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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > BIMガイドラインの改定について

 

はじめに

BIM(Building Information Modeling)は、建築物に関する様々な情報を企画、設計、施工及び維持管理の各段階において利用できるツールとして、生産性向上への寄与が大きく期待されている。
 
官庁営繕部においては、BIMを利用する際の基本的な考え方や留意事項を示した「官庁営繕事業におけるBIMモデルの作成及び利用に関するガイドライン」(以下「BIMガイドライン」という。)を平成26年3月に策定・公表し、設計業務・工事の受注者からの技術提案等によるBIM利用の拡大を図ってきたところである。BIMガイドラインの策定後、平成30年3月までにBIMガイドラインを適用した事案は設計21件・施工6件の合計27件となっている。
 
さらに国全体では、「未来投資戦略2018」(平成30年6月15日閣議決定)において、建設現場の生産性向上を図るi-Constructionの建築分野への拡大方針とともに、平成30年度の営繕工事における施工BIM等の施工合理化技術※1の活用・試行、BIMガイドラインの改定等の具体的施策を示した。
 
今般、建築分野における生産性向上に向けた基準類改定の第3弾※2として、平成30年8月にBIMガイドラインの改定等を行ったので、その概要を紹介する。
 


※1 施工合理化技術:プレハブ化、ユニット化、自動化施工(ICT施工、ロボット活用等)、BIM、ASP(Application Service Provider情報共有システム)等を活用したもので施工の合理化に資するもの。
 
※2  第1弾:平成29年12月「営繕工事に係る請負工事成績評定要領の運用について」改定。
   第2弾:平成30年2月「営繕工事電子納品要領」を含む4基準の改定。
 
 

改定等の概要

(1)BIMガイドラインの改定

1)発注者指定等によるBIM利用への対応
従前のBIMガイドラインは、主に設計業務・工事の受注者からの技術提案等によるBIM利用を念頭に置いて策定したものである。適用対象については、「BIMモデルの作成及び利用をして図面及び仕様書(設計業務の場合。工事の場合は完成図等。)の成果物を作成する場合や技術的な検討を行う場合」とし、受注者が幅広に技術提案等を行えることを企図していた。
 
今般、i-Constructionの推進の一環として、発注者指定により施工BIM等の施工合理化技術を試行し(後述)、また、今後も発注者指定によりBIMを利用することが考えられるため、BIMガイドラインの適用対象について改めて整理した。
 
具体的には、表-1のとおり、「発注者の指定」又は「受注者からの技術提案等」によりBIMモデルの作成及び利用をすることにより、「発注者に提出する成果物を作成する場合」又は「発注者に確認等を受けるために提示するデータを作成する場合」をBIMガイドラインの適用対象とし、「発注者を介さずに受注者自らの検討、調整等のためにBIMモデルの作成及び利用をする場合」については、BIMガイドラインの適用対象としないものの、BIMガイドラインを参考とすることを明記した。
 
BIMガイドラインの適用対象となった場合、受注者はBIMモデルの作成及び利用をする内容、実施方法(BIMソフトウェア、解析ソフトの名称・バージョン等を含む。)、実施体制等について発注者との協議が必要となる。
 
これに加え、施工段階においては、BIMモデルの作成及び利用をすることにより、施工計画書、施工図等の内容について発注者に確認を受けることが想定されることから、確認を受ける具体的な範囲及び手順について、発注者と協議することを追加した。
 



※3 発注者がBIMモデルを成果品として提出することを指定した場合又は受注者からの技術提案等に基づきBIMモデルが提出されることが契約図書に反映された場合。
 
 
2)施工段階におけるBIMの利用方法についての充実
施工段階におけるBIMの利用実績が少ない現状を踏まえ、施工段階における技術的な検討例の追加、BIMモデルの詳細度の参照資料の紹介等を行い、施工段階においてBIMモデルを利用しやすい環境整備を行った。
 
具体的には、施工段階における技術的な検討の例として、従来からあった「干渉チェック」に「施工手順、施工計画等の検討」「施工図等の作成」「デジタルモックアップ」「数量算出」「各種技術資料等の作成」を加え、部分的なBIM利用ができる項目の例を追加した。
 
また、施工段階における技術的な検討において、BIMモデルを作成する際に実務上参照できる資料として、一般社団法人日本建設業連合会HP※4の紹介を追加した。
 


※4 施工図のLODとBIM施工図への展開(一般社団法人日本建設業連合会HPより)
http://www.nikkenren.com/kenchiku/bim_lod.html


 

