• お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • サイトマップ

建築資材、土木資材をはじめとした建設資材、機材、設備、工法等の
データを収録し、スピーディな検索を実現した建設総合ポータルサイト

建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > ダイバーシティに向けた 3次元データ利活用の取り組み

 

はじめに

近年、土木事業全体において、i-Constructionに基づくICT活用工事やBIM/CIM活用工事など3次元データを利活用することによる、生産性向上への取り組みが推進されている。急な変化にもかかわらずこの数年で、適用規模や工種が拡大してきている。今後、3次元データを活用する機会はますます増加していくと考えられる。3次元データの取り扱いにおいては、3次元データを扱えるハードウェア・ソフトウェアの環境整備や3次元データを扱える人材育成などが課題として挙げられる。本稿では、それらの課題に対する当社の取り組み事例を紹介する。
 
 
 

3次元データを扱う環境整備

国土交通省工事においては、i-Con-structionに基づくICT活用工事が特記仕様書に明記され現場でも適用が進んでいる。ICT活用工事は、①起工測量、②3次元設計データ作成、③ICT建機による施工、④出来形管理等の施工管理、⑤データの納品の全ての段階において、ICTおよび3次元データを全面的に活用する工事であり、主に大規模掘削・盛土等を伴う道路工事などの土工事で適用されている。一方で、都市土木のような狭隘かつ複雑な施工箇所においても、構造物の構築工事にBIM/CIMを活用するなど工事中の各所で3次元データを扱う場面が生じている。ICT活用工事およびBIM/CIMを活用する工事においては3次元データの作成が必須である。
 
以上のように、実施工の現場において3次元データを取り扱わなければならない機会が増えている。
 
一方、3次元データは、容量が大きくなるとGPU(Graphics ProcessingUnit: リアルタイム画像処理に特化した演算装置ないしプロセッサ)を持つハードウェアが求められることや、点群利用ソフトやBIM/CIMツールのといったソフトウェアが必要となる。しかし、通常現場技術員が持つ標準PCは、このようなデータの取り扱いには適していない。そこで、個々の現場に高性能PC(WS)を1台ずつ導入するような対応策では、コストや管理面での負担が過大となることや一部の技術員だけが扱うことになる。また、ソフトウェアにおいては、新バージョンの更新などの統一的な管理に労力がかるといった課題があった。
 
そこで、3次元データを取り扱うに当たり、高性能サーバー上に仮想PCを配置し、標準PCからマウスとキーボードによって遠隔操作する「VDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップ環境)」を採用することで、標準PCからでも3次元データを取り扱う作業環境を実現した。VDIは、操作端末にデータを残さないなどのセキュリティ面で金融業等での利活用が進んでいたが、技術の進展により、GPUを搭載したVDIが構築でき、各種3次元データを取り扱うことができるようになった。
 

写真-1 標準PCからVDIへの接続


 

図-1 VDI環境イメージ




 

働き方改革を支えるVDI

VDIシステムの導入に当たっては、運用面で支援するシステム部門の負荷低減も考慮し、建築のBIM推進部門とも協調し、同じシステムを導入した。現在、当社では土木部門にVDIサーバー2機を設置し、建築部門と合わせて、10機のVDIサーバーが稼働中である。サーバー1機には最大16台の仮想マシンが稼働する。
 
このVDI上で高いマシンスペックを必要とする各種3 次元データを扱えるようにVDI上で使用できる3次元CADなどのソフトウェアの整備を進めた。3次元CADなどのソフトは、容量が大きく、毎年のバージョンアップにも時間がかかる。VDIであれば、マスター環境に一度インストールをすれば、その後は複数の仮想PCにクローンとして自動展開できる。ソフトウェアの更新においても業務効率化を図ることができている。
 
標準PCには、VDIへのアクセスソフトウェアも既にインストールされており、簡易な登録によってすぐにVDIを使用できる。土木部門では、2機のVDIサーバーに最大28人が同時接続できる環境としている。一方で、VDI利用登録人数は60人を越えており、長期的なコストを抑えつつ、ハイスペックのマシンを複数人で共有できる環境となっている。これは社員だけでなく、当社の標準PCを使用している派遣CADオペレーターでも利用することができ、作業所からでも3次元データを取り扱える環境をすぐに構築できる。
 
