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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建築施工単価 > UR都市機構の東日本大震災における 復旧・復興支援の取り組み

 

1. はじめに

平成23年3月11日に発生した東日本大震災は,太平洋沿岸部の広範囲に甚大な被害をもたらしました。
 
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)は,発災直後から被災地の復旧・復興を支援するとともに,平成24年1月から被災自治体からの要請に基づいて復興市街地整備や災害公営住宅の建設に着手し,復興まちづくりを着実に進めています。この取り組みにより,被災地では,道路や鉄道用地のインフラ整備に伴い駅や商業施設の開業,災害公営住宅への入居や住宅の自立再建が順次進捗している状況です。
 
本稿では,UR都市機構が実施する東日本大震災からの復旧・復興支援の取り組みを紹介します。
 
なお,記載内容は平成31年2月1日現在のものです。
 
 

2. 東日本大震災における復旧・復興の取り組み

UR都市機構は,発災直後からUR賃貸住宅や応急仮設住宅建設用地の提供・技術職員の派遣等を開始,これまで25の被災自治体と協定等を締結し,15自治体に復興支援事務所を設置しました。平成28年7月には最大460名体制まで強化し,現在も事業の進捗に応じて体制を確保して復興まちづくりを推進しています(図-1,2)。
 

【図-1】 東日本大震災におけるUR都市機構の取り組み概要



【図-2】 UR都市機構の支援体制




 

3. 東日本大震災における復興まちづくりを実現する事業手法と役割

(1)復興市街地整備事業(津波被災地域)

復興市街地整備事業は,土地区画整理事業,防災集団移転促進事業などにより,平地部のかさ上げや高台住宅地の整備,道路・公園などの公共施設整備を行います。土地区画整理事業については,ニュータウン整備で培った経験をいかし,今回の復興で実施される全地区面積の約2/3を担っています。
 
まず,津波被災地においては,UR都市機構は12の被災自治体からパッケージ(計画・換地・補償・工事・調整など)で一括委託を受けて,平成24年度から22地区,約1,314haで復興市街地整備事業を実施しており(表-1),全ての地区で土地の引き渡しを開始しています。
 
平成30年度では,8月18日(土)に宮城県石巻市において,同市から受託した新門脇(しんかどのわき)地区被災市街地復興土地区画整理事業の工事完了による竣工式が開催(写真-1),9月8日(土)には,福島県いわき市において,同市における津波被災地での震災復興土地区画整理事業6地区(うち薄うす磯いそ,豊とよ間まの2地区を受託)の工事完了による合同竣工式典が開催されました(写真-2)。
 
9月29日(土)・30日(日)には,岩手県陸前高田市において,新しい中心市街地における交通広場の完成や高田南幹線の開通などを記念し,まちびらきまつりが開催され,復興が進むまちの姿を市内外へ発信し,市民の方とともに喜びを分かち合う機会となりました(写真-3)。
 
また,宮城県女川町では,高台に建設を進めていた役場新庁舎が完成し,10月1日(月)に開庁式が行われました。役場のほか,生涯学習センター・保健センター・子育て支援センターからなる複合施設となっており,町民の方々の利便性が高まりました(写真-4)。
 
津波被災地域の復興市街地整備事業では,平成29年度末までに約1,314haのうち約834ha(約63%)の完成・引き渡しが完了しました。平成30年度末までに約88%の完成見込であり,引き続き事業を進めてまいります。
 

【表-1】 支援地区一覧(平成31 年2月1日現在)




【写真-1】 新門脇地区(宮城県石巻市)

【写真-2】 豊間地区全景(福島県いわき市)

【写真-3】 陸前高田市まちびらきまつり
   (岩手県陸前高田市提供)

【写真-4】 女川町新庁舎(宮城県女川町)



(2)復興市街地整備におけるCM方式の導入

復興市街地整備事業の実施に際しては,一日も早い住宅再建,まちびらきが求められていることから,従来型の契約方式ではなく,官民が明確な役割分担のもと事業を強力に推進するCM(コンストラクション・マネジメント)方式を導入しています(図-3)。
 
東日本大震災は,被災規模が極めて大きく被災地も広範囲にわたるため,これまでに経験したことのない非常に多くの大規模工事を同時期に発注することになり,従事する技術者や作業員だけでなく,建設に必要な資材・建設機械などの不足が懸念されました。
 
そこで,段階的な工事を大くくりにして早い段階でCMR(コンストラクション・マネージャー)に発注・事業参画させることで,民間のノウハウを活用し,工期の短縮や資機材の早期調達,施工方法の工夫を図っています。また,地元経済の復興・活性化に寄与するため,CMRが発注する調査・工事には,地元企業を優先して活用しています。復興市街地整備事業の19地区で,このCM方式を採用しています。
 
また,復興CM方式の導入後6年が経過し,導入した地区では順次工事完了とまちの概成を迎えたのを機に,UR都市機構では震災復興の貴重な経験を将来に残すことおよび今後の多様な入札契約方式の検討に役立てることを目的として,復興CM方式の導入効果や課題等の分析を行い,「復興CM方式の効果分析報告書」としてとりまとめ,平成30年10月にホームページ上で公表しました(https://www.ur-net.go.jp/saigai/fukkocm/index.html)。
 

