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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 土砂流領域の砂防堰堤の施設効果に関する検討

 

はじめに

日本は山,川等豊かな自然に恵まれている一方,台風や前線等による集中豪雨,大規模地震等に見舞われやすい自然環境におかれている。そのため,大雨や地震を起因とした土石流やがけ崩れ,地すべり等の土砂災害も年間平均1,000件程度発生しており,甚大な被害を及ぼしている。今年度においては,平成30年7月豪雨災害(図−1)や平成30年北海道胆振東部地震(図−2)により甚大な被害が発生したこともあり,土砂災害発生件数は集計開始(昭和57年)以降最多件数となる3,451件で,死者・行方不明者も第3位となる161名に及んだ(国土交通省砂防部調べ)。
 

図−1 平成30年7月豪雨による多発的な土砂災害発生状況




図−2 平成30年北海道胆振東部地震による多発的な土砂災害発生状況




 
このような土砂災害に対して,国土交通省や地方自治体は,土砂災害に対する砂防施設等の整備等のハード対策と併せて土砂災害警戒区域等の指定,警戒避難体制の整備等のソフト対策を実施してきている。
 
 
 

1. 砂防堰堤とは

土砂災害の一つである土石流に対する対策施設の代表的なものとして砂防堰堤がある。砂防堰堤は渓流の上流や谷の出口付近に建設し,土砂の生産・流出の抑制や発生した土石流を直接受け止める効果がある。砂防堰堤は,透過型砂防堰堤,部分透過型砂防堰堤,不透過型砂防堰堤の大きく3つに分類できる(図−3)。中でも透過型砂防堰堤は普段は土砂を堰堤で捕捉することなく下流に流下させ,大雨等により土石流が発生したときは巨礫や流木等を含む土砂は堰堤でしっかり捕捉し,下流への土砂の流出を防ぐ働きがある(図−4)。
 

図−3 砂防堰堤




図−4 透過型砂防堰堤の土砂の捕捉(左:土石流発生前 右:土石流発生直後)




 

2. 砂防堰堤に関する既往の研究と課題

砂防堰堤の土砂捕捉機能に関しては,これまで水理模型実験や数値解析等により数多くの研究1)〜3)が行われてきており,土石流に対する砂防堰堤の土砂捕捉効果について多くの知見が得られている。これらの知見は,「砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)」4)や,「土石流・流木対策設計技術指針」5)等に反映され,これらの指針に基づき土石流対策が実施されている。一方,土石流に対する砂防堰堤の土砂捕捉等施設効果に関する既往検討を踏まえた課題は以下のとおりである。
 
 
[課題1]
継続時間が非常に短く流量が急激に上昇するハイドログラフをもつ土石流が観測されているが,実験上の制約等から既往の研究の多くが流量一定の矩形ハイドログラフで検討されており,ハイドログラフの違いが砂防堰堤の土砂捕捉効果に与える影響に関する検討が必要である。
 
 
[課題2]
土砂流区間(5°程度)では巨礫が先頭に集まる石礫型土石流と異なり,土砂流と呼ばれており土砂濃度の低下により土砂動態が異なると考えられている。一方,既往の研究の多くが石礫型土石流を対象に実施されており,土砂流に対する砂防堰堤の土砂捕捉効果に関する検討が必要である。
 
そこで本稿では上記課題を踏まえ,土砂流区間(5°)を流下する土砂流出現象を対象に,ハイドログラフの違いが砂防堰堤の施設効果に与える影響を明らかにすることを目的に実施した水路実験について報告する。
 
 

3. 水路実験の概要

実験は1/30程度の縮尺を想定し実験装置は長さ10m,幅30cm,高さ50cmの可変勾配式水路を用いた。実験砂は過去の既往災害等を考慮し,95%粒径32mm,50%粒径8mmの混合砂を用いた。また実験は,固定床上に上流から給水・給砂し土石流を発生させ,土石流の水深4点(堰堤下流側1m,堰堤上流側25cm,50cm,1m)および上流投入量と水路末端(堰堤下流2m)での水と土砂の流出量の時系列変化を計測した。併せて実験状況は,水路側壁および鉛直方向からビデオで撮影した(図−5)。
 

図−5 実験水路




 
実験は勾配5°で実施し,堰堤やハイドログラフを組み合わせた計12ケース実施した(表−1)。また堰堤模型(図−6)は高さ25cmとし,透過型の部材間隔は95%礫径の1.0倍(32mm)で,開口幅は堰き上げが発生しない開口幅が広い型と堰き上げが発生する開口幅が狭い型の2種類実施した。ハイドログラフは,図−7に示す供給土砂量は堰堤容量分(計画堆砂勾配が元河床勾配の2/3倍で堆積した容量)とし,立ち上がりが急で継続時間が短い三角形のハイドログラフ(以下,「ハイドロ1のケース」という。)を基本にピーク流量と供給土砂量が同量の矩形ハイドログラフ(以下,「ハイドロ2のケース」という。)とピーク流量が半分で供給土砂量が同量の台形型のハイドログラフ(以下,「ハイドロ3のケース」という。)の3パターンで実験を実施した。供給地点での土砂濃度は2.2〜3.3%である。
 

表−1 実験ケース




図−6 砂防堰堤模型




図−7 ハイドログラフ




 

4. 実験結果

4-1 土砂の堆積過程

図−8はハイドロ1の堆積過程を示している。不透過型は,土砂・水の供給開始直後から堰堤上流で湛水が始まり,供給開始1分後には堰堤天端から越流が始まった。一方,土砂は湛水の上流端付近で堆砂肩を形成し,上流から下流へ堆砂肩が移動した。供給開始後8〜9分頃に堆砂肩が堰堤地点に達し,11〜12分頃に堰堤天端まで堆積した。
 