なおこのVDIは、標準PCがVPN(Virtual Private Network:公衆回線を使って構築する仮想のプライベート・ネットワーク)に接続されていれば、社外のネットワーク環境からでもアクセスが可能である。出張時や発注者への説明時においても軽量PCやタブレットからVPNを通じてVDIにアクセスし、簡便に3次元データを取り扱うことができる。当社は、2018年7月より働き方改革を推し進めるためテレワーク勤務を導入した。自宅だけでなく、全国100カ所超のサテライトオフィスにおいても業務が可能である。これらのテレワークにおいてもVDIを使用することができ、どこからでも3次元データを取り扱える環境となっている。2020年東京オリンピック開会式の2年前にあたる2018年7月24日のテレワークデイでは、派遣社員を含む当ICT推進グループ全員がテレワークを実施した。Skype for BusinessによるミーティングとVDIにより、出社しての業務と同様の対応ができることを確認した。VDIの導入は、単に3次元データの取り扱いに対する効率的な環境整備だけでなく、働き方改革に対してもその効果を発揮している。
 

表-1 シニア層向け講習会カリキュラム


 

図-2 講習2日目の成果




 

3次元データを扱う人材育成

前述のように環境を整えるとともに、人材育成についても重要な課題である。
 
3次元データは、直感的に理解ができ、施工状況などを容易にイメージできる効果がある。CIMガイドライン(共通編)においても、CIMの効果としては、理解が進むことによる合意形成の迅速化やフロントローディングが挙げられている。施工段階のフロントローディングは、構造物を3次元化することで、従来行っている2次元での施工検討では分かりづらかった構造物の取り合いなどの検討を前倒しで進め、施工計画の高度化を図ることが期待されている。また、経験の少ない社員や、施主、協力業者との意思の共有を図ることができる。このように、3次元データの効果は社内でも享受できているものの、3次元データの作成において障壁があった。これは、BIM/CIMの適用における業界全体としての課題としても挙げられている。
 
ICT活用工事やBIM/CIMの3次元モデルの活用によって、3次元データを現場技術員が取り扱う機会が増えている。施工管理に多忙な技術員に対して、いかに3次元データに慣れてもらうかが課題であると考えた。
 
そこで、当社ではAutoCADによる3次元データの作成と比較して直感的に操作ができ3次元化することができるソフトウェアであるSketchUpProの導入・普及を現場技術員に進めている。
 
SketchUp Proは、直線の集合体により形成されており厳密な曲線を示すことができないが、精度はミリ単位でモデリングすることができ、簡便に3次元モデルを作成することができる。前述のような施工段階における合意形成の迅速化などのBIM/CIMの効果を得るためには、簡易的なモデリングソフトであるSketchUp Proでも十分機能する。そこで、3次元モデルへの心理的障壁を緩和し普及を図るため、SketchUp Proの教育を進めている。環境としては、全社的にソフトのネットワークライセンスを導入し、アプリケーションセンターから標準インストールできる。さらに、操作の習熟のために、理解しやすい当社独自の土木技術員向けのマニュアルを整備し、講習会を実施している。講習会は、本社・支店だけでなく現場でも受講可能としている。これまでに講習を受講した社員は、200人以上となっており、社内での3次元データの活用を図っている。
 
 
 

ダイバーシティに向けて

また、2018年度より当社独自の取り組みとして60歳以上のシニア層社員に対するSketchUpの講習受講を原則化した。前述のように施工段階において3次元モデルを活用することは、実施工で発生するリスクを早期に把握し、対策の立案ができるフロントローディングが可能となる。一方で、3次元データを作成する人材に施工リスクを把握できる能力がなければ、その効果を享受することは難しい。土木施工の経験が浅い若手社員やCADオペレーターにとっては、リスクへの気付きが疎かになることもある。
 
一方、シニア層のベテラン社員は、土木工事特有の知見や施工経験を有している。当然ながら、2次元図面の読解能力に長けており、頭の中に3次元を描くことができている。しかし、その描いた3次元をアウトプットとして表現するスキルがないだけのことである。表現スキルを身につけると、ベテラン社員はすぐに正しい3次元モデルを描くことができる。さらに、これまでのその多様な経験を生かし、モデリングのプロセスにおいて施工状況をイメージすることで、その段階で施工上のリスクを発見できることもある。そうしたことは、施工に当たっての大きなフロントローディングとなる。問題点の早期抽出により、施工計画・施工管理のマネジメントに寄与できるメリットがある。また、技術の伝承においても若手社員への教育時の3次元モデルの利用によって効果が見込まれる。シニア層社員へのSketchUp講習会は、新たなキャリアアップによりダイバーシティにも寄与している。
 