【図-3】 CM方式の概要



(3)災害公営住宅整備事業

災害公営住宅整備事業は,震災により住宅を失い,自力で住宅を確保することが難しい方に低廉な家賃で賃貸する公営住宅を整備する事業です。
 
UR都市機構は,日本住宅公団時代から大都市圏を中心に約150万戸の賃貸・分譲住宅を建設した経験をいかして,被災自治体からの建設要請に基づいて災害公営住宅を建設し,建物の完成後に被災自治体へ譲渡しています。このため,被災自治体は戸数・構造などの基本的な計画条件を提示するだけで災害公営住宅が整備でき,工事発注手続きから住宅建設までを一体的にUR都市機構に依頼することにより事務処理や工事管理などにかかる負担が軽減されます。
 
これまでに,要請を受けた17の被災自治体で5,932戸の災害公営住宅の建設を支援しています(表-1)。このうち,平成27年度までに要請を受けた5,833戸については平成29年度中に完成しました(写真-5)。また,平成29年度に岩手県から内陸部に避難されている被災者向けの災害公営住宅(南青山地区・盛岡市)の建設要請を受け,2020年度の完成を目指し,整備を進めます。
 
 

 

【写真-5】 完成した災害公営住宅

左上: 岩手県大槌町 御社地(おしゃち)町営住宅
   平成29年12月竣工・24戸
   雁木・歩道空間で,歩いて楽しい中心部のまちなみ創出
左下:宮城県女川町 町営荒あら立だて住宅
   平成30年1月竣工・60戸
   町の玄関口を飾る沿道・結節点の空間
右上:福島県いわき市 県営勿来酒井(なこそさかい)団地
   平成29年3月,平成30年3月竣工・87戸
   地域に馴染む住棟にふるさとのイメージカラーを取り入れ


 

(4)福島原子力災害被災地域における支援

福島県の原子力災害による被災地では,除染の進捗およびインフラの復旧に伴い避難指示が徐々に解除されています。また,平成29年5月の福島復興再生特別措置法の改正により,将来にわたり居住を制限するとされた「帰還困難区域」内であっても,「特定復興再生拠点区域」を国が認定することで,その区域内は除染とインフラ整備を行うことが可能となり,復興まちづくりが加速化しつつあります。
 
UR都市機構は,福島県大熊町,双葉町,浪江町の3町から,4地区の復興拠点整備を受託しています。
 
大熊町では,福島復興再生拠点整備の初めての事業として,大川原地区(約18ha)を平成29年度に事業受託しました。平成31年度までに新庁舎,交流施設,住宅等の新たなまちの概成を目指し,拠点整備に加えて,地区内の町新庁舎等の発注者支援や住宅等の基本計画策定支援を行っています(写真-6)。
 
双葉町では,中野地区(約50ha)を平成29年度に事業受託しました。当地区は「働く拠点」として整備し,平成30年度から順次宅地引き渡しを進めています(図-4)。今後,県アーカイブ施設,町産業交流センターおよび民間進出企業による建物等の整備が進められます。また,平成30年度より双葉駅西側第一地区(約11ha)も受託しており,「住む拠点」の整備を進めていく予定です。
 
浪江町では,福島県の進める「ロボットテストフィールド」の一翼を担う無人飛行機滑走路や,世界最大級の水素製造拠点が立地する棚塩(たなしお)地区(約49ha)の基盤整備を平成29年度に受託し,各施設の開設に向け整備を進めています(写真-7
 

【写真-6】大川原地区(福島県大熊町)



【図-4】 中野地区(福島県双葉町)



【写真-7】 棚塩地区(福島県浪江町)




 

4. 東日本大震災における被災地の復興の歩みの発信

UR都市機構では,復興の歩みを広く発信し,復興を支援する目的で,平成26年から東日本大震災からの復興の歩みを伝える「フォト&スケッチ展」を毎年開催しています。5回目の開催となった今回は全国から336作品の応募をいただきました。
 
応募をいただいた作品は,有識者等による審査を行い,平成30年11月に受賞作品をUR都市機構のホームページ上で発表しました(写真-8)。
 
また,平成31年2月〜3月に受賞作品を中心とした応募作品の展示会を首都圏,岩手県,宮城県および福島県などで開催しました。
 



【写真- 8】 大賞作品

上段:復興の歩み大賞(フォト)『最盛期』撮影場所:岩手県宮古市
下段:復興の歩み大賞(スケッチ)『復興祈念大祭〜獅子舞と元気な祖母』描いた場所:宮城県本吉郡南三陸町


 

5. おわりに

今後,南海トラフ巨大地震や首都直下地震,豪雨災害等の大規模な自然災害が発生するおそれのある中,UR 都市機構では災害支援の強化のため,平成30年4月に災害対応支援室を設置し,社内外の窓口の一元化,支援ノウハウの蓄積,復旧・復興支援に対応できる職員の育成,これまでの復旧・復興支援等の経験をいかした事前防災や復旧・復興支援に係る地方公共団体等への研修や啓発活動に取り組んでいます。
 
また,発災時には国等からの要請・依頼に応じて危険度判定士や応急仮設住宅建設支援要員の派遣等の支援を迅速に行うとともに,応急借上げ住宅としてのUR賃貸住宅の貸与や応急仮設住宅の建設用地の提供等を行う支援ができるよう,体制の構築を図っています。
 
東日本大震災からの復興については,発災から約8年が経過し,平成31年度で国の定める「復興・創生期間」も4年目に入ります。UR都市機構としても,被災された方々が一日も早く生活再建できるよう,事業進捗に応じた現地の復興支援体制を確保し,安全管理・品質管理に努めつつ,引き続き,復興まちづくりに取り組んでまいります。

 
 
 

独立行政法人都市再生機構 震災復興支援室

 
 
 
【出典】


建築施工単価2019春号

 

 

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