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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 港湾における高潮対策について

 

はじめに

港湾の堤外地等において高潮による浸水被害が発生すると,我が国の港湾物流ネットワークや立地企業の生産活動が大きく停滞する可能性があることから,平成30年3月に「港湾の堤外地等における高潮リスク低減方策ガイドライン」を策定し,港湾の堤外地等における高潮対策を推進することとしたところです。
 
平成30年9月に大阪湾を直撃した台風第21号に伴う高潮・高波により,神戸港六甲アイランドのコンテナターミナル等が浸水し,コンテナの航路・泊地への流出や荷役機械等の電気設備等の故障により,港湾の利用が一時的に困難となる等,近畿地方の港湾が大きな被害を受けました。
 
このため,国土交通省港湾局では,港湾における高潮対策の充実や対策の技術的な検討を行うため,平成30年10月から「港湾における高潮リスク低減方策検討委員会」(委員長:岡安章夫 東京海洋大学学術研究院教授)を開催し,「港湾の堤外地等における高潮リスク低減方策ガイドライン」(平成30年3月策定)の改訂に向けた検討を行いました。本稿ではその検討結果を報告します。
 
 

1. 台風第21号の概要

①台風の強さと経路

台風第21号は,四国に上陸後も非常に強い勢力(上陸時の中心気圧:955hPa,最大風速:45m/s)を維持したまま,平成30年9月4日14時頃に神戸市付近に再上陸しました。その経路は第二室戸台風とほぼ同じであり,大阪湾の湾奥に向かって強い風を吹かせるものでした(図−1
 



 

②潮位(大阪管区気象台および府県の潮位計による観測)

台風による潮位の上昇は短時間で急激なもので,最大潮位は大阪湾の湾奥に向かって大きくなる傾向にあり,尼崎のT.P.+3.53mが最も大きな値でした。なお,神戸(T.P.+2.33m),大阪(T.P.+3.29m), 西宮(T.P.+3.24m), 尼崎(T.P.+3.53m), 御坊(T.P.+3.16m), 白浜(T.P.+1.64m),串本(T.P.+1.73m),阿波由岐(T.P.+2.03m)の8地点において既往最高潮位を更新しました。
 
 

③波高(国土交通省港湾局の波浪計)

有義波高については, 神戸(4.72m), 潮岬(7.05m), 伊勢湾(3.82m), 徳島海陽沖GPS(14.46m),高知室戸岬沖GPS(13.66m)の計5地点で既往最高波高を更新しました。
 
 

2. 台風第21号による被害

2-1 電気設備の浸水被害

神戸港六甲アイランドのコンテナターミナルの受電所において電気系統(遮断器,保護回路)が浸水し,ガントリークレーン2基の機能が停止し,最後の1基が稼働を再開したのは被害発生の4ヶ月後でした。
 
 

2-2 コンテナの倒壊・流出被害

台風の暴風を受け,積み上げられたコンテナがヤード内に倒壊しました(写真−1)。また,高潮・高波による浸水等により,神戸港および大阪港で空コンテナが航路・泊地へ流出し,船舶の航行の安全が確認されるまで,神戸港で2日間,大阪港で3日間,港湾機能が停止しました。さらに浸水により,コンテナ内のマグネシウムが発火し,鎮火までに約2ヶ月の期間を要しました。
 

写真−1 コンテナ倒壊の状況




 

2-3 荷役車両の浸水被害

コンテナターミナル等の高潮浸水により,ターミナル内のトレーラヘッド,フォークリフト,トップリフター等,荷役に必要な車両が稼働不能となり,ターミナルの早期再開に支障をきたしました。
 
 

3. 高潮対策の技術的な検討

3-1 電気設備の浸水対策

高潮により電気設備が浸水し,ガントリークレーンやリーファーコンテナ等の機能が停止したことを受け,電気設備の浸水対策として,①想定される高潮や津波を考慮して,設備を可能な限り高い位置に設置する,②設備が設置されている上屋等を浸水に耐えられる構造にする,③浸水に耐えられる構造の設備を設置するといった考え方を整理しています(写真−2)。また,応急的な措置として土のう設置等の事例も整理しました。
 

写真−2 電気設備の嵩上げ例




 

3-2 コンテナの倒壊・流出対策

コンテナの暴風による倒壊対策としては,コンテナの積み上げ段数を減らす等の積み方の工夫に加えて,コンテナ同士を固縛する方法があります。
 
平成30年台風第21号では,5段積みのラッシングベルトによる固縛では約30%のコンテナが倒壊したのに対して,3段積みのラッシングベルトによる固縛では約2%と非常に小さかったことが報告から分かりました。
 
また,国土技術政策総合研究所が実施したコンテナの模型による風洞実験の結果では,倒壊が発生しづらい順からコンテナの積み上げ段数としては3段,4段,5段。積み方としてはひな壇,隅切り,長方形。固縛方法としては縦固縛および横固縛併用,横固縛,縦固縛となりました(図−2)。
 

図−2 コンテナ風洞実験の結果




 
このため,暴風による倒壊対策としては3段積み以下としたうえで,積み方はひな壇,固縛方法は縦固縛および横固縛併用とすることが望ましいですが,コンテナヤード面積や蔵置コンテナ数,作業時間を考慮し,上記対策を取ることができない場合は,状況に応じた適切な対策を講じる必要があります(写真−3)。ただし,段数を低くすると高潮が発生した場合のコンテナが浮上する浸水深が小さくなることも留意する必要があります。
 

写真−3 コンテナ倒壊対策事例(ひな壇)




