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ホーム > 建設情報クリップ > 建築施工単価 > 学校施設における 防災・減災対策の推進

 

1. はじめに

 
学校施設は児童生徒の学習・生活の場であるとともに,地震等の災害時には地域住民の避難所等ともなることから,その安全性を確保することは極めて重要である。
 
そのため,文部科学省では学校施設における構造体の耐震化,非構造部材の耐震対策を踏まえた老朽化対策,防災機能強化等様々な取組を通して,学校施設の防災・減災対策を推進しているところである。
 
 

2. 平成30年度に発生した主な災害と文部科学省の対応

(1)平成30年度に発生した主な災害

平成30年度は,6月の大阪府北部を震源とする地震,7月の平成30年7月豪雨,9月の平成30年台風第21号及び北海道胆振東部地震等,相次ぐ災害に見舞われ,全国各地で自然災害による学校施設の被害が数多く報告された。
 
そのため,文部科学省では,自然災害により被害を受けた公立学校施設等について,教育活動を円滑に実施できるよう,施設の災害復旧に要する経費の一部を国庫負担(補助)しているところである。
 
文部科学省としては,今後も,被災地の復旧・復興に向けて,被災地の要望を踏まえつつ,必要な支援に取り組んでいきたい。
 

(2)ブロック塀等の倒壊防止等の安全対策

平成30年6月18日に発生した大阪府北部を震源とする地震では,学校のブロック塀が倒壊し,女子児童が亡くなられるという大変痛ましい事故が発生した。当該地震を受けて,文部科学省では,6月19日に全国の教育委員会等に対して,ブロック塀等の安全点検等の要請を行うとともに,その進捗状況を調査し,8月10日に結果を取りまとめた。
 
この調査により,「安全性に問題があるブロック塀等を有する学校」が,全国の学校(51,082校)の約4分の1に当たる12,652校にのぼるとともに,安全性に問題があると判明したにもかかわらず応急対策が完了していない学校が約2割あることが判明した。
 
この結果を受け,文部科学省としては,
● 速やかな安全点検の完了や応急対策の実施等,各学校設置者が取り組むべき当面の対応について,8月10日付で通知するとともに,
● 各学校設置者が速やかにブロック塀等の安全対策が行えるよう,今回の調査結果を踏まえ,平成30年度第1次補正予算において232億円を計上したところである。
 
文部科学省では,今後とも,引き続きフォローアップ調査を実施するなど,学校施設の安全性確保に取り組んでいきたい。
 

【図-1 学校施設におけるブロック塀等の安全点検等状況調査の結果について】




 

3.「国土強靱化基本計画」の見直しと「防災・減災,国土強靭化のための3か年緊急対策」

近年の災害から得られた貴重な教訓や社会経済情勢の変化等を踏まえ,大規模自然災害等に強い国土及び地域を作るとともに,自らの生命及び生活を守ることができるよう地域住民の力を向上させるための指針となる「国土強靱化基本計画」の見直しが,平成30年12月14日に閣議決定されたところである。この中で,文部科学省における主な関係施策として,「指定避難所となる施設等における,耐震対策,自家発電設備,衛生環境の確保等による防災機能強化」,「防災拠点,学校施設,医療施設等の天井等非構造部材を含めた耐震対策」,「避難所等の老朽化対策」を推進していくこととされている。文部科学省としては,南海トラフ地震,首都直下地震等によって国家的危機が実際に発生した際に我が国が十分な強靱性を発揮できるよう,学校施設の整備を図るため,財政支援等必要な支援に取り組んでいきたい。
 
また,平成30年7月豪雨,北海道胆振東部地震等,最近の災害による被害を踏まえ,重要インフラが自然災害時にその機能を維持できるよう,特に緊急に実施すべき対策について,3年間で集中的に実施するものとして,「防災・減災,国土強靱化のための3か年緊急対策」が平成30年12月14日に閣議決定されたところである。この中で,文部科学省関係の緊急対策として,学校施設等における,災害時に落下の危険性のある外壁や天井等の改善整備,及び構造体の耐震化を行うこととされている。文部科学省としては,地震・津波等の大規模な災害時において,学校施設の機能維持を図るため,財政支援等必要な支援に取り組んでいきたい。
 
 

4. 防災機能強化のための文部科学省の組織再編

近年,地震をはじめ,津波・豪雨等の自然災害が頻発化・多様化・甚大化しており,今後,首都直下地震も懸念される中,国土強靭化の理念を踏まえた事前防災・減災の推進や,災害発生時の対応の強化が必要となっている。また,学校施設は児童生徒の学習・生活の場であるとともに,地震等の災害時には地域住民の避難所等ともなることから,安全性や防災機能の強化を図る必要性が高まっている。
 
