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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > インフラ施設の地震レジリエンス強化のための耐震技術の開発〜土木研究所 研究開発プログラム〜

 

はじめに

南海トラフ巨大地震,首都直下地震など巨大地震の切迫性が指摘されています。現場を含め関係機関は強い危機感を持ち,実効性の高い対策を検討し,実施しています。
 
国立研究開発法人土木研究所(以下,土研と略)もまた,これからの地震防災に貢献できるよう研究を進めています。本稿では,地震対策を検討されている方や関心をもたれる方の参考になるように,関係する土研の研究を紹介します。
 
 

1. 強靱性を目指す研究開発プログラム

土研では比較的短期に現場に役立つ研究を多く行っています。耐震工学の黎明期からの研究と貢献の実績を有しています。研究成果そのものおよび培った技術力をもって,技術基準などの制定や改定に貢献し,また平常時だけではなく災害時にも現場を支援してきました(写真−1)。
 

写真−1 九州地方整備局と打ち合せをする土研職員(熊本地震)




 
目下の耐震関係の研究は,「インフラ施設の地震レジリエンス強化のための耐震技術の開発」として括られています。この括りは技術の指導や成果の普及まで視野に入れたもので,研究開発プログラム(以下,プログラムと略)と呼んでいます。
 
さて,平成30年6月に公益財団法人土木学会が『「国難」をもたらす巨大災害対策についての技術検討報告書』を発表し注目されました。国難回避のため,強靱性(レジリエンス)を確保することの重要性が強烈に示されています。本プログラムも,まさしく土木関係のインフラの強靱化を目的とし,従来の経験を超える大規模地震や地震後の複合災害に備えるための技術開発を行うものです。
 
 

2. 研究項目およびその内容と成果

本プログラムは平成28年度から33年度までの6年間を研究期間とします。以下の3項目を達成目標としています。
 

①巨大地震に対する構造物の被害最小化技術・早期復旧技術の開発
②地盤・地中・地上構造物に統一的に適応可能な耐震設計技術の開発
③構造物への影響を考慮した地盤の液状化評価法の開発
 
これらを達成し,道路橋や道路土構造物,軟弱地盤,河川構造物などに対する耐震性能の評価法や耐震対策技術の開発・高度化を図ります。また開発技術の実用化と基準類や事業への反映などを通じ, 大規模地震に対してインフラ施設の被害の最小化,被災時の早期の機能回復を可能とするレジリエンス社会の実現への貢献を目指します。
 
以下,研究の中から今後の参考となりそうなものを選び,①に重心を置き,紹介します。
 

2-1.巨大地震に対する構造物の被害最小化技術・早期復旧技術の開発

●全般および道路盛土
本研究は地震に対し,被害の最小化および早期復旧を可能とする技術の開発に関わるものです。対象は主に道路盛土,橋梁です。道路盛土については,被害低減のため,脆弱箇所の効率的な抽出技術と,盛土条件に応じた耐震補強法を提案しようとしています(写真−2)。
 

写真−2 道路盛土の耐震補強工に関する動的実験




 
脆弱箇所を抽出するため物理探査技術も開発しています。盛土区間などにおいて変状が発生した際に,脆弱箇所を効果的に抽出する技術などです。熊本地震被災箇所においては,事象の理解が難しい被災箇所について,研究成果を用いて調査し,その結果を可視化情報として提供するなどし,対策方針の決定に貢献しています(写真−3)。
 



写真−3 (上)GPR探査と(下)地表・地中空間情報3D表示例




 
●橋梁基礎
橋梁については,基礎の耐震補強技術などを開発しています。既設基礎の補強は,一般に新設での施工より条件が厳しくなります。地震の影響を適切に評価し,現場の制約も踏まえた耐震技術の開発が必要です。写真−4は液状化地盤における流動化に対応する既設基礎の耐震補強技術を検討した実験です。内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」の一環として行いました。
 

写真−4 耐震補強技術の実験(E-ディフェンスにて)




 
また熊本地震において確認されたフーチングの被害などを踏まえるなど,既設フーチングの性能評価や補強に関して,高速道路会社との共同研究を進めているところでもあります。基礎の合理的な耐震補強方法や現場作業が省力化につながる橋脚の補強工法を提案したいと考えます。
 
 
●超過作用に対する損傷シナリオデザイン
本稿において特に紹介したいのは,超過作用に対する橋の損傷シナリオをデザインする,新たな考え方に関する研究です。橋の設計基準は,設計外力に対し設定した限界状態を超えず,所要の耐荷性能を発揮できるようにするものです。では,いわゆる想定外の強い地震が起こり,設計外力を超えてしまったらどうなるでしょうか?
 