図−8 土砂堆積状況




 
開口幅が広いケース7は,土砂・水の供給開始直後に,土砂は堰堤まで到達し,水は透過部から流出した。供給開始1分30秒後に土砂の先頭部により透過部が閉塞され土砂の堆積が始まった。
 
その後,堆砂域は上流に遡上し,供給開始後6〜7分頃に堰堤天端まで土砂が堆積した。水は供給開始後2分30秒〜3分頃に透過部からの流出に加え,堰堤天端から越流も始まった。
 
一方,開口幅が狭いケース10は土砂・水の供給開始直後は水だけが堰堤に到達した後,供給開始1〜2分頃に堰堤上流で顕著な堰き上げを起こした。土砂は不透過型と同様に堆砂肩を形成しながら上流から下流へ移動した。供給開始後2分頃に堆砂肩が堰堤地点に達し,7〜8分頃に天端まで土砂が堆積した。水は供給開始後3〜4分頃に透過部からの流出に加え,堰堤天端から越流も始まった。その他のハイドログラフのケースでも堰堤に土砂が到達する時間や満砂する時間に違いがあったものの,ハイドロ1と同様の堆積過程を示した。以上のことから土砂の堆積過程は,堰堤の型式によって異なることが分かった。
 
 

4-2 土砂捕捉量および下流への流出土砂量

表−2は,通水終了後の砂防堰堤による土砂捕捉量および供給流量ピーク時付近の単位時間あたりの流出土砂量について,堰堤無しのケース1〜3の流出土砂量に対する割合を示した。すなわち,割合が0に近いほど下流への流出が少ないことを示している。
 

表−2 土砂捕捉率




 
ハイドロ1〜3のいずれのケースにおいても,堰堤の型式,ハイドログラフの違いによらず堰堤容量に対する捕捉量の割合(土砂捕捉率)は90%以上となった。
 
また,供給流量ピーク時付近の流出土砂量は,不透過型堰堤はハイドロ2のケース5において土砂が均一に堆積しなかった影響で,供給後半に土砂が堰堤を乗り越えて流出したため流出割合が大きい結果となったものの,その他のハイドロ1,3のケースは,供給流量ピーク時においてはほとんど下流へ流出しなかった。一方,透過型堰堤の流出割合は,開口幅が広い型は0.04〜0.15の間を示し,開口幅が狭い型は0.03〜0.09を示したことから,開口幅が狭い型の方が供給流量ピーク時における堰堤下流への流出土砂量がやや少ないことが分かる。特にハイドロ1については,開口幅が狭い型(0.03)の方が広い型(0.15)に比して20%になった。これは図−8に示すように,透過部が狭い型の場合,堰き上げにより土砂が堆砂肩を形成しながら堆積し,ピーク時に堰堤まで到達した土砂が開口幅が広い型に比べ少なく堰堤の空き容量が多かったため,開口部からの土砂の流出が少なかったものと考えられる。
 
 

おわりに

課題2に示した土砂流区間を流下する土砂流出現象に対する砂防堰堤による土砂の捕捉は,堰堤の型式により土砂の堆積過程や水の流出過程が異なるものの,土砂捕捉率は90%以上を示した。なお,堰き上げが生じる開口幅が狭い型式においては,出水後半に開口部から土砂が流出することが懸念されたが,水平・鉛直純間隔を現指針にのっとり設定したところ出水後半の土砂の流出は見られなかった。
 
また,課題1に示したハイドログラフが砂防堰堤の施設効果に与える影響に関しては,供給流量一定の矩形ハイドログラフ(ハイドロ2)の場合,特に不透過型において供給流量ピーク時に堰堤下流へ流出する土砂が他の型式と比較すると多くなる場合が見られた。一方,立ち上がりが急で継続時間が短いハイドログラフ(ハイドロ1)に対する砂防堰堤の施設効果は,堰堤の型式により供給流量ピーク時の土砂流出量が異なった。特に,透過型砂防堰堤の開口部の幅を狭くすると,同じ透過型でも広い型に比べて効果の発現プロセスが異なることがわかった。以上の結果からハイドログラフの設定は,砂防堰堤の施設効果を検討する上で重要な条件であることが示唆された。
 
今後も,土砂濃度や粒径が土砂流区間に設置した透過型砂防堰堤の施設効果に与える影響に関して水路実験や数値解析を実施していく予定である。
 
 


【参考文献】
1)芦田和男・江頭進治・栗田三津雄・荒巻治(1987):透過性砂防ダムの土石流調節機構,京都大学防災研究所年報,第30号B-2,p.441-456
2)水山高久,小橋澄治,水野秀明:格子型ダムのピーク流砂量減少率に関する研究,砂防学会誌,Vol.47,No.5, pp.8-13,1995.
3)堀内成朗,赤沼隼一,小川和彦,倉岡千郎,杉山実,森田威孝,伊藤隆郭,水山高久:直線水路を用いた格子型ハイダムの土砂捕捉機能に関する模型実験,砂防学会誌,Vol.62,No.2,pp.29-36,2009.
4)国土交通省国土技術政策総合研究所(2016):砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)解説,国総研資料第904号
5)国土交通省国土技術政策総合研究所(2016):土石流・流木対策設計技術指針解説,国総研資料第905号
 
 
 

国土技術政策総合研究所 土砂災害研究部 砂防研究室 主任研究官 松本 直樹

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2019年3月号 特集 防災減災・国土強靭化



 
 

 

 

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