このため,文部科学省では平成30年10月16日に組織再編を実施し,文教施設の防災機能の体制強化を図った。
 
具体的には,文教施設の防災を主担当とする課長級職として「参事官(施設防災担当)」を新たに創設し,平時における耐震化や避難所機能の確保等の学校施設の防災・減災対策の推進,発災時の情報収集,省内の施策の総合調整,情報連絡員の派遣等,文教施設の防災に係る対応を一層強化した。また,このように文教施設の防災に係る対応を強化することに伴い,「文教施設企画部」を「文教施設企画・防災部」に再編した。
 
今後とも,新体制の下,学校施設の防災・減災対策の更なる推進に取り組んでいくこととしている。
 
 

5. 学校施設の耐震対策

国公立学校施設の耐震化については,阪神・淡路大震災以降,重点的に支援してきた結果,個別事情により遅れているものを除き,おおむね完了した状況である。
 
また,私立学校施設については,できる限り早期の耐震化完了を目指しており,2019年度(平成31年度)予算(案)事業執行後の耐震化率は,幼稚園から高等学校等で約93%,大学等で約95%となる見込みである。
 
文部科学省としては,近年の大規模な地震において,耐震化が完了した学校施設に倒壊・崩壊といった被害が生じなかったことは耐震化の大きな成果であると考えている。
 
一方で,東日本大震災において,公立学校の屋内運動場の天井や教室の照明器具が全面的に崩落するなど,大きな被害が発生した。
 
このため,文部科学省では「学校施設における天井等落下防止対策のための手引」を作成し,屋内運動場等の吊り天井等は撤去を中心とした対策を進め,熊本地震で効果を発揮したところである。
 
しかしながら,熊本地震において,屋根ブレースの破断や天井材の落下,窓ガラスの破損などにより屋内運動場を避難所として使用できなくなるなど,非構造部材の被害が発生している。
 
文部科学省では,非構造部材の耐震点検及び対策を進めるため,平成27年3月に「学校施設の非構造部材の耐震化ガイドブック(改訂版)地震による落下物や転倒物から子供たちを守るために―耐震点検の実施―」を作成するなど,非構造部材の耐震対策を推進してきたところである。
 
引き続き,構造体の耐震化及び非構造部材の耐震化が未完了の地方公共団体に対して,必要な財政支援を行い,速やかに対策を完了するよう促していきたい。
 

【図-2 公立小中学校施設の耐震化の状況】



【図-3 学校施設の非構造部材の耐震化ガイドブック(改訂版)】




 

6. 学校施設の防災機能強化の推進

文部科学省では,平成29年度に「避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査」を実施した。その結果,学校施設の避難所への指定の状況は,公立学校施設においては,30,994校(約9割)が指定されており,避難所に指定されている学校施設のうち,断水時のトイレや電力に係る防災機能を確保している学校数がそれぞれ50%程度にとどまるなど,引き続き取組を推進する必要性が明らかとなった。
 
文部科学省としては,引き続き,各学校設置者に対し,防災担当部局と一体となって,防災機能強化を行うことの重要性について通知や講習会等を通じ普及啓発に努めるとともに,学校施設の防災機能の強化に資する整備に対して財政支援を実施するなど,地方公共団体の取組を促していきたい。
 

【図-4 避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査結果】




【図-5 公立学校施設の防災機能強化事業の概要(学校施設環境改善交付金)




 

7. おわりに

文部科学省では,地方公共団体の取組を促していくとともに,学校設置者や学校においても,学校施設における防災・減災対策が推進されるよう,学校施設の防災・減災対策の重要性について通知や講習会等を通じ普及啓発に努めるとともに,学校施設の防災・減災対策に資する整備に対して財政支援を実施していきたい。
 
 
〈参考〉
上記で紹介した調査結果や下記の報告書等は,文部科学省のホームページでご覧になれます。
 
(1) 報告書「災害に強い学校施設の在り方について〜津波対策及び避難所としての防災機能の強化〜」
 
(2) 報告書「熊本地震の被害を踏まえた学校施設の整備について」緊急提言
 
(3) 動画「地震のとき「落ちてこない・倒れてこない・移動してこない」安全な学校へ 」
・ 日ごろ学校の建物を使っている学校教職員の方々向けに点検のポイントをまとめています。
・「 学校施設の非構造部材の耐震化ガイドブック(改訂版)」(平成27年3月)と併せて見ることで,より高い効果が期待できます。
 
(4) 学校施設の耐震化推進に関する相談窓口
・ 文部科学省では,学校施設の耐震化(非構造部材を含む。)に関する専門的・技術的な内容の相談窓口を開設しています。
 
 
 

文部科学省大臣官房文教施設企画・防災部参事官(施設防災担当)

 
 
 
【出典】


建築施工単価2019春号



最終更新日:2019-06-17

 

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