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1 リニューアル工事の概要

阪神高速道路は,構造物全体の約6割が開通から30年以上経過している。また,交通量は一日約76万台(平成29年度)にのぼり,大型車両の混入率も高い。そのため,自動車の荷重を直接受ける舗装・伸縮継手装置などの設備は劣化,損傷が生じやすく,補修等の対策は急務である。
 
阪神高速道路では安心・安全・快適を未来につなげるため,高速道路の長寿命化に向けて「阪神高速リニューアルプロジェクト」に取り組んでいる。今回その一環として,平成30年11月2日から12日までの10日間,15号堺線・17号西大阪線のリニューアル工事を実施した。
 

【15 号堺線と17 号西大阪線の位置図】




 

2 リニューアル工事における取り組み

2.1 構造物の長寿命化

◆ RC 床版上面への高性能防水の実施
床版は走行する自動車の荷重を直接受ける部材であり,重交通で大型車両の混入率が高い阪神高速道路では損傷が出やすい。コンクリート床版では,ひび割れが発生し,雨水などの浸入により損傷が進むと舗装面の陥没が発生する恐れがあるため,長寿命化を目的とした高性能防水工を実施した。高性能防水は,ひび割れの浸透性が高い1次防水層(高浸透型防水材)と2次防水層(アスファルト加熱型塗膜防水材)を組み合わせることで,コンクリート床版への雨水の浸入を防ぐことができる。通行止め区間のコンクリート床版全体の74.3%に相当する18万m2で高性能防水工を実施した。
 

【15号堺線(リニューアル工事後)】

【17号西大阪線(リニューアル工事後)】





 

【高性能床版防水の概念図 (コンクリート床版の上面)




 

2.2 安全性,走行性の向上

◆広範囲,大規模な舗装の打ち替え
15号堺線,17号西大阪線では,平成19年の大規模修繕工事以降,日常的な補修は行っているもののポットホールやひび割れなどの舗装の損傷も多く見られた。そのため,通行止め区間全体の94.6%にあたる26万3,000㎡で舗装の打ち替えを行い安全性,走行性の向上を図った。
 



◆排水性舗装の実施
排水性舗装は,基層に不透水性のアスファルト,表層に浸水性のポーラスアスファルトを用いることで,雨水を速やかに路面下に浸透・排出し雨天時の安全性,視認性の向上を確保できる。今回は,舗装補修工事のうち14万1,000㎡で排水性舗装の施工を実施した。
 
 

2.3 周辺環境の改善

◆伸縮継手の取り替え
伸縮継手前後では,舗装補修を繰り返すことにより舗装との段差が生じ,スムーズな縦断線形ではなくなったり,伸縮継手自体に損傷が発生したりすることが騒音・振動の原因となっている。そのため,今回の工事では396レーンにて伸縮継手の取り替え,107レーンにて後述するジョイントレス化の工事を行った。
 
 
◆ジョイントレス化
ジョイントレス化とは,路面上からジョイントを無くす工事であり,路面に鋼材やコンクリート等が露出しないため,車両走行時の安全性・快適性の向上や振動・騒音の低減による道路周辺環境の改善に効果をもたらす。また,構造物の耐震性向上が期待できるとともに,道路構造物の長寿命化と維持管理の省力化が可能となる。
 
今回は,ジョイントレス化として床版連結工法,埋設ジョイント(PC横桁連結)工法,シームレスジョイント工法の三つの工法を採用した。
 

【簡易鋼製ジョイントへの取り替え状況】




 
①床版連結工法
床版連結とは隣り合う床版と床版をつなぎ合わせることでジョイントレス化する工法の一つである。
 
床版を連結する際,上段鉄筋は重ね継手とし,下段鉄筋の代わりにハンチ構造の成型鋼板を設置することにより,鉄筋接合の簡略化,鋼板部材の単純化(部材数減),施工時間の短縮を図っている。
 

【①床版連結工法】




 
②埋設ジョイント工法(PC桁連結)
埋設ジョイント工法は,隣接する既設PC桁橋間の路面を主に舗装材料を用いて連続化する工法である。PC桁区間の伸縮継手を撤去し,基層にエキスパンドメタルで補強されたグースアスファルトを用いて舗装を連続化することで,桁の温度伸縮に追従させる。
 
さらに,リニューアル工事後に路下から連結鋼棒にて桁自体を連結する。
 

【②埋設ジョイント工法】




 
③シームレスジョイント工法
床版に高耐久のジョイント金物を設置し,その上から弾性合材1層と伸縮シートを敷き,最後に弾性合材2層により埋設する。弾性合材には伸縮追従性に優れた高弾性舗装材を使用する。
 

【③シームレスジョイント工法】




 
◆低騒音工法の導入
阪神高速道路では,工事期間中の騒音,振動等による近隣の住民の方への影響を最小限にするため,従来から低騒音工法の導入を積極的に行っており,住宅地や学校,病院などの施設が近接する箇所から優先的に次の低騒音工法を導入した。
 