 
高潮による浸水でコンテナが水域に流出した場合,浮遊したコンテナが航路・泊地内に沈む可能性があり,コンテナの海底探査や引き上げ等の航路啓開中は,船舶の航行が制限される恐れがあります。また,浮遊したコンテナの船舶や港湾施設等への衝突や海岸への打ち上げにより,被害がさらに拡大する可能性もあります。
 
コンテナの流出対策としては,わずかな浸水で浮遊する可能性がある空コンテナの対策が重要であり,コンテナに作用する浮力を低減させるためのコンテナの扉を開ける措置とともに,仮に浮遊した場合に航路・泊地への流出を防止するための柵等を設置する方法があります。なお,実入りコンテナが流出の恐れがある場合は,積み増しや高い位置への移動等の方法が考えられます。また,固縛等の倒壊対策が流出防止にも資することから,倒壊対策と併せて検討する必要があります。
 
さらに,水域にコンテナが流出した場合の航路・泊地の啓開作業(探査・引き上げ等)について,事前に作業手順の整理を行うとともに,必要に応じて関係機関との協定締結を行うことが重要です。
 
浸水により火災の発生等の危険性のあるマグネシウム等のコンテナ貨物は,高潮に伴うターミナルの浸水により,コンテナの火災が発生してしまう可能性があります。一度火災が発生すると消火に時間を要し,ターミナルが一時的に利用不可となる場合があります。このため,コンテナターミナルでは,船荷証券(B/L)やマニフェスト(積荷目録)を参考とした積荷情報に基づき,浸水による火災の発生等の危険性のあるコンテナ貨物については浸水を回避するための高い場所等の安全な場所に配置するなどの対策を検討する必要があります。
 
 

3-3 荷役車両の浸水対策

高潮によりシャーシやトラクターヘッド等の荷役に必要な車両が浸水し,故障したことを受け,トレーラ(シャーシ)やフォークリフト等の荷役車両の浸水が想定される場合,高潮浸水の発生前に浸水のリスクが低い箇所への退避を検討する必要があります。また,退避場所までの移動時間等を踏まえ,台風接近時の作業開始時間を事前に決めておく必要があります。
 
 

3-4 ターミナルの停電対策

台風により送電線の切断等により,港湾のターミナルにおいても停電リスクがあります。停電により,ガントリークレーンやフェリー荷役のための可動橋等が機能せず,経済活動や被災地支援に支障をきたす恐れがあります。
 
北海道胆振東部地震に伴う北海道全域での停電により北海道外への空路・鉄路の移動手段が寸断されましたが,苫小牧港のフェリーターミナルに非常用電源が設置されていたため,地震発生当日から本州の自衛隊等が被災地支援を行うことができました(写真−4,5)。
 


  • 写真−4 ターミナルにおける非常用電源設置例

  • 写真−5 災害派遣重機車両の輸送の状況



 
フェリーターミナルの停電対策としては,車両等の荷役のための可動橋の電源を最低限確保することを検討する必要があります。停電時に職員によるチケットの販売や貨物の受付等を行うこととなるため,マニュアルの作成や訓練の実施が必要となります。ただし,フェリーの運航頻度や輸送規模によっては,ターミナルビルの電源確保が必要となる場合があります。
 
このようにコンテナターミナルの停電対策は,ターミナル周辺の停電による影響を考慮しつつ,停電時に確保すべき機能を十分に検討した上で,非常用電源の規模を検討する必要があります。また,高潮等による浸水リスクがある場合には,電気設備の浸水対策を参照して非常用電源の浸水対策も検討する必要があります。
 
なお,対策の実施前や何らかの理由により対策が行えない場合は,非常時には港内の他のターミナルや他港への円滑なシフトが可能となるようあらかじめ必要な手順等について関係者による検討が必要になります。
 
 

4. 「フェーズ別高潮・暴風対応計画」

今般の台風第21号等の教訓を踏まえ,コンテナの固縛といった倒壊対策等,事前防災行動の確実な実施の重要性が認識されました。このため,タイムラインの考え方を取り入れ,以下3つのフェーズに分け,事前防災行動をまとめた「フェーズ別高潮・暴風対応計画」について台風第21号時の事前防災行動の検証を踏まえた内容の充実を図り,全国の港湾で対応計画の策定を進めていく予定です(図−3)。
 

図−3 フェーズ別高潮・暴風対応計画のイメージ




 

【フェーズ1】:準備・実施段階

● 週間天気予報(毎日11時,17時)や定時の天気予報(毎日5時,11時,17時)に合わせて,気象庁から翌日から5日先までの「警報級の可能性」が発表された段階を【フェーズ1】とする。
● このフェーズで事前対策を準備・実施することを基本とする。
 
 

【フェーズ2】:状況確認段階

● 一般に,高潮注意報に先行して強風注意報が発表されることから,強風注意報が発表された段階を【フェーズ2】とする。
● このフェーズで対策の実施状況を確認することを基本とする。
 
 

【フェーズ3】:行動完了段階

● 暴風に関する警報が発表された段階を【フェーズ3】とする。
● このフェーズで防災行動が完了したことを確認することを基本とする。
 
 

おわりに

港湾局では,引き続き我が国の港湾で関係者の連携による高潮対策が推進されるよう取り組んでまいります。本ガイドラインに基づき,「防災・減災,国土強靱化のための3か年緊急対策」の港湾における対策を実施するとともに,台風等の来襲時に備えあらかじめ取るべき防災行動を整理した「フェーズ別高潮・暴風対応計画」を,台風来襲期前までに策定してまいります。
 
 



 
 

 国土交通省 港湾局 海岸・防災課

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2019年5月号



 

 

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