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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 首都高速道路のスマートインフラ マネジメントi-DREAMs®

 

はじめに

首都高速道路は,長大橋梁,高架橋やトンネル等の構造物の比率が95%と高いことに加え,総延長約320kmのうち40年以上を経過した路線が全体の約40%,30年以上を経過した路線が60%以上と構造物の高齢化が進んでいる。そのため,点検で発見される損傷は増加傾向にあることに加え,通常の維持管理業務は,社会的な影響を考慮して,夜間作業や年間数日の通行止め時に行うため,効率が悪く,時間を要しているのが現状である。
 
このように高度経済成長期以降に集中的に整備されたインフラの高齢化が急速に進むなか,少子高齢化にともなう生産年齢人口の減少により,インフラの維持管理などを担う技術者が,将来不足することが懸念されている。
 
そこで,近年目覚ましい進歩をとげているICT(情報通信技術),AI(人工知能),IoT,ロボット技術などを積極的に活用し,維持管理の生産性の向上を図ることにより,持続可能なインフラを実現するスマートインフラマネジメントシステム(i-DREAMs:intelligence-Dynamic Revolutionfor Asset Management system)を開発した。首都高速道路株式会社では,2017年度からその運用を開始している。
 
 

1. インフラマネジメントシステム

i-DREAMsは,図−1に示すように調査・設計(DIM),施工(CIM),維持管理(MIM)のプロセスにおける,各種データ(属性)をつなげ,統合することにより,効率的な維持管理を実現するシステムである。
 
具体的には,GIS(地理情報システム)をベースとするプラットフォームに,各プロセスで得られる情報を統合するとともに,維持管理のさまざまなシーンで3次元点群データを活用することで,効率的な維持管理を支援する(図−1の青い破線範囲のInfraDoctor)。加えて,画像解析やAI等の活用により,構造物の劣化・損傷に対する総合的な分析・判断が可能となり,「見える化」が図られる。このようなメンテナンスサイクルをスパイラルアップすることにより,高度なインフラのマネジメントが実現される。
 
以下に,i-DREAMsの主な技術について記述する。

図−1 i-DREAMs全体概要図



2. i-DREAMsの主な技術とその効果

(1)GISプラットフォームからの迅速な検索

従来の維持管理システムは,紙ベースのデータを電子化し,検索機能を追加したものに留まっていた。今回,図−2に示すように,GIS上にデータを統合することで,地図上から指定した構造物の図面や点検・補修履歴のデータを同時または瞬時に検索することが可能となった。これにより,資料収集にかかる時間を大幅に短縮できるとともに,総合的な視点で迅速かつ適切に構造物の診断・評価が可能となった。

図−2 GISプラットフォーム動作画面



(2)システム上から現地調査・測量

図−3に示すMMS(Mobile Mapping System)を用いて交通を規制することなく,道路を走行しながら効率的に3次元点群データや周辺の映像を取得し,GIS上で現場を確認することができる。点群データを構成する各点の座標は,測量と同じ精度を有している。図−4に示すように,道路幅員等,指定した任意の箇所の寸法を正確に計測することができる。また,図−5に示すように,道路の建築限界もシステム上で確認が可能である。これにより,従来,交通を規制して測量を実施し,現場の状況を確認していた業務等が,システム上で全て行うことが可能となり,従来手法と比べて1/10程度まで削減することが見込める。

図−3 MMS(Mobile Mapping System)


 

図−4 3D寸法計測(道路幅員)


 

図−5 道路建築限界の確認



(3)2Dおよび3D図面の作成

3次元点群データから構造物の輪郭線,平面,曲面を自動抽出する機能を装備した。これにより,図面がない構造物や,個別に構造物の図面はあるものの,全体が統合された図面がない構造物に対して,図−6,7に示すように容易に2Dあるいは3Dの図面を作成できるようになった。
 
また,FEM(Finite Element Method)等のモデルも3D図面から簡単に作成でき,高度な解析技術と組み合わせることで,的確かつ効率的な構造物の劣化診断や予測につなげることが可能となる。