(2)BIM適用事業における成果品作成の手引き(案)の作成

従来のBIMガイドラインでは、技術提案等により作成したBIMモデルを電子成果品として発注者に提出させることを想定していなかったため、BIMモデルの電子納品に関して明記していなかった。
 
今般、発注者指定によるBIM利用等、表-1のようにBIMモデルを発注者に提出する場合への対応が必要となったため、平成30年2月「営繕工事電子納品要領」等の改定においてBIMモデルを格納でき「ICONフォルダ」を追加し、さらにBIM電子成果品の作成方法及び確認方法を定めるものとして、平成30年8月のBIMガイドライン改定と併せて「BIM適用事業における成果品作成の手引き(案)」を新たに作成した。
 
本手引きにおいては、BIMモデル等の成果品のフォルダ構成(図-1)のようなBIM版の電子納品要領といえる内容を記載している。さらに、受発注者間の認識違い・手戻り等がないよう、設計業務又は工事の着手時に、発注者からの指定又は受注者からの技術提案等に従い、BIMモデル作成及び利用の目的、作成・更新の範囲、詳細度、ファイル形式等を受発注者間で協議し、成果品として作成するBIMモデル等を決定するといった実務上の留意点等を記載している。また、成果品として作成するBIMモデルについては、検討目的に応じた詳細度で関連する図面等(図面のほか、BIMモデルを利用して作成した計算書、数量書等の数値等を含む。)と整合していることを受注者が確認することを明記している。BIMモデルと完成図書(設計業務の場合は実施設計図書、工事の場合は完成図。)の内容が整合していることは求めるものの、完成図書に求められる詳細度との一致までは求めておらず、受注者の過度の負担とならないよう配慮している。
 

図-1 BIM モデルを成果品として提出する場合の成果品のフォルダ構成




 

施工合理化技術(施工BIM)の活用・試行

官庁営繕部は、平成30年4月9日付で「営繕工事における施工合理化技術の活用方針」を策定し、平成30年度発注の新営工事を対象として、施工BIMの発注者指定を含む次の三つの取組の実施について地方整備局等に通知した(図-2)。
 

図-2 「営繕工事における施工合理化技術の活用方針」の(概要)




 
(1)平成30年度発注の新営工事において、発注者指定で施工合理化技術を活用・試行
対象技術:①施工BIM、②情報共有システム、③ICT建築土工、④電子小黒板
対象工事:栃木地方合同庁舎(栃木市)、高山地方合同庁舎(高山市)、海上保安大学校国際交流センター(呉市)の3工事に適用
 
(2)総合評価落札方式で施工合理化技術を評価項目とする取組を導入(入口評価)
 
(3)施工合理化技術を提案し効果が確認された場合は、工事完了後の請負工事成績評定にて評価する旨を入札説明書等に明記(出口評価)
 
発注者指定を行う施工BIMについては、BIM未導入の企業等が参加しやすくなるよう、仮設、デジタルモックアップ、空調吹出口・照明類の位置調整、干渉チェック等の部分的な項目とした(図-3~6)。試行においては省人化効果等の効果検証も行うこととしており、施工段階で取り組むべきBIMを明確にし、今後の生産性向上につなげる予定である。
 
なお、(2)(3)の取組については、平成30年度に限らず、平成31年度以降も継続して実施することとしており、受注者が施工BIMを含む施工合理化技術を提案する上でのインセンティブとしている。
 

図-3 仮設BIM
(例:足場計画及び揚重計画)




 

図-4 デジタルモックアップ
(例:木製ルーバーとキャットウォーク納まり検討)




 

図-5 空調吹出口、照明類の位置調整
(例:電気、空調、防災設備の位置検討)
出典:(一社)日本建設業連合会「施工BIMのスタイル事例集2016」




 

図-6 干渉チェック
(例:配管と壁の干渉部分可視化)




 

おわりに

本改定等については、広く公共建築工事で活用していただけるよう、各省各庁、都道府県及び政令指定都市の関係部署に情報提供を行った。
 
本改定等によりBIM利用が進み、BIM利用による関係者間の円滑な調整、手戻りの削減等により建設現場の生産性向上につながることを期待する。
 
末筆ながら、本改定等に当たっては各設計・施工団体から貴重な意見をいただき、また、日建連BIM専門部会の委員の皆様には改定等案の確認をはじめ多大な協力をいただいた。この場を借りて感謝申し上げたい。
 


●「BIM ガイドライン」「BIM 適用事業における成果品作成の手引き(案)」は次のURLにて公開している。
http://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk2_000017.html#4-1
 
 
 

国土交通省 大臣官房 官庁営繕部 整備課 施設評価室 営繕技術専門官 榮西 巨朗

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 

最終更新日:2019-04-22

 

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