 
①舗装撤去の低騒音工法
 
IH 式舗装撤去工法
鋼床版上の舗装では基層にグースアスファルトを用いており,撤去の際は路面切削機にて鋼床版が損傷しない深さまで切削し,残った舗装部はバックホウなど重機を用いて剥ぎ取る。さらに,ボルト接合部などは手ばつりする必要があり,各工程でかなりの騒音が発生する。そのため,住宅密集地などでは騒音低減を目的としてIH ヒーターを用いた舗装撤去工法を採用した。この工法では,IHヒーターにより鋼床版部を加熱させることでグースアスファルトと鋼床版間の接着層を剥離させ,グースアスファルトを撤去する。人力による剥ぎ取りが不要となり,工事騒音を大幅に抑制できる。
 

【IH 式舗装撤去状況】




 
②伸縮継手撤去の低騒音工法
既設の伸縮継手を撤去する際の騒音は,主にコンクリート部の手ばつりにより発生するため,今回は次の工法を採用した。
 
SJS(サイレンス・ジョイント・スライス)工法
SJSは特殊ワイヤーソーを使用し,伸縮継手装置だけを静かに切断撤去する工法である。専用のカッターブレードで作製したスリット部にワイヤーを落とし込み,伸縮継手装置の下部を水平切断する。低騒音に加え,低振動のため夜間施工が可能である。
 

【SJS 工法】




放電破砕工法
放電破砕工法では,電流を流すことで急激に膨張する特殊溶液を使った放電カートリッジを伸縮継手を囲むように装填し,放電することでコンクリート部分を破砕する。長時間の手ばつりによる騒音を抑えることができ,一部の箇所で採用している。
 

【放電破砕工法】




リペアコント工法
リペアコントは伸縮継手装置設置の際,下面のアンカーボルトに予めステンレス製のパイプジャッキを埋設しておく工法である。伸縮継手の取り替えの際,水圧によりパイプジャッキを膨張させることで,伸縮継手と周辺のコンクリート部をブロック状に撤去することが可能となる。撤去に時間がかからず,騒音も発生しないため夜間の施工も可能である。今回のリニューアル工事では次回の撤去の際,有効に機能するよう,一部の箇所において伸縮継手設置の際にリペアコント工法を採用している。
 

【リペアコント工法】




 

2.4 サービスの向上

◆より見やすい案内標識の設置
照明装置を設置している従来型の標識を対象に,超高輝度反射標識への取り替えを行った。ヘッドライトの光を強く反射するため,照明装置が不要になり,ドライバーの視認性が向上するだけでなく,照明装置のメンテナンスも不要となる。
 
また出口を案内する標識については,「次は」の表現を追記するなどより分かりやすい案内となるよう工夫した。
 

【超高輝度反射標識】

【「次は」を追記した標識】】




 
◆より快適なパーキングエリアへの改装
湊町PA,弁天町ミニPAを対象に,お客さまにより快適にご利用いただけるよう,トイレの便器をすべて洋式化し,分煙化(喫煙ゾーンを区画)する改修工事を行った。外観,内装についても改装しており,快適性の向上を目指した。
 

【湊町PAおよび弁天町ミニPA位置図】




 

2.5 安全対策の実施

◆新たな標識への取り替え,カラー舗装の実施
阪神高速道路では,従来から安全対策として標識の設置・取り替えや,カラー舗装の施工を行ってきた。今回のリニューアル工事の中でも,合流部やカーブ区間の注意喚起標識はよりわかりやすい標識に取り替え,誤進入の多い堺入口(安井町入口,国道26号直結の2カ所)においてはカラー舗装等を施工した。
 

【湊町PA】

【弁天町ミニPA】




【注意喚起標識の取り替え】

【誤侵入を防ぐためのカラー舗装】




 

3 玉出入口における損傷したRC 床版の取り替え

玉出入口では通行止め期間に先行し,経年劣化に伴う老朽化と長年の大型車両走行により損傷したRC床版を新しく取り替える工事を実施した。同入口は橋梁部と土工部からなり,今回,床版の取り替えを行った橋梁部は6径間の単純合成桁である。
 
今回の工事では6径間中3径間に対し,ウォータージェットを用いた床版撤去方法や既存のコンクリート床版からUFC床版への取り替えなど,新しく開発された技術を試験施工として採用している。
 

3.1 ウォータージェットを用いた床版撤去工法

従来,合成桁から床版を撤去するには対象区間を通行止めした上で,鋼桁と床版接続部のコンクリートをはつる必要があった。通行止めは交通影響が大きく,また人力によるコンクリートのはつり作業は大きな騒音が発生し,近隣の住民の方々に多大なご迷惑をおかけするという問題がある。
 
本工法は,通行止めをしない状態で接続部のコンクリート撤去を行い,通行止め期間を短縮することを目的とした施工法である。
 
まず事前準備として,ウォータージェットを用いてRC床版と鋼桁をつないでいるスタッド周辺のコンクリートを床版下面からはつり,スタッドを露出させてから仮補強材を装着する。通行止め開始後は,仮補強材を外した上で,スタッドを切断しクレーンにて床版を撤去するだけであるため,交通影響の大きい通行止め期間を大幅に短縮することができる。
 
