報として共有し効率化を図ろうとしている。
 
このとき,地形や構造物の情報に対して地盤の3次元モデルは,データ量が少ない場合にモデルの精度が大きく問われることになる。それは,ボーリング間の地層情報などが技術者による推定情報となるからである。データ量が多ければ多いほどモデルの精度が高くなることから,適正な数量のボーリング調査を行うことはもちろんのこと,既存データを活用することでより精度の高い地盤モデルを構築することが極めて有効である。
 
 

2.4 国土強靭化の進展

最近は,地震や豪雨により深刻な災害が頻発している。記憶に新しい巨大自然災害を列挙すると表−2のとおりである。いずれも地質や地盤に関連する災害であることに注目すべきである。この背景には以下のようなことがある。
 
①日本の地形・地質が世界でも類例がないほど複雑である
 
②世界中の大きな地震のうち約2割が日本周辺で発生している
 
③日本に限らず局所的な豪雨が頻発する気象条件になってきた
 
このように,我が国のおかれた環境がいかに厳しいかを改めて思い起こす必要がある。そして,これらの災害の大半が地質・地盤に深く関わっていることを再認識すべきである。
 
地盤災害の予測や対策を検討する際に,地盤情報が必要であることは言うまでもない。そのための地質調査を入念に行うことが望ましいが,既存の地盤情報を積極的に活用し的確な調査計画を策定することが重要である。
 
以上のように,地盤情報が防災・減災面において極めて有益であり,そのデータベースが国土強靭化に貢献することができる。
 

【表−2 最近の特筆すべき巨大災害】




 
 

3 国土地盤情報データベースの概要

国土交通省は,2018(平成30)年3月に地質調査業務や工事の際に実施されるボーリングや土質試験結果を指定機関に登録することを『地質・土質調査業務共通仕様書』に義務づけた。その指定機関として認定されたのが国土地盤情報センターで,本センターが開発したデータベースが国土地盤情報データベースである。
 
国土地盤情報データベースは運用を開始したばかりであるが,図−2のような運用形態を目指している。このデータベースに登録されるデータは,基本的にボーリング柱状図と土質試験結果一覧表データである。そして,これらの地盤情報がデータベースに登録されるまでの流れは図−3 に示すとおりである。
 
発注者から指示を受けた受注者は,地質調査で得られた情報を前述した電子納品要領に基づき整理する。そして,当センターに検定対象の地盤情報を送付し検定が行われる。ただし,検定の際には検定料が発生する。この検定料には2種類あり,一つ目のA検定は資格者が担当する場合で,2,160円(税込み)となる。もう一つのB検定は資格者が担当しない場合で,3,240円(税込み)となる。この資格者とは,地質調査技士,技術士などが該当する。検定が完了し必要に応じて修正されたデータは順次データベースに登録される。そして,国土交通省の発注データについては国土地盤情報検索サイト「Kunijiban」と共有されることになる。
 
なお,データベースがより有効に幅広く活用されるためには民間データの活用や3次元表示アプリの開発,2次加工情報の一般公開,さらには地質リスクの検討,社会資本情報プラットフォームとの連携が不可欠となってくることから,今後,当センターでは事業活動として行っていく予定である。
 
 

【図−2 国土地盤情報データベースの運用形態の概要 3)】




 

【図−3 地盤情報の検定,登録の流れ 4)】



 

4 地盤災害への取り組み

前述したように,地盤の液状化や斜面崩壊のような地盤災害の予測や対策を検討するうえで地盤情報は非常に有効である。特に,災害直後の迅速かつ的確な対策を行ううえで災害メカニズムの推定が重要となる。そのためには新たな地質調査に加え既存の地盤情報も活用することが極めて重要である。
 
以上のことを踏まえ,国土地盤情報センターでは災害直後に緊急公開サイトを開設し,発注機関のご理解のもとに関係地域の地盤情報を一定期間内で一般公開することとしている。図−4は,2018(平成30)年9月に発生した北海道胆振東部地震の直後に開設した緊急公開サイト(URL https://geonews.zenchiren.or.jp/2018Hokkaido/Hokkaido_BoringMap201809.html)の表示例である。平面図上の丸印がボーリング地点で,それをクリックすればボーリング柱状図が表示される。このシステムは,スマートフォンでも閲覧できるので,現地踏査の際にも活用できる。
 

【図−4 災害箇所付近のボーリング柱状図の表示例】




 
 

5 今後の利活用に向けて

国土地盤情報データベースは,既存の生の情報を提供しているので,利用者が独自に加工して活用することができる。一方,より多くの関係者に活用してもらうためには,各種ツールを提供できるようにすることも重要である。例えば,図−5に示したものはその活用の一例で,地盤の3Dモデル化に必要なツールである。このような活用を促進するツールを今後開発・提供していきたい。そしてデータベースの真髄はデータ量であるため,発注機関のご理解・ご協力を得ながら順次拡大していく予定である。
 
 

(a)地層のソリッドモデル(地層を立体で表現したもの)


(b)支持層のサーフェイスモデル(地層上面を面で表現したもの)

【図−5 地盤の3次元モデルの例 5)】


参考文献および出典
1) 山本浩司:地盤情報データベースの進展と利活用,地盤工学会誌,Vol.61,No.6,pp.4〜7,2013.
2) 国土交通省:地質・土質調査成果電子納品要領,2008及び2016.
3) 国土交通省:調査・設計等分野における品質確保に関する懇談会(平成29 年度第2 回)参考資料7,2018.
4)国土地盤情報センターウェブサイトhttps://ngic.or.jp/MainDocuments/exami_fl ow.html,(2018年6月現在).
5) 3次元地質解析技術コンソーシアム:OCTAS®Drafter操作ガイド,2018.
※写真−1 福岡市地下鉄七隈線延伸工事現場における道路陥没に関する検討委員会 第1回検討委員会 委員会資料 資料5事故の概要より
 
 
 

一般財団法人 国土地盤情報センター 理事長  岩崎 公俊

 
 
 
【出典】


土木施工単価2019冬号



 

 

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