図−6 2D図面作成


 

図−7 3D図面作成



(4)3次元空間上での各種シミュレーション

①設計シミュレーション
補強設計において,部材を3Dでモデル化し,図−8に示すように3次元点群データの空間に重ね合わせることにより,既設構造物と補強部材の干渉や配置検討,現場での部材設置時の取り回し検討などが可能となる。これにより,現場の状況を踏まえた設計が実現され,設計の品質向上に加え手戻りの削減など大幅な設計の効率化が図れる。

図−8 設計シミュレーション(補強時の部材配置検討)



②施工機械シミュレーション
図−9に示すように,予め準備した施工機械の3Dモデルのツールを用いて,3次元点群データの空間で容易に施工機械の動的シミュレーションが行える機能を開発した。これにより,現場状況に適した重機の選定,配置位置,周辺構造物との干渉について事前に確認でき,現場作業における安全性の確保や手戻りを最小限にすることができる。

図−9 施工機械シミュレーション(橋梁点検車の例)




③交通規制シミュレーション
3次元点群データ上で,パイロン等の規制資材を規定されたルールに基づき半自動で配置することにより,図−10に示すような交通規制シミュレーションを容易にできる機能を開発した。これにより,運転者の視点から,事前に適切な規制計画か否か確認することが可能となる。

図−10 交通規制シミュレーション



(5)構造物の変状検出

点群データから構造物の基準面を作成し,その基準面から個々の点との差分を求めることで変状を検出する機能を開発した。これにより,コンクリートの浮き・剥離損傷等の早期発見や点検の一次スクリーニングを実用化し,点検業務の高度化,効率化が図られる。図−11に,近接目視点検により発見されたコンクリート剥離箇所に対して,MMSにより取得した点群データで,変状検出の可能性について検証を行った結果を示す。壁面から3〜7mm程度コンクリートが剥離している状況であったが,点群データからも同様の変状を検出することができ,その有効性が確認できた。
 
本機能により,接近が難しい箇所における構造物の異常を遠隔から定量的に把握することができ,詳細な点検が必要な箇所をスクリーニングする技術としての活用も見込まれる。
 
また,図−12に示すようにMMSから測定距離が一定で,精度が良い点群や画像データが取得できる舗装を対象に,損傷ランク判定から補修費算出までの自動化に向けて,システムの開発・検証を進めている。
 
特に,点群データを用いることで,わだち掘れ量や平坦性については,従来手法より精度よく効率的に算出できることに加え,局所的なポットホールも自動抽出することができる。また,画像診断技術を組み合せることで,ひび割れも自動抽出することができ,これらの詳細なデータを蓄積・分析していくことで,ポットホール等の局所的な損傷の劣化メカニズムの解明にもつなげることができる。

図−11 コンクリートの剥離の変状検出




図−12 舗装マネジメントシステム(青枠内を自動化)



(6)AIを活用した構造物劣化推定

各種構造物の維持管理データやセンシングデータに加え,交通量等の環境条件を含めて蓄積されたビッグデータを図−13に示すように,AIを用いて処理し,構造物の劣化状況や損傷の進展を精度よく推定することにより,適切な補修時期や補修工法の決定等が実現でき,予測保全へと進化が可能である。

図−13 AIエンジンを用いた先進的な維持管理



おわりに

i-DREAMsの運用から1年が経過し,維持管理の基本となる現場確認作業のリードタイムが縮減される等の効果が現れ始めている。さらに,交通規制を行うことなく,MMSで3次元点群データを取得し,維持管理へ活用することで,交通規
 
制時間を大幅に縮減でき,社会的損失の削減へつなげることができる。
 
本システムは,首都高速だけでなく,他のインフラにも活用できる可能性を有している。安全で安心な社会インフラの実現に貢献できることを期待する。
 
 
 

地方共同法人 日本下水道事業団 技術戦略部 技術開発企画課 長田 隆信,神田 信也

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2019年4月号



 

 

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