本工法は飛島建設(株)・第一カッター興業(株)共同企業体との共同研究によるもので,ウォータージェットの使用を可能とするため,使用水が路下に落下しないよう防水構造を有した吊足場を設置している。足場内部には漏水センサを備え,万一吊りチェーンの設置部に亀裂が生じ漏水しても即座に検知し,修復が可能である。
 

 



 

3.2 平板型UFC床版の採用

UFC(Ultra High Strength Fiber ReinforcedConcrete:超高強度繊維補強コンクリート)は,超高強度コンクリートに鋼繊維を混入することで,鋼材に匹敵する圧縮強度を有し,繊維補強のため靱性に優れ,強い耐久性を有するなど優れた性能を持つ。
 
玉出入口の床版を取り替える際,現行の基準でPC床版を作製すると,床版厚を既設のものより厚くする必要があった。そこで今回,平板型UFC床板を導入することにより強度を現行の基準値まで引き上げながら,部材厚を薄くすることができ,路面高さを変更せずに取り替えが可能となった。また更新用のPC床版の設計値と比べると30%の軽量化を実現した。
 
今回の玉出入口でのUFC床版採用は阪神高速道路内で初めてであるが,本工事は鹿島建設(株)との共同研究により実施した。
 
UFC床版の設置に際しては,鹿島建設(株)が開発した荷下ろし設備と専用の架設機を使用した(図参照)。荷下ろし設備によりプレキャスト床版を架設機に載せ,架設機により運搬,設置を行う。この架設機を使用することで,クレーンによる吊り上げ,旋回が不要となり都市高速特有の限られた施工空間の中でも架設が容易になった。
 
玉出入口についてはリニューアル工事に先行し,平成30年7月10日から通行止めによる工事を行ってきたが,リニューアル工事終了と同時に開放した。
 

【荷下ろし設備】

【専用架設機】


 



 

4 リニューアル工事に係る情報提供について

リニューアル工事では通行止めによる交通影響が非常に大きいことから,広く多くの人に工事実施の広報を行うことは非常に重要な責務である。今回行った広報活動について下記にまとめる。
 
①メディアや各種SNS,インターネット媒体を利用した情報提供
従前から行っている広報活動の主な媒体として,高速道路や街路上の門型柱等に掲示する横断幕やPA・料金所に設置する看板,テレビ・ラジオCMおよび新聞広告,各種SNSなどが挙げられる。近年では新たな取り組みとしてインターネットのバナー広告なども行っている。今回はさらにYoutubeでの広告動画の配信や,ニュースアプリ等に記事広告の掲載をするなどインターネットを活用した新たな取り組みを展開した。
 

【SNS やインターネットによる情報発信】




②リニューアル工事期間中におけるう回経路所要
時間の提供

う回する車により周辺の高速道路や街路に発生する渋滞は,お客様への影響も大きいことから,通行止め工事期間中は,工事区間をう回する複数ルートの所要時間を算出。適切な交通分散になるよう情報提供を行った。
 

【4号湾岸線(大阪市内行き) 助松JCT付近】

【現地本部工程会議の状況】




 

5 現場での取り組みについて

リニューアル工事は昼夜連続の施工であることから,沿道住民の方々には多大なご迷惑をおかけする。また限られた期間の中で確実に工事を完了させるため,工法変更など現場で起こり得る技術的な課題等に関しても瞬時に判断していく必要がある。そこで,対象路線の付近に現地対策本部を設置し,発生する課題に24時間対応できる体制を構築した。
 
また,工事期間中は多くの土木工事と施設工事が輻輳するため,工程調整が非常に重要となる。現地本部にて1日1回,全施工業者との工程会議を行うとともに,必要に応じて工程の再調整を行った。さらに現場における注意事項等についても情報共有を行い,工事の円滑化と安全の確保を図った。
 
 

6 さいごに

阪神高速道路は昭和39年の開通後50年以上が経過し,冒頭でも触れたとおり構造物の劣化が顕著になっている。お客様や沿道の皆様に極力ご迷惑をおかけしないように配慮しながら,リニューアルプロジェクトを推進し,安心・安全・快適な走行を確保することが我々の使命である。
 
舗装や伸縮継手の補修に加え,高性能防水の採用,玉出入口での長寿命化を目的とした技術開発など,工事規模は従来よりも増大しているが,通行止め期間を最大限短縮できるよう伸縮継手の事前撤去などに取り組んできた。また,お客様へのご迷惑を最小限に抑えるため,さまざまな媒体による広報の展開や騒音・振動対策を積極的に取り入れてきたところである。
 
今後は,今回のリニューアル工事でいただいた騒音や振動に関するご意見を踏まえ,より一層の事前広報の充実を図るとともに,より低騒音・低振動で周辺環境に配慮した工法の採用に努めていく所存である。
 
 
 

阪神高速道路株式会社大阪管理局保全部 保全管理課

 
 
 
【出典】


積算資料2019年2月号



 

 

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