写真-2 講習会状況


 

図-3 講習3日目の成果




 

3次元データから定量的効果を得る

i-Constructionに基づくICT施工は、多くの工種に拡大され、それぞれで3次元データの活用は進んでいるものの、都市土木のような複雑かつ輻輳する構造物を対象とする工事では、まだまだその効果を生かしきれていないと考えられる。都市土木においては、BIM/CIMモデルを用いた説明の分かりやすさによって、関係者間の理解力の向上など“定性的”な効果は十分に得ている。しかし、次のステップとして3次元モデルを施工に直結させて生産性を向上させる“定量的”な効果を得ることを掲げなければならない。つまり、施工計画検討に用いたモデルを加工することなく、そのまま現場施工に使うことが必要となってくる。
 

写真-3 狭隘箇所で施工する都市土木工事




 

都市土木のi-Constructionへ

そこで、まずは施工ポイントの位置出し確認のため、BIM/CIMモデルを用いて、オートデスクの『Poi ntLayout』『BIM 360 Glue』、トプコンの『レイアウトナビゲーター LN−100(杭ナビ)』が連携した『施工CIM』パッケージを導入した。現場の座標を設定したBIM/CIMモデルをクラウド経由でタブレット端末に表示して見える化し、測量器機とそのまま連携することができる。前述のSketchUpProのデータもNavisworks Manageを介したデータによって、連携が可能となる。
 
適用した当該工事は、都市土木の再開発工事における構造物の撤去工事であり、付帯工としての地盤改良工(薬液注入)があった。地盤改良工においては、残置する埋設管やマンホール室などの構造物に対して影響を及ぼさないよう留意する必要がある。通常、埋設物は台帳などで管理されているが、示されている土被りの数値と実際の埋設位置が異なることや、一部の断面しか図面がなくて形状が分からない場合がある。そのため、今回はマンホール室を3次元レーザー測量し、設計のBIM/CIMモデルと統合して地下の施工範囲を表した。3次元モデルは、2次元図面で表現できないところを分かりやすく表現できる一方で効果としては定性的な面が強い。この効果を定量的にするため、3次元モデルをそのまま測量に活用した。
 
現場では、地盤改良工事に伴う地下構造物の干渉などを3次元モデルで確認するとともに、杭ナビと3次元モデルを連携させた。基準点から杭ナビを後方交会してセットした後、器械と同期したタブレット端末の画面に映した3次元モデルのポイントをタッチすることで、3次元空間上の薬液注入の施工ポイントに誘導した。
 
垂直方向だけでなく、埋設物の下部に斜めに薬液を注入する箇所もあった。メリットとしては、数値ではなく3次元モデルから直感的に計測できるため、座標値の読み間違いのミスも低減し測量の効率化につながることも確認できた。都市土木は、夜間工事などの規制が多く、施工ポイントのマーキングだけでも時間制約がある。いかに効率よく作業を進めるかが重要になる。
 

本取り組みでは、3次元データの直接的な活用により、通常、2人がかりの作業を1人に省力化することが可能となった。都市土木においてもi-Constructionに基づいたBIM/CIMの定量的活用を積極的に進めたいと考えている。
 

写真-4
ポイントをタッチするだけで3D誘導




 

おわりに

当社は、2012年のCIMのスタート時から、3次元データの利活用を進めてきた。近年では、3次元データの取り扱いを必須とされる工事も増加しており、ますます3次元データを活用する機会は増加していくと考えられる。今後に向けて、社内全体でのリテラシーの向上、さらに3次元データを扱うための体制の整備を継続して推進していく必要がある。
 
現状としては、3次元データを活用するためのハードウェア・ソフトウェアといった設備については、一通りの整備が完了している。そのうえで、3次元データを日常的に扱える人材を教育によって増やしていく必要がある。
 
現在、PCやCAD図面を当たり前に使えているように、若い社員だけでなく、全世代の建設に関わる人々が、3次元データを当たり前に取り扱えるようになることが求められる。3次元データの利活用によって生産性が向上し、楽しい建設業になる未来が待っている。あとはそれに向かってどうやって成長をしていくか?と考えるだけである。
 
 
 


東急建設株式会社 土木事業本部 事業統括部 ICT推進グループ グループリーダー 小島 文寛

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 

 

同じカテゴリの新着記事

メルマガ登録

最新の記事5件

カテゴリ一覧

バックナンバー

話題の新商品