現在の道路橋示方書においても,落橋防止装置や桁かかり長の確保は考えられてはいますが,人命を守り早期復旧が可能になるように最大限の工夫がさらに必要と考えます。東日本大震災を経験した今,想定を超える事象を想定外だったと言っても免罪符とはなりません。とはいえ想定外力をいくら上げたところで,所詮それも想定です。むしろ想定を超えることはあり得ると考え,その先の対策を考えることが必要と考えます。
 
そこで本プログラムでは,①超過外力に対し致命的な損傷に至りにくくする,②機能復旧の対処をしやすくする,という観点から,超過外力に対し設計上配慮可能な損傷制御の方策(損傷シナリオのデザイン)を検討しています。一般的な構造の橋やアーチなど特殊な橋について,超過外力作用時の損傷過程を分析するなどし,構造条件や工夫の仕方を検討しているところです。
 
なお,このような発想自体は土研の独創ではありません。原子力施設における危機耐性の概念の提案,2018年制定の鋼・合成構造標準示方書耐震設計編など,公益財団法人土木学会においていち早く議論されているものがあります。
 
土研は,耐震設計基準に直接反映される技術開発を実施してきた機関として独自の研究を進めています。この危機耐性という考え方が,これからの構造物の耐震設計の常識となっていく事を目指しており,公益財団法人土木学会と連携も図っています。
 
現段階では,直接現場に適用できる技術を提案するにはいたっていません。来年度から提案に向け具体的に検討する予定です。
 



写真−5 超過外力に対する状態の計算例(上)と補強方法による粘り強さの差(下)




 

2-2.地盤・地中・地上構造物に統一的に適応可能な耐震設計技術の開発

●橋梁
熊本地震では橋梁が斜面崩壊や地盤変状の影響を受け被災しました(写真−6)。地震時には液状化による地盤流動も考えねばなりません。橋の耐震性を確保するには,地盤と基礎の相互作用を含め,橋梁全体の耐震性を精度良く評価できなければならないと考えます。
 

写真−6 斜面崩壊の影響を受け被災した阿蘇長陽大橋




 
そこで本項目では,主に橋や土構造物の耐震性の評価技術を研究しています。この研究は地盤と構造物の相互作用がもたらす不慮の被災というものを減らす事,そして従来よりも合理的な構造物の耐震設計を実現する事につながります。
 
熊本地震の復旧においては,斜面崩壊などの地盤変状により生じた損傷などのメカニズムを分析し,これらを踏まえた対応方法を提案しました。
 
 
●河川堤防 〜地震後の豪雨に備える〜
被災した河川堤防の耐震性能照査手法や対策手法の確立も本項目において重要テーマです。熊本地震では地震発生後に豪雨被害がありました。最近の気候変動の影響を考慮すると,堤防が地震で被災した後,まだ復旧が終わらず,場合によっては余震が続いているうちに,豪雨災害が起こる事は,今やリスクとして十分に考慮しなくてはならないと考えます。本項目において地震により生じる亀裂と堤防機能の関係の把握,対策手法を検討しています(写真−7)。
 

写真−7 地震による亀裂と堤防機能変化を探る実験




 

2-3.構造物への影響を考慮した地盤の液状化評価法の開発

東日本大震災では液状化によって広いエリアで深刻な被害が発生しました。液状化は土木構造物に深刻な被害を与えるので,構造物への影響を考慮したより合理的な判定法が必要と考えています。簡易な現地試験法の開発も行っています。
 
平成30年北海道胆振東部地震において札幌市内で激しい液状化被害が発生したのは記憶に新しいところです。北海道では火山灰質土が災害の深刻化に寄与していたと思われます。本研究では火山灰質土の液状化の判定のため,液状化強度に及ぼす各種の要因の解明や試験方法の研究も行っています(写真−8)。
 

写真−8 現地サンプリング(火山灰質土の液状化検討)




 
液状化判定の精度が低いと,どうしても安全側の評価をせざるを得なくなります。いつ来るとも知れない地震に対しては,限られた期間内に最も効果が高い対策を実施しなくてはいけません。構造物への影響評価の判定精度が高くなると,それだけ合理的な対応を検討できるようになると考えます。なお,平成29年7月に道路橋示方書が改定されました。改定に当たっては,研究を通して取得した地盤調査・室内試験データに基づき,細粒分を含む砂の液状化強度式を見直すことができました。細粒分を多く含む場合ほど,従来式よりも液状化強度を大きめに見込むことが可能になっています(写真−9)。
 

写真−9 液状化強度式の改定前(左)と後(右)



 

おわりに

以上,土研における地震防災に関係する研究について,全体の概要と主なものを選び紹介しました。平成30年度は6年間のプログラムのちょうど前半が終わります。研究には,実験や解析を着実に積み重ねながら6年間かけて成果にたどり着くものもあります。その一方,一部紹介したとおり,成果・知見を研究の達成状況に応じて,すでに実社会に役立てているものもあります。
 
設計基準などの改訂は土研の研究を待ってはくれません。また現場の緊急の課題には,その時点での最高の知見を駆使して助言をしていかなければなりません。現場ニーズにお応えし,研究成果を少しでも早く現場で活用し,地震防災に貢献できるよう,取り組んでいきます。
 
 
 

国立研究開発法人 土木研究所 耐震総括研究監 日下部 毅明

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2019年3月号 特集 防災減災・国土強靭化



 
 

 

 

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